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気になる本はありますか?「文豪少年! ~ジャニーズJr.で名作を読み解いた~」とセットで読みたい本10選!

WOWOWブッククラブでは、毎月のテーマに沿ったおすすめ番組と関連する本を記事としてまとめ、noteをご覧になるみなさんにお届けしてゆきます。

5月の番組テーマは「文豪少年!」

日本が誇る文豪たちの傑作小説群を、現代的な視点から映像化するオムニバスドラマ『文豪少年!』。各話で主演を務めるのは、ジャニーズJr.の人気ユニット、少年忍者のメンバー12人。

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毎週日曜夜11時、好評放送中!

映像化の原案となるのは、太宰治の「走れメロス」、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」、宮沢賢治の「注文の多い料理店」、夏目漱石の「二百十日」、森鴎外の「高瀬舟」、小泉八雲の「雪女」、江戸川乱歩の「屋根裏の散歩者」、谷崎潤一郎の「秘密」、泉鏡花の「外科室」、夢野久作の「空を飛ぶパラソル」の10作品。 

ブッククラブ部長の幅さんは今回、番組をより楽しんでいただくため、そして番組を通じて知っていただいた「文豪」たちの魅力をさらに味わえるよう、原案となった小説とは異なる、それぞれ10冊の本をセレクトしました。

1冊目:女生徒

太宰治(著)
KADOKAWA

10代の女の子が1日の始まりから終わりまでを、自らの目線で独白する短編です。これが書かれたのは1930年代まで遡りますが、作品としての現代性は高く、映像としてリメイクされるなど、アップデートを繰り返してきました。

朝起きて、鏡で自分の顔を見たときに抱く嫌悪感や、未来に対する期待など、10代の女性特有のナイーブさは現代人も共感を覚えるところです。乙女的な潔癖が象徴的に抜き出され、案外時代性に縛られない普遍的な心持ちが、ぎゅっと凝縮されています。

また、ただの日記と思わせつつも生活の羅列ではなく、「恥」を要所に抜かりなく描いているところには、太宰的な作品としての風味を感じさせられます。

2冊目:蜜柑

芥川龍之介(著)
ちくま文庫

10ページにも満たない、芥川龍之介の超短編です。ある時、憂鬱な気分を抱える男が慌ただしく列車に乗り込んできた少女を目撃し、疎ましく感じるところから物語は始まります。

列車の窓を開けたがる少女ですが、トンネルに差し掛かると車内に煤が入り、男の不快感はピークに達します。しかし、あるきっかけによって男の価値観は大きく変容していき、少女や世界に対する考え方にも変化が訪れます。そんな瞬間をとらえた作品です。

短い文章ですが、瞬間の中における圧倒的な美しさが描かれ、世の中を肯定したくなる価値観が、世界を斜めから見る芥川にも確かに存在していたことを知ってしまうのです。

3冊目:虔十公園林

宮沢賢治(作)、伊藤秀男(絵)
三起商行

宮沢賢治の絵本作品です。いつもあはあはと笑っている「デクノボー」な虔十が、親に杉苗を700本買ってくれと頼みます。

否定的な周囲の声や暴力、そして気の長い杉林を育む作業にめげず、自分の「こうあるべきもの」を無垢に完遂しようとする姿勢と、身を捧げ続ける献身は、まさに宮沢節のそれと言えるでしょう。

木を植えるというアクションがファンタジーと一線を画しており、農業従事者としての宮沢賢治の姿を垣間見ることができます。人の営みと自然の折り合いの付け方、そして人の生死に囚われない木々に流れる時間を、絵本の中で訴えます。

4冊目:趣味の遺伝

夏目漱石(著)
岩波文庫

今作では日露戦争に出兵していた1人の兵士に焦点を当て、帰らぬ人となった男と、彼を想う女性の物語が描かれます。面識はほぼなくとも、お互いに惹かれ合うものがあった彼と女性の関係は、実は祖父母の代における因果まで遡ります。

ミステリー調で推論を立てつつ、徐々にその謎が作中で解き明かされていきます。夏目漱石は知的ユーモアの印象が強い作家ですが、今作は明るいユーモアの裏側に潜む暗さや影といった、根の深い「低音部」がよく出ている作品でもあります。

