“完璧”じゃないから好きなのかもしれない――『100日間のシンプルライフ』を観てスピードワゴン・小沢さんが心撃ち抜かれたセリフとは?
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“完璧”じゃないから好きなのかもしれない――『100日間のシンプルライフ』を観てスピードワゴン・小沢さんが心撃ち抜かれたセリフとは?

映画を愛するスピードワゴンの小沢一敬さんが、映画の名セリフを語る連載「このセリフに心撃ち抜かれちゃいました」
毎回、“オザワ・ワールド”全開で語ってくれるこの連載。映画のトークでありながら、ときには音楽談義、ときにはプライベートのエピソードと、話があちらこちらに脱線しながら、気が付けば、今まで考えもしなかった映画の新しい一面が見えてくることも。そんな小沢さんが今回ピックアップしたのは、すべての家財道具を倉庫に預け、裸一貫で所持品ゼロの状態から1日1つずつ必要なモノを取り戻していく2人の男性の仰天勝負を描いたドイツ映画『100日間のシンプルライフ』('18)。さて、どんな名セリフが飛び出すか?

取材・文=八木賢太郎 @yagi_ken

──今回は、なぜこの作品をチョイスされたんでしょうか?

小沢一敬(以下、小沢)「最近、コロナ禍で巣ごもりの時期が続いて、家にいる時間が増えたら、家の中に荷物が多いなぁって、いつも思っててさ。Twitterにも、よく『断捨離したい』って書いたりしてたから、この映画の設定に興味を惹かれたんだよね」

好きなモノに囲まれて自由気ままな独身生活を謳歌おうかするプログラマーのパウル(フロリアン・ダーヴィト・フィッツ)と、自身の外見を磨くことに余念がない共同経営者のトニー(マティアス・シュヴァイクホファー)。あるとき、パウルが開発した人工知能搭載アプリ“NANA”が、アメリカのIT実業家に400万ユーロ(約4.9億円)で買い取られることに。従業員とともに祝杯を挙げるトニーに対し、彼がNANAで金もうけをしようとしていたことが許せないパウルは、ある勝負を持ち掛ける。それは、持ち物すべてを倉庫に預け、1日1つずつ必要なモノを取り戻しながら100日間生活するという、とんでもない勝負だった。

──小沢さんの断捨離は、結局は進んだんですか?

小沢「2年くらい前に、段ボール6箱分ぐらいの本を後輩たちにあげたんだけど、ここ2年で、7箱分ぐらいは新たに買っちゃったね(笑)。この映画の冒頭で、『僕らの曽祖父母の持ち物は57個、祖父母は200個、両親は650個、僕らは1万個』という話が出てくるけど、単純に俺の持ち物を考えてみると、本だけでも5,000冊あって、レコードとかCDも3,000枚くらいあってさ。洋服だって、上着だけで50着ぐらい、ズボンが30本、靴も30足、そこに食器とかも合わせたら、1万個を余裕でオーバーしてるぐらい物があるのよ、たぶん。若い頃に職場の先輩と2人で寮生活してたときには、服なんて、上着3着にズボンが5本ぐらいで生きてたのに。気が付けば物が増え過ぎてるな、と思うよ」

──では、この映画の2人にも共感する部分が多かった?

小沢「そうだね。俺も彼らと同じように物に囲まれて暮らしてるけど、この仕事をやってると、例えばジャージのままで現場へ行っても、スタイリストさんが服を持ってきてくれるし、ご飯だってお弁当を用意してもらってるし、実は何も持たなくても生活できるのよ。家にあるコップだって、今はコーヒーカップとかワイングラスとかいろいろあるけど、究極を言えば、食事用と歯磨き用の2つあればいいと思ってる。だから、本当は物を減らしたいんだけどさ、『よし、今日から断捨離しよう! まずは何を減らそう?』って考えるときに、いつも俺が一番最初に捨てちゃうのが、その“断捨離しようという気持ち”なの(笑)。だから、いつまでたっても断捨離が進まないんだよね」

──パウルやトニー以上に重症ですね、それは。

小沢「言ってみればこの映画は、よくある『無人島に何か一つだけ持って行くなら、何を持って行く?』という質問、あれと同じような話とも考えられるでしょ。『自分に一番必要な物は何か?』って。昔、その無人島の話をみんなでしてたときに、品川庄司の品川(祐)君は『ペンを持って行く』って言ったんだよね。『無人島で起きた出来事を日記に書いて残していく』って。俺、それがすごくいい答えだと思ってさ。映画の中で、トニーが黒板に必要な物を順番にチョークで書いていくシーンがあったけど、あれを見たときに品川君のことを思い出したね。ちなみに俺は、無人島に何を持って行くかを聞かれたときには、『船』っていう、一番ズルいやつを言ったんだけど(笑)」

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──ではそんな作品の中から、今回も小沢さんが一番シビれた名セリフを選んでいただきたいのですが。

小沢「まあ、一番の名セリフは、やっぱり、『われわれは永遠に未完成だ。それなら一緒にいよう、未完成のまま』でしょ」


<※ここから先はネタバレを含みますのでご注意ください>

100日間の勝負を続ける中で、トニーはゴージャスな衣装を着こなす謎の女性、ルーシー(ミリアム・シュタイン)に出会い、一目惚れした彼女とデートを重ねるようになる。だが、ルーシー自身が抱えていた秘密により、トニーはパウルと決定的なケンカをしてしまう。互いに意固地になったまま100日目を迎えた2人は、やがて、それぞれにとっての「本当に大切なモノ」を見つける。

──映画のクライマックスで、トニーがルーシーに愛を告白するときに言うセリフですね。自分のダメな部分を次々と伝えた後に、「みんな心に穴は開いてて、何かで満たしたがる。金や、周囲からの注目でね。でも、そんなの関係ない」と言ったセリフに続く、この映画のテーマにも関わる部分ですね。

小沢「あのセリフ自体がすごく感動的でいい言葉なんだけどさ、俺が思ったのは、そもそもこの映画自体が、すごく未完成なんだなってこと」

──それはなぜでしょう?

