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12月のWOWOW初放送映画 厳選3作品

映画アドバイザーのミヤザキタケルが、各月の初放送作品の中から見逃してほしくないオススメの3作品をピックアップしてご紹介! これを読めばあなたのWOWOWライフがより一層充実したものになること間違いなし! のはず...。

文=ミヤザキタケル @takeru0720

 今月は、胸打つ人間ドラマ・心臓バクバクの極限スリル・有名俳優の監督作と、タイプの異なる3本の作品を紹介します。

『恋人たち(2015)』

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ままならない人生を生きていく

 『ハッシュ!』(’01)、『ぐるりのこと。』(’08)など、発表作品は少ないながらも、国内外で高い評価を得ている橋口亮輔監督作。ワークショップで選出された3人の俳優を主演に、妻を通り魔に殺された男性、同性愛者の弁護士、夫やしゅうとめと暮らす主婦、三者三様の人生を、彼らが耐え難い現実を前にしながらもひたむきに生きていくさまを映し出す。

 程度の差はあれど、誰だって何かしら抱えながら生きている。理不尽な目にも遭っているだろうし、忘れることのできない記憶の一つや二つあると思う。時にはそんな出来事が立て続けに起きて、ひどく心が荒んでしまうことだってあるだろう。

 でも、それらすべてを抱えたまま、僕たちは滞りなく日々を生きていかなければならない。恵まれた環境にでも身を置いていない限り、立ち止まり続けることは許されない。どんなに無慈悲な現実であろうと、生きていくためには前を向かなければならないのだから。

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 親しい間柄の人がいれば、いたわってもらうこともあるだろう。だが、自分の人生に責任を持てるのは自分だけ。他人が何もかもを解決してくれることなどあり得ない。無論、何の接点もなく、うわべのつながりしかないような相手は、こちらの事情など知る由もない。状況次第では、なぜ自分だけがこんな目に遭うのかと、怒りや悲しみ、絶望に心が捕らわれてしまうこともあるだろう。

 もしも今、生きるのがつらい、逃げ出したい、何もかも投げ出したいと思っているのなら、どうかこの作品を観てほしい。懸命に日々を生きる3人の男女の姿を目にすれば、きっと気が付けるはず。皆同じなのだと、苦しんでいるのは自分だけではないのだと、誰もが必死に今この瞬間を生きているのだと。

 心がニュートラルな状態であれば、そんなこと言われずとも分かり切っていると思うが、心が追い詰められている時には、そんな余裕すらありはしない。他人の存在が疎ましく思えたり、他人の喜びがねたましく思えたり、とにかく視野が狭くなる。自分に向けられた善意すらないがしろにしてしまう。ある意味、今ある自分(人によってはかつての自分)の状態を客観的に測ることができる作品といっても過言ではない。

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 本作が心に響いたのなら、WOWOWで放送される『二十才の微熱』(’93)や『渚のシンドバッド』(’95)など、ほかの橋口監督作にもぜひ触れてみてほしい。本作同様、きっとあなたの心を包み込み、人生を生きていく上での希望を、光のようなものを分け与えてくれるはずだから。


『エスケープ・ルーム(2019)』

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これぞ本当のリアル型脱出ゲーム!

 米国でスマッシュ・ヒットを記録し、続編の製作も決定しているシチュエーション・スリラー。賞金1万ドルに釣られ、死ぬこと以外の途中退場が許されない命懸けのゲームに参加することになった6人の男女のサバイバルを通し、極限のスリルが味わえる。

 ある目的のために集められた男女、死を伴うゲーム、極限状態に追い込まれあらわになっていく本性、終盤で明らかになる真実など、おそらく誰もが一度は目にしたことがある世界観や設定、ストーリー展開の本作。とはいえ、この系統の作品には一定の需要があるものだし、常にアップデートを繰り返してきているジャンルといってもよい。

