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誰にお声掛けしようかと考えた時、斎藤工さんしか思いつかなかった――「特集:ミニシアターに愛をこめて」の担当者が語る番組の裏側

「ミニシアターについて語ってみたい、語らなければいけないのではないか?」――。
これまでWOWOWで数多くの映画を紹介してきた斎藤工さんの、そんな想いと共にスタートした「特集:ミニシアターに愛をこめて」。俳優の立場で映画館の支援に乗り出すなど、映画界のために奔走している彼が、かつてミニシアターで映画ファンが熱狂した世界の秀作をナビゲートしていく人気企画です。この番組の裏側には、どんな想いがあったのか。 WOWOW映画部の担当プロデューサーに話を聞きました。

映画部でも何か動かないといけないと思ったのが、最初のきっかけでした

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★★村田早紀★★
新卒社員としてWOWOWに入社、映画部に配属される。
その後、宣伝部(当時)に異動し、主に映画とオリジナルドラマの宣伝を担当。育休を経て再び映画部に戻り、現在は映画の特集を盛り上げる企画をメインに担当。韓国ドラマや海外ドラマの日本語版制作も担当している。

 「特集:ミニシアターに愛をこめて」の企画は映画部でも何か動かないといけないと思ったのが、最初のきっかけでした。2020年に緊急事態宣言が出た時に、斎藤工さんが俳優の井浦新さんや渡辺真起子さんとミニシアターパークというのを立ち上げられたんです。斎藤さんはそれとは別に「TOKYO TELEWORK FILM」というリモートでできる企画を立ち上げていました。あとは弊社のドラマ制作部が「2020年 五月の恋」というリモートで制作するドラマを企画してすぐにお客さまに届けていたというのがあって、そのスピード感に圧倒されたのもありますね。

誰にお声掛けしようかと考えた時、斎藤工さん以外思いつきませんでした

 コロナ禍で映画館が休業になって、もともと経営が厳しいと言われていたミニシアターが閉館の危機にさらされています。ミニシアターに限らずですが、お客さまが劇場に戻ってくるまで何かアクションができないかと、まず斎藤工さんと事務所の方に相談しました。斎藤さんとは「隠れた名作"発掘良品"」という番組で2013年からご一緒させていただいていましたし、ミニシアターパークの活動も拝見していたので、誰にお声掛けしようかと考えた時、斎藤さん以外思いつきませんでした。

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 「特集:ミニシアターに愛をこめて」では、基本的に作品そのものよりも劇場に焦点を当てたいと思っているので、できるだけ作品を上映した映画館が分かれるようなラインナップの組み方を考えています。特に1990年代から2000年代はミニシアターの全盛期で、劇場それぞれにカラーがあって、東京の渋谷とか銀座を中心に広がっていました。その頃の作品をメインに調達をしています。

 例えば3月、4月放送のラインナップに入っている、ジム・ジャームッシュ監督の『ナイト・オン・ザ・プラネット』(’91)は、劇場公開時は日比谷のシャンテシネがメイン館でした。ポール・オースター監督の『ルル・オン・ザ・ブリッジ』(’98)はシネスイッチ銀座、ニック・ハム監督の『穴』(’01)が恵比寿ガーデンシネマで、ジャン=ピエール・ジュネ監督の『アメリ』(’01)は渋谷のシネマライズ。そういうふうに劇場の記憶に結び付いた映画を選んでみました。

 斎藤さんも番組の中で劇場への思い入れについて語っています。中にはもうなくなってしまった劇場もありますが、各劇場の支配人や配給の方々も個性的な方が多いので、ゆくゆくはそういう方々にお話を伺うコーナーもやってみたいですね。

【手前石田さんカット、斎藤さん要アプルーバル】wowow譚醍伐讒禄_MG_8835トリミング

「ミニシアターって温かいんですよね」――永瀬正敏さんの言葉やお人柄、雰囲気が温かかった

 ゲストに関しては、斎藤さんのご意見を伺いながらキャスティングしました。第1回に関しては、私がお呼びしたい人と、斎藤さんがお呼びしたい人が一致したのが永瀬正敏さんでした。ただ永瀬さんがトーク番組に出演しているイメージがなくて、自分でオファーしておきながら、まさか出ていただけるとは。ご快諾いただいて驚きましたし、ご本人も「こういう番組に出たことがない」と仰っていましたね。

 ただ、永瀬さんは斎藤さんのミニシアターパークにも賛同されていましたし、斎藤さんの活動をご覧になっていたので、「自分でも何か伝えられるのであれば」と出演を決めてくださったと聞きました。

 永瀬さんは (自身が出演した)ジャームッシュ監督の『ミステリー・トレイン』(’89)が上映された初日には、スチールを担当されていた鋤田正義さんと一緒に劇場のロビーに一日中いらっしゃったというお話が印象的でした。観た人たちがどんな反応をするのか不安で、こっそり様子をうかがっていたそうで。永瀬さんにもそんな時代があったんだなと驚きました。

