3人の戦友たちを描いた映画を、スピードワゴン・小沢さんが自分に照らし合わせて語る。心を撃ち抜かれたセリフとは?
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3人の戦友たちを描いた映画を、スピードワゴン・小沢さんが自分に照らし合わせて語る。心を撃ち抜かれたセリフとは?

映画を愛するスピードワゴンの小沢一敬さんが、映画の名セリフを語る連載「このセリフに心撃ち抜かれちゃいました」
毎回、“オザワ・ワールド”全開で語ってくれるこの連載。映画のトークでありながら、ときには音楽談義、ときにはプライベートのエピソードと、話があちらこちらに脱線しながら、気が付けば、今まで考えもしなかった映画の新しい一面が見えてくることも。そんな小沢さんが今回ピックアップしたのは、巨匠リチャード・リンクレイター監督が12年の構想期間を経て描く、感動のロード・ムービー『30年後の同窓会』(’17)。さて、どんな名セリフが飛び出すか?

取材・文=八木賢太郎 @yagi_ken

——今回は『30年後の同窓会』というチョイスでしたが。

小沢一敬(以下、小沢)「今回、この映画の話をしたくなったのには実は理由があって。俺の同期の放送作家がいるのね。桝本壮志っていうやつで、俺たちはマスマンって呼んでるんだけど」

——元芸人で、今は放送作家ということですか?

小沢「そうそう。俺と徳井(義実)くんとマスマン、3人がNSC(吉本総合芸能学院)の同期なんだけど、その3人で一軒家を借りてシェアハウスしてたのね。2020年の4月まで、6年ぐらい」

——テレビなどでもよく紹介された例のシェアハウスですね。

小沢「で、そのマスマンが、2020年の12月に『三人』っていうタイトルの小説を出したんだ。タイトルの通り3人の登場人物が出てくる話で、その3人が俺たちと同じようにシェアハウスで同居してる物語なんだけど。俺もさっそく読んでみたら、すごく胸を打たれたというか、結構良かったのよ」

——それは面白そう。僕も読んでみます。

小沢「そんなタイミングに、今回の『30年後の同窓会』がWOWOWで放送されるって知ったから、ちょっと観てみたくなったんだよね。この映画の主人公のドク(スティーヴ・カレル)とサル(ブライアン・クランストン)とミューラー(ローレンス・フィッシュバーン)の3人は、別に俺と徳井くんとマスマンに似てるわけじゃないんだけど、どこか俺たちに照らし合わせて観ちゃったよね。映画の3人が体験したベトナム戦争が、俺らにとってはNSC時代の生き残りを懸けた日々みたいな感じで(笑)。それこそ初期の『M-1グランプリ』なんて“けが人”も結構出てたから」

——漫才のネタがスベって大けがするっていう意味の“けが人”。

小沢「そうそう。ものすごくヒリヒリしてたもんね。今は審査員も優しいから、決定的にスベらせないというか、バラエティ番組として面白く盛り上げようとしてくれてるじゃん。だけど20年前の審査員は、バラエティうんぬんじゃなく、ただただ漫才を審査しに来てたから。マジで、それまで人気者だったのに『M-1』でスベって以来、テレビに呼ばれなくなっちゃうようなことが何回もあったよね」

——ホントに容赦なかったです、あの頃は。そういう壮絶な時間をともに体験した3人だけに、映画の3人とも共通点があると。

小沢「うん。だから、映画の中で3人がはしゃぎながら昔のくだらない思い出話をするところなんか、すごく共感しちゃったよね」

——物語の中盤、貨物列車の中でのシーンですね。

小沢「あの時だけ、3人のおじさんたちが10代の男子のように盛り上がってた」

——それこそ、古い友達に会うと、ああやってしょうもない話でゲラゲラ笑って盛り上がる瞬間ありますもんね。

小沢「あるのよ。でも、あの頃と違うのは、そうやってワーッと笑って盛り上がっても、急に『あ、もうこんな時間か。明日早いから、帰ろうか』ってなるんだよね(笑)。昔はそんなの関係なかったのに」

——そこが切ないところで。みんな大人になっちゃった。

小沢「だからこそ、あのシーンが余計に好きなんだよね。あと、こういう言い方はプロの役者さんに対して失礼なんだけど、あそこで爆笑する演技が、みんな本当にうまい。だから、すごく楽しそうに見える。悲しい演技とか怒る演技よりも、笑う演技ってメチャクチャ難しいと思うから」

——この映画は、そんな楽しいシーンばかりじゃなくて。実は『30年後の同窓会』という邦題からは想像もつかないような、わりと重いテーマの映画でした。

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※ベトナム戦争に従軍した退役軍人である通称ドクは、かつての戦友である元海兵隊員のサルとミューラーのもとを訪れ、イラクで戦死した息子の遺体をアーリントン国立墓地まで運ぶのを手伝ってほしいと頼む。彼の死の真相を知った3人は、自身のつらい過去を振り返り、悲しい思い出の中で再び心を通わせる

