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映画のはなし シネピック

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新しい映画と出会える。映画をより深く楽しめる。そんなコンテンツをお届けしていきます。担い手は、映画ライターSYOさんなど個性豊かな面々。それぞれの感性が作り出す映画愛は必見です!… もっと読む
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2021年4月の記事一覧

“完全無欠”な吉沢亮の真骨頂は、“不完全さ”にあり

文=SYO @SyoCinema  演技力も、ルックスも、運動神経も――。俳優・吉沢亮のパブリック・イメージは、「完全無欠」ではないだろうか。映画&ドラマ・デビューから10年。いまや大河ドラマの“顔”であり、CMや雑誌などでも見ない日はない。2020年は出演映画が4本公開。今後も映画や舞台への出演が控えており、ますます勢いを増していくことだろう。  ただ、個人的には吉沢亮という役者の真骨頂は、“不完全さ”にあるような気がしてならない。正確に言えば、彼は「何かが欠如した人物

作品賞&俳優賞だけがオスカーじゃない! 映画ライターが勧めるアカデミー賞の「通」な楽しみ方

 いよいよ4月26日(日本時間)に開催される「第93回アカデミー賞授賞式」。今回は、作品賞や監督&俳優賞に比べて脚光を浴びることの少ない3つの部門賞にフォーカス。アパレル業界から映画ライターに転身し、『オードリーに学ぶおしゃれ練習帳』などの著作を持つ清藤秀人さんに、衣装デザイン賞、音響賞、そして国際長編映画賞から読み解く「通」な楽しみ方をお勧めしてもらいました。 文=清藤秀人 @hidetokiyotoh 「時代劇」に偏らない衣装デザインが近年のトレンド  アカデミー賞授

何気ない日常からゾンビ映画まで 鬼才ジム・ジャームッシュの美学

文=長谷川町蔵 @machizo3000 静かでドライで物悲しい。でもどこかコミカル。  第37回カンヌ国際映画祭でカメラ・ドール(新人監督賞)を獲得した『ストレンジャー・ザン・パラダイス』(’84)を引っさげてジム・ジャームッシュがシーンに登場したとき、こうした彼の作風は、時代のムードをこれ以上ないくらい反映した表現に思えたものだ。それは僕個人に限ったことではない。あの時代、『ストレンジャー・ザン・パラダイス』のポスターをベッド・ルームの壁に飾った文化系男子&女子は数えき

あの頃、バーに行くとまずミルク飲んでたんだ――スピードワゴン・小沢さんが『レオン 完全版』を改めて観て、心を撃ち抜かれたセリフとは?

取材・文=八木賢太郎 @yagi_ken ──今回は『レオン 完全版』です。この『レオン』は、1995年に“オリジナル版”が日本で劇場公開され、翌年これより約22分長い“完全版”が公開されました。小沢さんは“オリジナル版”をご覧になっていましたか? 小沢一敬(以下、小沢)「うん。実は、“完全版”を観たのが今回初めてだったよ。’95年は俺はまだ名古屋にいたんだけど、公開されてすぐに劇場で観た。でもさ、あの当時って、『レオン』を“人生のNo.1映画”に挙げる人が異常に多かった

この映画の大切な問いは、「あなたは何をしてきたのか」――『スポットライト 世紀のスクープ』から考える

文=安田菜津紀 @NatsukiYasuda 今回取り上げるのは、第88回アカデミー賞で作品賞と脚本賞を受賞した『スポットライト 世紀のスクープ』(’15)。  実際に起きた神父たちによる性虐待と、長年それを組織的に隠蔽(いんぺい)してきたカトリック教会の問題を報じ、世に知らしめたボストン・グローブ紙の調査報道チーム「スポットライト」を描いた作品を、SDGsの「目標16:平和と公正をすべての人に」の観点から紐解いていきたい。 (SDGsが掲げる17の目標の中からピックア