「THE SECOND」出場のあの芸人に見えてきて――尾上松也、安田顕、A.B.C-Z河合郁人らによる吹替版、映画『バッドガイズ(2022)』を観てスピードワゴン・小沢さんが心打ち抜かれたセリフとは?
(※初回放送 6/18(日)後1:00、以降リピート放送あり)
取材・文=八木賢太郎 @yagi_ken
──今回はオオカミ、ヘビ、サメ、ピラニア、クモが集まった怪盗チームが活躍する冒険コメディアニメ『バッドガイズ(2022)』です。
小沢一敬(以下、小沢)「うん、すごく面白かった。まあ、よく言われてることだろうけど、『オーシャンズ11』('01)的であり、ルパン三世的であり。いわゆるクライム・ムービーの要素もあるし、ポップに楽しめるポップコーン・ムービーでもあって、退屈することもなく最後まで楽しめたよ」
──そこかしこに、過去の名作へのオマージュもちりばめられていて。
小沢「そうね。オープニングのシーンなんて『パルプ・フィクション』('94)みたいで。そういうリスペクトが感じられたから、これは間違いなく面白いやつだなって、ワクワクしながら観れた。ただ、ちょうどこの映画を観たのが、俺が『THE SECOND~漫才トーナメント』っていうお笑い賞レースに出た時期だったから、何をやってても頭の中に『THE SECOND』のことがあってさ。だからもう、この“バッドガイズ”が超新塾にしか見えなくて(笑)」
──確かに「THE SECOND」に出場していた超新塾も同じ5人組!
小沢「この映画は、ウルフ、スネーク、ピラニア、シャーク、タランチュラだけど、超新塾のほうもイーグル(溝神)とタイガー(福田)がいるから(笑)」
──字幕版はサム・ロックウェル、オークワフィナらが声で参加していましたが、今回は吹替版で観ていただきました。
小沢「驚いたのはさ、この“バッドガイズ”の中では、郁人も、長田も、ウイカちゃんも、俺は何回も一緒に仕事してるから声をよく知ってるはずなんだけど、全員がうま過ぎて、彼らが声をやってるって全然分からなかった。歌のシーンの歌声を聴いて、ようやく『あ、これは郁人の歌声だ』って気付いたけど。長田も長田っぽくなかったし、ウイカちゃんもウイカちゃんっぽくなくて。あのへんは、さすがだなぁと思ったね」
──日本語吹替なんですけど、それぞれが元の英語っぽい言い回しでセリフを言ってるのも面白かったですよね。
小沢「尾上松也さんなんて、めちゃくちゃセクシーでダンディーでね。そういうお芝居をしてるのは何度も観てるけど、声だけでも十分ハマってたよね。安田顕さんなんかも、すごいうまかったし。他の声優さんも含めてみんなうまかったから、その部分でもすごい楽しめたよ」
──ストーリー的には、まさに小沢さん好みのクライム・ムービーになってました。
小沢「そうね。盗みに行くシーンの面白さがあって、さらにそこでまた裏切りもあって、という一番気持ちのいいストーリー展開になってたね。メンバーそれぞれの特殊技能もちゃんと生かしたりして。ああいうの、俺はすごい好きだから。スパイものとか、ギャングものとか。あと、キャラクターの中で俺が特に好きだったのは、キツネの女の子ね」
──アカギツネのダイアン・フォクシントン知事ですね。
小沢「知事なんだけど、実は別の顔もあって、という。ネタバレになるからあんまり言わないけど。不思議なのはさ、アニメのはずなのに、この子が本当の女の子みたいにすごく色っぽくて魅力的で。俺、めちゃくちゃ好きになっちゃったから、思わずこの声優の甲斐田裕子さんのことまで調べちゃったもん(笑)。アニメの映像も進化してるから、昔とは違って、ニスが塗ってあるみたいに艶感があって、キラキラしてて。そういうところも観てて楽しかったよね」
──では、そんな今回の作品の中で、小沢さんが一番シビれた名セリフを一つ選んでいただきたいのですが。
小沢「今回は、そのキツネの知事が言った、『これも私。いわば、いい方の私』だね」
──クライマックス直前のシーンでフォクシントン知事が言うセリフですね。
小沢「結局さ、人は勝手に他人のイメージを決め付けるところから始まるわけじゃん。それは単なる第一印象なのか偏見なのかは分からないけど。でも、実は人間ってそんなに平面的ではなくて、もっと立体的にいろんな面で構成されてるはずで。例えば今回の『THE SECOND』の漫才で、俺らは恋愛のネタをやったんだけど、そうすると『スピードワゴンっておじさんなのに恋愛のネタばっかりだな』とか『いい年して恋愛のネタなんてやってるんじゃないよ』みたいなことを言われたりするのよ」
──そんなこと言う人がいるんですか?
