【5月の激レア映画!】浅田次郎の小説を宮沢りえ主演で映画化した『オリヲン座からの招待状』をはじめ、廃盤・未ソフト化など貴重な映画を“レア度”とともにご紹介!
文=飯塚克味
【5月の激レア映画8作品】
①[廃盤]『アクシデンタル・スパイ』
レア度…★★★★☆
先日、70歳を迎えたアクションスターの大御所、ジャッキー・チェン。[廃盤]扱いとなっている『アクシデンタル・スパイ』が公開された頃は、ジャッキー主演の『ラッシュアワー』('98)のヒットで、世界に通用する俳優としてハリウッドにようやく地位が認められ、彼は香港とハリウッドを行き来していました。
最近はあまり威勢のある作品が少ない香港映画界ですが、この頃はまだやりたいことができていた時代で、ジャッキーらしいコミカルな動きとスケールの大きなアクションが入り交じって、大いに楽しんでもらえるはずです。 ストーリーは、セールスマンの中年男性が、国際的な陰謀に巻き込まれるというものですが、アクション満載で、ジャッキーらしさが詰まった一本になっています。ブルース・リー時代から香港映画を牽引してきたレイモンド・チョウがプロデューサーでクレジットされていることも見逃せないポイントです。
②[廃盤]『オリヲン座からの招待状』
レア度…★★★☆☆☆
映画館が舞台の映画って、映画ファンが観るとどうしても強く感情移入してしまうもの。
意外にも[廃盤]となっている『オリヲン座からの招待状』は、昭和30年代、ある夫婦がテレビの台頭にもめげず、必死に映画館を守ろうと奮闘する姿を描いています。今でも昔の映画館を守ろうと、日本中で熱心な映画ファンたちが頑張っていますが、そんなリアルな彼らと、この映画の登場人物が自然と重なって見えてくるかと思います。映画館がテーマの作品といえば『ニュー・シネマ・パラダイス』('98)という不動の名作がありますが、本作もきっと忘れられない一本になるはずです。
ちなみに私は、『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ』('04)がお気に入りなのですが、こちらも機会があったら観てもらいたいですね。
③[廃盤]『純喫茶磯辺』
レア度…★★★☆☆
石原さとみ主演の『ミッシング』('24)の公開も控える、𠮷田恵輔監督初期の傑作で、なんと[廃盤]になっている『純喫茶磯辺』です。妻に見捨てられた中年男性が喫茶店を始めるたわいない話ですが、サブキャラの扱いも含め、的確な人間描写で最後まで見入ってしまう作品になっています。特に娘の仲里依紗と喫茶店で働くことになる麻生久美子との微妙な関係が気になって、非常に面白い映画になっています。
④[廃盤]『7番房の奇跡』
レア度…★★★☆☆
続いては2013年の韓国映画『7番房の奇跡』ですが、10年以上たった今でもファンが多い名作として知られています。知的障害を持つシングルファザーのヨングが、幼女殺しの罪を着せられ、刑務所に収監。自分の娘と離れ離れにされてしまいます。でも彼が殺人犯でないことに刑務所の囚人仲間や看守たちも気付き、何とか彼を無罪放免にできないかと尽力していきます。
映画ファンならすぐに気付くかと思いますが、ショーン・ペンが主演した『I am Sam アイ・アム・サム』('01)と、アカデミー賞3部門を受賞した『ライフ・イズ・ビューティフル』('98)の要素がかなり入っています。それでも感動してしまうのは、映画作りの土台がしっかりしているからでしょう。特に主演のリュ・スンリョンの演技は、後に『エクストリーム・ジョブ』('19)で、おとぼけ捜査官を演じた同一人物とは思えないほど。2時間強の時間があっという間に過ぎていくはずです。
⑤[未ソフト化]『青いカフタンの仕立て屋』
レア度…★★★★☆
続いてここからご紹介するのは[未ソフト化]の作品。まずは、『青いカフタンの仕立て屋』です。『モロッコ、彼女たちの朝』('19)で、臨月の未婚女性というモロッコのタブーを取り上げて話題となった、マリヤム・トゥザニ監督の新作です。
結婚式や宗教行事などで着る民族衣装のカフタンを作る仕立て屋の夫婦が主人公のドラマになります。華やかな刺しゅうで彩られたカフタンは、いわゆる高級品で、職人の技術の結晶のようなものです。ですが、高度な技術が要求されるだけに、消えゆく運命にもあります。映画はそんな手仕事を丁寧に描きつつ、余命いくばくもない妻と、その夫、そして夫婦の下にやって来た新たな若い職人の3人の人生が絡み合っていくさまを見せていきます。異性愛しか許されないモロッコ社会の問題を浮き彫りにしている本作。どのようなラストを迎えるか、ぜひ見届けてもらいたいです。
⑥[未ソフト化]『それいけ!ゲートボールさくら組』
レア度…★★★★★
急速に高齢化が進む日本社会ですが、そんな年配者向けの作品でありながら、全世代が楽しめる作りになっているのが『それいけ!ゲートボールさくら組』です。良質な作品にもかかわらず、[未ソフト化]となっています。
主演は往年のアクションスターである藤竜也。彼が中心となり、仲間とゲートボール大会に挑むというシンプルな内容になっています。『ウルトラセブン』('68)で有名な、森次晃嗣がガンコなおじいさんを演じているのもとても笑えます。昔はこの手の人情喜劇がいっぱいあったので、懐かしさを感じる人もいるのではないでしょうか。
⑦[未ソフト化]『母の聖戦』
レア度…★★★★☆
最後に紹介するのは[未ソフト化]の『母の聖戦』という作品で、非常にヘビーな一本です。
誘拐が横行するメキシコで、普通に出かけた娘が行方不明になってしまいます。犯罪組織に連れ去られたことを知ったシングルマザーのシエロは、たったひとりで行動を開始します。驚くことに本作、実話をベースにしているとのことで、映画を観れば分かりますが、こんな境遇に置かれたらと、震え上がらずにはいられません。第34回東京国際映画祭で審査委員特別賞を受賞したのも納得でしょう。いわゆるハリウッド的な娯楽映画とは程遠い位置にある映画ですが、きっと忘れられない一本になると思います。
⑧[未ソフト化]『メリちん』
レア度…★★★☆☆
最後は、𠮷田恵輔監督特集としてオンエアされる[未ソフト化]の『メリちん』も、自主映画時代の作品ということで、大いに期待していい一本だと思います。実は私は未見なのですが、それ以前の自主映画の『なま夏』('05)が、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭のオフシアター部門でグランプリを受賞し、自主映画第2作である『メリちん』の後、『机のなかみ』('06)で長編デビューしていることからも、当時、勢いに乗っていたことが想像できます。
次回、6月号激レア映画もレアな映画が盛りだくさんです。
どうぞお楽しみに!
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