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映画のはなし シネピック

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新しい映画と出会える。映画をより深く楽しめる。そんなコンテンツをお届けしていきます。担い手は、映画ライターSYOさんなど個性豊かな面々。それぞれの感性が作り出す映画愛は必見です!… もっと読む
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2021年2月の記事一覧

柔軟にして、変幻自在。俳優、松坂桃李は「柔らかさ」で人々を魅了する

文=SYO @SyoCinema  松坂桃李は、「柔らかい」役者だ。スクリーンやテレビの向こうの彼はもちろん、取材時に接しているときも、包み込むような物腰と視線、朗らかな笑顔に引き込まれてしまう。 柔軟にして、変幻自在。思考もイメージも凝り固まることがなく、作品ごとにまったく違った顔を見せつける。それでいて気さくで、放つオーラは温かい。ほかに類を見ないタイプの表現者といえるだろう。 『娼年』(’18)、『孤狼の血』(’18)、『新聞記者』(’19)…。近年の出演映画を3

『リンダ リンダ リンダ』は本当の青春時代を思い出させてくれる映画――スピードワゴン・小沢さんが心を撃ち抜かれたセリフとは?

取材・文=八木賢太郎 @yagi_ken ──今回は、小沢さんが愛するTHE BLUE HEARTS(以下、ブルーハーツ)のコピーバンドを文化祭でやろうとする女子高校生4人組の青春映画です。 小沢一敬(以下、小沢)「この映画はね、映画館で上映された時、すぐに観に行った覚えがあるんだ」 ──劇場公開は2005年だから、だいぶ前ですね。 小沢「もう15年以上もたつのか。今回、改めて観たけど、やっぱりいい映画だね」 ──久々に観て、何か印象が変わった部分はありましたか?

ただ怖いだけじゃない。高揚感を得られる心理療法の聖地〜『ミッドサマー』

文=伊藤さとり @SATORIITO  「ペルソナ」と「シャドウ」という言葉がある。心理学者で有名なカール・グスタフ・ユングは、自分の外的側面(周囲に見せている自分)を「ペルソナ」、その反対に位置し、ペルソナを演じる上で無意識下にしまい込んだ感情を「シャドウ」と名付けた。  例えば人に良く思われたいとか、厳格な親などにより本人の気持ちを抑え込まれてしまうと「シャドウ」は大きく膨らんでいき、抑圧された感情はやがて爆発する。そのお手本のような映画がスティーヴン・キングの小説を

まだ終わっていない朝鮮戦争のこと―― 1本の映画から考える

文=安田菜津紀 @NatsukiYasuda  今回取り上げるのは、EXOのD.O.が主演した『スウィング・キッズ』(’18)。  朝鮮戦争時の捕虜収容所で結成されたタップダンス・チームに集ったのは、背景も動機も違う男女4人だった。黒人の下士官ジャクソン(ジャレッド・グライムズ)は、クリスマス公演を目指し、彼らのダンスを指導する。凄惨な時代を映画とともに振り返りながら、SDGsの「目標16:平和と公正をすべての人に」について考えたい。 (SDGsが掲げる17の目標の中か