周りの人をハッピーにするために、『やっぱり俺も、いつでもヘラヘラしていたいな』と思ってさ――『くれなずめ』を観てスピードワゴン・小沢さんが心撃ち抜かれたセリフとは?
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周りの人をハッピーにするために、『やっぱり俺も、いつでもヘラヘラしていたいな』と思ってさ――『くれなずめ』を観てスピードワゴン・小沢さんが心撃ち抜かれたセリフとは?

映画を愛するスピードワゴンの小沢一敬さんが、映画の名セリフを語る連載「このセリフに心撃ち抜かれちゃいました」
毎回、“オザワ・ワールド”全開で語ってくれるこの連載。映画のトークでありながら、ときには音楽談義、ときにはプライベートのエピソードと、話があちらこちらに脱線しながら、気が付けば、今まで考えもしなかった映画の新しい一面が見えてくることも。そんな小沢さんが今回ピックアップしたのは、友人の結婚式で集まった6人のアラサー男子たちの騒動を描いた青春コメディ『くれなずめ』('21)。さて、どんな名セリフが飛び出すか?

取材・文=八木賢太郎 @yagi_ken

──今回は『くれなずめ』ですが、小沢さんが以前から楽しみにされていた作品だと聞きました。

小沢一敬(以下、小沢)「そう。これさ、今年の春に公開されたばかりの映画でしょ。そのときに観てきた友人たちが、『不思議な映画だから、みんなで観た後に、それぞれの感想を話し合って、答え合わせしてみたくなる』って言ってたの。だから興味を持ってたんだけど、劇場では見逃しちゃって。そうしたら、こんなすぐにWOWOWさんで観られるってことで、すごく嬉しかった(笑)」

──確かに答え合わせをしたくなる映画でした。

小沢「他の人に、『あの場面はどう思った?』って聞いてみたくなるよね。これを難しい映画って思う人もいるかもしれないけど、俺は、難しいというよりは、繊細な映画だなって思った。人によって受け止め方が変わるだろうし。俺がここで分かったようなことを言うこともできるけど、たぶん、その分かったような答えが、実はすべて間違いかもしれないし。だから、まさに映画の中のセリフに出てくる『はっきりさせようとすんなよ!』ってことじゃないかと。言葉で説明しようとした途端に、全部が嘘っぽくなっちゃう映画だと思う」

──そうですね。なんでそうなるのかは、これはもう、観てもらうしかないんですけど。

小沢「だから、この映画にキャッチをつけるとしたら、『何度も振り返る理由がある映画』だと思うんだ。それは、伏線の張り方がうまいし、一度観ただけでは理解しにくい場面もあるから、観客として何度も観直したくなるっていう意味でもあるし、映画の登場人物たちが、物語の中で何度も過去のことを振り返る理由があるっていう意味もあるし」

──うまいキャッチだと思います、それ。

小沢「とにかく、この映画を観て一番感じたことは、『あ~、10代の頃ってこんなノリだったよな』っていうところの再現度の高さだね。特に男の子たちはそう感じると思う。男子も女子も、この頃の男の子たちのノリとか友情に憧れる部分ってあるじゃない。そういう10代の若者の美しさを描いてるところが、本当に素晴らしかったと思う。中心人物の6人を演じた役者さんたちも、めちゃくちゃよかったし。キラーワードというか、心に響くセリフも多かったよね」

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──では、そんな中から今回も、小沢さんが一番シビれた名セリフを選んでいただきたいのですが。

小沢「そうね。みんなが選ぶのは、たぶん、『過去なんて都合よく全部書き換えろよ』ってセリフだと思うのね」


<ここから先はネタバレを含みますのでご注意ください>

優柔不断だが心優しい吉尾(成田凌)、劇団を主宰する欽一(高良健吾)と役者の明石(若葉竜也)、既婚者となったソース(浜野謙太)、会社員で後輩気質の大成ひろなり藤原季節)、唯一地元に残ってネジ工場で働くネジ(目次立樹)、高校時代の帰宅部仲間が友人の結婚式で久々の再会を果たす。赤いフンドシで踊るダンスを余興で披露した彼らだったが、周囲は興ざめ。気まずい状況の中で2次会を控えていた6人は、道中で学生時代の記憶に思いをはせる。6人の“今”と、思い出がよみがえる“過去”が交錯して笑いと寂しさがごちゃ混ぜになり、やがて、目を背けていた“友の死”がそれぞれの人生に立ちはだかる。

