【12月の激レア映画!】東野圭吾の傑作ミステリー「容疑者Xの献身」の韓国版映画作品や、韓国で歴史的大ヒットを記録した『シュリ』はじめ、廃盤・未ソフト化など貴重な映画を“レア度”とともにご紹介!
文=飯塚克味
直木賞を受賞した東野圭吾の傑作ミステリー「容疑者Xの献身」を、韓国に舞台を置き換えて映画化
①[廃版]『容疑者X 天才数学者のアリバイ』
レア度…★★★☆☆
最初はソフトが[廃盤]になっている作品『容疑者X 天才数学者のアリバイ』(’12)です。韓国でも大人気の作家・東野圭吾。日本のみならず、韓国でもたくさんの作品が映画化、ドラマ化されています。日本では福山雅治主演でドラマが始まった「ガリレオ」(’07)ですが、2008年には最初の映画版『容疑者Xの献身』が公開され、大ヒットしました。そしてその4年後、韓国でも新たに作られた映画が本作です。TVドラマの土台がないので、キャラクターたちはかなり整理され、見やすい作りになっているのが特徴です。ラストの終わり方も日本版とは違うので、ぜひ、見比べて楽しんでいただきたいと思います。
『シンデレラ(2015)』のL・ジェームズが恋に悩むヒロインに扮したロマンティックコメディ
➁[未ソフト化]『きっと、それは愛じゃない』
レア度…★★★☆☆
次は[未ソフト化]の作品『きっと、それは愛じゃない』(’12)です。ドキュメンタリーを作っている女性監督ゾーイが、幼なじみで医師のカズがお見合い結婚をすることになったと知り、次の取材相手に選ぶ。だが取材を進めるうちに自分の本当の気持ちに気付いていく、という王道のラブストーリーです。主演は『シンデレラ』(’15)のリリー・ジェームズ。ソフトにならないのが、もったいないほど幸せな気分になれる一作です。
現代韓国映画界きっての名匠、イ・チャンドン監督作4作品が4Kレストア版で登場!
続いては[4Kレストア]で生まれ変わった作品です。韓国映画好きであればイ・チャンドンの名前は聞いたことがあるはずです。鋭い切り口で現代韓国を描き、単なる感動作では済まない衝撃作を何本も作ってきた人物です。2002年には、韓国文化観光部の長官に就任したことも話題になりました。2023年の夏、そのイ・チャンドンの作品が一斉に4Kレストアされて上映された『イ・チャンドン レトロスペクティブ4K』というイベントがあったのですが、その時に上映された高画質版がWOWOWでご覧いただけることになりました。
イ・チャンドン映画監督デビュー作!第18回青龍映画賞の作品賞、監督賞をはじめ、数多くの映画賞を受賞した秀作
③[4Kレストア版]『グリーンフィッシュ』
レア度…★★★★☆
まずは監督デビュー作の『グリーンフィッシュ』(’97)。主演のハン・ソッキュはWOWOWでは医療ドラマ「浪漫ドクター キム・サブ」(’16~)でおなじみですが、彼が出世作『八月のクリスマス』(’98)『シュリ』(’99)の直前に出演した作品です。兵役を終えて、帰京した青年マクトンが、列車で知り合った女性を通じて、ヤクザの世界に足を踏み入れ、やがて後戻りできなくなっていきます。地方都市が舞台ですが、どんどん開発が進み、昔の風景が消えていく要素も、ドラマに大きく絡んできます。ソン・ガンホもチンピラ役で出演していますよ。
第59回ヴェネチア国際映画祭をはじめ世界中で絶賛を浴びた秀作ラブストーリー
④[4Kレストア版]『オアシス』
レア度…★★★☆☆
続いて『オアシス』(’02)は『ペパーミント・キャンディー』(‘99)に続いて、イ・チャンドン監督がソル・ギョングと組んだ作品です。出所したばかりの青年ジョンドゥが、脳性麻痺を患い、家に閉じ込められている女性コンジュと知り合い、深い関係になっていきます。しかし周囲からはそう見えず、やがて悲劇が2人を襲います。コンジュの想像の世界がとても美しく描かれ、忘れられない映画体験を約束してくれます。
チョン・ドヨンが魂の救済を求めて苦しむヒロイン役を鮮烈に演じ、第60回カンヌ国際映画祭女優賞に輝いた秀作
⑤[4Kレストア版]『シークレット・サンシャイン』
レア度…★★★★☆
『シークレット・サンシャイン』(’07)は、チョン・ドヨンとソン・ガンホを主演に配した骨太なドラマ作品です。夫を事故で亡くし、ソウルからミリャン(密陽)に、幼い一人息子と引っ越してきたシネ。車の修理がきっかけで知り合ったジョンチャンら、親切な仲間もでき、新たな生活が始まるが、息子が誘拐され殺害されてしまう。どん底に落とされたシネはキリスト教に救いを見いだしていきます。信仰は本当に人を救えるのか?という難題に挑んだ作品になっています。
