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#エンタメ視聴体験記

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WOWOWの多岐にわたるジャンルの中から、書き手が今見たい作品を見て“視聴体験”を綴る、読んで楽しい新感覚のコラム連載。お笑い芸人の中山功太さんとぼる塾・酒寄希望さんを書き手にお…
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#エンタメ視聴体験記

わからなくても自由に感じればいい― 芸術を知らない僕の魂を揺さぶった衝撃の66分【#エンタメ視聴体験記/中山功太】

文=中山功太  一般的に十二分に大人である44歳になったが、今の今まで芸術という物に能動的に触れた事がなかった。  音楽を聴くのは大好きだが、古いパンクやロックが多い。  古いパンクやロックの人達は、きっと芸術扱いされる事が嫌いだろう。  映画は芸術だろうか? 芸術的な映画は沢山あるだろう。  しかし「これはアートだ」と大風呂敷を広げて柿ピーだけ包んで縛った様なオシャレ映画に興味はない。  今回取り扱う作品「ダムタイプ pH」は今までこのコラムの為に視聴した作品の中で

笑って泣けるゾンビ映画!? 私の創作意欲が増したとっておきの作品【#エンタメ視聴体験記/ぼる塾・酒寄希望】

 ネタや文章を書いていると、たまに不安に襲われます。  これは果たして面白いのか?  世界でこれを面白いと思っているのはわたしだけなのではないか?  そもそもわたしもこれを面白いと思っているのか?  そうなるとどんどん悪い方向に思考が進んでいき、最終的に、  わたしは一体なにがしたいんだ?  全てを見失い、途方に暮れます。  わたしは一体なにがしたいんだ?  目の前は真っ暗です。暗闇です。この状況のときは大変苦しいです。そしてとても怖い。ですが、わたしはこの暗闇か

人は自分の為じゃなくても泣けると僕に教えてくれた、韓国の名作映画で過去イチ号泣【#エンタメ視聴体験記/中山功太】

文=中山功太  ご存知の方もいるかと思うが 「人は自分の為にしか泣けない」という仮説がある。  家族や友人など、大切な人が亡くなった時も「大切な人を失った自分が可哀想だから泣く」のだそうだ。  果たして本当なのだろうか?  「感情以外の涙は違うはずだ」という屁理屈で打ち破るべく検証してみたい。  あくびした時の涙。これは人体の構造上、勝手に流れる涙だ。自分の為に泣いてはいないのではないか?  しかし僕は、単独ライブのネタ作りなどであまりにも眠い時、あくび泣きの後に歯を食

子どもからの愛を一心に受け取る動物のママたち―。母性とともに生まれる、「覚悟」が伝わるドキュメンタリー【#エンタメ視聴体験記/ぼる塾・酒寄希望】

 ゆにばーすのはらさんは私が尊敬する女芸人の先輩です。  ある日、仕事のバス移動でゆにばーすさんと一緒になりました。川瀬さんとはらさんはバスの中でみんなを巻き込みながらずっとコンビでおしゃべりをしていました。  私は仲が良いなと思いながら2人の会話を聞いていました。話はいろんな方向に転がっていき、気が付くと昆虫のハチの話になっていました。  はらさん「ミツバチの戦い方って切ないよね…」  はらさんは圧倒的に自分たちよりも強いスズメバチに対するミツバチの捨て身の攻撃方法を

数限りないタクシーの思い出と優しくて面白い極上の娯楽映画『TAXi』【#エンタメ視聴体験記/中山功太】

文=中山功太  忘れられない言葉がある。  昔、大阪で活動していた頃、先輩の麒麟田村さんが興奮気味にこう述べたのだ。 「タクシーって凄くない? 手挙げたら停まってくれて、乗せてくれるねんで? 優しすぎるやろ?」  田村さんが心優しい方だとはいえ、目から鱗すぎた。  僕には、タクシーが優しいという発想はなかった。 「高倉健さんの写真集のタイトルとは?」という大喜利お題の田村さんの回答「フォト倉健」と共に、今でも脳裏に焼き付いている。  芸人は、実に頻繁にタクシーに乗る

生きる上でのヒントがたくさんちりばめられている―。「Bling-Bang-Bang-Born」に合わせて踊る奇妙なダンスが気になるアニメ【#エンタメ視聴体験記/ぼる塾・酒寄希望】

 文=酒寄希望  私には気になるあの子がいます。初めてあの子を見た時、Creepy Nutsの「Bling-Bang-Bang-Born」に合わせて奇妙なダンスを踊っていました。ユニークなダンスの振り付けとは裏腹にあの子はとても無表情で、  私「君は一体どういう感情?」  私は目が離せなくなりました。それはアニメのOPムービーであの子が恐らく主人公でした。一緒に見ていた 私の息子はあの子のダンスに大ハマりし、  息子「あれ見たい」  と言い、親子で1日に何度も見るよ

“サメ×フランケンシュタイン” “パペット人形とサメの夢のコラボ”―。今夏に観たくなる異色のサメ映画たち【#エンタメ視聴体験記/ぼる塾・酒寄希望】

 文=酒寄希望  こんにちは。ぼる塾の酒寄です。  皆さん、夏がやってきましたね! サメ映画の季節です! 以前、この連載でサメ映画を取り上げたのですが、なんとその後、私の連載と全く関係ないところでぼる塾の田辺さんがサメ映画にハマりました! ちなみに田辺さんがサメ映画にハマったきっかけとなった映画は『MEG ザ・モンスターズ2』です。  田辺さん「あの日の私は何を思ったのか、この映画を映画館に観に行ったの。普段なら絶対にこの手の映画観ないのに。見たらすごく面白かった! 1