──物語の終盤、どうしても過去を引きずっている他の5人に対して、吉尾が言うセリフですね。

小沢「たしかにこれは素晴らしいセリフだし、俺もその通りだと思うんだ。例えば、俺らがテレビでしゃべるエピソードトークなんて、事実をそのまんましゃべっても面白くないから、多少は都合よく、面白く変えちゃってるところがあるもん(笑)。『過去は変えられないけど、未来は変えられる』って言葉があるけど、逆なんだよ。未来は変えられないの。なぜなら、まだ存在してないから、変えられるものが何もない。だけど、過去なんか、ただの記憶だから。自分が生きやすいように、都合よく変えちゃえばいいんだよ」

──そうですね。過去は変えられないと思い込んでる人は多いと思いますけど。

小沢「みんなさ、すごい落ち込むんだよ、『あのときのことを思い出すと憂鬱ゆううつになるわ』とか。だから、俺はよく言うのよ、『たしかに嫌な思い出かもしれないけど、たった一回の出来事じゃん。それをなんで何回も脳内で巻き戻して、そのシーンの再生ボタンを押すの?』って。だから、『過去なんて都合よく書き換えろ』っていう気持ちはよく分かるし、このセリフはいろんな人の心に届いたとも思うんだけど。ただ、俺が今回選びたいセリフは、これじゃないんだ」

──そのセリフとは?

小沢「『平和に生きてるやつに限って、シリアスなの描くよな』」

──欽一と明石が参加した飲み会の席で、演劇界の先輩たちからバカにされ続けた明石が、ムカついて反論して言うセリフですね。

小沢「そう。その後、さらにキレた明石が、『コメディやってみろっつって。静かな劇が偉いのかっつって』って言いながら、『コメディ最高! 俺たち最高!』って叫ぶじゃん。俺はあれが一番好きだね」

──それは共感も含めて?

小沢「いや、共感じゃなくて、俺はさ、深刻ぶるのが嫌いなのよ。深刻な顔なんて、誰でもできるから。むしろ深刻な時に深刻な顔をしない方が難しいのに、深刻な顔をしている方が高尚だと思われがちでしょ。だから、『深刻ぶってんじゃねえよ!』が俺のテーマ(笑)。ちゃんと楽しく生きていこうと思ってるからこそ、ヘラヘラしてるというか。すばらしい未来を求めてるから、あえて深刻な顔はしない。べつに真面目な顔をしちゃいけないって話じゃないのよ。真面目な話のときに真面目な顔をするのはいいんだけど、そういうときにもユーモアと笑いがあればいいなと、俺は思うんだよね」

──まさにこの映画に出てくる6人は、最後までそういう心意気でいようとしてましたよね。

小沢「そう。さっきの『はっきりさせようとすんなよ!』のところに出てくるセリフにあるもんね。『ヘラヘラしろよ! 俺たちいつも、あいつとヘラヘラしてたろ! はっきりさせようとすんなよ! 引きずることから逃げんじゃねえよ!』って」

──どうしても“友の死”を受け止めきれない明石に対して、欽一が言うセリフですね。

小沢「やっぱり俺も、いつでもヘラヘラしていたいなって思うから」

──でも昨今は、深刻ぶった顔を求められることも多いじゃないですか。

小沢「そうなのよ。『不謹慎だ!』って言われるの、深刻な顔をしてないと。でも、不謹慎でいいじゃない。ヘラヘラしてるからといって、べつに不真面目なわけではなくて、世の中と誠実に向き合うために、自分が楽しく生きるために、周りを楽しくさせるために、ヘラヘラしてるんだよ。ずっと深刻ぶって暗い顔してたら、周りの人をハッピーにさせることなんてできないんだから」

