GLAYがコンセプトを定めず自由度の高いパフォーマンスを行なうことを宣言する「HIGHCOMMUNICATIONS TOUR」。全国ツアーファイナルとなる東京ガーデンシアター公演の模様をレポート!
TAKUROいわく、「これまでなかなか日の目を見なかったゴーストのような楽曲」を中心に組んだマニアックなセットリストに、GLAYの底知れぬポテンシャルを思い知らされた一夜
来年でデビュー30周年を迎えるGLAYが6月11日、『HIGHCOMMUNICATIONS TOUR 2023 -The Ghost of GLAY-』の最終公演を東京・ガーデンシアターで開催した。
本ツアーは、今年3月に彼らの地元である北海道・帯広市民文化ホールを皮切りに全国22カ所・32公演にわたって行なわれたもの。TAKURO(Gt)がMCで、「これまでなかなか日の目を見なかった、ゴーストのような楽曲に光を当てたかった」と明かしていたように、彼らのコアなファンをも唸らせるような「隠れた名曲」が、セットリストにずらりと並んだ。
定刻となり、まずは本ツアーに先駆けリリースされた新曲「THE GHOST」でライブはスタート。ステージ前方には紗幕が垂らされ、そこに映し出されたゴーストたちが、マントを纏った4人とシンクロする。この曲での、JIRO(Ba)のスラップベースを基調としたダンサブルなアレンジは、これまでのGLAYにはなかった新機軸といえるものだ。続く「THE FRUSTRATED」も、ソリッドなベースラインが印象的なポストパンク〜デジタルロック調のアレンジ。序盤からチャレンジングな演出を畳み掛け、オーディエンスを魅了していく。
紗幕が上がり、マントを脱ぎ捨てた4人の姿があらわになると、フロアからは歓喜の声が上がる。「嫉妬」「華よ嵐よ」とスリリングな楽曲を畳み掛けたあと、「ついにきたぜファイナル! 暴れる準備はできてるか?」とTERU(Vo)が叫び、ライブでは定番の楽曲「FAME IS DEAD」へ。サビのコール&レスポンスを繰り返すたびに、会場の一体感がグングン増していくのが分かる。HISASHI(Gt)はクルクルと回転しながらエッジの効いたギターサウンドで宙を切り裂き、JIROはヘッドバンキングしながらパンキッシュなダウンピッキングを繰り出す。TAKUROがバズーカ砲でプレゼントを観客に向かって打ち上げるなか、〈TAKUROが欲しい、JIROが欲しい、HISASHIが欲しい、GLAYが欲しい〉とサビの歌詞を替えてTERUが歌うと、早くもフロアは最初のピークを迎えた。
ライブ中盤は、ミドルバラードの「恋」から。空から天使の羽根が降ってくるような幻想的な映像がオーディエンスを魅了する。さらに、ファルセットボイスで歌われる美しいメロディとクラシカルなコード進行が印象的な「氷の翼」、およそ20年ぶりに披露された「CHILDREN IN THE WAR」などメッセージ性の強い楽曲を次々に披露。〈戦場へ続くあの空 君と今見上げてる〉〈友はどこへ行った? 街が全て灰になった… 〉と歌う「CHILDREN IN THE WAR」は2003年の楽曲だが、コロナ禍や戦争が起きた今の時代だからこそ響くものがあった。
TERUとTAKUROがサビをハモる、オールディーズ風味の「pure soul」でノスタルジックな気分に浸るのも束の間。「いつも支えてくれて本当にありがとう!」というTERUのシャウトとともに始まったのは、シングル『HC 2023 episode 1 -THE GHOST/限界突破-』の、もう一つの表題曲「限界突破」だ。タイトル通り、限界を突破したようなド派手なバンドアンサンブルにオーディエンスもハンズアップで応えている。さらに「JUSTICE [FROM] GUILTY」「黒く塗れ!」とロックンロールナンバーを間髪入れずに畳み掛け、フロアのボルテージはグングンと上昇する一方。「これからも一緒に夢を見ていこうぜ!」とTERUが呼びかけ、「BEAUTIFUL DREAMER」が始まった瞬間に、キャノン砲から銀テープが勢いよく噴射された。
本編ラストは「Satellite of love」。曲のエンディングでTERUが、〈繋いだその指を離さないで… どうかお願い…〉とロングビブラートを聞かせると、会場からは割れんばかりの拍手と歓声が巻き起こった。
鳴り止まぬアンコールに応え、4人が再びステージに登場する。サポートメンバーとして長年GLAYのアンサンブルを支えてきたToshi(Dr)と村山☆潤(Key)を紹介したあと、メンバーたちも思い思いの挨拶をする。最後にTERUが、「これからも10年、20年と楽しくやっていきます。皆さんはもう、俺たちの家族のようなものなので、これからもよろしくお願いします」と頭を下げると、温かい拍手が会場を包み込んだ。
アンコールは新曲「Buddy」を披露したあと、「SOUL LOVE」のサビをオーディエンスとともにシンガロング。こうやってみんなで声を一緒に出せるようになったことを、メンバー全員が心から楽しんでいるようだ。「今日はマニアックな選曲ということで、『BEAT out!』から「原色の空<Cloudy Sky>」をやります」と言った瞬間、フロアからどよめきの声が上がる。およそ10年ぶりのお披露目となった、この初期曲を経てツアーのタイトル曲「HIGHCOMMUNICATIONS」を演奏し、この日のライブを締めくくった。
「これまでなかなか日の目を見なかった、ゴーストのような楽曲」を中心に組んだセットリストでも、これだけ見応えのあるライブを行なうGLAY。彼らの底知れぬポテンシャルに改めて唸らされた一夜だった。
文=黒田隆憲
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