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スピードワゴン・小沢さんが「ずっと終わらないでほしい」と思った映画。心を撃ち抜かれたセリフとは?

映画を愛するスピードワゴンの小沢一敬さんが、映画の名セリフを語る連載「このセリフに心撃ち抜かれちゃいました」

毎回、“オザワ・ワールド”全開で語ってくれるこの連載。映画のトークでありながら、ときには音楽談義、ときにはプライベートのエピソードと、話があちらこちらに脱線しながら、気が付けば、今まで考えもしなかった映画の新しい一面が見えくることも。そんな小沢さんが今回ピックアップしたのは、1966年のル・マン24時間耐久レースで絶対王者フェラーリに挑んだフォードの男たちを描いた『フォードvsフェラーリ』('19)。さて、どんな名セリフが飛び出すか?

取材・文=八木賢太郎 @yagi_ken

──今回は『フォードvsフェラーリ』ですが、この映画は初見でしたか?

小沢一敬(以下、小沢)「そう。公開当時は話題になってたけど、観てなかった。俺は実話ベースの作品はあまり観に行かないから。ただ、この映画は実話といっても全然知らない話だったから、十分に楽しめたよ」

──映像の迫力もすごいですからね。

小沢「映画館で観たらもっと楽しめたかもしれないけどね。でも、家のテレビでもその迫力は伝わったし、ストーリーもすごくよくできてたから、始まって何分か経ったときには、『この映画、ずっと終わらないでほしいなぁ』って思ってたもん」

──ちなみに小沢さんは、車はお好きなんですか?

小沢「まあ、普通かな。俺らの世代はみんな車が好きだからね。俺も若い頃はフェアレディZとかのスポーツカーに乗ってたけど、かといって、めちゃくちゃ詳しいわけでもないから、まあ、普通かなと(笑)」

──今は乗ってないんですか?

小沢「そうなんだよね。だから最近、車を買おうかなと思ってたところにこれを観たから、俺もフェラーリを買わなきゃいけないのかなって(笑)」

──買わなくても大丈夫です(笑)

小沢「俺の勝手なイメージなんだけど、みんなに愛される車をつくってたくさん売ってるフォードって、日本でいえばトヨタみたいな感じだし、レースに情熱を捧げてるフェラーリはホンダっぽいじゃん。そういう感じでイメージしながら観るのも楽しかったよね」

──2時間半を超える映画でしたけど、飽きずに楽しめました?

小沢「全然、飽きなかった。最後のレースのシーンだけで40分ぐらいあるんだよね。だけど、その中にも細かい笑いも入ってたりして。いろいろといいシーンがあったよ。それを話すには、いきなり名セリフの話になっちゃうんだけど」

──あ、もう名セリフの話にいきますか?

小沢「まだ早い? 車の映画だけに、もうちょっとアイドリングしたほうがいいかな?(笑)」

──いや、もう小沢さんがエンジンかかってるなら、どうぞ。

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小沢「まず俺が好きだったのは、セリフとしてチョイスするには、ちょっと長いんだけど。夜に息子を乗せて飛行場のテストコースをグルッと走った後に、2人で話すシーンがあったじゃん」

──物語の中盤、伝統のル・マン24時間レースで敵なしの強さを誇るフェラーリを倒すために開発されたフォード・GT40。その開発を任されたカー・デザイナー、キャロル・シェルビー(マット・デイモン)の相棒となる凄腕ドライバーのケン・マイルズ(クリスチャン・ベール)のセリフですね。息子のピーター(ノア・ジュープ)と語り合うシーンです。

小沢「そのときに、息子から『時速240kmでしょ? どんな感じ?』って聞かれたお父さんが、『速度が上がると、すべてがゆっくりになる。視界を狭めるな。遠くを意識する。そうするとすべてが見える』って話しながら、最後にこう言うんだよ。『あそこを見ろ。完璧なラップがある』『それが見えるやつは少ない。そこにあることすら知らない。でも、あるんだよ』。つまり、正解のルートが見えてる人と見えてない人の差、みたいな話なんだけど」

──凡人には見つけられない、誰よりも早く走れるルートが必ずあるんだと。

小沢「そう。これって、ものは違うんだけどさ、ミケランジェロが言ってることと同じなんだよね。ミケランジェロが彫刻について語ってる言葉に、『どんな石の塊も内部に彫像を秘めている。それを発見するのが彫刻家の仕事だ』っていうのがあるのよ」

