小山薫堂×信濃八太郎が10周年を迎える「W座からの招待状」への想いを語る。
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小山薫堂×信濃八太郎が10周年を迎える「W座からの招待状」への想いを語る。

 毎週日曜の夜に、“今、もっとも観て欲しい映画との出会い”をお届けしている「W座からの招待状」。映画本編の放送の前後に“案内人”である作家・小山薫堂とイラストレーター・信濃八太郎が作品についてトークを繰り広げながら、小山が「文」を、信濃が「絵」を添えて映画を紹介する番組だ。
 「W座からの招待状」は2011年10月にスタートして今年で10周年を迎える。番組スタートから“案内人”を務める小山と、安西水丸長友啓典に続く3代目のイラストレーターである信濃に、この10年の振り返りと番組への想い、そして、これからのことまでたっぷり聞いた。

取材・文=轟夕起夫 @NetTdrk

この10年間は、もっともっと長い時間に感じるんです。それはとても不思議な感覚(小山)

──WOWOWが映画愛を詰め込んだ、唯一無二の“映画館”「W座からの招待状(以下、「W座」)」、10周年おめでとうございます。まずはお2人の所感をお聞かせください。

小山薫堂(以下、小山)「そもそもこんなにも続くとはまったく想像していなかったですから、信じられないですね、10年もたったということが。この10年間は、自分の中ではもっともっと長い時間に感じるんです。それはとても不思議な感覚ですね。これまで500本近い作品を紹介してきたわけですが、映画は2時間くらいで異次元の世界やいろんな人生を旅できるじゃないですか。そうした映画の世界を何本ものぞいてきたことと、お相手をしてくださっていた安西水丸さん、長友啓典さんが亡くなられたことで、僕の中の“時間の物差し”がその都度大きく変わってしまったような感覚があるんです」

信濃八太郎(以下、信濃)「僕は番組の第1回は一視聴者として観ていたのですが、確か薫堂さんは“招待状”方式には最初は反対していたとおっしゃっていましたよ(笑)」

小山「あ、そんなこと言ってましたか(笑)」

信濃「ええ。観る人に先入観を与えることになるから、本当はこのスタイルはやりたくないと」

小山「いや、確か当初は『映画の予告編みたいなものを作ってほしい』と言われた気がするんですよね。それはそれで、また何か違うかなあと思ったりもして…」

信濃「きっと紆余(うよ)曲折を経て、あのスタイルになったんでしょうね。番組が始まった時に、僕の師匠の安西水丸先生が『映画を観てイラストを描くんだけど、好き勝手に感想を言っていいんだよ。別に褒めなくてもいいんだ』と、うれしそうに話されていたのを昨日のことのように思い出します。まさかその番組を自分がやらせていただく流れになるとは、当時はもちろん1ミリも想像していなくて。声を掛けていただいて、実際に出演するようになってしばらくは無我夢中でしたが、僕にとっては『W座』に携わったことで、随分と人生が変わったなあと自覚しています。毎回いろんなタッチで描くので、自分の絵柄の幅も自然と広がりましたし、観てくださった方から『W座のあの映画の回のようなタッチで』と依頼を頂いたりすることもあるんですよ」

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お酒を飲んでいる時のような、気兼ねのない会話を楽しんでいる自分がいます(信濃)

──昔はテレビの映画番組というと、放送前後に名物解説者が登場しましたが、現在は皆無に等しいです。お2人は希少な“案内人”スタイルでやっていることの意義をどう考えていらっしゃいますか。

小山「世の中には映画評論家や映画の解説を詳しくできる方はたくさんいらっしゃるので、その領域には入らないようにと心掛けています。映画から派生する“雑談”の方が『W座からの招待状』という番組には合ってるんだろうなと。そこは意識していますね。ロジカルな解説をする玄人ではなく、あくまでも映画の素人による“案内人”だからこそ10年間も続いてきたのではないかと」

信濃「ホントそうですよね! 僕はいまだに毎月ガチガチに緊張して収録の場に赴くんですけど、薫堂さんが雑談で気持ちをほぐしてくださるんです。しかもその雑談の幅がめちゃくちゃ広くて、まったく予想もしないところから“弾”が飛んでくる(笑)。立場は“案内人”なのですが、いつの間にかお酒を飲んでいる時のような、気兼ねのない会話を楽しんでいる自分がいます」

小山「僕も同じく会話を楽しんでいます。でも、八太郎さんは僕と違って事前に資料を読み込んできているじゃないですか。あれはまねできません!」

信濃「僕は機転が利かないので、話すネタを準備しないと不安なんですよ。そこはわれながら、真面目だなあと思います(笑)」

──長年“案内人”を務められてきて、映画の見方が変わったということは?

小山「う~ん。僕は“案内人”を通してというよりも、安西水丸さんからの影響を受けていますね。『どんなにつまらない映画でも、ワンカットでも残るものがあればそれでいいんだよ』と話されていたのが強く心に残っていまして。それまでは、つまらないものはあまり観たくない派だったんですよね。時間がもったいないし、ちょっとわがままなスタンスだったんですけど。水丸さんが教えてくださった見方は、映画だけではなく世の中全般においてもとても大切な視点だなと思いますね。自分の好き嫌いを絶対的な盾にするのではなく、嫌いなものだったり苦手なものの中に、少しでも価値を見つけられたら、触れるものすべてが豊かになるわけですから。そういうことを、この10年間で学んだ気がします」