小沢「そうだね。この邦題をつけた人は、ずいぶん人生を肯定的に捉えてる人だよね。ただ、根底にあるテーマが重かったり、湿りがちなストーリーだったりするんだけど、読後感みたいなものが、不思議なほどカラッとしてる映画だった。それはたぶん、あの3人がどこかひょうひょうとしてたからだと思うんだけど。そういうところが、俺の理想というか、好きなタイプの映画だったと思うな」

——小沢さん好みの洒落たセリフもたくさんありましたもんね。

小沢「いいセリフ多かったよね。例えば、ドクが自分の息子の遺体を運び出そうとするときに、軍の大佐が『遺体を引き渡せるのは葬儀屋だけです』って妨害してると、牧師のミューラーが横から『あるいは聖職者。そうでしょ? ここは…どうやら私の出番だ。行こう』って言うところ。ああいうのは好きだね。ああいう会話が日常にあふれてる世界がいいな(笑)」

——そしたら、全員が小沢さんみたいになっちゃいますね(笑)。ちなみに小沢さんは、3人の中では誰が好きですか?

小沢「やっぱり、一番言いたい放題だったサルだね。たぶん彼は、ずっと言いたいことを言って生きてきたんだよね。その人のためを思うと、つい言葉が出てしまうというか。ある意味で誠実な人なんだよ。口が悪いから、勘違いされちゃうけど。誠実に生きてると、言いたいことを言わなきゃならなくなるのよ。男は余計なことを言わない、っていう美学も分かるけど、どちらかといえば俺も、常に言いたいことは言おうと思ってる方だから」

——どこか小沢さんの人生観に近いものをもっている感じがしますね。

小沢「そうだね。サルのセリフに『俺たちは生きてるが…人生は減っていく。1分でも楽しみたいんだ』っていうのがあったけど、そういうところはまさに同じだよ。最後の方で、ひとりぼっちになっちゃうドクを、サルが『俺のバーで働けばいい』って誘うじゃん」

——ドクの家に3人が泊まった夜、ベッドで眠りにつく前、2人で語り合うシーンですね。

小沢「そのときサルが言うのが、『これだけは保証してやる。楽しいぞ』って。あのセリフなんて、あっ俺だ! って思った(笑)」

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——そんな中で、今回、小沢さんが一番シビれた名セリフは?

小沢「どれも良かったんだけど、ひとつ選ぶとするなら、『過去は取り消せない。そこから学び、過ちを繰り返すな』

——バスターミナルのシーンで、サルとミューラーがベトナム戦争の思い出を語り合っているときに、ミューラーが言うセリフですね。

小沢「これは俺が最近思ってることなんだけど、“過去”っていう言葉は『去った過ち』って書くんだよね。」

——確かに、そうですね。

小沢「昔は良かった、って言いたくなるときもあるけど、実は過去なんていうのは、今の自分からしたら、全てが過ちというか、何かを乗り越えるための糧でしかなかったんだと。そう言うと、過去は全て美しくないのか、過去を否定してるのかって誤解されちゃうかもしれないけど、そういうことじゃなくてさ。去った過ちなんだからクヨクヨすんな、っていうか。過去に囚われすぎるな、この先はもっといいことあるよ、って意味でもあるんじゃないかなって、ふと考えてたんだよね」

——意訳ですけど、とてもしっくりくる解釈です。

小沢「ちなみに、俺の相方の井戸田潤は『井戸で田んぼを潤す』って書くんだよね(笑)」

——え~と、それはどんな意味があるんでしょうか?(笑)

小沢「あ~、井戸で田んぼを潤す一族の人なんだな、と(笑)」

——でも、「過去なんて去った過ちでしかない」って、ちょっとカッコいいセリフですね。金八先生が言いそうでもあるけど。

小沢「金八先生っていうか、ゴルゴ(松本)さんが、少年院の慰問の授業で言いそうなやつだね(笑)」

——実際、今回の映画のテーマも、まさにそういうことでしたよね。

小沢「この映画ってさ、パッと見では、戦争の是非を問う映画だと思われるかもしれないんだけど、それだけじゃなくて、人生の理不尽さとの向き合い方の映画なんだよね。ドクの息子の死には実はものすごく理不尽な真実があったし、彼ら3人も、それぞれの人生で理不尽な目に遭ってきてる。そういう理不尽にどう向き合うか、どう強がってみせるか、という映画で。すごくいい作品だった」

——いいセリフの宝庫でしたしね。

小沢「たぶん30年後ぐらいになると思うんだけどさ、俺のお葬式のときには、会場でこの映画を流しといてよ(笑)」

小沢さんプロフ

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