──お〜、まさに名言ですね。

小沢「まあ、俺もミケランジェロから直接聞いたわけじゃないんだけどさ(笑)」

──だとは思います。

小沢「つまり、ミケランジェロは石の塊を見ただけで誰にも見えない彫刻の完成品が見えるし、本当の天才レーサーは誰にも見えない完璧なルートが見えてる。アートとレースは全然違う世界だけど、究極までいった人は、そうやって同じことを考えるんだろうね」

──小沢さんは、いろんな創作活動の中でそういう境地に至ったことはありますか?

小沢「俺も、たとえば漫才を書くときには、最初になんとなくの全体像はイメージして書き始めるのよ。もちろん、書きながらコースアウトすることも多々あるし、途中で事故ることもあるんだけど(笑)。ただ、本当の正解はどういうものなんだろう? っていうことはいつも悩んでいて。こういうミケランジェロとか天才レーサーの境地までは、まったくたどり着いてないよね」

──まだまだ完璧なラップは出せていないと。

小沢「そうね。この映画の影響を受けて、『俺も負けずにネタを書こう!』と思って書きはじめたんだけど、影響を受けすぎて、スピードを追い求めた結果、漫才が20秒で終わっちゃったから(笑)」

──追い求める方向が間違ってますね(笑)

小沢「でもさ、天才っていうのも、ある意味では偶然の産物なんだよね。だって、何かの才能に秀でていたとしても、それを本当に活かせる職業とか競技に出会えるとは限らないわけじゃん。例えば来世、誰よりも足の速い才能を持って生まれ変わったとしても、俺、間違えて水泳を始めちゃいそうな気がするもん(笑)」

──実際、世の中にはそういう人がたくさんいるでしょうね。

小沢「で、その話がもう一つのセリフの話につながっていくんだけど。今回は、こっちのほうを名セリフとして紹介しようか」

──その名セリフとは、なんでしょう?

小沢「『何をしたいか知ってる者は幸せだ』」


※編集部注
ここから先はネタバレを含みますのでご注意ください。



──シェルビーがフォードの新車発表会のスピーチで、客席で見ているマイルズに語りかけるように言うセリフですね。

小沢「これも正確には長いセリフなんだけど。『何をしたいか知ってる者は幸せだ。仕事が苦にならない。でも、それは一握りの人間です。彼らはすべきことを見つける。それのとりこになり、成功するまでとことん進む』」

──いいセリフですね、これも。

小沢「つまり、やりたいことが分かっているということが、本当の意味での幸せなんだろうと。だから、走るのが速い才能をもってるのに水泳を始めちゃったとしても、それが自分のやりたいことだったなら、たとえ1位になれなくても、とことん突き進めばいいんだと。これって、たぶん誰にでも通じる話で。この映画は、レーサーという仕事の話でもあり、人生の映画でもあるんだよね」

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──成功を目指してとことん進んだマイルズが、最後にはあっけなく亡くなってしまうのは残念でしたけどね。

小沢「あそこで死んじゃうっていうのが、まさに史実なんだよね。神様ってさ、いつもそういう安易な脚本を書くの(笑)。上手な脚本家が書いたシナリオだったら、あんな安易なオチにはできないもん。だけど神様の脚本は、いつも安易で残酷なんだよ」

──実話ベースの作品なので、神様を脚本家として捉えるわけですね。たしかに神様、脚本家としてはイマイチです。

小沢「たとえば、棋士の藤井聡太もフィギュア・スケーターの羽生結弦も、神様の脚本だからあんなに次々と大記録を打ち立てていくけど、もしもあれが漫画とか映画の脚本だったら、『嘘つけ! そんなに上手くいくか!』ってボツにされるよ(笑)。だけど神様だからさ、すごいビッグネームの脚本家だから、誰も逆らえない」

──世界で一番有名な大御所の脚本家ですもんね。

小沢「そうそう。今までにも駄作をいっぱい作ってきてるのに、誰も文句言えないのよ。文句言ったら地獄行きだからね(笑)」

小沢さんプロフ

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クレジット:© 2019 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

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