THE YELLOW MONKEYは永久に不滅だと、東京ドームで確信した夜【#エンタメ視聴体験記/中山功太】

文=中山功太 <本文でライブのセットリストや具体的な内容に触れています。ご注意ください>  自分にとっての初めてのロックスターは、THE YELLOW MONKEYだった。  高1の頃にカラオケ店のロビーで流れていたライブ映像を観て、一瞬でとりこになった。 本連載の『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』の回でも書かせていただいたが、僕にとってTHE YELLOW MONKEYは特別なバンドであり、唯一無二の存在だ。  2024年4月27日、僕は東京ドームに

いつまでも少年漫画に心惹かれる中年芸人の僕が、傑作アニメを観て思い出す中二の初夏の出来事【#エンタメ視聴体験記/中山功太】

文=中山功太  幼い頃からずっと、少年漫画が大好きだ。  中年実写となった今でも、少年漫画を読んでいる時だけはあの頃の気持ちに戻れる。  4つ歳上の兄の影響もあり、特に週刊少年ジャンプが好きだった。  四半世紀以上も前のことだが僕が中学生の頃、月曜日に発売されるジャンプを土曜日に読める謎のルートを持った、S君という野球部の同級生がいた。  中学二年の初夏。  誰もが楽しみにしていた「DRAGON BALL」の最新話を読んだ彼は、街中を自転車で練り走りながら叫んだ。  「

自分の考える“やさしさ”を、ぬいぐるみのようにすべて受け止めてくれる不思議な映画【#エンタメ視聴体験記/ぼる塾・酒寄希望】

 文=酒寄希望  皆さんこんにちは。ぼる塾の酒寄です。  『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』  私がこの映画のタイトルを見て最初に思ったことは、  私「私って優しいの?」  私はぬいぐるみとしゃべります。私の4歳の息子はぬいぐるみが大好きで、中でも“こねこちゃん”というぬいぐるみは彼の相棒です。  息子「ママ! こねこちゃんやって!」  私は息子にこねこちゃんの声を頼まれ、こねこちゃんとして彼と会話をします。  私「そろそろママとお風呂入ろうね!」  息子

何度でも観たくなるカッコいいシーンが満載!“最強”の韓国アクション映画を芸人の僕が全力でプレゼン!【#エンタメ視聴体験記/中山功太】

文=中山功太  断言してしまうが、男はみな最強が好きである。  幼い頃からおびただしい人数の男と会話をしてきたが、統計学的に見ても間違いない。  「○○しか勝たん」や「○○で優勝してきた」といった日本語の乱れを憂いている僕も、最強だけは大好物だ。  格闘技において「相撲立ち技最強説」という仮説がある。  最強の正しい使い方ではあるが、こんなにロマンに満ちた言葉はそうそう無い。格式高い大相撲こそがバトルにおいても最強である、なんてあまりにも格好良すぎる。  また、Y

一生くだらないことだけ考えて生きていきたい私にとって、映画『少林サッカー』は財産だ。【#エンタメ視聴体験記/ぼる塾・酒寄希望】

 文=酒寄希望  皆さんこんにちは。ぼる塾の酒寄です。    私「一生くだらないことだけを考えて生きていきたい」  私はそう言って、夫の前で本気で泣いたことがあります。そんな私に夫は言いました。  夫「頼むから『少林サッカー』を見てほしい」  夫は言いました。  夫「頼むから『少林サッカー』を見てほしい。吹き替え版で」  私「字幕ではなく?」  夫「吹き替え版で見てほしい。字幕が悪いわけではない。『少林サッカー』の吹き替えが良過ぎる」  夫は言いました。  

ファッション大好きだけどダサい僕をとりこにしたデザイナーたちの華麗なる“デスゲーム”【#エンタメ視聴体験記/中山功太】

文=中山功太  僕にはファッションセンスがない。  おそらく芸人でもトップクラスのダサさだと思う。  僕の事を知って下さっている読者に「いやいや、そんな事ないですよ」と言って欲しいから書いてる訳ではなく、正式にダサい。色や柄の組み合わせもわからないし、流行にも疎い。  面倒臭いからという理由だけで、10年前からパンツの裾直しもやめた。  ではファッションに興味がないのかと言われるとそうではなく、服も靴もめちゃくちゃ好きだ。  多分、オシャレな人と同じぐらいか、それ以上に

人間の心情を丁寧に描くドラマ「三体」は、自分の人生に刻むように視聴する作品【#エンタメ視聴体験記/ぼる塾・酒寄希望】

 文=酒寄希望  皆さんこんにちは。ぼる塾の酒寄です。 衝撃的な作品に出合うと、私はその作品に日常を支配されてしまいます。常にその作品のことを頭で考えてしまい、登場人物のことを、私はその人物の親なのか? というくらい考えてしまいます。  今の私は大変です。今、私は地球に住む人類全員のことを考えています。 そして、今回私が紹介するのは「SF超大作『三体』」です。  ドラマ「三体」は、世界累計発行部数2,900万部超え、20カ国以上の言語で翻訳された世界的大ベストセラー小説