 だが、本作に限っては既視感を抱かせることなく、新鮮な面白さを生み出せているように思う。その最大の要因は、若者を中心に流行っているリアル型脱出ゲームの存在が大きい。あたかも自分が7人目の登場人物として劇中の謎を解き明かし、ゲームに参加しているかのような感覚を得ることができる。アメリカの映画批評サイト、ロッテントマトでの評価は低めだが、興行的には成功を収め、続編の製作まで決まっているのは、日本のみならず海外でも人気を博すリアル型脱出ゲームに熱中する若い層を引き込むことができたからに他ならない。

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 ある程度映画慣れしている人なら、やはりストーリー展開は読めてしまう部分もあるが、その展開に至るまでの過程が、とにかくスリリング! むしろハラハラし過ぎて心臓に悪いレベル。各ステージに施されたギミックが登場人物たちの心を徐々に追い詰め、次第にあらわになっていく人間の本質。一見コテコテのB級映画でありながらも、描くべきことはしっかりと描いている。人間の嫌な部分や愚かしい部分が顔を出し始めていくことで、観る者の心に突き付けられるものもあると思う。

 リアル型脱出ゲームに無縁な人にとっては、受け入れ難い部分もあるかもしれませんが、何かを疑似体験することに快感を覚える人ならば、きっと本作を楽しめる。ちなみに、僕はリアル型脱出ゲームの経験はありませんが、大いに楽しめた側の人間です。あなたの場合はどうでしょう。

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『マザーレス・ブルックリン』(’19)

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エドワード・ノートンによるアメリカン・ノワール

 全米批評家協会賞、ゴールド・ダガー賞を受賞したジョナサン・レサム原作の小説を、エドワード・ノートン監督&製作&脚本&主演で映画化。1957年のニューヨークを舞台に、障害がありつつも超人的な記憶能力を持つ探偵ライオネル(エドワード・ノートン)が、殺害された恩人フランク(ブルース・ウィリス)の死の真相を探る。きっかけ一つでいかようにも変わっていく人生の在り方を描いた作品です。

 誰だって何かしら取りえはある。それが金を稼ぐことや人を魅了することに直結するとは限らないが、何か一つくらいはあると思う。でも、世の中は無条件に相手の良いところをくみ取ろうとはしてくれない。精神神経疾患であるトゥレット症候群による強迫性障害に苦しみながらも、どうにか生活を送るライオネル。彼をばかにする者が多い中、そのずば抜けた記憶能力にフランクだけが気付き、探偵業で彼の取りえを発揮させた。そんな彼らの関係性を目にしていて思った。生きていく上で、僕たちは自らの長所や短所とどう向き合っていくべきなのかと。

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 自身の短所を自覚できているのなら、それを克服するための努力ができる。でも、それだけが正解というわけではない。あえて短所はそのままに、長所をガッツリ伸ばすというやり方だってあると思う。結果、秀でた長所が短所を補うことで帳尻を合わせられる。劇中で描かれるライオネルの姿が、まさに後者。わずかな手掛かりをもとに、最良の理解者であるフランクが殺された理由を探っていく中で、抜きんでた長所が致命的な短所を大いに補い、彼は真実へと近づいていく。きっかけは大切な人の死であったものの、その行動によってライオネルの心に絶対的な自信が芽生えていく。

 そういった心の変化、長所や短所との向き合い方は、今を生きる僕たちにも当てはまる。一朝一夕でどうにかなる問題でもないが、きっかけ一つで僕たちも変わっていけることを、人に宿りし無限の可能性を、ひとりの男の生きざまを通してこの作品は示している。

 自らの実人生と重ね合わせることで、より深く没入できる3作品とともに、12月も素敵なWOWOWライフをお過ごしください。

ミヤザキさんプロフ

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クレジット
『恋人たち(2015)』:©松竹ブロードキャスティング/アーク・フィルムズ
『エスケープ・ルーム(2019)』:©2019 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved.
『マザーレス・ブルックリン』:© 2019 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

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