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【5月の激レア映画!】浅田次郎の小説を宮沢りえ主演で映画化した『オリヲン座からの招待状』をはじめ、廃盤・未ソフト化など貴重な映画を“レア度”とともにご紹介!

 こんにちは。WOWOW加入者向けに配布しているプログラムガイドで「見逃し厳禁!録画のチャンス!今月の激レア映画」の作品選定を行なっている映画ライターの飯塚です。

 今月もプログラムガイドで掲載している通称「激レア映画」企画をコラムにしてnoteでも掲載いたします。プログラムガイドで選定された作品がどれほど貴重な映画なのか、その選定理由とともに作品の魅力について語っていきたいと思います。

文=飯塚克味


【5月の激レア映画8作品】

①[廃盤]『アクシデンタル・スパイ』

レア度…★★★★☆

舞台は、香港。普段はさえない健康器具のセールス担当者であるバックは、予知能力で銀行強盗を察知して一味を退治。市民のヒーローになるが、私立探偵だというリウから身寄りがないはずのバックの実の父親が韓国で死の床に伏せていると知らされ、現地へ向かう。それをきっかけに手に入れた大金や、突如現われた美女ヨンなどの謎を調べるうち、バックはある殺人ウイルスを国際スパイたちが追っていると気付き、彼らの計画を阻止しようと行動を起こし……。

WOWOW公式サイトより

 先日、70歳を迎えたアクションスターの大御所、ジャッキー・チェン。[廃盤]扱いとなっている『アクシデンタル・スパイ』が公開された頃は、ジャッキー主演の『ラッシュアワー』('98)のヒットで、世界に通用する俳優としてハリウッドにようやく地位が認められ、彼は香港とハリウッドを行き来していました。
 最近はあまり威勢のある作品が少ない香港映画界ですが、この頃はまだやりたいことができていた時代で、ジャッキーらしいコミカルな動きとスケールの大きなアクションが入り交じって、大いに楽しんでもらえるはずです。  ストーリーは、セールスマンの中年男性が、国際的な陰謀に巻き込まれるというものですが、アクション満載で、ジャッキーらしさが詰まった一本になっています。ブルース・リー時代から香港映画を牽引してきたレイモンド・チョウがプロデューサーでクレジットされていることも見逃せないポイントです。

②[廃盤]『オリヲン座からの招待状』

レア度…★★★☆☆☆

『オリヲン座からの招待状』:ⓒ2007「オリヲン座からの招待状」製作委員会

平成の現在。良枝と、別居中の夫・祐次のもとに、2人の思い出の場所でもある京都の古い映画館“オリヲン座”から、閉館の知らせと最終上映に招待する入場券が届く。一方、昭和32年。松蔵とトヨの夫婦が経営するオリヲン座は大いににぎわいを見せていた。そこに故郷の大津から出てきたばかりで仕事を探していた留吉が現われる。留吉は活動写真が大好きなこともあり、オリヲン座で働かせてほしいと懇願。その熱情にほだされ、松蔵は彼を雇うことになる。

WOWOW公式サイトより

 映画館が舞台の映画って、映画ファンが観るとどうしても強く感情移入してしまうもの。
 意外にも[廃盤]となっている『オリヲン座からの招待状』は、昭和30年代、ある夫婦がテレビの台頭にもめげず、必死に映画館を守ろうと奮闘する姿を描いています。今でも昔の映画館を守ろうと、日本中で熱心な映画ファンたちが頑張っていますが、そんなリアルな彼らと、この映画の登場人物が自然と重なって見えてくるかと思います。映画館がテーマの作品といえば『ニュー・シネマ・パラダイス』('98)という不動の名作がありますが、本作もきっと忘れられない一本になるはずです。
 
 ちなみに私は、『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ』('04)がお気に入りなのですが、こちらも機会があったら観てもらいたいですね。

