気になる本はありますか?生中継!矢沢永吉 CONCERT TOUR 2021「I'm back!! ~ROCKは止まらない~」とセットで読みたい本4選!
12月の番組テーマは、生中継!矢沢永吉 CONCERT TOUR 2021「I'm back!! ~ROCKは止まらない~」
矢沢永吉が2021年10月より、1年10カ月ぶりとなる待望の全国ツアーを開催中。このツアーから記念すべき日本武道館145回目の公演をWOWOWで独占生中継します。
今回、ブッククラブ部長の幅さんが番組をより楽しんでいただくための4冊の本をセレクトしました。
1冊目:新装版 矢沢永吉激論集 成りあがり How to be BIG
矢沢永吉(著)
角川文庫
矢沢さんが28歳の頃に書かれたこちらの本は、初版発行から40年以上が経った今でも輝きを失わない一冊。そして、心に染みる言葉が数多く残されている愛と闘いの哲学書とも言えます。
決して恵まれているとは言えない幼少期を送り、ビートルズに触発されスターの道を駆け上がった矢沢永吉という1人の男が、その道程で経験した怒りや悲しみ、そして優しさや「義」に対して、どのように向き合い、自身の心で受け止めてきたのかが語られます。
厳しさの中にも優しさを垣間見せる祖母の存在や、矢沢さんが若い頃から徹底しているプロ意識の高さ、そして人に負い目を感じることなく、誇りを持って生きることの重要性を語る姿を知れば、彼が唯一無二の星=スターへと成りあがったことにも頷けるのではないでしょうか。
「成りあがり」の過程で生まれた、矢沢さんのジェットコースターのような人生や、ひたむきに手の届かない世界へ近づこうとする姿には、行動こそ人間が生きる上での大きな原動力であると、改めて認識させられます。
ファンの間では「永ちゃん節」として知られる、糸井重里さんによって紡がれた矢沢さん独特の言い回しも、重要なファクターとして見逃せません。
2冊目:アー・ユー・ハッピー?
矢沢永吉(著)
角川文庫
『成りあがり』がいかにして「矢沢永吉」が生まれたのかを紹介する本だとすれば、こちらはいかにして矢沢永吉が「矢沢永吉」であり続けてきたのか?を伝える一冊です。
『成りあがり』の執筆から23年の月日が流れ、51歳の時に書かれたこちらの本では、がむしゃらに駆け抜けた若かりし頃の矢沢さんとは対照的に、家族や社会的地位など背負うものが大きくなった彼が、スターとしての呪縛に苛まれながら、彼らしい創作や幸福を追求する姿が印象的です。
「成りあがり」の燃えたぎるような文体に、心を動かされた当時の若者は少なくないと思いますが、そんな彼らが歳を取り、寛容に世の中を俯瞰できるようになった時こそ、『アー・ユー・ハッピー?』を読むとグッとくるものがあります。
歳をとったことで臆病な内面と素直に向き合い、理性的な振る舞いを覚えた矢沢さんは、ミュージシャンとしてさらに磨きがかかっていきます。
デビュー当時の初期衝動や熱い心はそのままに、大人になっても成長し続ける矢沢さんの姿を見れば、歳を重ねたからこそ目指せる人間の奥行きを感じられるのではないでしょうか。
耐え難い困難からも生き抜くことができた、「紙一重の頑張り」をこの本から読み解くことで、矢沢さんのパフォーマンスをこれまでとは違った視点で楽しめるようになるでしょう。
3冊目:ビートルズへの旅
リリー・フランキー, 福岡耕造(著)
新潮社
矢沢さんが音楽を志すきっかけの一つとなった「ビートルズ」という存在。この本は、俳優としても活躍されている文筆家のリリー・フランキーさんと、写真家である福岡耕造さんの2人が、リヴァプールやロンドンに点在するビートルズゆかりの地に足を運び、彼らの足跡を辿った一冊です。
「ストロベリー・フィールド」や「アビイ・ロード」を実際に訪れながら、自分たちがどのようにビートルズを受け止め、そして消化していったのかを振り返りつつ、現地を訪問した感想を写真と共に語ります。
ただビートルズゆかりの有名スポットを淡々と紹介するのではなく、リリーさんと福岡さんの個人的な話も含めた、良い意味で主観的な説明がなされるので、いかにビートルズがお二方にとって愛すべき存在であったか、ということが伝わってきます。
ジョン・レノンが住んでいた部屋などを実際に訪れ、彼が見ていた景色に身を重ねるなど、現地のディテールについて細かく凝視していく様子にも注目です。
ビートルズのプライベートな生活の一幕を垣間見ることで、個別の人生を歩んできたはずの著者の二人が、ビートルズという共通点で繋がったり、自分なりに自身の半生を消化していったりする姿は、ファンでなくとも楽しめるのではないでしょうか。
遥か東の日本から眺めているだけではわからない、ビートルズの魔法の正体に肉薄する写真集です。
4冊目:武道館
朝井リョウ(著)
文春文庫
ビートルズの日本公演以降、日本人のアーティストであれば誰もが目指すライブ会場の一つとなった日本武道館。矢沢永吉さんは、ここで単独公演146回(今回のライブを含む)という前人未到の記録を達成しています。
さて、こちらで紹介するのは、そんな武道館ライブを志すアイドルたちを描いた小説、朝井リョウさんの『武道館』です。
若者たちの初々しい青さや、ほとばしるエネルギーを物語化することに長けた朝井さんが今作で読者に投げかけるのは、「アイドルが背負う十字架」。
個性あふれる5人組のアイドルユニットが、武道館ライブを目指して日々活動に励む様子が描かれるのですが、朝井さんはアイドル好きを公言されているだけあり、活動内容のディテールが非常に良くできているのが見どころです。
振り付けの作り方や、握手会のセッティングなどの描写が繊細に描かれ、アイドルに人が興味を持ち、ファンが増えていく理由がよくわかる小説です。
そうかと思えば、武道館を目指す彼女たちもまた、舞台を降りれば普通の女子高生としての生活があり、アイドルという肩書きの重みに悩む葛藤も描かれるなど、朝井さんならではの若者のフレッシュで多感な描写も光ります。
アイドルとしての「正しさ」に束縛されながらも、なんとか自分らしく生きようともがくその姿は、ロックンロールスターとして既存の枠に収まりきれない、矢沢永吉さんを彷彿とさせます。
武道館ライブを実現し、トップアイドルに上り詰めた後も彼女たちは自身の人生を歩んでいかなければなりません。
アイドルでありながら、自らの幸福を追い求めたい気持ちとどう折り合いをつけるのかが、この作品の読みどころではないでしょうか。
これまで紹介した本
先に番組を観るのもよし、本から入るのもまた一つの楽しみ方。あなたにとって番組や本との新しい出会いになることを願っています。