信濃「安西先生がそうおっしゃったのは、ひょっとしたらイラストレーターの職域と重なる部分もあるんじゃないかなと感じますね。例えば、挿絵を依頼された小説に自分の気持ちがうまく乗らなくても、『この作家さんはなぜこういった物語を書いたんだろう?』と考える癖が付いているんです。僕もかれこれ20年以上イラストレーションの仕事を続けていますが、どんなタイプの小説であっても必ず面白いところを見つけ出す職能を身に付けている。自分なりに魅力的にそれを伝えていくのが本の挿絵の役割なので、『W座』でやっていることも似ているかもしれません。でも、ごくごくたまにですが、話に困る映画もありますよね(苦笑)」

小山「あります(笑)。ただし、僕の場合で言うと『面白い映画だからいい言葉が浮かぶ』とは限らなくて、むしろ、いまひとつな作品の方が書きやすかったりするんですよね。そういう映画には余白のようなものがあって、その余白で想像することができる」

──強烈な作家性を有している監督の作品に、文を付けたりイラストを描かれることも多いですよね。

小山「正直すごくやりにくいです(笑)。その監督が海外の方ならば、まだ気は楽ですけれど、国内の監督だったりすると、万が一、『そうじゃないんだよ、俺が言いたいのは』って言われたらつらい(笑)。けれども自分の主張ではなく、作品を観てどう感じたかを文章にしているわけですから、別にそこは何を書いてもいいのだと割り切ってもいます。感想に正解はないはずですから」

信濃「それが映画の良さですよね。以前読んだインタビュー記事で知ったのですが、薫堂さんはこの『W座』の収録当日に4、5本まとめて書かれているんだとか…?」

小山「そうなんです、短期集中で。収録が終わった後は、自分の書いたものに関してはほとんど覚えていません(笑)」

信濃「僕は、『この個性的な作品に対して、薫堂さんはどの辺りに言及されるのかな』と考えながら、映画の中の印象的なシーンを抜き出して描いています。薫堂さんの紡ぎ出す言葉は、入り口はその映画に関することだとしても、いつの間にか全然関係のないような世界をうつろいながら、でも最後はちゃんと薫堂さん自身の言葉になっているところがすごいなあ、と。いつも感動しております」

小山「ありがとうございます…というか、面と向かって褒められると、やっぱり照れますね(笑)」

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もっと気楽に映画と接することのできる場があってもいいのでは(信濃)

──10周年は一つの節目ですが、今後さらにこんな番組にしていきたいなどの抱負はありますか。

小山「もともとシネコンに押される形で、全国的にミニシアターの存在が少しずつ減ってきていたところに、コロナ禍が突然やって来て…。『W座』と親和性のある全国のミニシアターが苦境に立たされているじゃないですか。これからもっとそれが深刻化する可能性がある一方、アナログのレコードが若者の間でも売れているように、またミニシアターが盛り上がる要素はあるように感じてもいるんです。この『W座』が、そのきっかけとなれたらいいなあと。街の魅力的なミニシアターや映画館を訪問する『W座を訪ねて~信濃八太郎が行く~』で八太郎さんも頑張っているのも、そんな想いがあるからですよね?」

信濃「名前を出していただき恐縮です! いつまでたっても僕は、“小山薫堂×安西水丸&長友啓典”の『W座からの招待状』という意識がどこかにあって、自分でどうこうしたいと考えたことはないんです。ただ、薫堂さんが話された通り、鋭い批評を展開する評論家も必要なのですが、『もっと気楽に映画と接することのできる場があってもいいのではないか』と思っていて。日曜夜9時になると、ちょっと変わった映画をやっていて、男2人が何やらしゃべっている。このバランスがいいなと感じています。とにかく日常生活を少しだけ明るくする番組でありたいですね。そして、いろんな街にさまざまな映画館があって文化がある。そんなことも少しずつお伝えしていけたらいいなと思っています」

小山「『W座』10年の間にセレクトされる作品も近年、変わってきましたね。社会問題を追究していても、エンターテインメント性を帯びたものが増えている」

信濃「そうそう、映画館やミニシアターに足しげく通うような、映画好きのご年配層の方と、今の若い世代とをつなげていく懸け橋となる映画も選ばれていますよね。そういうところに『W座からの招待状』のスタッフ陣の意気込みが見て取れます」

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番組が“心の漢方薬”みたいになったらいいな(小山)

──では最後に、視聴者にとって『W座からの招待状』はどういう存在でありたいでしょうか?

小山「少々気取った表現になりますけど、“心の漢方薬”みたいになったらいいなって。サプリならばすぐに効きそうですけれど、漢方薬は飲み続けないと効き目がない。じわ~っと効いてくるような…そういう存在ですね。ちょっと苦味があり、もしかしたら毒気もあるけど飲んでおくと損はしない。きっとプラスになるんじゃないかなあ、人生の」

信濃「さすが、“心の漢方薬”なんて、よくすらっと出てきますね(笑)! でも確かにその通りだと思います。僕は、この10年で映画の在り方が社会の動きを反映して変わってきたように感じています。そうなると映画の変化とともに映画を観ている僕らも変わっていかざるを得ないわけです。つまり社会が変わるから映画も変わって、その映画を観ている2人の感想も変わっていく。その変化を楽しみながら、薫堂さんが言うところの“心の漢方薬”になっていけたらいいですよねえ」

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(左)小山薫堂(こやま・くんどう)=1964年生まれ。放送作家など幅広く活躍。映画『おくりびと』(’08)では脚本賞多数受賞。
(右)信濃八太郎(しなの・はったろう)=1974年生まれ。イラストレーター。大学時代より安西水丸氏に学ぶ。雑誌、書籍、広告等を中心に活動中。

轟夕起夫さんプロフ

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