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映画好きの皆さんの気になる作品は? 3月のWOWOW初放送映画 厳選3作品

 映画アドバイザーのミヤザキタケルが、各月の初放送作品の中から見逃してほしくないオススメの3作品をピックアップしてご紹介! これを読めばあなたのWOWOWライフがより一層充実したものになること間違いなし!のはず...。

文=ミヤザキタケル @takeru0720

 今月は、人気俳優の監督作、実話、リメイク作と、それぞれ毛色の異なる3本の作品を紹介します。

『ある船頭の話』(’19)

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オダギリジョー、長編初監督作品

 俳優業のみならず、『バナナの皮』(’03)、『さくらな人たち』(’09)など、独特な世界観の短編作品を生み出してきたオダギリジョー初の長編監督作品。近代化とともに橋の建設が進む山間の村を舞台に、船頭として渡し舟をこぐ日々を送るトイチ(柄本明)が、川を流れてきた身寄りのない少女を助け、生活を共にするのだが、訪れるさまざまな変化の荒波が、次第にトイチの人生を大きく変えていく。

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 主演作はもちろん、脇役であろうと確かな存在感を発揮し、多くの映画ファンをとりこにしてきた俳優オダギリジョー。だが、彼はもともと映画監督志望だった。米・カリフォルニア州立大学フレズノ校に留学し、監督コースを希望していたものの、入学願書を書き間違えたために俳優の道を歩んだという逸話がある。

 彼は『さくらな人たち』以来長らく監督業は中断していたのだが、『宵闇真珠』(’17)への出演をきっかけに、同作の監督でありウォン・カーウァイ作品の撮影監督としても名高いクリストファー・ドイルにバックアップを約束され、再び監督としての道を歩み出すことに。

 衣装デザインにはアカデミー賞受賞経験を持つデザイナー、ワダエミ。音楽にはアルメニア出身の大物ジャズ・ミュージシャン、ティグラン・ハマシアン。海外でも精力的に活動してきたオダギリジョーだからこそ結集した豪華スタッフとともに本作は作り上げられた。

 肝心の中身も抜かりはない。穏やかな時も、荒々しい時もあるのが川であり、人生の在り方もまた同様。そして、一方向に流れる川のように、寄る年波にも、移りゆく時代や価値観の変化にも、人間はあらがえない。他者を追い抜くことや出し抜くことばかりにとらわれてしまいがちな現代社会を生きる僕たちでは気が付きにくい大事なことを、時にゆったり、時に激しく、時に丁寧に、時に不可思議に本作は映し出し、僕たちに今一度おのれを見つめ直す機会を与えてくれる。

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 橋の建設によって不要になる船頭という存在に限らず、人知れず表舞台から消えていくものがこの世界には無数にある。役目を終えたり、廃れた文化や価値観が、時の流れとともに再評価されたり、そのアナログさに“エモさ”を見いだされ、ブームになることもあるが、それはほんの一握り。ほとんどは廃れたら廃れたまま、一生日の目を見ることはない。

 そんな消えゆく宿命を背負わされた男の姿が、あなたの心を大いに揺さぶり、監督・オダギリジョーの魅力を存分に味わうことができる作品だと思います。


『スキャンダル』(’19)

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全米を騒がせたセクシャルハラスメント騒動を描いた実話

 シャーリーズ・セロン、ニコール・キッドマン、マーゴット・ロビーら豪華俳優陣の出演で、2016年に起きた米TV局FOXニュースのセクシャルハラスメント騒動の顛末を綴る実話ベースの物語。首を言い渡されたベテラン・キャスターが、FOXニュースのCEOを告発したことを機に騒然としていく局内、それぞれの思惑や葛藤を映し出す。本作で特殊メイクを手掛けた日本出身のカズ・ヒロが、第92回アカデミー賞で2度目のメイク・ヘアスタイリング賞を受賞したことも話題に。
 
 誰もが正しくありたいと願いながらも、結果として、真逆の道を歩んでいることがある。もしくは、正しい道を歩んでいたつもりが、自覚なく道を踏み外してしまっていたなんてこともあるだろう。また、長い人生において、正しさだけでは生きられないことを、時に正しさにはリスクが伴うことを思い知る時がやって来る。それは正しさを手放した者の言い訳に過ぎないのかもしれないが、そういった状況に追い込まれてしまうことが、生きていれば誰にだって訪れる可能性がある。実際に起きた事件の内幕ものであるが、作品の本質は誰にでも共通する心の問題。

