西野は素敵なやつだし、そんな西野が作ったこの作品も、やっぱり素敵な映画だよ。――『映画 えんとつ町のプペル』を観てスピードワゴン・小沢さんが心撃ち抜かれたセリフとは?
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西野は素敵なやつだし、そんな西野が作ったこの作品も、やっぱり素敵な映画だよ。――『映画 えんとつ町のプペル』を観てスピードワゴン・小沢さんが心撃ち抜かれたセリフとは?

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映画を愛するスピードワゴンの小沢一敬さんが、映画の名セリフを語る連載「このセリフに心撃ち抜かれちゃいました」
毎回、“オザワ・ワールド”全開で語ってくれるこの連載。映画のトークでありながら、ときには音楽談義、ときにはプライベートのエピソードと、話があちらこちらに脱線しながら、気が付けば、今まで考えもしなかった映画の新しい一面が見えてくることも。そんな小沢さんが今回ピックアップしたのは、キングコング・西野亮廣原作の絵本をアニメーション映画化した『映画 えんとつ町のプペル』('20)。さて、どんな名セリフが飛び出すか?

(※初回放送 4/16(土)後1:00、以降リピート放送あり)

取材・文=八木賢太郎 @yagi_ken

──今回は、キングコングの西野亮廣さんが原作、脚本、製作総指揮を務めた『映画 えんとつ町のプペル』ですが、小沢さんは初見だったんですか?

小沢一敬(以下、小沢)「いや、映画館でも観たよ。だから、途中から思い出したの、『あ、これ、めちゃくちゃ泣ける映画だったわ』って。そういえば最初に観たときにも驚いたんだけど、プペル役の声優が窪田正孝君で、ルビッチ役が芦田愛菜ちゃんだって、全然分かんなかったよね。アントニオ役の伊藤沙莉ちゃんとかも」

──たしかに、エンドクレジットを見て、「あ、この人だったんだ」って気付いたキャストが何人もいました。

小沢「すごく豪華なメンバーなんだよね、実は。もちろん、スコップ役の(藤森)慎吾だけはすぐに分かったけどさ(笑)。でも、慎吾も上手だったよ。他の声優さんも全員、すばらしかったし。あとさ、映画を観終わってから、あのエンディングの曲が耳から離れなくなるんだ」

──ロザリーナさんが歌うエンディング主題歌『えんとつ町のプペル』ですね。

小沢「あれも、西野が作った曲なんだよね。いや、西野はすごいよ。こういう言い方をすると、自分がいいやつぶってるみたいになるけど、俺は西野のことがすごい好きだから。この映画についてはいろいろ言う人もいたけど、俺はこの作品を『西野の映画だな』って思ったよ」

──西野さんらしいという意味?

小沢「うん。でも、そういう言い方をされることを西野自身はうれしくないと思うのよ。きっと『そういうのは関係ない』って言うだろうから。とにかくすばらしい作品だから、例えば幼稚園の子どもも観てほしいし、10代の子も観てほしいし。だからといって決して子ども向けなわけじゃなく、大人になって、いろんなことを、理由をつけて諦めてしまった人たちも、観たほうがいいんじゃないかなって思うよ」

──そういうメッセージが込められた作品ですもんね。

小沢「2011年に東日本大震災があったときに、みんながいろんなメッセージを発信したじゃない。『頑張ろう』とか『諦めないで』とか。そんな中で、俺の知り合いの作家の人が、Twitterに『諦めさせない』って書いたの。俺はその言葉が好きでさ。この映画が言いたいことも、たぶんそれに通じることだと思うんだ」

──『諦めないで、頑張って』じゃないってことですよね。

小沢「そう。『頑張って』なんて言わなくても、こっちが頑張ってる姿を見せたら、『負けてらんねえな』とか『あいつがやってるんだから、俺にもできる』って思わせられると。そういう、諦めさせない力を表現した映画だなって。だから好きなんだよね。もちろん、映画としては王道だし、そういうメッセージも決して新しいわけではないから、そこをいろいろ言われるんだろうけど、じゃあ、誰にでもこれが作れるのかって言ったら、作れないと思うからね」

