もしかして見逃してない? 実は意外と奥深い『ピーターラビット』の世界
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もしかして見逃してない? 実は意外と奥深い『ピーターラビット』の世界

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 映画アドバイザーのミヤザキタケルさんが、オススメの作品を1本ご紹介するのと同時に、その映画に合う作品をもう1本ご紹介する連載「シネマ・マリアージュ」。つまり<これを観てから、これを観るとさらに楽しめる>というコンセプトのもと、組み合わせの良い2作品を皆様にお届けさせていただきます! 今回はシリーズ作品をご紹介する特別編として、ビアトリクス・ポターの名作絵本を実写映画化した『ピーターラビット』と『ピーターラビット2/バーナバスの誘惑』をマリアージュ。

文=ミヤザキタケル @takeru0720

 組み合わせの良い2作品をお届けする本コーナーにおいて、組み合わせが良いに決まっているであろうシリーズものを紹介するのはご法度なのかもしれません。が、コメディタッチの装いをしていながらも、実は骨太で奥深いテーマを宿した本作。シリーズものゆえの連なりに注目してほしいのではなく、根底に宿るテーマが地続き、かつ深化している点に注目していただきたい『ピーターラビット』2作を、“あえて”セットでご紹介します。

『ピーターラビット』(※3/21(月・祝)後7:15、ほかリピート放送あり)
『ピーターラビット2/バーナバスの誘惑』(※初回放送 3/21(月・祝)後9:00、以降リピート放送あり)

『ピーターラビット』('18)

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子どもも大人も楽しめる! 不朽の名作絵本を実写化

 全世界で発行部数2億5,000万部を超えるビアトリクス・ポターの同名絵本を、映画『ANNIE/アニー』('14)などを手掛けたウィル・グラック監督が実写映画化。イギリスの湖水地方で仲間や妹たちと楽しく暮らすピーターラビット(声:ジェームズ・コーデン)。近所に住む画家のビア(ローズ・バーン)とも良き関係を築き、幸せな日々が続いていくかと思いきや、大都会ロンドンから潔癖症で動物嫌いのマグレガー(ドーナル・グリーソン)が引っ越してきたことで、ピーターの生活は一変! 今までの幸せを守りたいピーターと、あの手この手で動物たちを追い払おうとするマグレガーとの争いは次第にエスカレートしていき…。

 全世界で興行収入3億ドルを超える大ヒットを記録し、キャラクター発祥の地となるイギリスでは『リメンバー・ミー』('17)の興行成績を上回り、同年のNo.1ファミリー映画の座を獲得した本作。原作絵本に触れたことのない人であっても、「ピーターラビット」という名称だけならば聞き覚えがあったり、愛らしいうさぎのイラストに見覚えがあると思う。とはいえ、人によっては「ピーターラビット」という理由だけで、観る対象から外したり、子ども向けの作品だと思っていないだろうか(かく言う僕がそうでした)。しかし、かわいいうさぎたちのお気楽な物語だと思っていると、きっと痛い目に遭いますよ!(これまた、僕がそうでした)

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ピーターとマグレガーの報復合戦、それはまるで戦争映画のよう

 互いに相手を追い払おうと、何度も何度も衝突を繰り返すピーターとマグレガー。彼らのコミカルなやり取りが笑いを誘う場面が多々あるため、気軽に楽しむこともできる本作ですが、物語の根底で扱っているものは非常に重い。衝突していく両者の姿を通して垣間見えてくるもの、それは戦争映画の類いで見えてくるものと遜色ない。そもそも、かつてピーターらの父親がマグレガーの大叔父に捕らえられパイにされて(殺されて)おり、つまるところ、マグレガーの血筋はピーターらにとって親の敵といっても過言ではない。そう、彼らには大きな因縁がある。その辺りは色濃く描かれているわけではないが、無関係とも言い切れない要素の一つである。

 やられたらやり返し、やり返されたら再びやり返す。そんな報復の連鎖が行き着く先は、どちらかが潰えるか、和解の道を模索するか、2つに一つ。だが、そう簡単に後者は選べない。誰だって自分が勝利者でありたいのだから。そうして泥沼の殺し合いにまで発展していってしまうことを、僕たちは数多の歴史や今ある現実を通して知っている。ピーターとマグレガーの対立も、やがて大惨事を招き寄せることになる。その果てに彼らが行なう選択を、ぜひご自分の目と心で見届けていただきたい。

 見た目はキュートながらも、やんちゃで豪快なピーターラビットのように、本作もまた、ポスタービジュアルや予告編の映像だけでは読み取ることのできない魅力が宿っている。子どもが観て楽しめる作りになってはいるものの、実は大人にこそ強く響く要素もふんだんに盛り込まれている力作です。

『ピーターラビット2/バーナバスの誘惑』('21)

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モフカワからモフワルへ! 悪の道へ足を踏み入れるピーターラビット?!