③[廃盤]『純喫茶磯辺』

レア度…★★★☆☆

<『純喫茶磯辺』あらすじ>
女子高生の娘・咲子と2人暮らしの生活を送る、中年のダメ親父の磯辺裕次郎。8年前、妻に逃げられて以来、無気力な日々を過ごしていた裕次郎だったが、父の急死で転がり込んできた遺産を元手に、一念発起して喫茶店を開業することを決意。やむなく咲子も店を手伝うことになるが、案の定、客足はさっぱり。ところがアルバイトに採用した素子にコスプレ風の衣装を着せたのが功を奏し、彼女目当てに店に通う常連客が増えて……。

WOWOW公式サイトより

 石原さとみ主演の『ミッシング』('24)の公開も控える、𠮷田恵輔監督初期の傑作で、なんと[廃盤]になっている『純喫茶磯辺』です。妻に見捨てられた中年男性が喫茶店を始めるたわいない話ですが、サブキャラの扱いも含め、的確な人間描写で最後まで見入ってしまう作品になっています。特に娘の仲里依紗と喫茶店で働くことになる麻生久美子との微妙な関係が気になって、非常に面白い映画になっています。

④[廃盤]『7番房の奇跡』

レア度…★★★☆☆

知的障害を持つヨングは、6歳のしっかり者の娘・イェスンと幸せに暮らすが、ヨングはある少女が命を落とした事件で誤認逮捕され、殺人罪で刑務所に送られる。ヨングが入れられた7番房の受刑者たちは、最初は先輩風を吹かすが、あるきっかけからヨングを見直してかわいがるように。やがて、ヨングの娘・イェスンと一緒にいたいという願いを叶えるため、7番房の仲間たちはイェスンをひそかに所内に入れるという作戦を決行するが……。

WOWOW公式サイトより

 続いては2013年の韓国映画『7番房の奇跡』ですが、10年以上たった今でもファンが多い名作として知られています。知的障害を持つシングルファザーのヨングが、幼女殺しの罪を着せられ、刑務所に収監。自分の娘と離れ離れにされてしまいます。でも彼が殺人犯でないことに刑務所の囚人仲間や看守たちも気付き、何とか彼を無罪放免にできないかと尽力していきます。  

 映画ファンならすぐに気付くかと思いますが、ショーン・ペンが主演した『I am Sam アイ・アム・サム』('01)と、アカデミー賞3部門を受賞した『ライフ・イズ・ビューティフル』('98)の要素がかなり入っています。それでも感動してしまうのは、映画作りの土台がしっかりしているからでしょう。特に主演のリュ・スンリョンの演技は、後に『エクストリーム・ジョブ』('19)で、おとぼけ捜査官を演じた同一人物とは思えないほど。2時間強の時間があっという間に過ぎていくはずです。

⑤[未ソフト化]『青いカフタンの仕立て屋』

レア度…★★★★☆

父親から代を引き継ぎ、モロッコの伝統衣装、“カフタンの仕立て屋”を夫婦で営むハリム。昔ながらの手仕事にこだわる芸術家肌の職人気質を持つ彼は、その一方で、ある心の秘密を抱えて苦悩する。そんな彼を25年間連れ添う妻のミナが優しく支えていたが、彼女は重い病に侵され、余命わずかとなっていた。そんな2人の下で優秀で仕事熱心な若い職人ユーセフが働くことになり、ハリムの心の奥底に秘めた感情が揺り動かされるようになる。

WOWOW公式サイトより

 続いてここからご紹介するのは[未ソフト化]の作品。まずは、『青いカフタンの仕立て屋』です。『モロッコ、彼女たちの朝』('19)で、臨月の未婚女性というモロッコのタブーを取り上げて話題となった、マリヤム・トゥザニ監督の新作です。

 結婚式や宗教行事などで着る民族衣装のカフタンを作る仕立て屋の夫婦が主人公のドラマになります。華やかな刺しゅうで彩られたカフタンは、いわゆる高級品で、職人の技術の結晶のようなものです。ですが、高度な技術が要求されるだけに、消えゆく運命にもあります。映画はそんな手仕事を丁寧に描きつつ、余命いくばくもない妻と、その夫、そして夫婦の下にやって来た新たな若い職人の3人の人生が絡み合っていくさまを見せていきます。異性愛しか許されないモロッコ社会の問題を浮き彫りにしている本作。どのようなラストを迎えるか、ぜひ見届けてもらいたいです。

