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映画のはなし シネピック

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新しい映画と出会える。映画をより深く楽しめる。そんなコンテンツをお届けしていきます。担い手は、映画ライターSYOさんなど個性豊かな面々。それぞれの感性が作り出す映画愛は必見です!… もっと読む
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2021年9月の記事一覧

松山ケンイチ主演『BLUE/ブルー』や数々の名作から紐解くボクシング×映画の“親和性”

文=相馬学  ボクシング映画にハズレなし――異論はあると思うが、こう言い切って話を進めたい。“スポ根映画”にとって肝となるのは、そこに宿るアツさ。ボクシングを題材にすると、その沸点が他のスポーツの映画よりもグッと上がる。なぜか? 理由は2つある。まず、ボクシングが肉体の痛みを伴う競技だから。人間は、そもそも本能的に痛みを回避する生き物だ。にもかかわらず、痛い思いをしてまで、ボクサーたちは殴り合う。そしてそこには、もう一つの理由――痛い思いをしてまで戦わねばならない人間のドラ

『ひょっとしたら自分も誰かの始まりになってるかもしれない』と思うと、生きなきゃ、って――『君が世界のはじまり』を観てスピードワゴン・小沢さんが心撃ち抜かれた映画のセリフを語る

取材・文=八木賢太郎 @yagi_ken ──今回は『君が世界のはじまり』ですが、この作品を選ばれた理由は? 小沢一敬(以下、小沢)「俺ね、主演の松本穂香さんがすごい好きなのよ。なんて説明したらいいか難しいんだけど、この女優さん、他の誰ともかぶってない気がしてて。特に彼女の目が、めちゃくちゃ好きなんだよね。スケールがデカい目っていうのかな。すべてが目に映っていながら、すべてを俯瞰(ふかん)に見てるような、すごく奥行きのある目。いま見ているものの、その向こうを見ているような

俳優、北村匠海の無限の“成長曲線”

文=SYO @SyoCinema  初出演映画『ダイブ!!』('08)で池松壮亮の幼少期を演じてから、13年。俳優として、ミュージシャンとして、北村匠海の“成長曲線”はここ数年、伸び率がすさまじい。2020~2021年にはこれまでに計14本もの実写映画&TVドラマが公開、放送され、最新主演映画『明け方の若者たち』('21)の公開が12月に控えている。今回は、改めて北村の近年の出演映画を振り返り、彼の魅力を掘り下げていきたい。  青春音楽映画『サヨナラまでの30分』(' 2

小山薫堂×信濃八太郎が10周年を迎える「W座からの招待状」への想いを語る。

 毎週日曜の夜に、“今、もっとも観て欲しい映画との出会い”をお届けしている「W座からの招待状」。映画本編の放送の前後に“案内人”である作家・小山薫堂とイラストレーター・信濃八太郎が作品についてトークを繰り広げながら、小山が「文」を、信濃が「絵」を添えて映画を紹介する番組だ。  「W座からの招待状」は2011年10月にスタートして今年で10周年を迎える。番組スタートから“案内人”を務める小山と、安西水丸、長友啓典に続く3代目のイラストレーターである信濃に、この10年の振り返りと

1本の映画から考える9.11――アフガニスタンを「忘れられた戦争」にしてはならない

文=安田菜津紀 @NatsukiYasuda  今回取り取り上げるのは、ジョナサン・サフラン・フォアのベストセラー小説を映画化した『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』('11)です。  米国の同時多発テロ「9.11」から20年。人々の抱える悲しみとともに、テロ後の世界情勢も見据え、SDGsの「目標16:平和と公正をすべての人に」を考えていきたいと思います。 (SDGsが掲げる17の目標の中からピックアップ) 米国同時多発テロが起きた2001年9月11日、私は中