第63回カンヌ国際映画祭脚本賞ほか多くの賞に輝いた感動のヒューマンドラマ
⑥[4Kレストア版]『ポエトリー アグネスの詩』
レア度…★★★☆☆
最後の『ポエトリー アグネスの詩』(‘10)では、60代半ばでアルツハイマーの初期症状が出始めた女性が、町の文化センターで見かけた詩の教室に通うようになり、今までと違った視点で物事を見つめるようになっていきます。でも出稼ぎに行った娘に代わって、一人で育てている孫が、女子中学生の自殺に関わっていたと知らされてしまいます。人生、思い通りにいかないことを痛烈に訴えかけ、それでも生きていく主人公の姿に胸が熱くなること必至です。
イ・チャンドンの作品はどれも重いテーマを取り上げ、一筋縄ではいかない複雑な人間模様を正面から描いています。そのため、1作品の重量が半端なく、見終えた後はおなかいっぱいになってしまいますが、しばらくするとまた観たくなる不思議な魅力に満ちています。ぜひ、臆することなくこれらの作品をご覧いただけたらと思います。
後に『ダークナイト』(‘08)や『オッペンハイマー』(‘23)を放つクリストファー・ノーラン監督によるサスペンス
⑦[HDレストア版]『フォロウィング』
レア度…★★★★☆
続いては[HDレストア]の作品『フォロウィング』(‘99)です。本作は『メメント』(‘00)の公開時、日本でも劇場公開されたクリストファー・ノーラン監督のデビュー作。スランプの作家が、ネタ探しのため、他人の後をつけるようになったところ、思わぬ犯罪に巻き込まれていく。16ミリ撮影のモノクロ、スタンダード作品だが、決してチープになっていないのが、さすがノーラン。今回はオリジナル素材を4Kスキャンし、レストアを行なっている。劇場でもリバイバル公開されたが、フィルムの粒子感を活かした質感がすばらしいので、ぜひチェックしてみてください。
鬼才ロマン・ポランスキー監督による心理サスペンス
⑧[デジタルリマスター版]『死と処女』
レア度…★★★☆☆
こちらも[デジタルリマスター版]の作品『死と処女』(’94)です。『ローズマリーの赤ちゃん』(’68)のロマン・ポランスキー監督、1994年の作品です。この時期のポランスキー作品はハリソン・フォード主演の『フランティック』(’88)、ピーター・コヨーテ主演の『赤い航路』(’92)など、人間が過去に犯した罪や見えない内面に迫ったサスペンス・スリラーをどんどん作っていました。本作では過去に拷問を受けた女性が、政治体制が変わった国で、拷問した人物に復讐するという内容になっています。映画だと思わなければ、とても正視できない内容なので、かなり好き嫌いが分かれるはずです。しかしシガーニー・ウィーヴァーのすごみは誰にでも感じてもらえると思うので、自分としては一度は観てもらいたい作品ですね。
韓国で『タイタニック』を超える大ヒット!サスペンス、ロマンス、南北分断の悲劇を絡めた、興奮と感動の傑作
⑨[4Kデジタルリマスター版]『シュリ』
レア度…★★★★☆
こちらは[4Kデジタルリマスター版]で放送される『シュリ』(’99)です。公開時、あらゆる意味で韓国映画史を塗り替えたというのは、大げさでも何でもありません。北朝鮮の女性工作員と、韓国の情報部員の激しい対立を描く内容ですが、それまでの韓国映画というと、アート系に寄った時代劇やコメディが中心で、誰もアクションやサスペンスでハリウッド大作に立ち向かおうとはしていませんでした。でも本作のカン・ジェギュ監督は、優れた俳優とスタッフを集め、海外に負けない作品を本気で作り上げたのです。結果は空前の大ヒット。日本でも大規模な上映が行なわれました。出演しているハン・ソッキュ、ソン・ガンホ、チェ・ミンシク、キム・ユンジンがいずれも大スターに成長していることも特筆すべきことでしょう。未見の方は絶対ご覧ください!
次回、1月号激レア映画もレアな映画が盛りだくさんです。
どうぞお楽しみに!
▼WOWOW公式noteでは、皆さんの新しい発見や作品との出会いにつながる情報を発信しています。ぜひフォローしてみてください。
トップ画像(クレジット)/『シュリ』:©SAMSUNG ENTERTAINMENT