⑥[未ソフト化]『それいけ!ゲートボールさくら組』

レア度…★★★★★

76歳の桃次郎は、学生時代にラグビーで青春を謳歌したのはもう60年ほど昔。愛する妻が残したレストランをカレー専門店“MoMo八番屋”として続けているが、寂しさと物足りなさを感じる日々を送っていた。ある日、かつてラグビー部で自分たちを励まし続けてくれたマネジャーのサクラと再会。彼女が経営するデイサービス“桜ハウス”が倒産の危機だと知り、桃次郎は元ラグビー部の仲間を集めて何かできないかと模索する。

WOWOW公式サイトより

 急速に高齢化が進む日本社会ですが、そんな年配者向けの作品でありながら、全世代が楽しめる作りになっているのが『それいけ!ゲートボールさくら組』です。良質な作品にもかかわらず、[未ソフト化]となっています。
 
 主演は往年のアクションスターである藤竜也。彼が中心となり、仲間とゲートボール大会に挑むというシンプルな内容になっています。『ウルトラセブン』('68)で有名な、森次晃嗣がガンコなおじいさんを演じているのもとても笑えます。昔はこの手の人情喜劇がいっぱいあったので、懐かしさを感じる人もいるのではないでしょうか。

⑦[未ソフト化]『母の聖戦』

レア度…★★★★☆

メキシコ北部の町で暮らすシングルマザーのシエロ。ある日、シエロの前に突然見知らぬ不良少年が現われ、デートに外出したはずのシエロの10代の娘ラウラを誘拐し、「彼女を生きて返してほしければ身代金を払え」と、冷酷非情な要求を突きつける。驚いたシエロは前夫のグスタボに相談した末、やむなく大金を支払うが、ラウラは戻らず、生死も不明のまま。警察も頼りにならないと知ったシエロは、自らの力で娘を取り戻そうと決意する。

WOWOW公式サイトより

 最後に紹介するのは[未ソフト化]『母の聖戦』という作品で、非常にヘビーな一本です。
 誘拐が横行するメキシコで、普通に出かけた娘が行方不明になってしまいます。犯罪組織に連れ去られたことを知ったシングルマザーのシエロは、たったひとりで行動を開始します。驚くことに本作、実話をベースにしているとのことで、映画を観れば分かりますが、こんな境遇に置かれたらと、震え上がらずにはいられません。第34回東京国際映画祭で審査委員特別賞を受賞したのも納得でしょう。いわゆるハリウッド的な娯楽映画とは程遠い位置にある映画ですが、きっと忘れられない一本になると思います。

⑧[未ソフト化]『メリちん』

レア度…★★★☆☆

<『メリちん』あらすじ>
俳優を目指して上京したものの、仕事がうまくいかず、10年ぶりに故郷に帰ってきた“タラちゃん”。彼は子どもの頃よく一緒に遊んでいた幼なじみ、紅一点のマチと、今は地元の酒店に勤める“メリちん”と再会する。大人になっても子ども時代と同じくガキ大将的な立場を取るタラちゃんを内心疎ましく感じる“メリちん”。実は彼とマチは恋人同士となっていたが、面倒を避けたいメリちんはその事実をタラちゃんには隠そうとして……。

WOWOW公式サイトより

 最後は、𠮷田恵輔監督特集としてオンエアされる[未ソフト化]『メリちん』も、自主映画時代の作品ということで、大いに期待していい一本だと思います。実は私は未見なのですが、それ以前の自主映画の『なま夏』('05)が、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭のオフシアター部門でグランプリを受賞し、自主映画第2作である『メリちん』の後、『机のなかみ』('06)で長編デビューしていることからも、当時、勢いに乗っていたことが想像できます。

 次回、6月号激レア映画もレアな映画が盛りだくさんです。
 どうぞお楽しみに!

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