映画好きの皆さんの気になる作品は? 5月のWOWOW初放送映画 厳選3作品
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映画好きの皆さんの気になる作品は? 5月のWOWOW初放送映画 厳選3作品

映画アドバイザーのミヤザキタケルが、各月の初放送作品の中から見逃してほしくないオススメの3作品をピックアップしてご紹介! これを読めばあなたのWOWOWライフがより一層充実したものになること間違いなし!のはず...。

文=ミヤザキタケル @takeru0720

 今月は、スウェーデン人、イギリス人、日本人と、異なる国の監督たちの作品を紹介します。

『ブリット=マリーの幸せなひとりだち』(’19)

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スウェーデンで初登場No.1! 63歳の専業主婦に訪れる人生の選択

 「スター・ウォーズ」シリーズにおいてアナキン・スカイウォーカーの母、シミ・スカイウォーカーを演じたことで知られるペルニラ・アウグストが主演を務めた、スウェーデン人監督ツヴァ・ノヴォトニーによる人間ドラマ。結婚して40年、夫の浮気を機に家を飛び出し、小さな田舎町でユースセンターの管理人をしながら、子どもたちの弱小サッカーチームのコーチを引き受けることになった63歳のブリット=マリー(アウグスト)。長年専業主婦として生きてきた女性に訪れる人生の転機から、より良い生き方を模索するきっかけを得られる作品です。

 『幸せなひとりぼっち』(’15)の原作者でもあるフレドリック・バックマンの小説が原作の本作。『幸せなひとりぼっち』が好きな人にはぜひご覧いただきたい作品であり、対人関係において何かしら悩みがある人や、自分の生き方にもんもんとしている人は、ブリット=マリーが振り絞る勇気にきっと心を動かされるはず。

 かたくなに変化を拒み、不満を抱きながらも我慢して、40年もの間、形ばかりの夫婦生活を守ってきたブリット=マリー。家を飛び出し、見知らぬ土地や厄介な住人や子どもたちに直面し、いやが応でも彼女の心に変化が生じる。他人と関われば嫌な思いもするだろうし、傷つくこともある。しかし、それこそが人生。久しく触れることのなかった自身の感情の揺らぎに戸惑いながらも、不意に訪れる喜びや善意に、少しずつ心のありようが変わっていくブリット=マリー。人と本気で関わらなければ出合えないすばらしい出来事が確かにある。

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 「一日ずつ、一日ずつ」と口癖のように繰り返す彼女の言葉は、一見自分の気持ちをごまかすための暗示に思えてくる。だが、それは家を飛び出す前までの話。たとえうまくいかない一日であろうと絶望せず、翌日に希望を見いだす。家を飛び出してから発する彼女の言葉は、明らかに性質が変わっていた。他人を変えることは難しいが、自分が変わることならいくらかたやすい。そういった変化が、結果として他人に影響を及ぼしていく。

 誰の助けも借りず、自分ひとりの力で生きられるようになることを「ひとりだち」というが、本作におけるその言葉は、自分の人生に責任を持ち、他人に歩み寄る努力ができる人間であってこそのもの。本作は、その一歩を踏み出す女性の物語なのだ。


『家族を想うとき』(’19)

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現代社会にはびこる理不尽と、その現実を生きる僕たちの物語

 カンヌ国際映画祭の最高賞パルムドールを2度受賞し、2021年に85歳を迎えるイギリスの名匠、ケン・ローチによる社会派ドラマ。マイホーム購入の夢を叶えるべく、一念発起してフランチャイズの宅配ドライバーを始めた父、パートタイムの介護福祉士として働く母、反抗期の息子と家族思いの娘から成るターナー家。仕事の忙しさから次第に家族の時間は減っていき、厳しいノルマや過酷な労働条件に振り回されながらも懸命に働く父だったが、家族関係が徐々に崩れてしまう。