夏目漱石の厭戦的な価値観、戦場の描写、そして男女の因果の不思議と、非常に多くの要素がうまく混じり合ったお話です。

5冊目:雁

森鴎外(著)
新潮文庫

お玉という純真無垢な女性が結婚に失敗し、一時は自殺も図るがそれもうまくいかず、高利貸しのお妾さんとして暮らすところから物語は始まります。

彼女は、大学生の岡田という男に想いを募らせるのですが、その行方を岡田の友人の目線から描く作品です。岡田が投げた石が、誤って雁にあたってしまうなど、良かれと思ったことが「思惑ちがい」の結果をもたらす様子が象徴的に描かれ、人生や気持ちが見当とは異なる方向へと進む様子が象徴的です。

庶民のお玉とエリートの岡田、という階級の違いや、男女の違いがどんな社会的分断を生み、混じり合うことで思惑に違いが生まれるのかに注目したいところです。

階級やジェンダーを超えて、自分の気持ちに折り合いをつけていく様には、今日では考えられないような慣習を、たくましく乗り越えようとする女性の姿を見ることもできます。

6冊目:耳なし芳一

小泉八雲(著)
講談社学術文庫

ギリシャ生まれのイギリス人であるラフカディオ・ハーンが日本へ帰化し、海外に向けて日本の怪談・奇談を発信すべくまとめた一冊。

日本の文化を愛し、外の目を持った彼が、日本の口頭伝承へどのような面白みを見つけたのかが垣間見える面白さがあります。中でも「耳なし芳一」は、長年多くの人へ語り継がれる理由がわかるほど、完成度の高さが際立つ作品です。

英語圏の読者向けに、文中には細かい地名などの説明が書き加えられているのですが、逆にそれが今の日本人にとってわかりやすく読むための補助として機能しているのも、人気の秘訣と言えるでしょう。

やたら過剰に恐ろしい瞬間を描写しない、淡々とした書き口が、かえって読者の恐怖心を煽っているようにもうかがえます。

7冊目:双生児

江戸川乱歩(著)
角川ホラー文庫

江戸川乱歩は、直接視覚的に訴えるというよりは、人間の心理の中に潜ませる描写が上手な作家です。ある死刑になる男が、懺悔話として打ち明けた双子の話を軸とした物語です。

謎を解く鍵として機能する、「双子」の設定はミステリーの定番ですが、数ある「双子もの」の中でも傑出した作品です。共通項が求められがちな双子の、あえて差異の部分にスポットを当てるという、切り口の転換も見所でしょう。

男の口から語られる、最後のどんでん返しからも目が離せないところです。短い作品でありながら、読み込むごとに湧いて出る面白さに惹きつけられます。

8冊目:刺青

谷崎潤一郎(著)
新潮文庫

谷崎潤一郎のデビュー作です。自然主義文学が席巻していた当時、それとは対照的な谷崎の絢爛豪華、官能的でロマンチックな文体は、当時の文壇に衝撃を与えたことでしょう。

彫り師となった絵描きの清吉が、ある日見つけた美しい脚を持つ女性へ刺青を彫ろうとする物語ですが、刺青が人の心にもたらす衝撃、そして刺青の視覚的な美しさを、見事に文章で描いています。

10ページほどの短い文章でありながら、当時、永井荷風が絶賛したという、谷崎の美的感覚が詰まった作品です。

9冊目: 春昼

泉鏡花(著)
岩波文庫

ふと立ち寄った山寺の住職から語られる、ちょっぴり怖いお話。春のうららかな描写が続くと思えば、たった一文で物語に暗雲が立ちこめてくるという、場面転換の落差が見所の作品です。

単なる恐怖譚にとどまらず、様々な思惑を抱える人間関係にも触れ、激しい場面の落差の中に混じり合う様子に思わず息を呑みます。幻想の上に幻想が重なるという、泉鏡花の怪しくも不可思議で、かつ淡々とした美しい世界観が、ぎゅっと詰まった物語です。

春眠暁を覚えず、という言葉がありますが、春の陽気でついうとうとしてしまう、今の時期に読むとちょうど良い作品ではないでしょうか。

10冊目:少女地獄

夢野久作(著)
角川文庫

「何でも無い」「殺人リレー」「火星の女」の3作を収録した短編集。病的な虚言癖を持つ女性が主人公の「何でも無い」では、彼女の嘘の連鎖がもたらす悲劇の過程が描かれます。

一つの嘘が新しい嘘を呼ぶ負のスパイラルと、出会った男すべてに好意を抱かせてしまう、生来の魔性が混じり合い、やがて抗えない魅力へと昇華していく様には、思わず心を奪われます。

虚構の天才だった女性を描くと同時に、幻想的な作風で知られる小説家の心理も扱うという、ちょっとしたメタ構造の挿入にも注目したいところです。

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