 もう一つすごく印象的だったのが「ミニシアターって温かいんですよね」という言葉。永瀬さんは「自分もミニシアターに救われた人間のひとりなんで」って仰っていたんですが、もう、永瀬さんのその言葉やお人柄、雰囲気が温かかったです。永瀬さんも映画や映画館がなくなってほしくないという想いで出演してくださったので、同じ気持ちで企画した番組の初回にお迎えできて本当に良かったです。

 そして第2回のゲストは石田ゆり子さんですが、思い描く通りの「凜とした美しい大人の女性」という感じで、収録現場では内心みんなドキドキしていました。個人的には、『もののけ姫』(’97)を夢中で観ていた子どもの頃の自分に「いつか、サン(石田ゆり子が声を担当)とお仕事できるよ」と教えてあげたいです(笑)。まだ放送前なので詳しくは言えないのですが、石田ゆり子さんと斎藤工さんのトークもぜひ楽しみにしていただきたいです。3月に放送する第2回も、ミニシアター系の映画を観るきっかけにしてもらえるとうれしいですね。

 ミニシアター系の映画については、WOWOWでは10年前に「W座からの招待状」という枠を立ち上げています。30年前の開局当初から続く「メガヒット劇場」枠に比べると認知度は低かったと思いますが、やはり10年かけてお客さまに愛される人気番組になってきました。ラインナップも、大ヒットはしていなくても、WOWOWが今映画ファンに観ていただきたい作品を念頭に置きながらセレクションしてきました。そうやって長い時間をかけてきたことで、お客さまに認知してもらった枠なのかなと思います。

作品単体ではなく、特集という形で観ていただけるのはWOWOWならでは

 今は配信で気軽に映画を観ることができますが、WOWOWは「特集」にこだわっています。「W座からの招待状」で藤井道人監督の『新聞記者』(’19)を放送した時は、すばらしい映画だからたくさんの人に観てもらいたいという気持ちであの枠に入れたんですが、同時に同じ題材を扱った森達也監督のドキュメンタリー『i -新聞記者ドキュメント-』(’19)も放送しました。より作品やテーマへの理解を深めてもらえるような、映画の楽しみ方の提案を考えて企画を組んだつもりです。作品単体ではなく、特集という形で観ていただけるのはWOWOWだからこその強みでもあるのかなと思います。

 「特集:ミニシアターに愛をこめて」のラインナップも、単体では派手な作品ではないと思うんですね。特集番組を通じて斎藤さんやゲストの方に作品について語ってもらったりすることで、楽しい映画の見方を提供していきたいと思っています。

 最初の構想では、「○○に愛をこめて」というシリーズにして、その時々の旬だと感じたテーマだったり、斎藤さんの関心事だったり、ATG(日本アート・シアター・ギルド)みたいなWOWOWがあまり踏み込んでこなかった領域の作品を、毎回趣向を変えて放送したいと考えていました。ただ、現在はまだ劇場に人が戻ってきたとは言い難い状況が続いているので、これからも劇場を応援する特集を続けていくつもりです。

「マンスリー・シネマセッション」はかなり映画ファンに向けた企画だと思います

 それとは別に新しく始めるのが「マンスリー・シネマセッション」という配信企画です。映画番組の多くは「第三者が作品の魅力について語る」という形式ですが、「マンスリー・シネマセッション」では作品に関わったクリエイターに来ていただいて、当時の撮影の様子など、今だから言えるようなお話を聞く。かなり映画ファンに向けた企画だと思います。

 4月からスタートする企画で、記念すべき初回は「踊る大捜査線」シリーズの本広克行監督と亀山千広プロデューサー(当時)が出演します。4月17日(土)の『踊る大捜査線 THE MOVIE』(’98)を放送した後に、お2人のトークを配信するので、これから映画を観る人に向けてというよりも、映画を観ていることを前提にしているので、ネタバレもありますし、映画祭のティーチインのようなトークセッションを楽しんでもらえると思います。

 映画『セブン』(’95)のモーガン・フリーマンのイメージでいかりや長介さんをキャスティングしたというお話や、織田裕二さん演じる青島がトレードマークにもなったカーキ色のコートを着ることになった経緯など、ファンが喜ぶエピソードがたくさん出てきます。こちらも楽しんでもらえるとうれしいです。

劇場ならではの体験ができる場が早く戻ってくることを願いながら

 私個人としては、劇場体験というのがすごく大きいんです。もともと両親が映画好きだったので、映画は映画館で観るというのが日常でしたし、2、3歳くらいから映画館に行っていたと思います。私はシネコン世代ですが、昔は立ち見や階段に座って観るとか、一度映画館に入場した後、一日同じ映画を繰り返し観るとか、入替制や人数制限がなかった時代を知ってる人たちがうらやましいですね。

 大人になってからも、友達と何も調べずに映画館に行って上映時間がちょうどいい映画を観る、という挑戦的な見方をしているんですが(笑)、数年前、そうやって観たのが片渕須直監督の『この世界の片隅に』(‘16)で、まだ口コミが盛り上がる前だったのですが、友達と4人横並びですすり泣いたという思い出もあります。仕事柄ひとりで映画を観ることが多いですが、劇場って誰かと一緒に観ることで思い出も含めた楽しさになると思うんです。そういう体験ができる場が早く戻ってくることを願いながら、今は番組をお届けしていきたいなと思っています。

村山章さんプロフ

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