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タイプの異なる3本、 皆さんが気になるのは? 2月のWOWOW初放送映画 厳選3作品

 映画アドバイザーのミヤザキタケルが、各月の初放送作品の中から見逃してほしくないオススメの3作品をピックアップしてご紹介! これを読めばあなたのWOWOWライフがより一層充実したものになること間違いなし!のはず...。

文=ミヤザキタケル @takeru0720

 今月は、ホラー、ドラマ、ミステリーとタイプの異なる、2019年に製作された3本の作品を紹介します。

『ミッドサマー』(’19)

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監督の失恋体験から生まれた恐怖と狂気と狂乱の白昼夢

 『ヘレディタリー/継承』(’18)で鮮烈な長編映画デビューを果たしたアリ・アスター監督最新作。不慮の事故で家族を失ったダニー(フローレンス・ピュー)が、民俗学を研究する恋人クリスチャン(ジャック・レイナー)や友人たちとスウェーデンの奥地にあるコミューンを訪れ、90年に1度開催される夏至祭に参加する。だが、太陽が沈むことのない楽園のように思えたその場所は、次第にその本性をあらわにしていく…。

 既存のホラー映画とは一線を画する唯一無二の世界観と圧倒的な恐怖を描き、ハリウッドで今「最も組みたいクリエイター」のひとりとして注目されているアリ・アスター。そんな彼が新たに生み出した本作は、前作『ヘレディタリー~』に負けず劣らずの恐怖を宿しているものの、自身の失恋体験をもとに生み出したというのだから驚きだ。その辺りを意識した上で、ダニーとクリスチャンの関係性に追っていけば、ホラー映画として楽しみながら(恐れおののきながら)も、関係が破綻しつつあるカップルを描いた異色の恋愛映画としても受け止めることができるかもしれない。

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 「虎穴に入らずんば虎子を得ず」「郷に入れば郷に従え」、そういった姿勢が大切な時もあるが、その姿勢を逆手に取られた事態が続き、知らず知らずのうちに翻弄され、危険な方へと自ら歩みを進める登場人物たち。もしその場所がスウェーデンの閉鎖されたコミューンでなければ、結果は違っていたのかもしれない。平常時のダニーらなら、抜け出すすべが、あらがう手段があったかもしれない。だが、それらを手放さざるを得ない領域に自ら足を踏み入れてしまったのがこの物語。

 ネタバレは避けたいので物語の細部には触れないが、劇中で巻き起こる奇妙な出来事の数々は、選別作業のようなものであったと思う。異なる価値観や文化や風習を前にして、それらを受け入れられる度量や適性があるのかどうか。不測の事態に陥った時、取り乱して自分本位な行動を取ってしまうのか、周囲の様子や状況をうかがうことができるのか。オセロのごとく、挟まれた時には同じ色に染まるのか。それらを見極めるための過程を、そこに付随する心の機微や変化を、“心の色”が裏返った時に垣間見える希望や絶望を、あなたは目の当たりにすることになるだろう。そして、どの立ち位置で物語を捉えるか次第で、ハッピーエンドにもバッドエンドにも変わっていく驚愕のラストがあなたを待っている。


『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(’19)

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世界的ベストセラー小説を新たな視点で映画化

 ルイーザ・メイ・オルコットの自叙伝的小説「若草物語」を、『レディ・バード』(’17)で監督を務めたグレタ・ガーウィグと、主演のシアーシャ・ローナンが再タッグを組み映画化。ローナン演じる作家を志す次女ジョーを主人公に、19世紀のアメリカを生きる4姉妹それぞれの生き方を、性別によって多くが決められてしまう当時の現実を、それにあらがおうと懸命に生きる姿を、過去の出来事を織り交ぜた人間ドラマを通して映し出す。

 ジョーの回想で物語が進んでいく本作。姉妹それぞれが、何かしらの壁にぶつかっている現在とは違い、明るく可能性に満ちあふれ、幸福な時間を過ごしていたように思える彼女たちの過去。大人になれば、かつて親が担ってくれていた数々の責任が自らにのしかかる。自分という人間の限界も見えてくる。時代故の、性別故の生きづらさや行き詰まりにも直面する。そうして少女時代に所持していたはずの“希望”は次々とついえていく。そうなれば、親に守られていたあの頃に、社会や世の中の仕組みに取り込まれる以前の身軽さに、無限の可能性を見いだせていた過去にすがってしまいたくなる瞬間もあると思う。

