『はちどり』『ある画家の数奇な運命』『ワンダーウーマン 1984』―9月のWOWOW初放送映画 厳選3作品
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『はちどり』『ある画家の数奇な運命』『ワンダーウーマン 1984』―9月のWOWOW初放送映画 厳選3作品

 映画アドバイザーのミヤザキタケルが、各月の初放送作品の中から見逃してほしくないオススメの3作品をピックアップしてご紹介! これを読めばあなたのWOWOWライフがより一層充実したものになること間違いなし!のはず...。

文=ミヤザキタケル @takeru0720

 今月は、繊細な人間ドラマ、美術界の巨匠の半生、アメコミ映画と、タイプの異なる3本の作品を紹介します。

『はちどり』('18)

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韓国で大ヒットを記録した青春映画

 釜山国際映画祭、ベルリン国際映画祭など、世界各国で50を超える映画賞を受賞し、韓国で大ヒットを記録したキム・ボラ監督の長編映画監督デビュー作。1994年、ソウル。家族と集合団地で暮らす14歳の少女ウニ(パク・ジフ)は、家でも学校でも居場所を見いだせず孤独な思いを抱えていた。そんなある日、塾の教師ヨンジ(キム・セビョク)と出会い、自身の話に耳を傾けてくれる彼女の存在が少しずつウニを変えていくことになるのだが…。

 韓国において、単館公開規模ながらも公開1カ月で12万人を超える観客動員数を記録した本作。キム・ボラ監督が自身の10代の頃の体験をベースに、4年もの歳月をかけて作り上げた脚本は、『パラサイト 半地下の家族』('19)を抑え、韓国最大の映画の祭典、第40回青龍映画賞で最優秀脚本賞を受賞。現在より男性優位な社会であった90年代の韓国を舞台に、10代故のきらめきや危うさ、家族や友人との関係性、親の愛を欲する子どもの心、子どもでもいられず大人にも成り切れないもどかしさなど、少女のはかない心模様を繊細に映し出す。

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 ウニが直面する出来事と、14歳の頃のあなたが直面した出来事には乖離(かいり)があるかもしれない。だが、彼女が抱える葛藤に関しては身に覚えがある人もいると思う。自分が生きるこの世界のことも、人付き合いの何たるかも、家族を養い生活していくことの大変さも、ましてや自分自身のことさえも、大して分かっていなかった10代のあの頃。大人になった今、当時を振り返れば、何が正解であるのかたやすく導き出せたりもするが、あの頃の僕たちにはそれが難しかった。一人で勝手に期待しては傷つき、自分で自分に振り回され、道をさまよい続けるウニ。本作を観る人は、そんな彼女の姿を目にしていく中で、あの頃の自分、人間関係、抱いていた悩みや夢など、多くの懐かしい記憶がよみがえってくるだろう。

  ヨンジとの出会いを経て、親の愛や家族のつながりを実感し、自分という人間の在り方を、この社会や世の中との関わり方を徐々に見据えていくウニ。たとえ今がどんな状況であれ、彼女と似たような時間を歩んできたからこそ今の自分があるのだと、つらいことや悲しいことを知っているからこそ、人は喜びをかみ締められるのだと、少女が大人へと成長していく過渡期の一瞬、14歳という限られた時間を通して、今の自分を肯定し、ここに至るまでのすべての出会いや出来事に感謝する希少な時間を得られると思います。

『ある画家の数奇な運命』('18)

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美術界の巨匠ゲルハルト・リヒターの半生を描いた感動の物語

善き人のためのソナタ』('06)のフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督作。現代美術界の巨匠ゲルハルト・リヒターの半生をモデルに描く人間ドラマ。ナチス政権下のドイツで幼い頃から芸術に親しんできたクルト(トム・シリング)は、終戦後に美術学校で出会ったエリー(パウラ・ベーア)と恋に落ち結婚するも、彼女の父親はクルトの叔母を死へと追い込んだ元ナチス高官だった。その事実に気付かぬまま時が流れ、時代のうねりに翻弄されながらも創作に没頭していくクルトだったが…。

 ゲルハルト・リヒターの半生を下敷きにした本作だが、あくまでも“モデル”であって、リヒターの半生を忠実に描いているわけではない。映画化に際しリヒターが出した条件。それは、「人物の名前は変えて、何が事実か事実でないかは、互いに絶対に明かさない」というもの。その条件であればこそ、目にする者の想像力を大いに刺激し、事実をありのまま伝えるだけでは生じ得ぬプラスαが生み出される。結果、本作の観客は一層作品世界へと没入することができる。

