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エレファントカシマシ初のアリーナツアーから、35回目のデビュー記念日に行なわれた「35th ANNIVERSARY TOUR 2023 YES. I. DO」ライブレポート

「WOWOW MUSIC MAGAZINE」では、WOWOWで放送・配信するライブの模様やインタビュー記事などを紹介!今回は5月13日(土)午後7:00よりWOWOWで独占放送・配信する「エレファントカシマシ 35th ANNIVERSARY TOUR 2023 YES. I. DO」のライブレポートをお届け。

撮影:岡田貴之

ヴォーカル&ギター宮本浩次の充実したソロ活動を経て開催された、エレファントカシマシとして初のアリーナツアー「35th ANNIVERSARY TOUR 2023 YES. I. DO」。

  今回WOWOWで独占放送・配信される東京・有明アリーナ3日目、3月21日(火・祝)の公演は同ツアーの折り返し地点であると同時に、シングル「デーデ」および1stアルバム『THE ELEPHANT KASHIMASHI』のリリース日である1988年3月21日からちょうど35回目にあたるデビュー記念日だ。公演当日、メンバー4人が公式YouTubeにアップした会場紹介動画の賑やかさからも祝祭ムードがしっかりと伝わってくる。
 
 開演と同時にステージ中央の巨大モニターヴィジョンにはデビューから現在までの35年の歴史が次々と映し出されていく。渋谷・公園通りの交差点に立つ若き日の4人がふてぶてしくも頼もしい。そして2013年、復活の野音の映像は10年経った今も心を揺さぶる。 

 ステージにメンバーが現れ、スライドギターの音色とともに始まったのは「Sky is blue」。アルバム『昇れる太陽』('09年)の1曲目にして、2010年の新春ライブや2014年のさいたまスーパーアリーナ25周年ライブでもオープニングを飾ったナンバーだ。
 
 宮本の歌声が広大なアリーナに響き渡る。いつも通りの気合に加え、この日は35年間の歴史を、目の前に集まった観客に丁寧に伝えようという思いがみなぎっている。
 
 髪を剃り上げた石森敏行がステップを踏みながらギターをかき鳴らし、帽子を被った高緑成治が寡黙にベースで重低音を響かせ、ドラムスの冨永義之が会場最深部まで届くように渾身の力でスネアを叩く。そこにサポートメンバーとして、キーボードの蔦谷好位置、ギターのヒラマミキオが加わり、音の塊となってアリーナ全体を制圧していく。
 
 曲が終わり、間髪入れず始まる「ドビッシャー男」のドライヴ感たるや。高緑・冨永のリズム隊が底を支える中、縦横無尽に暴れるギター、攻撃性を発揮する宮本のヴォーカルの絡み合う瞬間は、まさにロックンロールの醍醐味。
 
 名曲「悲しみの果て」を挟んで、デビュー曲「デーデ」、1stアルバムから「星の砂」という流れをアリーナで聴けるのも長年のファンにとってはたまらない。黒いシャツをはだけ、アリーナ中央から客席に伸びる花道を走りながら溢れんばかりのエネルギーを持て余すように床のカーペットをひっぺがす宮本の姿に、思わずこちらも笑みがこぼれる。 

 3rdアルバム『浮世の夢』('89年)からの「珍奇男」は風刺の効いた歌詞とレッド・ツェッペリンばりのグルーヴが融合したザ・エレカシな一曲だが、ためをきかせる宮本と冨永の息がピタリと合ったこの日の演奏は間違いなく序盤のハイライトといえる素晴らしいものであった。 

 エレカシの特別なライブには欠かせないヴァイオリニスト金原千恵子率いるストリングスチーム(ヴァイオリン:栄田嘉彦、ヴィオラ:榎戸崇浩、チェロ:笠原あやの)が加わった「昔の侍」でグッと背筋を伸ばされたあとは「奴隷天国」へ。バシッとしたドラムの入りに気合が入る。モニターヴィジョンに流れるローラーコースター風映像に「SLAVE」「HEAVEN」の文字が浮かぶエレカシには珍しい演出もアリーナツアーならでは。1993年の発表当時より30年後の現在のほうがリアルに響くのも先見の明を証明するものだ。
 
 一旦メンバーがステージを降りて第1部が終了。続いて第2部は2008年発表のシングル「新しい季節へキミと」からスタート。エレカシが新たな音作りに挑戦してきた時期の曲が披露されていく。「彼女は買い物の帰り道」の、情景が浮かぶような優しい目線が心地いい。「リッスントゥザミュージック」では金原のヴァイオリンと笠原のチェロ、「風に吹かれて」では蔦谷のピアノをフィーチャリングして披露。アニヴァーサリーにふさわしいアレンジだ。
 
 歌詞をひとつひとつ丁寧に気持ちを込めて歌う宮本の姿に、この人は心の底から歌が好きなんだなという感情が湧き上がる。演奏が終わっても“まだまだ歌い足りない!”とばかりに、サビを再びアカペラで歌いだす姿は何度見ても嬉しくなる。 

 1997年に大ヒットを記録し、2017年のNHK紅白歌合戦初出場時にも披露した「今宵の月のように」から、2015年のアルバムタイトル曲「RAINBOW」へ。暗転後、静粛の中、聴こえてくるのは、小鳥のさえずり、雷鳴、雨音。「朝」「悪魔メフィスト」だ。アルバム『悪魔のささやき~そして、心に火を灯す旅~』('10年)のラスト曲にして、宮本曰く“卓袱台をひっくり返す曲”を、ここに持ってくるのもエレカシらしさだ。絞り上げるような叫びはこの曲を書いた当時、バンドにどんな葛藤や逡巡があったのかを物語っている。
 
 強烈なインパクトを残したまま第3部へ。宮本と蔦谷の共同作曲となる2008年のシングル「桜の花、舞い上がる道を」では、桜の花びらが大量に舞い上がるアリーナならではの演出で、季節的にもジャストな気分を味わわせてくれた。
 
 「笑顔の未来へ」「so many people」に続いて「ズレてる方がいい」を歌い終えた宮本は、突然「冬の夜」の歌い出しをくちずさむと「♪エビバディ 有明のアリーナで 君に会えたぜー! 35年やってきた甲斐があったぜ! 本当にどうもありがとう!」と感謝の言葉を述べた。なお、この日の冨永のドラムは特に気迫がこもっていたことも記しておきたい。

 さあ頑張ろうぜ、と自身を鼓舞するロックアンセム「俺たちの明日」で会場がひとつになったあと「一番新しい曲です。聴いてください」と紹介されたのは「yes. I. do」。実に4年9カ月ぶりとなるエレカシの新曲だ。
 
 <許せかつての俺よ おお 俺は今を生きてゆくぜ>と現状を肯定し、<流れる時にあらがうわけじゃない 弱さにあらがいたいぜ>と、さらなる高みを目指す決意表明でもある楽曲を骨太なバンドサウンドで完成させた4人。
 
 本編ラストは誰もが納得の「ファイティングマン」。アンコールはファンならご存知のあの曲。真っ赤に照らされたアリーナで約3時間に及ぶライブは幕を閉じた。
 
 エレファントカシマシのデビューから35年間のあらゆる場所で起きたすべての出来事が一度に目の前で繰り広げられたかのような素晴らしい公演だった。

<番組情報>
エレファントカシマシ 35th ANNIVERSARY TOUR 2023 YES. I. DO
5月13日(土)午後7:00 [WOWOWプライム][WOWOWオンデマンド]

※放送終了後~1カ月間アーカイブ配信あり
 
収録日:2023年3月21日
収録場所:東京 有明アリーナ

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