映画好きの皆さんの気になる作品は? 8月のWOWOW初放送映画 厳選3作品
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映画好きの皆さんの気になる作品は? 8月のWOWOW初放送映画 厳選3作品

 映画アドバイザーのミヤザキタケルが、各月の初放送作品の中から見逃してほしくないオススメの3作品をピックアップしてご紹介! これを読めばあなたのWOWOWライフがより一層充実したものになること間違いなし!のはず...。

文=ミヤザキタケル @takeru0720

 今月は、ヒューマン・サスペンス、ラブ・コメディ、青春と、タイプの異なる3本の作品を紹介します。

『ルース・エドガー』(’19)

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その少年は、“優等生”か“怪物”か

 J・C・リーの戯曲を映画化し、サンダンス映画祭などで話題を集めたヒューマン・サスペンス。アフリカの戦地で生まれ育つも、アメリカ人のエドガー夫妻に引き取られ、文武両道かつ人望ある高校生へと成長したルース(ケルヴィン・ハリソン・ジュニア)。ある日、課題のリポートを巡って女性教師ウィルソン(オクタヴィア・スペンサー)と対立したことで、ルースの順風満帆に思われた日々が大きく揺らぎだし、隠されていた彼の一面があらわになっていく…。

 人間関係において、一度崩れたバランスはなかなか元には戻らない。問題が生じた以上、新たなバランスの保ち方を築く必要がある。ルースの将来を危惧して、無断で彼のロッカーを物色したウィルソン。ウィルソンのやり方に疑問を抱きながら、息子を案じる両親。そんな彼らの行動に気付きながらも平静を装い、実力行使に打って出るルース。崩れたバランスを修正すべく、それぞれ行動を起こすが、方向性がかみ合っていないため事態はどんどん悪化していくことになる。

 ルースらも根底では誤解を解き、分かり合いたいと思っているに決まっている。でも、他者と誤解なく分かり合うことほど難しいことはない。理解し合う努力よりも、力づくで同調させることの方がはるかにたやすい。相手の心を折ったり自身の正しさを押し付けたりする道の方が、ゴールのめども立ちやすい。その上、人種問題であったり、血のつながらぬ親子関係であったり、教師と生徒という立場や世代の違いがもたらす価値観のズレが、事態をより複雑化させる。泥沼と化していく彼らの関係性を目の当たりにし、何が正解なのか、どうすることがベストなのか、あなたは答えを導き出すことができるだろうか。

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 あくまでも本作はフィクションですが、バランスが崩れたことで浮き彫りになっていく問題、その問題に直面し葛藤していく登場人物の心の揺らぎ、バランスの取り方を模索するもかみ合わず衝突する人間模様など、どれもこれも僕たちが生きる現実世界において起こり得ることばかり。他人事だと割り切るのはたやすいが、ひとりひとりが自覚しなければならない社会や人間の本質が詰まった作品です。


『パーム・スプリングス』(’20)

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“抜け出すことを頑張らない”新感覚タイムループ・ラブ・コメディ

 2021年4月に劇場公開されたばかりの作品が早くもWOWOWに登場。2020年のサンダンス映画祭で大きな注目を浴び、第78回ゴールデン・グローブ賞コメディ/ミュージカル部門作品賞にもノミネートされた話題作。米カリフォルニア州にある砂漠のリゾート地、パーム・スプリングスを舞台に、知人の結婚式に出席したナイルズ(アンディ・サムバーグ)と花嫁の姉サラ(クリスティン・ミリオティ)が、何度も結婚式の日の朝に戻ってしまうタイムループに閉じ込められ、延々と同じ1日を繰り返していくことになるラブ・コメディ。

 元の世界に戻るべく、試行錯誤を繰り返し、時にはループ現象をも利用することで膨大な知識や経験を獲得し、常に脱出・解決へ向けた方向へと物語が進んでいくのがタイムループもののお約束。だが、本作は少し違う。当初は困惑しつつも、彼らは繰り返される日々の中で楽しみを見いだし、抜け出すことを頑張らない。それだけでは物語が進んでいかなくなるため、お約束の展開も訪れるのだが、そんな彼らのゆる~いキャラクター設定や恋愛模様、現実世界との関わり方についても考えさせられるタイムループとの向き合い方が、本作独自の魅力であり、面白いところ。

