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映画好きの皆さんの気になる作品は? 1月のWOWOW初放送映画 厳選3作品

 映画アドバイザーのミヤザキタケルが、各月の初放送作品の中から見逃してほしくないオススメの3作品をピックアップしてご紹介! これを読めばあなたのWOWOWライフがより一層充実したものになること間違いなし!のはず...。

文=ミヤザキタケル @takeru0720

 今月は、冤罪事件をテーマにした実話・中東の現実に基づいたフィクション・人間関係の難しさを描く芥川賞小説原作と、僕たちが生きる日常に直結した大事なことを映し出す3本の作品を紹介します。

『黒い司法 0%からの奇跡』(’19)

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圧倒的理不尽に抗った勇気の実話

 アメリカの弁護士ブライアン・スティーブンソンの実話を、『ショート・ターム』(’13)のデスティン・ダニエル・クレットン監督、マイケル・B・ジョーダン主演で映画化。黒人差別が根強い1980年代の米・アラバマ州を舞台に、死刑宣告を受けた黒人男性の冤罪を晴らすべく、ジョーダン演じる弁護士のブライアンが不正や差別に立ち向かっていくさまを描いた作品です。

 何が正しくて何が間違っているのか、その分別がついていながらも、ときに人は選択を誤る。周囲の目を気にして、少数に属するのを恐れて、自らの意志をねじ曲げる。正しくありたいと願いながらも、正しさを追い求めた先に絶望や損失しかないと分かれば、その気持ちはたやすく折れてしまう。多くを割り切り、問題から目を背けた方が、円滑にことが運ぶと悟ってしまえば、正しさに固執することもなくなっていく。そう、最後まで正しさを貫き通すためには、勇気や覚悟が必要になってくる。

 圧倒的不利な状況下で、地道に勝利の可能性を探っていくブライアンと仲間たち。途中で心が折れてしまってもおかしくない理不尽な出来事の数々に直面しながらも、希望を捨てることなく追いすがる。現代のモラルで考えればあり得ないことばかり起きるのだが、当時はそのあり得ないことがまかり通っていたのである。

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 それでも屈することなく正義を貫き通したのは、彼らの勇気や覚悟が成し遂げた偉業としか言いようがない。そして、ブライアンたちのような人々の努力があったからこそ、人種差別があってはならないことだと疑わない僕たちの“今”がある。

 あくまでも本作は実話ベースであるから、鑑賞者は誰が正しくて誰が間違っているのか、わかった立場で作品を観る。それ故に、ブライアンたちを全面的に応援できる。しかし、現実はそうじゃない。誰が正しくて誰が間違っているのか、真実がどこにあり、それが冤罪であるのかどうかもそう簡単に見極められない。だからこそ、フィクションではあるが、現実では中々お目にかかれない勇気と覚悟に触れられることに意義がある。

 一朝一夕で身に付けられるものでもないが、彼らの姿勢には学ぶべきものが大いにある。現実という名の壁を乗り越えることが困難な僕たちにとって、貴重な気付きやキッカケを本作は与えてくれる。


『存在のない子供たち』(’18)

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全ての大人が見据えるべき現実

 中東の貧困・移民問題の中でもがき苦しむ子供の姿を描き、第71回カンヌ国際映画祭にて審査員賞、エキュメニカル審査員賞を受賞したナディーン・ラバキー監督作品。学校に通うことなく、朝から晩まで両親に過酷な労働を強いられる12歳の少年ゼイン(ゼイン・アル・ラフィーア)。唯一の支えであった妹が無理矢理結婚させられたことを機に家を飛び出すが、より過酷な現実が彼を待ち受けていた。その果てに、自らを産んだ両親を相手取り裁判を起こすゼインだが…。

 車を運転するのには免許がいる。職種によっては資格が必要なこともある。そう、責任が伴うものには何かしらの縛りがある。しかし、親になるのには免許も資格も必要ない。ある程度の年齢に達し、パートナーがいて、避妊することなくセックスをすれば、子どもを授かることもできるだろう。

