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『TENET テネット』は2回以上見てこそ、作品の奥深さを実感できる。その“見るべきポイント”とは?<※ネタバレあり>

映画アドバイザーのミヤザキタケルさんが、オススメの作品を1本ご紹介するのと同時に、その映画に合う作品をもう1本ご紹介する連載「シネマ・マリアージュ」。いつも2本の作品を「マリアージュ」する連載ですが、今回は異例の、『TENET テネット』1作品。1回見ただけではそのすべてを理解することが極めて困難とされる本作を、“2回以上見る”ことを前提とした、同一作品のマリアージュでお届け。

文=ミヤザキタケル @takeru0720

『TENET テネット』(’20) ※1回目

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クリストファー・ノーラン最新作は、分からなくても面白い!

 『ダークナイト』(’08)、『インセプション』(’10)、『インターステラー』(’14)などを手掛けてきた鬼才クリストファー・ノーラン監督最新作『TENET テネット』。ジョン・デヴィッド・ワシントン演じる“名もなき男”が、「その言葉の使い方次第で、未来が決まる」といわれる謎のキーワード“TENET”を使い、第3次世界大戦を防ぐべく“時間の逆行”を用いた任務へと身を投じていくアクション・サスペンス。

 クリストファー・ノーランは、1970年7月30日生まれの現在50歳。映画好きであれば、誰もがその名を一度は耳にしたことがあるだろう。彼の作品には、高確率で付きまとう一つの要素がある。それは、極めて難解な作品であるということだ。近年の作品では『インセプション』や『インターステラー』などはまさに難解そのものであり、それを紐解き、作品を観た後に「あーでもないこーでもない」と考えたり議論したりする時間が、ノーラン作品を楽しむ上での醍醐味(だいごみ)と言っても過言ではないだろう。そして、その道理は本作においても変わらない。「誰も見たことのないものを見せたい」とノーランが語る通り、過去最高に難解な作品へと仕上がっている。

 断言しよう。初見で『TENET テネット』のすべてを理解することは困難であると。2回目の鑑賞によって伏線の数々や細かな描写にようやく気付き、初見において曖昧であった物語の輪郭がくっきりと見えてくる。「2回以上見ないと理解できない映画なんてナンセンス」と思うなかれ。本作は2回以上見ることにこそ価値があり、作品の奥深さを実感できる。その果てに、初見では到達することのかなわなかった物語の向こう側へと足を踏み入れることが可能になる。

 初見においては全てを理解しようと思わなくて大丈夫。理解できないことを不安に思わなくてもOK。ウクライナ、ムンバイ、ロンドン、アマルフィ、タリンなどの美しい景色、世界を股にかけて描かれる“名もなき男”のミッション、本物の飛行機を使用しての爆破シーン、ド派手なアクションのオンパレード、逆行が生み出す未知の映像体験など、まずは画面に映し出される映像をそのまま受け入れ、純粋に楽しんでいただきたい。例え理解が追い付かずとも、十分楽しめるはず。気負うことなく、気楽に鑑賞するのが初見における最も重要なポイントなのだ。

『TENET テネット』※2回目

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※ここからは、2回目の鑑賞をより有意義なものにするべく、作品理解を深めるための要素を紹介していきます(ネタバレもあるため、1度鑑賞してから読むことを推奨いたします)


オペラハウスで“名もなき男”を助けた存在

 冒頭のオペラハウスにて、“名もなき男”の窮地を救った正体不明の人物。その正体は、後に“名もなき男”と行動を共にする人物であり、洞窟内の鉄格子の向こうで倒れていた人物であり、“名もなき男”をかばって撃たれる人物。つまりニール(ロバート・パティンソン)のことだが、そのつながりを示すのが、彼のバッグに付けられていたキーホルダー。