小沢「まあ、一部の人だけどね。でも、みんなすぐそうやって、『おじさんが』とか『おばさんが』とか『男なのに』とか『女だから』とか、分母を大きくして話すんだよね。もちろん、その方が楽だからなんだけど。『あいつらは“バッドガイズ”、悪いやつらなんだ』って言っちゃえば簡単だから。でも、本当は全部が1なんだよ、個なんだよね。だから、俺はおじさんだけど、いつまでも恋に憧れてしゃべるし(笑)。『勝手に俺を、君が決めた俺にしないでよ』って思うよ」
──この映画のテーマとしては、人から嫌われる“バッドガイズ”のままでいるか?称賛されるグッドガイになりたいか?というものもありますが、小沢さん自身、賞レースに出場したりすると、そういう称賛と批判にさらされますよね?
小沢「そうだね。例えば今回の『THE SECOND』で言えば、ありがたいことに、終わった後にものすごい数の連絡が来たわけよ。先輩とか後輩とか友達とか幼なじみとか。そういう中で、現役で戦ってる人ほど、余計なことを言わずにシンプルなねぎらいの言葉だけをくれてたんだよね。批判はもちろん、余計な褒め言葉もなくて。なぜかといえば、こういう賞レースとかが終わった後って、周りにやたらと気を遣われて、人に会うたびに『良かったですよ』とか『惜しかったですね』とか言われて、それで疲れちゃうのを現役の人たちは知ってるから。実際、今回の俺もそういう感じで。俺自身は結果なんてどっちでもよくて、なんなら本番の前日に新ネタ書いてたぐらい、次のことを考えてるのに」
──褒められたいっていう気持ちはあるんですか?
小沢「まあ、褒められるのはうれしいけど、褒められようが、厳しく言われようが、結局やることは変わんねえな、とは思ってる。終わった後には必ず『ああすればよかった』っていうのは出てくるんだけど、それもチャレンジしたからこそ思うことで。だから結局、やるしかないんだなって。よく『後悔のない人生を』とか言うけど、人生なんて後悔ばっかりなのよ。でも、その後悔があるからこそ、また次に挑戦できるんだなって思うよね。別に反省はする必要ないの。反省してる暇があったら、次のことを始めた方がいいから。でも、後悔は常にあっていいと思うんだ。それだけチャレンジしたってことだからさ」
──逆に満足もしないってことですかね?
小沢「そうね、ザ・ローリング・ストーンズだね。『I Can't Get No Satisfaction(満足できない)』(笑)。俺は基本、いつも『満足してるよ』って言って生きてるんだ。毎日みんなと遊んで、先輩にも後輩にも囲まれて、独身で自由で。いつも『最高だよ!』って言ってるんだけど、でも、今回みたいなことがあるたびに、『あ、俺は満足したフリして生きてるだけなんだな』って思い知らされるよね。満足できてないから、またチャレンジしたくなるっていうか。その点では、この映画のウルフとスネークじゃないけど、相方の(井戸田)潤には感謝してるよ。俺は『THE SECOND』にも出なくていいと思ってたんだけど、潤が『やるんだよ!』って言ってくれたおかげだから」
──そういうところは、まだまだ小沢さんたちもバッドガイズじゃないですか。
小沢「いやいや、俺らなんて全然だよ。だって、今回『THE SECOND』の出場者を見てみな。金属バット、マシンガンズ、三四郎…みんな“バッドガイズ”ばっかりじゃん。なんなら、俺らが一番の優等生みたいになってて、恥ずかしかったもん。そういう意味では今回は、どうせなら一番の“バッドガイズ”の超新塾に優勝してもらって、彼らを“グッドガイズ”にしてやりたかったなぁ(笑)」
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