──そういうところが、まさに西野さんぽい、と。

小沢「まあ、西野っぽいって言われるのも困ると思うけどね。西野が作れば、なんでも西野っぽいわけだから。とにかく、西野は素敵なやつだし、そんな西野が作ったこの作品も、やっぱり素敵な映画だよ。この映画のすばらしいところは、ちゃんと子どもが観ても分かるように作ってるとこだよね。それは物語の中身だけじゃなく、画の美しさとかも考えられてるから」

──たしかに、分かりやすさを大事にしてますよね。

小沢「去年の『M-1グランプリ』で錦鯉が優勝したときに思ったことがあって。音楽の世界がこれまでに新しいジャンルに進化してきたのと同じように、漫才も最近ではさまざまな形の進化を遂げてきたんだけど、その中で錦鯉が優勝したのって、『結局はザ・ビートルズが一番伝わる』みたいな話なんだよね。分かりやすいものが結局は一番届くっていうか。もちろん、『べつに届かなくたって、好きでやってるからいいんだよ』っていう思想もあるとは思うけど。この映画に関しては、分かりやすいこと、届きやすいことが魅力のひとつだと思うよね。声優陣がすごく豪華なのも、届かせるきっかけになるし。だからこそ、西野はものすごく本気で取り組んでるなって感じたよ。俺自身は、何をやるにしても本気で取り組まないスタンスでやってるから、やっぱり西野のことを尊敬しちゃうよね(笑)」

──もし西野さんが「届けたい」より、「好きにやりたい」という気持ちの方が強かったら、もっとダークだったり、ちょっとひねった作品になっていた可能性もありますかね?

小沢「そうそう。西野って、実はそっちもできるのよ。こういう“THE王道”じゃないやつも。キングコングの単独ライブなんかでは、そういうネタもやってたし。だけど西野自身は、基本的に『届けたい』っていう気持ちの強い人だから。そういう意味では、ちゃんと届いたんじゃないのかな。興行収入的にも成功してたみたいだし。まあ、西野はスケールのデカい夢を見る男だから、『こんなのは成功とは呼べない』とかって言うかもしれないけどね(笑)」

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──では今回も、そんな素敵な作品の中から小沢さんが一番シビれた名セリフを選んでいただきたいのですが。

小沢「この作品は前にも観てるから、一番好きなセリフは最初から決まってたのよ。いつもこの連載のために映画を観るときは、好きなセリフをメモりながら観るんだけど、今回はセリフをメモりながらも、『あ〜、早くあのセリフが出ねえかな。どうせあのセリフが一番いいんだから。俺はあのセリフの話がしたいんだよ』って思いながら観てた(笑)」

──そのセリフとは?

小沢「俺が一番好きなセリフは、『星が見つかったら、あの日、諦めた自分がバカみたいじゃないか、チクショー!』」

厚い煙に覆われ、空を見上げることを禁じられたえんとつ町で、ただひとり、煙の向こうに“星”があると信じている少年ルビッチ(声:芦田愛菜)。彼は、ゴミから生まれたゴミ人間プペル(声:窪田正孝)と偶然出会い、友達になる。やがてあることをきっかけに、ルビッチはプペルと一緒に星を見つけに行こうと決意。そんな2人の前に、町の治安を守る異端審問官が立ちはだかる。

<※ここから先はネタバレを含みますのでご注意ください>

──ルビッチが星を見つけるために熱気球を付けた船で空に飛び立とうとするとき、それまでルビッチに反発していたはずのいじめっ子のアントニオ(声:伊藤沙莉)が、突然、ルビッチを手助けしながら叫ぶセリフですね。