 2人の間に愛があって、互いに子どもを望み、養っていけるだけの環境が整っていれば良いのだが、誰もがそれらの条件を満たせるわけではない。人の親になるという“大きな責任”に、無償の愛がなければやり遂げられないことに、何の試験もパスしないまま僕たちは挑戦できてしまう。

 だけど、そんなことは生まれてきた子どもには関係ない。にもかかわらず、最も損害を被ることになるのは子どもの方。どんなに頼りない親でも、親がいないと子どもは生きられない。手を差し伸べてくれる人がいても、他人はもちろん親だって最後まで面倒は見てくれない。一定の年齢に達しなければ一人で生きていくこともままならない。ましてや劇中のような環境にあったのなら、より一層、生きていくことは熾烈を極めていくことになる。

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 本作はフィクションであるものの、リサーチに3年を費やし、監督自身が目撃・経験したことを物語に盛り込んでおり、出演者に関しては役柄に酷似した境遇にある一般人を起用している。つまりは、現実で起きていることと遜色のないものを、映画を用いて描いている。子を持つ親であるのなら、親としての自分を、自分の子どものことを考えずにはいられない。親でなくとも、親になることの責任を、半端な覚悟では子どもを育てられない現実を考えさせられる。


『影裏』(’20)

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水のように変わりゆく人の心の光と影

 第157回芥川賞を受賞した沼田真佑の小説を、「るろうに剣心」シリーズ(‘12~)、『億男』(’18)の大友啓史監督が映画化。会社の転勤で岩手に移り住んだ秋一(綾野剛)が、慣れない土地で出会った同僚の典博(松田龍平)。酒を酌み交わし、釣りをし、日ごとに友情を深めていく2人であったが、突如、典博が行方をくらましてしまう。明らかになっていく典博を巡る事実や揺れ動いていく2人の関係性を通し、水のようにいかようにも形を変える人の心や繋がりを映し出す。

 あなたには「親友」と呼べる人がいるだろうか。いるのなら、一体何をもって「親友」と定義付けているのだろう。付き合いの長さ、分かち合ってきたもの、理屈では推し量ることのできない何かなど、人それぞれに思い浮かぶものがあると思う。無論、それを否定するつもりはない。

 何が言いたいのかというと、劇中に登場する川・雨・海、つまりは水が指し示すように、人の心には常に変化が生じ、定まった形や答えを持たないということ。何かが混じれば色合いや性質は変わり、時に熱く、時に冷たく、ありとあらゆる形に変わっていく。常に変化し続ける互いの心を見極められてこそ、構築できていくものがきっとある。

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 秋一と典博は親友であったのか。そこに確かな友情は築かれていたのか。それは彼らにしか分からない。ただ、2人の姿を通して見えてくるものがある。何でも言い合える関係性がベストなのか、時には言いたいことを我慢することも必要なのか、答えは人それぞれに異なるものだが、自分たちに何が欠けているのかを見極める方法は一つしかない。それは、間違えること。

 なぜならば、人は一度間違えないと大事なことには気が付けない生き物だからだ。時には払拭し難い後悔にさいなまれたり、間違いを糧にするまでに時間を要することもあるけれど、間違いを犯した者にしか目にすることのできない景色や境地がある。そこに達した者だけが得られる強さや優しさもある。

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 もちろん、間違えずに済むのが一番だけれど、間違えない人間なんてひとりもいない。あなたにも心当たりがあると思う。でも、それらを経たからこそ、大事にできることや価値を見出せるものがあると思う。たとえ癒やすことのできない傷を負ったとしても、その傷を負っているからこそ踏み出せる一歩もあるのだということを、この作品は教えてくれる。

 誰もが現実で直面し得る問題を描いた3作品と共に、1月もすてきなWOWOWライフをお過ごしください。

ミヤザキさんプロフ

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クレジット
『黒い司法 0%からの奇跡』:© Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
『存在のない子供たち』:© 2018MoozFilms
『影裏』:©2020「影裏」製作委員会

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