 作品世界に入り込んだばかりの初見の段階でキーホルダーに着目しておけというのは無理な話ですが(海に飛び込む女性に憧れていたというエリザベス・デビッキ扮する“キャット”の話も同様)、オペラハウスのシーンにおいてしっかりとキーホルダーを映し出すカットがある。“名もなき男”とニールの関係性を把握した上で再び目にするオペラハウスのシーンは、初見で目にした時とは大いに印象が変わって見えることだろう。

未来から迫り来る敵の目的

 「祖父殺しのパラドックスは起きない」。劇中のその言葉を信用するならば、過去において何を変えようと、未来に影響は及ばない。つまり、武器商人のセイター(ケネス・ブラナー)を代行者として暗躍する未来人の目的は、未来においてアルゴリズムを起動させ、時間の流れを逆転させること。自然破壊や環境汚染によって地球が人の住めない環境になるのが目前に迫り、未来人は別の惑星に新天地を見いだすわけではなく、過去の地球に希望を見いだした。

 現状の逆行ではマスクの着用が必須であり、日常生活を送っていくのは至難の業。しかし、アルゴリズムを用いることで時間の流れを逆転させることさえできれば、すべての問題は解決する。逆に順行していた側がマスクを用いなければならなくなり、何の備えもできていない人々は死滅し、未来人にすべてが奪われる。その意図に反し、自分のため、死にゆくわが身とすべての人類を道連れにするべく、プルトニウムを起動させようとしていたのがセイターである。

ニールがたどった道筋を理解する

 ある意味、本作を理解する上で一番厄介なのが、ニールがたどった道筋を正しく理解することだろう。未来から逆行して現代にやってきた彼が初めて“名もなき男”と遭遇したのがオペラハウスであり、任務中にアルコールを飲まないことなどを認識していたムンバイでの出会いからは、“名もなき男”と基本的に行動を共にしていくことになる。だが、スタルスク12での挟撃作戦から一気にニールの道筋は複雑になっていく。順行で攻める“名もなき男”たちとは異なり、逆行で攻めるニール。洞窟の入口に爆弾が仕掛けられていたことを察知した彼は、“名もなき男”たちを救うべく、急遽スタルスク12にある回転ドアを使用して順行に切り替える。しかし、危機を知らせようとするも間に合わず、爆発の際に名もなき男たちをロープで引き上げることを選択する。そこで一つの疑問が浮かび上がる。鉄格子の向こう側で倒れていた人物は、“名もなき男”を救った人物は誰なのか…?

 それは、ロープで“名もなき男”を救った後に、再び逆行したニールである。「起きたことは仕方がない」と語っていた彼が、その言葉を体現するかのごとく、自らの運命を受け入れた末路である。順行と逆行が複雑に絡み合うシーンのため、初見での理解は難しいと思われるが、2回目の鑑賞であればついて行くことは可能なはず。

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ニールに関するある噂とは…

 ある意味、本作におけるもうひとりの主人公とも言えるニール。あくまでも考察の域の話だが、彼の素性に関してある噂がささやかれている。彼が未来人であり、未来の“名もなき男”とつながりを持つ人物であることは劇中でも明かされているが、彼がセイターと“キャット”の息子のマックスなのではないか、という噂があるのだ。ニールがエストニア語を話すシーンがあり、セイターもまたエストニア語を話せる点。そして、マックスという名は略称で、フルネームは恐らくマクシミリアン。フランス語の表記ではMaximilien。後ろの4文字を“逆行”させると…。

 公式から明確なアナウンスが出されているわけではないので、信じるか信じないかはあなた次第。本編を見終えてもなお、深読みの余地がいくらでも残されているのが本作最大の魅力。一度その沼にはまってしまえば、永久に思考を巡らせることができるだろう。

 1回目で理解が及ばなくても大丈夫。確認・答え合わせ・新発見と、さまざまな楽しみが秘められた2回目以降の鑑賞は、きっとあなたの心を満たしてくれるはず。ノーランでなければ生み出すことのできない未知の映画体験があなたを待っています。是非2回1セットでご覧ください。

ミヤザキさんプロフ

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