小沢「『あの日、諦めた自分がバカみたいじゃないか』って言いながら、だけどルビッチを応援するっていう、あそこがすっごい好き。俺は芸歴20年以上になるけど、俺らの同期って、たぶん1,000人ぐらいいたのよ。その中で、俺らはたまたま今も運良く続けられてるけど、同期の中には諦めた人もたくさんいて。彼らに比べて俺らのほうが才能があったかといえば、べつにそんなこともなくてさ。たぶん、俺らは諦めなかったから、今も続けられてるだけなんじゃないかなって。もちろん同世代の中には、まだ世の中には評価されてないけど、諦めないで続けてるやつらもいっぱいいるしね」

──錦鯉なんかも、まさにその中の一組だったわけですしね。

小沢「そう。だからこそ、あのセリフがすごい好きで。一度は諦めたアントニオも、実はずっと信じてたんだよね、星があるって。だからその後に言うんだよ、『大丈夫だ、星はあるよ。俺はこの目で見たんだよ。とっとと確認してこい!』って。あれがいいよね」

──グッとくるとこですね。

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小沢「その一方で、観てて一番苦しくなるのが、プペルがルビッチから言われる、『また臭くなってるじゃないか。毎日、体を洗ってやってるのに、なんですぐに臭くなるんだよ!』ってセリフね。あれは結局、ルビッチがなくしたブレスレットを毎晩、ゴミ山に探しに行ってたことが原因なんだけど。それを知らないルビッチから、『そのせいで嘘つき呼ばわりされたよ。洗っても洗っても臭くなる、君のその体のせいで!』って言われる場面は、もう、吐きそうなほど悲しくなった(笑)」

──責められても言い返せないプペルが、ホントに切ないです。

小沢「『ゴミ人間と一緒にいたのが間違いだった!』って言われて。そういえば、エンディングの曲の歌詞の中に『心優しいゴミ人間』ってフレーズがあるんだけど、あれ、褒めるフリしてディスるという一番恐ろしい高等テクニックだよ。『お前、ホントに心優しいゴミ人間だな』って、褒めてないから(笑)」

──たしかに、すごいキラーワード。

小沢「それ以外にも、今回、観直してみたら、他にもいいセリフがあったね。お父さんのブルーノ(声:立川志の輔)の長セリフは、全部いいよね。『頭の上はモックモク、黒い煙でモックモク』っていう、あのリズムが心地良くて好き。『できない理由を海に捨て、言い訳ご託を海に捨て』って。お母さんのローラ(声:小池栄子)もいいよ。『謝るんじゃないよ、ルビッチ! あんたが、いつ間違ったんだい?』ってやつ。ただ、俺が改めていいなって思ったのが、『下を見るから揺れるんだ、上を見ろ』ってセリフで」

──劇中の大事な場面で、リフレイン的に何度も出てくるセリフですね。

小沢「さっきの諦めた人たちの話じゃないけどさ、やっぱり、生きてく中でも下を見ると、『ここでいいや』って思っちゃうんだよ。揺れるっていうのは、実はハシゴが揺れるんじゃなく、自分の心が揺れるの。『まあ、いいか、ここで』って。だから上を見てなきゃダメだっていう、あのセリフもすごい好きだね」

──なんか、こうやって小沢さんに話してもらったら、それぞれのセリフの良さが余計にグッと染みてきちゃいました。

小沢「いや、俺も久々に観て、やっぱり、すごくいい映画だなって思ったよ。大事なことを忘れてしまいそうなときに、何度でも観直す価値のある映画だよ。映画の中には、娯楽として楽しむ映画がある一方で、何かしらの使命を持って生まれてきた映画もあると思ってて。その映画の存在が、誰かの人生の支えになったり、誰かの背中を押したり。この作品も、そういう使命のある映画の中の一本…とか言うと、『それは言いすぎだ』って西野は怒るかもしれないけど(笑)。でも、俺はそう思ってるよ」

──西野さんとこの作品に対する小沢さんのその熱い想いは、きっと伝わりますよ。

小沢「まあ、俺もどちらかといえば、心優しいゴミ人間だからね(笑)」

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クレジット:(C)西野亮廣/「映画えんとつ町のプペル」製作委員会

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