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 劇中のように延々と繰り返す毎日と、僕たちが生きる毎日。その違いは何か。同じ毎日を繰り返していたら、一種の安寧を見いだすことができるだろう。ただ、そこに可能性や希望の類いは伴わない。想定内の出来事しか起こらず、極上の喜びや感動にはお目に掛かれるはずもない。

 そう、良くも悪くも変化が訪れるからこそ、僕たちは変わっていける。たとえ悪い状況に陥っても、「可能性」という名の明日が残されているからこそ、前を向いて生きてもいける。過ちの果てに正しい道を歩んでいけることや、やり直しが許されないからこそ絞り出せる勇気があることを、2人の恋模様とタイムループを通して垣間見ることができるはず。


『アルプススタンドのはしの方』(’20)

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キラキラしていない高校生たちの青春模様

 兵庫県立東播磨高校演劇部が上演し、第63回全国高等学校演劇大会で文部科学大臣賞(最優秀賞)に輝いた名作戯曲を映画化。夏の甲子園大会1回戦。スポットライトを浴びる選手たちとは裏腹に、観客席の端っこにいる地味な4人の生徒。演劇部の安田(小野莉奈)と田宮(西本まりん)、元野球部の藤野(平井亜門)、帰宅部で友達のいない宮下(中村守里)。それぞれの抱える想いが、試合の展開とともに徐々に交錯していき…。

 高校生が主人公の映画と聞いて、あなたにはどんなイメージが湧くだろう。キュンキュンする恋愛もの、ハラハラするスポ根もの、ギラギラする不良ものなど、いろいろと思い浮かぶだろう。ただ、本作に限ってはキュンキュンもハラハラもギラギラもおそらくしない。むしろ、心がザワザワしたり、チクチクしたり、キュッとすることの方が多いと思う。それもそのはず、試合をしている選手たちの姿は一切映されず、基本的にはタイトル通り、“アルプススタンドのはしの方”が映されるだけで、そこにいる冴えない男女の会話劇が展開していく。

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 学生時代、運動部の応援に参加したことがある方はその時のことを思い出してほしい。全力で選手を応援できた人もいれば、あらゆる理由から応援できなかった人もいるだろう。スポーツに興味がない、選手の中に友人がいない、出場していない自分にはそもそも関係がないetc…。理由は何であれ、応援をためらったり面倒に感じたりしていた人ならば、劇中の彼女たちの心に寄り添える余地がきっとある。“リア充な連中”への嫉妬、情熱を注ぐ何かを見つけられていない焦り、どうすることもできない現実を前に諦めざるを得ない状況など、何かしら身に覚えがあると思う。そして、気が付く。素直に応援できないことが問題なのではなく、自分自身と向き合うことができていないからこそ生じる問題が、彼女たちの心を苦しめているのだと。

 何事も、諦める理由より、続けていくための理由を見つける方が難しい。どんなに納得がいかなくても、「しょうがない」の一言を一度口にしてしまえば、割り切ったりごまかしたりすることにも慣れていく。自らを慰めることもできるだろう。しかし、最後までやってみなくちゃ分からないこともある。続けていく中でしか巡り会うことのできない一瞬がある。どんな結果になるにせよ、最後までやり切った自負があればこそ、心置きなく次のステップへと歩み出すことができるもの。目の前で繰り広げられる試合を通し、徐々に変化していく安田らの姿が、その事実を感じさせてくれることだろう。

 非常に濃厚な人間ドラマ・新感覚のタイムループ・冴えない高校生の青春と、それぞれにジャンルは違えど、胸に響くものを宿した3作品と共に、8月も素敵なWOWOWライフをお過ごしください。

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クレジット
『ルース・エドガー』:© 2018 DFG PICTURES INC. ALL RIGHTS RESERVED.
『パーム・スプリングス』:©2020 PS FILM PRODUCTION, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
『アルプススタンドのはしの方』:©2020「アルプススタンドのはしの方」製作委員会

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