 示された選択肢を選ぶこと。僕たちの人生はその連続ではないだろうか。本作でいえば、ナチス党員になる道とならない道、目の前にある命を助ける道と助けない道、分断された東ドイツで暮らす道と西ドイツで暮らす道など、絶えず選択が続く。しかし、示された選択肢だけでは望む道を歩めないこともある。最も困難で最も価値ある選択とは、まだそこに存在しない選択肢を創出すること。そこにこそ、まだ見ぬ何かを手にするチャンスが詰まっている。愛するエリーや相いれぬ彼女の父親との関係性が複雑な中、画家の道を歩むクルトの人生が、道を切り開き、道なき道を歩むことの難しさと意義を示していく。

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 現実をただ現実と受け止めているだけでは限界があり、必ず壁にブチ当たる。限界を越えるためには、想像力が必要不可欠。本作は、想像力の源泉が何たるかを映し出す。戦争映画の要素もあれば、恋愛映画の要素もあり、少年が大人となり夢や人生に向き合っていく壮大な物語。190分にも及ぶ長尺な作品ですが、至福の3時間となることをお約束します。

『ワンダーウーマン 1984』('20)

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初心者でも入りやすい! 人気アメコミ・ヒーロー映画

 DCコミックスの人気女性キャラクターをガル・ガドット主演で実写映画化した『ワンダーウーマン』('17)の続編。前作から66年がたち、米国の一般社会に溶け込み博物館で働きながら平和を守っている“ワンダーウーマン”ことダイアナ(ガル・ガドット)は、人々の願いを叶える不思議な石の存在を知る。石油会社の経営者マックス(ペドロ・パスカル)の手に石が渡り、悪用されるのを阻止すべく行動を開始するダイアナの前に、存在するはずのないかつての恋人スティーブ(クリス・パイン)が現れる。

 昨今アメコミを原作とするヒーロー映画が日本でも大ヒットしており、本作も数あるDCコミックスの実写化の一つ。同シリーズを未見の方はこう思うに違いない。他のDCコミックスの実写映画を観ていないと理解できないのではないかと。安心してください。本作を楽しむために必要なのは、『ワンダーウーマン』第1作のみ(こちらも今月放送)。『ワンダーウーマン』2作を観る上で、バットマンやスーパーマンなどが登場する他の作品は観ていなくても大丈夫。もし2作を楽しむことができたのなら、「他の作品にも手を出すか」くらいのスタンスで問題なし。むしろ、作品内における時系列的にはその方が正しい見方かもしれません。

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「恋をすると魔法が使えなくなる」。どこかの作品で目にしたことがあるような描写を彷彿とさせるかのごとく、本来存在しないはずのかつての恋人と再会したことによって、ヒーローとしての力が弱まり苦戦を強いられるダイアナ。弱体化した状態でどのように敵と戦うのか、力を取り戻すことはできるのか、かつての恋人とどうなってしまうのか。それらが見どころとなってくる本作であるが、冒頭において綴られる彼女の幼少時代において、歩むべき道筋は既に示されていた。

「真実はひとつだけ」「恥ずべきは真実を知りながら目を背けること」「嘘からは決して真の英雄は生まれない」。冒頭で語られるこれらの言葉こそが本作における真理であり、正しく道を歩むことができるかどうかが物語の鍵となってくる。自身の願いを優先するのか、自身に課せられた使命を優先するのか。ダイアナのみならず、劇中の他の人物にも僕たち自身にも、その問いが投げ掛けられる。間違いと認識しながらもやってしまっていること、何が正しいか分かっているにもかかわらず選べないこと、生きていれば誰にでも訪れるそんな葛藤や選択を主軸にした戦いであるからこそ、単なるヒーロー映画として終わることなく、あなたの胸を打つものが宿っています。

 それぞれに描き方は大いに異なれど、生きていく上での指針のようなものを示してくれる3作品とともに、9月も素敵なWOWOWライフをお過ごしください。

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クレジット
『はちどり』:(C)2018 EPIPHANY FILMS,All Rights Reserved
『ある画家の数奇な運命』:(C)2018 PERGAMON FILM GMBH & CO. KG / WIEDEMANN & BERG FILM GMBH & CO. KG
『ワンダーウーマン 1984』:(C) 2020 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC

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