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 ただ、過去に救いを求めても苦しみは増す一方。かつて過ごした時間は、二度と戻ってこない。時間の流れや変化を止めることなど誰にもできない。だからといって、過去を捨て去る必要もない。何より、どうあがいたところで過去は手放せない。かつて過ごした時間と今ある現実は地続きでしかなく、今この瞬間の状況を生み出してきたのも自分自身。肝心なのは、どのように過去と向き合うか、どのように経験として己の力に変換していけるか。気付けていないだけで、その過程にはより良き未来を築いていくための種が宿っている。

 今はまだ過去の輝きに匹敵せずとも、その可能性を宿した芽はきっと育まれているに違いない。それらを自覚できれば、道はおのずと切り開かれる。過去はより良き未来を歩んでいくための指針であるのだということを、彼女たち4姉妹の葛藤が、後悔が、一歩踏み出そうとする勇気が示してくれる。

 彼女たちが生きた時代と、僕たちが生きる現代とを比べれば、間違いなく今この時代の方が選択肢は多い。だが、劇中で垣間見える数多の理不尽、その名残は、現代でも残っている。終盤において原作にはない場面が描かれるのだが、そこにこそ幾度も映像化されてきた「若草物語」を再び映画化することの意義が宿っていたように思えてならない。


『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』(’19)

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先読み不可能? この謎があなたに解けるか!?

 『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(’17)のライアン・ジョンソン監督作。癖のある私立探偵ブランを「007」シリーズのダニエル・クレイグが演じ、脇を固める俳優陣もクリス・エヴァンス、マイケル・シャノン、クリストファー・プラマーら超豪華! 莫大な資産を抱える世界的ミステリー作家の死を巡り、匿名で調査依頼を受けたブランが、それぞれに秘密や確執を抱える家族・看護師・家政婦らの複雑な人間関係に切り込み、真相へと迫っていくノンストップ・ミステリー。

 ミステリー作家の不可解な死、何かしら仕掛けがありそうな大きな屋敷、匿名の人物からの調査依頼…。無数の要素が絶妙に絡み合い、あなたの心は真実を追い求めずにはいられない。随所に張り巡らされた伏線を、真実へと到達するためのヒントを見落としてはならないと、全集中の状態で物語を追っていくことになるだろう。

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 だが、どれだけ目を光らせようと、本作のストーリー展開は読み切れない。読めたつもりが全く見当違いの方向へと話は進み、「なるほど、そういうパターンね!」と思った矢先、これまた予想だにしない方向へと流れ、終始翻弄されてしまう。しかし、トリッキーな描写の数々は確実につながっており、観終わる頃には筋立ての完成度の高さを、第92回アカデミー賞脚本賞にノミネートされるだけの理由を実感させられる。もしも初見ですべてを見破ることができたのなら、あなたこそ名探偵!

 犯人捜しの面白さ、予想外の展開のオンパレード、巧妙な伏線回収といった謎解きの面白さにとどまらず、臆することなく真実と対峙するためには正しくあろうとする心が必要なのだということを、本来人間とはそうあるべきなのだということを、生きていく上で大切な心の姿勢を、本作は教えてくれる。いわゆるジャンル映画でありながらも、奥深いドラマと巧みなギミックを見事に両立させた骨太な作品です。

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 深い人間ドラマを宿し、世界的にも高い評価を得ている3作品とともに、2月も素敵なWOWOWライフをお過ごしください。

ミヤザキさんプロフ

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クレジット
『ミッドサマー』:©2019 A24 FILMS LLC. All Rights Reserved.
『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』:©2019 Columbia Pictures Industries, Inc., Monarchy Enterprises S.a r.l. and Regency Entertainment (USA), Inc. All Rights Reserved.
『ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密』:Knives Out © 2019 Lions Gate Films Inc. and MRC II Distribution Company LP. Artwork & Supplementary Materials (C) 2020 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

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