 本作が公開されたのは2019年。イギリスにおけるゼロ時間契約労働者の問題を描いているが、コロナ禍における現在目にしたのなら職にあぶれてしまう状況や、人の感情をないがしろにする労働環境であろうと働かざるを得ない現実が、より鮮明に感じ取れるかもしれない。生きるために働くのか、働くために生きるのか。追い込まれると、自分が一体何のために、誰のために生きているのかさえ分からなくなっていく。ターナー家に起きた出来事の数々を通して、この社会が抱える問題を、誰もが向き合わねばならない問題を、ケン・ローチは僕たちに投げ掛ける。

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 数々の映画賞を受賞した前作『わたしは、ダニエル・ブレイク』(’16)をご覧いただいた方ならお分かりだと思うが、ケン・ローチ作品はとにかくズシンと響く。そして、現実社会に根差した物語であるが故の重みが本作にも宿っている。

 世の中は、時に厳しい現実がある。基準を順守できる者には恩恵をもたらし、そうでない者には容赦ない。人並みの生活や幸福を求めているだけなのに、どうにもならない現実にさらされ続けるターナー家の面々。国や法や家族構成は異なれど、映し出される家族の姿は僕たちと変わらない、ごく普通の一般の家庭。仕事・金・家族に関するトラブルなど、いつ誰の身に起きてもおかしくないことばかり。そう、これは僕たち自身の物語といっても過言ではないのだ。

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『ばるぼら』(’20)

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手塚治虫の問題作を稲垣吾郎×二階堂ふみのW主演で実写映画化!

 手塚治虫がタブーに挑戦した大人向け漫画「ばるぼら」を、息子である手塚眞監督が映画化。稲垣吾郎演じる異常性欲に悩まされる人気小説家・美倉洋介が、二階堂ふみ演じる謎めいた少女・ばるぼらと出会い、創作意欲に駆られ狂気へと落ちていく。

 少々癖のある本作を紹介するに当たり、物語を読み解くためのヒントを提示したい。冒頭、哲学者ニーチェの言葉が映し出される。「愛の中には狂気があり、狂気の中には理性がある」というもの。この言葉だけを聞いてもピンとこないかもしれないが、「愛」「狂気」「理性」、これらの言葉が暗闇を照らすたいまつのような役割を果たし、幻想的でいて、退廃的な本作の世界観をたどっていく上での道しるべとなっていく。

 小説家の美倉のように、クリエーターたる者は、狂気の中に身を置いてこそ想像(創造)できるものがあると思われる。そうして苦悩の末に生み落とされたものにこそ、多くの人を感動させ得る愛が宿っている。だが、ある程度の地位を得て、それ故のしがらみや責任、つまりは理性が付きまとい、思うように狂気へと至れず筆が進まない美倉。

 そんな彼が狂気への入り口を探し求めるのは至極当然のことであり、ばるぼらとの出会いを経て、理性とかけ離れた行動へとひた走る。しかし、愛へたどり着くことは容易じゃない。狂気へ足を踏み入れることはできても、結局は理性が働いてしまう。劇中で目にする奇想天外な描写の数々は、ニーチェの言葉が示すことわりの中で葛藤する美倉の姿。そう捉えられれば、物語の本質に迫っていけるはず。

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 愛と理性の間には常に狂気が付きまとい、どう向き合うか次第でたどり着く末路は変わっていく。あくまでも狂気は間にある通過点でしかなく、(理性へと)引き下がるか、先(愛)へ向かうか、二つに一つ。「狂気」と「理性」のはざまをさまよい続けながら「愛」を求め続ける男の姿は、あなたの心にどんな感情を芽生えさせるだろう。ニーチェの言葉をかみ締めながらご覧ください。

 観れば前向きになれる作品、映画を読み解く面白さを感じられる作品、現実にある重みを宿した作品と、それぞれに異なる魅力を持つ3作品とともに、5月も素敵なWOWOWライフをお過ごしください。

ミヤザキさんプロフ

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クレジット
『ブリット=マリーの幸せなひとりだち』:© AB Svensk Filmindustri, All rights reserved.
『家族を想うとき』:©Sixteen SWMY Limited, Why Not Productions, Les Films du Fleuve, British Broadcasting Corporation, France 2 Cinema and The British Film Institute 2019/photo: Joss Barratt, Sixteen Films 2019
『ばるぼら』:©2019『ばるぼら』製作委員会

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