 物語序盤、大統領就任前のドナルド・トランプと、シャーリーズ・セロン演じるニュース・キャスター、メーガン・ケリーとの衝突がそれなりの尺を使って描かれる。それにはもちろん意味がある。トランプの日常的な女性蔑視発言や罵詈(ばり)雑言ツイートに反論するも、メーガンに協力する者は少なく、加勢する者も現われない。結局はトランプにとって都合の良い手打ちになってしまう。

 そこで示されていたのは、誰だって負け戦には参加したがらないということ。多くの人が属している側に身を置きたいということ。つまりは、一矢報いるための明確な方法や、周囲に勝ち戦であることを示せるだけの材料なくして、正しさは貫き難いということ。その道理と失敗例を序盤で示した後に描かれる告発だからこそ、多くの対比が生まれていくのと同時に、正しさを貫くことの難しさと必要性を痛感することができるはず。

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 劇中のケリーのように声を上げられず、理不尽な目に遭いながらも耐え忍んでいる人の方が、立場や権力を利用して理不尽を強いている人の方が、世の中圧倒的に多い。だからこそ、この作品を警鐘として受け止めなければならない。大げさに聞こえるかもしれないが、今この時代を、この社会を生きていく上で知っておくべき事実と人間模様がここにはある。


『サスペリア』(’18)

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伝説の傑作ホラーを再構築した狂気の作品

 『君の名前で僕を呼んで』(’17)のルカ・グァダニーノ監督が、ダリオ・アルジェント監督のホラー映画『サスペリア』(’77)を独自の視点で再構築。レディオヘッドのトム・ヨークが音楽監督を、「フィフティ・シェイズ」シリーズのダコタ・ジョンソンが主演を務め、ティルダ・スウィントン、クロエ・グレース・モレッツらが共演。

1977年、西ベルリン。世界的に有名な舞踊団に入団するためアメリカからやって来たスージー(ジョンソン)は、団員と生活を共にしながらレッスンに励んでいくものの、不可解な出来事が頻発し、やがて舞踊団に隠された秘密に直面する。

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 いわゆるお化け屋敷的な、瞬間的にハッとさせられるタイプの恐怖とは異なり、数多の人間模様を通して精神的にじわじわと追い詰めてくるタイプの恐怖を宿す本作。「ホラーは苦手!」という人もいると思うが、本作はあくまでも人間ドラマ。人間に宿る狂気などを軸に展開する作品であるため、勇気を出して触れてみてほしい。

 また、オリジナル版未見であっても楽しめる点も安心していただきたい。とはいえ、少々難解である本作。恐怖に耐え抜くメンタルより、描かれていることをくみ取る想像力の方が大切になってくる。そこで、ここでは物語を読み解くためのヒントのようなものを紹介できればと思います。

 ベルリンの壁が象徴するように、人は何かしらの壁に直面するもの。物理的な壁もあれば、目には見えない精神的な壁もあり、劇中におけるテロやハイジャックは前者で、舞踏団を巡る奇妙な人間模様は後者。二つの壁を提示しながら、後者の壁を突破しようとあらがう者たちの姿に特化した作品と思えば、感じられるものがきっと増えてくる。

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 人は神じゃない。どれだけ力を追い求めても、人間には限界がある。越えられない壁が無数に存在し、人が人の領域から抜け出そうとすれば、扱い切れぬ力の渦にのみ込まれてしまう。その境界線を突破すべく、どのような力を行使しても息切れを起こすことのない完全無欠の器を作り出し、何色にでも染まることのできるけがれのない純粋な魂を舞踏団が追い求めていたのだとすれば、多くのことに合点がいくし、怪しい儀式の全貌も見えてくるはず。あなたの心は一体どこまでたどり着くことができるだろう。

 さまざまな境地へと至らせてくれる3作品とともに、3月も素敵なWOWOWライフをお過ごしください。

ミヤザキさんプロフ

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クレジット
『ある船頭の話』:©2019「ある船頭の話」製作委員会
『スキャンダル(2019)』:©2020 Lions Gate Entertainment INC.All Rights Reserved. ©2020 LUCITE DESK LLC AND LIONS GATE FILMS INC. ALL RIGHTS RESERVED.
『サスペリア(2018)』:© 2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC All Rights Reserved

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