 前作から3年。ピーターは結婚したビアとマグレガーの2人と、“家族”として仲良く暮らすはずが、父親気取りのマグレガーに叱られ続け、イライラの毎日。「あんなヤツ、父親じゃない! こんな生活ウンザリだ!」と湖水地方を飛び出したピーターは、父親の親友だったと語るバーナバス(声:レニー・ジェームズ)と出会う。都会でタフに生き抜くバーナバスに父親の面影を感じ、彼と行動を共にするピーター。だが、人間に恨みを抱くバーナバスは、仲間を集めて人間への復讐の機会をうかがっていた…。

 報復合戦の呪縛から抜け出し、ある意味、戦後の日常から始まる本作。戦争が終わったからといって「めでたしめでたし」ということはなく、この現実同様、戦争が終わろうと、戦争へと至る火種はあちこちでくすぶり続けており、平穏な日常を維持していくためには努力が必要。言うなれば、前作が憎しみの連鎖に囚われてしまう人の心、憎しみの連鎖を断ち切るための希望を描いた作品なら、本作は、平穏な日々の中であっても生じ得る不和や誤解、無数に存在する争いの火種、どうしたら人は大切なものを見極められるのかといった、前作から地続き、かつ深化したテーマが扱われている。無論、表面的には面白おかしく、誰が観ても楽しめる作りなのは今回も変わりませんが、根底に宿るドラマも同様、変わらず重厚なのです。

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今この瞬間を見つめ直すことで見えてくるもの

 身近な人や大切な人とでさえ、些細なことで分かり合えなくなってしまう僕たち。そんな時、甘い言葉を投げかけられたら、ついつい楽な方へ流されてしまいがち。前作を経て和解へ至るも、相変わらずもめてばかりのピーターとマグレガー。結婚するも、本の出版を巡り少しずつズレが生じていくマグレガーとビア。2人が結ばれたことで、自分たちの居場所や立ち位置に不安を覚えるピーター。そんなピーターに付け込むバーナバスなど、日常の中で生じるさまざまな不和や誤解が物語を大きく動かしていく。家族・恋人・友人だからといって、何でも分かり合えるとは限らない。苦楽を共にしていく中でこそ関係性は育まれていくもの。その過渡期にあるからこそ、彼らは迷い、疑い、間違える。

 バーナバスらと行動を共にするピーター。出版社のリクエスト通りに売れる作品作りを始めるビア。そんな2人の変化をくみ取れず、多くを取りこぼしていくマグレガー。これまで知らなかった世界や価値観に触れていく中で、視野が広がり人生が変化していくことがある。それがプラスに働くかマイナスに働くかは人それぞれだが、新たな世界や価値観に触れるということは、良くも悪くも、これまでの日常やつながりを見つめ直す機会でもある。当たり前だと思っていたことが実はそうではなかったと気が付けるチャンス。一度離れたことで多くを見つめ直し、自分にとって本当に価値あるものが何なのかを見定めていくピーターたちの姿は、人生を送っていく上で大切な物事をあなたに示してくれると思います。

 あれこれ堅苦しいことを書きましたが、基本的には2作とも気軽に楽しめる作品です。根底に宿るテーマが骨太だからこそ、より深く思いを巡らせられる余地のある作品に仕上がっています。お子様と一緒に楽しく観るのもアリ、ひとりでしっかりかみ締めるのもアリ、どう楽しむかはあなた次第! ぜひセットでお楽しみください。

ミヤザキさんプロフ20210917~

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クレジット
『ピーターラビット』:(c) 2018 Columbia Pictures Industries, Inc., 2.0 Entertainment Financing, LLC and MRC II Distribution Company L.P. All Rights Reserved. | PETER RABBIT and all associated characters TM & (c) Frederick Warne & Co Limited.
『ピーターラビット2/バーナバスの誘惑』:(c) 2021 Columbia Pictures Industries, Inc., 2.0 Entertainment Borrower, LLC and MRC II Distribution Company L.P. All Rights Reserved.

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