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落語好きは必見! WOWOWオリジナルドラマ「にんげんこわい」とセットで読みたい4冊!

WOWOWブッククラブでは、毎月のテーマに沿ったオススメ番組と関連する本を記事としてまとめ、noteをご覧になる皆さんにお届けしてゆきます。

2月の番組テーマは、WOWOWオリジナルドラマ「にんげんこわい」

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 滑稽話のイメージがある落語ですが、実は怖い話の宝庫でもあることをご存じですか? 落語の演目の中でも“人間の怖さ”が際立つ演目をアレンジ&ドラマ化した新感覚オムニバス落語ドラマ。

 今回、ドラマで描く落語の演目は「心眼」「辰巳の辻占」「紺屋高尾」「宮戸川(上・下)」の全5話。各エピソードでは、役者としても活躍している落語家の柳家喬太郎が語り、解説を務めます。

 ブッククラブ部長の幅さんが選んだ、番組をより楽しむための4冊。番組の前に読むも良し。番組を楽しんだ後に読むも良し。楽しみ方はあなた次第ですよ!

1冊目:落語こてんパン​

柳家 喬太郎 (著) ちくま文庫

 古典から新作まで、どんな話をしても面白く、不思議な引力で観客を落語の世界へ引き込んでくれる柳家喬太郎さんが、ご自身お気に入りの古典落語50席についての思いを綴ったエッセイ集です。落語論や批評から離れ、私的でありながらもシンプルで読みやすく、独自の解釈で古典落語の根っこの部分へ肉薄します。前座モノとしてお馴染みの「道灌」を、大トリで披露したらどうなるのだろう、といった好奇心をのぞかせるなど、普段の寄席では見ることのできない、喬太郎さんの肩の力が抜けた語り口は、落語愛好家必見の読みどころです。

 巻末では作家の北村薫さんとの対談の中で、落語家が自身を客観視することの大切さについて触れているのですが、エッセイ形式で落語を振り返るという本書の企画そのものが、喬太郎さんの糧となっていることが暗に語られます。重苦しいストーリーが際立つ「心眼」は、その作風にとらわれることなく、あえて明るく演じて、噺の本質的な「恐ろしさ」を表現しているというエピソードは、喬太郎さんが培ってきた落語家としての矜持を物語る、印象的なお話です。

 とにかく落語の見方をこれでもかと柔らかく伝えてくれるので、喬太郎さんの落語愛がほとばしるとともに、古典落語を知らない人でも楽しめる、むしろ知らない人にこそ読んでほしい一冊です。

2冊目:昭和元禄落語心中

雲田はるこ(著) ITANコミックス 講談社 

 こちらは全10巻からなるコミックスですが、アニメ化や実写ドラマ化も経て、一度は聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか。原作である漫画も本当に素晴らしく、既に映像はご覧になったという方にもおすすめしたい作品です。

 本作では戦前から1980年代まで、三代に渡る落語家の壮大なサーガを描いており、刑務所あがりの与太郎と、弟子を取らない大名人 八代目 有楽亭八雲の関係を中心に物語は展開していきます。

 波乱の連続だった人生を縫うようにして、幾つかの落語の演目の中に生きる人々と、物語自体が交錯するように描かれ、八雲の紆余曲折した人生だけでなく、人の業のようなものを読み手に伝える迫力があります。

 継がれてきた伝統を心から愛する一方、だからこそ純粋に伝わらないそれを絶やしてしまいたいとも思う矛盾。そんな心持ちに日々体と心を焼かれながら、才能ある落語家から発する芸の凄みが、この漫画作品からはひしひしと伝わってきます。

 落語という芸の中に、演者の生き様がどう融けてゆくのか? そして、それが人々の手によってどう受け継がれていくのか? そんなことを知ることができる美しい物語です。

3冊目:現代落語論

 立川談志(著) 三一書房

 1965年、立川談志さんが29歳の頃に執筆されたのが、こちらの『現代落語論』です。当時、若手の筆頭と呼ばれていた談志さんが、いかにして落語を現在進行形の大衆芸能として存在させられるか、ということをシリアスに語ります。落語家として独特のポジションを築き、自身の生の声をいつも誰かに届けようとしていた談志さんですが、本書では古典落語に注目しながら、新たに台頭するエンターテインメントに埋もれず生き残る方法論を、自身の来歴も交えながら掘り下げます。

 『現代落語論』という重さのあるタイトルが目を引きますが、実際に手に取ってみると、その内容は「そもそも落語とは何か?」というところから丁寧に紹介してくれているので、落語初心者でも安心して読み進められるエッセイです。笑われるのではなく笑わせる、相手の求めてくるところに甘えすぎてはいけないなど、当時20代であったにも関わらず、笑いに対する厳しい審美眼を持った談志さんの姿が本書を通じてありありと浮かび、つっけんどんな物言いの奥には持ち前の生真面目さや深い思考力が光ります。

 落語という定型化された芸を現代人にも共感できるよう、コピーとオリジナリティの境界線を自分なりに解釈し、自分の「もの」にするセンスの希少性を説く。そして、その境地へ肉薄しようという試みの過程を、本書から垣間見ることができるでしょう。落語だけでなく、あらゆるお笑いや物語全般の表現方法にも通じる、エンターテインメントの本質へ迫る一冊となっています。

4冊目:悪のしくみ 中学生までに読んでおきたい哲学 2

松田哲夫(編) あすなろ書房

 筑摩書房で長年編集者を務めた松田哲夫さんがまとめた全8巻からなる『中学生までに読んでおきたい哲学』シリーズ。これは、物語の力を借りて、哲学の真髄に迫るダイジェスト集のようなシリーズで、今回紹介する『悪のしくみ』はその第2巻にあたります。遠藤周作さんの『善魔について』や星新一さんの『七人の犯罪者』など、一流の書き手たちが手がけた作品の中で、「悪」にまつわる読みどころを凝縮した一冊に仕上がっています。

 冒頭を飾るのは、井上ひさしさん本人が少年時代に万引きを犯したときの体験談を振り返った『万引き』というエッセイ。なぜ万引きしてしまったのか、自分でもよくわからないと振り返る当時の過ちは、すぐに店主によって制止されます。小さな悪事も積み重なれば、それは人殺しに近い罪となることを幼い井上さんへ真摯に伝え、その償いをさせた店主の一連の言動は、タイトル通り「悪の仕組み」を端的に表したエピソードと言えるでしょう。

 『悪のしくみ』という作品集のもとに収録されることで、集められた作品たちの新しい視点を発見できるのが面白いところです。大人にならなければ響きにくいお話もありますが、ふりがなやイラスト付きの注釈も細かく用意されているので、中学生以下の子供たちでも詰まることなく読破し、心のどこかを掴まれる一冊に仕上がっています。

【第1話】「心眼」まるごと無料配信中!

【関連番組】第十五回「博多・天神落語まつり」

2月5日(土)午後4時~:其の壱 午後6時~:其の弐 @WOWOWライブ

三遊亭円楽プロデュース。人気落語家たちが博多の街に集結する日本最大の落語フェスティバルの第15回記念興行の模様をお届けする。柳家喬太郎師匠も登場します!

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先に番組を観るも良し。本から入るのもまた一つの楽しみ方です。あなたにとって番組や本との新しい出会いになることを願っています。


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