小沢「あのセリフの後で、全裸のまま告白してたトニーの足下に、靴とズボンとシャツと下着の4つがあって、『ここにある5つが一番大事な物だ』って言うじゃん。要するに、あれは『残りの1つの大事な物は、君なんだよ』っていうメッセージなんだけど。ただ、そこで俺がものすごく気になったのが、そのときのトニー、眼鏡かけてるんだよ(笑)」

──僕もそれ、すごく気になりました!

小沢「あれ、気になったよね? よく考えたら、俺にとっても、今一番必要な物は老眼鏡だから(笑)。あそこはめちゃくちゃいいシーンなんだけど、『そこは眼鏡も必要な物にカウントしないと、成立しないだろ!』って思っちゃって。あれはツッコミを入れたいところだったよね。この映画、他にもいくつかツッコミどころがあったんだけど。でも、ツッコミどころが多いから好きなのかも、とも思ったのね。“完璧”じゃないから好きなのかもしれないなって」

──確かに、歴代の名作と呼ばれる映画は、だいたいどれもツッコミどころが満載だったりしますからね。

小沢「やっぱり、こうやってツッコミ入れながらも楽しめるっていうのがいいもんね。もちろん、物語としては、人生の機微のようなものをしっかりと考えさせられる作品だし。映像とか音楽も、PVみたいでオシャレなところがたくさんあったし。逆に、あまりに完成度が高い映画は、きれいだけど美しくはないっていうか。人間だって、隙がある人のほうが愛しやすいからね」

──この主人公の2人も、隙だらけでしたもんね。

小沢「そうだよね。トニーはパウルのことを、『おまえは全部持ってる』と思ってるし、パウルのほうもトニーに対して同じように思ってるという、あの2人の感情の表現も素晴らしかったと思う。俺もね、相方の(井戸田)潤がうらやましいのよ。育ちもいいし、発声もいいし、人懐っこいし。『潤は、いいよなぁ』って思うことが多々あって。だけど、きっと潤のほうも俺に嫉妬してるんだろうなって。別に本人に聞いたわけじゃないけど、そう思うようにしてる(笑)」

──今さら、そんなことを改まって確認もできないでしょうし。

小沢「徳井(義実)君のこともね、すごく憧れてるんだけど、『たぶん、徳井君は徳井君で、俺に憧れてるんだろうな』と思って生きてる。まあ、トニーとパウルの2人と決定的に違うのは、俺の場合、俺が『向こうも憧れてるだろうな』って勝手に思い込んでるところなんだけどさ(笑)」

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──その他にも好きなセリフはありましたか?

小沢「トニーが古いコンタクトレンズを使って目がかぶれちゃったときに、ルーシーが看病してくれて、目にカモミールのティーパックを乗せてくれるんだけど、そこでトニーが『これ、ミントティーだよ。かいでくれ』って言って、ルーシーが匂いをかごうとして顔を近づけると、そのままキスしちゃうシーン。あそこも好きだね」

──ちょっとキザでシャレた感じでした、あそこは。ツッコミどころも満載だけど、名シーンも満載でしたね。

小沢「ただね、俺がこの映画で一番感動したシーンは、実は別にあって」

──どこですか?

小沢「映画の後半で、パウルが大自然の中で立ちションするシーンがあったでしょ。俺もさ、年齢を重ねてきて、お酒を飲みに行けばトイレが近くなるし、夜中にも何度もオシッコに起きるのよ。年を取ると膀胱が固くなって伸びなくなるからトイレが近くなるらしいんだけど。あのシーンでパウルが出す勢いを見てたら、あれを取り戻したいなあ、って思って(笑)。あの、ジョボジョボジョボ~! っていうのを見たときに、『あ~、俺にはもう、この勢いがないんだな』って寂しくなってきちゃって。だから、あそこが一番心に響いた」

──映画のテーマとか関係ない、個人的な老いの話(笑)。

小沢「うん。一番俺の胸を打ったのは、あの立ちション。結局、人間なんてさ、食べて排泄して寝るだけの生き物で。そりゃあ、うちにもそこそこ良いトイレがあるよ。でも、人間の本来の生き方を考えれば、立ちションするぐらいの“シンプルライフ”でいいんだろうなって。最高の立ちションができる人生が、一番素晴らしいんだよ。俺ももう一度、あの勢いのオシッコがしたいね(笑)」

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クレジット:(C) 2018 PANTALEON FILMS GMBH / ERFTTAL FILM & FERNSEHPRODUKTION GMBH & CO. KG / WS FILMPRODUKTION / WARNER BROS. ENTERTAINMENT GMBH

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