──最終的には、みんなハッピーを目指してるんだから、よりヘラヘラしていこうよ、と。

小沢「そういうこと。ちなみに、6人がいつもやってる男子高校生特有のノリ、大人になるとあれをやるのは恥ずかしいんだけどさ、この映画を観てたら、恥ずかしく生きるっていうのは、実はいいことかもしれないって思えてきたんだよね。周りから『あいつの生き方は恥ずかしい』って言われたって構わないなって。あんなノリをやり続けられたら、本当にハッピーだよ。ただ、それに付き合ってくれるやつが、だんだん減っていくんだけど(笑)。あのノリに付き合うのも体力いるから。やっぱり10代の頃は体力あったよね」

──10代の頃はいろいろ無敵でした、誰しもが。

小沢「番組のロケとかで、たまに10代の子たちに会ったりすることもあるけど、毎回『やっぱり10代ってすげえ!』って驚かされるもん。ノリも体力も夢を見る力も、すべてが俺らよりスケールがデカい。大人なら、『こんなことを言ったら恥をかく』って思って躊躇しちゃうようなことも、平気で言えちゃうから。そういう“恥ずかしい生き方”を、俺らも忘れちゃいけないなって思うよ」

──その“恥ずかしい生き方”の果てにこそ、何かがあるわけですからね。

小沢「勘違いしてほしくないのは、この“恥ずかしい生き方”っていうのは、本人は決してそれを恥ずかしいと思ってないからいいのよ。他人から『あんな生き方は恥ずかしい』と思われてるだけで、本人はそう思ってない。俺だって、自分が恥ずかしいと思うことはできないよ。だけど、俺がやることを見て、周りから『小沢のやり方は恥ずかしい』って思われることは、全然構わない。10代の頃は、みんなそういう気持ちを持ってたはずなんだよ。大人になるにつれて社会に迎合していかないと生きづらい部分もあるんだけど、それでも、あの頃のそういう気持ちは、なくしちゃいけないものだって気がするね」

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──その話を聞いたら、なんかあの6人が余計にいとおしくなってきました。

小沢「いい映画だったね。もしかすると、この映画を観て、『意味が分かんない』で終わっちゃう人もいるかもしれないけど、そういうときにいつも思うのは、『意味あることだけがすばらしいわけじゃねえからな!』ってことで。みんな今は、意味を求めすぎなんだよね。『あの映画、意味分かんないから、嫌い!』って言うけど、べつに意味分かんなくたって、面白ければいいじゃん。コントとか漫才だって、意味が分かんなくても笑えればいいじゃん。この映画の中でも、ウルフルズの『それが答えだ!』って曲について、主人公の吉尾が『それが答えだ! って言いながら、何が答えかを言わないのがいいのよ』って言うけど、意味なんかそれぞれ違うし、答えなんかそれぞれ違う、それが答えでしょ(笑)」

──ホントですね。そういうことを投げかけてくれてる映画でした。

小沢「で、エンディングで流れる曲がウルフルズのアンサーソングで、その歌詞が、『あれは答えじゃなかった』って。そういうところも、すごく美しい映画だよね。しかも、その曲のタイトルが『ゾウはネズミ色』。ゾウなのにネズミ色っていう。つまりあれも、正解なんてないよってことでしょ。この映画にも答えなんかないし、正解もない、観た人が思ったことが答え、でいいんじゃないかな。みんなの人生だって、それぞれ意味も答えも違うんだよ。それなのに、みんな、こうでなきゃいけないとか、ああいうのは恥ずかしいとか、そういうことを言い過ぎてるなって思うし…っていうか、俺、この映画についてこんなに深刻に話をしちゃダメじゃん。もっとヘラヘラする約束してたのに!(笑)」

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クレジット:(C)2020「くれなずめ」製作委員会

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