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気になる本はありますか?アートミステリードラマ「連続ドラマW いりびと-異邦人」とセットで読みたい本4選!

WOWOWブッククラブでは、毎月のテーマに沿ったおすすめ番組と関連する本を記事としてまとめ、noteをご覧になるみなさんにお届けしてゆきます。

11月の番組テーマは「いりびと-異邦人-」

大人気作家・原田マハの美術小説「異邦人(いりびと)」をWOWOWが完全映像化。

美しい京都の情景、由緒ある美術館、原作にも登場するクロード・モネ「睡蓮」など数々の名画がフィーチャーされ、目にも美しく知的好奇心をくすぐられるアートミステリードラマです。

今回、ブッククラブ部長の幅さんが番組をより楽しんでいただくための4冊の本をセレクトしました。

放送告知画像(youtube用)

1冊目:短編回廊 アートから生まれた17の物語

ローレンス・ブロック (編)
田口 俊樹 他 (訳)
ハーパーコリンズ・ジャパン

エドワード・ホッパーの絵に着想を得た小説『短編画廊』の第二弾として、前作とは趣向を変えて複数人の作家に物語を紡いでもらったのが今作の『短編回廊』です。

西はオーギュスト・ロダンから東は葛飾北斎まで、さらにはラスコーの洞窟壁画に至るまで、絵画に限らず古今東西のさまざまなアートを幅広くピックアップし、全17もの作家の個性があふれる短編集に仕上がっています。

読者にとって身近なアートを主題とした作品から読み進めていけるので、芸術に対してつい距離を取ってしまうという方にお勧めしたい一冊です。

中でもリー・チャイルドの「ピエール、ルシアン、そしてわたし」は、十数ページの短い物語でありながら、ルノワールの絵画を取り巻く人々の多様な心象が凝縮された、印象に残るミステリー作品です。

収録されているいずれの作品においても、アーティスト個人に注目するのではなく、彼らを取り巻く環境や人間関係、そして作品の鑑賞者にどんな変化が訪れるのかを細かに捉え、読み手の心を揺さぶってくれます。

モチーフとなっている作品のカラー写真が冒頭に掲載されているので、イメージを具体的に掴みながら読み進められるのも面白い仕掛けです。

2冊目:ギャラリーフェイク

細野 不二彦(著)
ビッグコミックス

1990年代から連載が続いている、アートをテーマにした長寿漫画です。

表向きは贋作や複製作品を専門に扱う一方、裏では盗品をはじめとした、正規ルートでは扱えない品々を取引するアンダーグラウンドな画廊「ギャラリーフェイク」を舞台に、ギャラリストの藤田玲司が魅力的な物語を展開します。

ミステリー性もさることながら、マーケット事情も含めた美術界を俯瞰できる視野の広さが特徴で、作品を読み進めるだけでアート世界への理解を体系的に深められます。

闇取引に手を染める藤田ですが、彼の美術に対する真摯な眼差しや、日本の美術界における閉鎖的な空気に抗おうとする真っ直ぐな姿は、読者の心を掴みます。

藤田を通じて紹介される、古今東西の芸術に関する深い知識や洞察の奥行きが素晴らしく、平易に理解できる内容に仕上がっているので、アートに見識のある人間にしか理解できない、ということはありません。

藤田の助手として登場するアラブ系の少女、サラ・ハリファの天真爛漫で「陽」なキャラクター性が、作中に満ちたダークな雰囲気とうまく調和し、バランスを整えてくれているのにも注目です。

普段入館料を払って鑑賞しているアートが、どういったマーケットを経て私たちの目の前に現れているのか、そして人の欲望をどのように刺激してきたのかに迫り、人間の美と欲を描く作品としても優れているシリーズです。

3冊目:黒い睡蓮

 ミシェル・ビュッシ(著)
平岡 敦(訳)
集英社文庫

『彼女のいない飛行機』を手がけた人気フランス人作家、ミシェル・ビュッシが送るミステリー小説です。

偉大な画家であるクロード・モネが「睡蓮」を描いたとされる、ノルマンディー地方の小さな村が舞台となり、ある日男の他殺体が発見されるところから物語は始まります。

凸凹コンビの警察官が愉快な掛け合いを繰り広げながら、眼科医であり、裏市場に手を出すほどの絵画コレクターでもあった男の真相へと近づく様が描かれるのですが、鍵となるのはとある3人の女たちです。

意地悪、嘘つき、エゴイストという三者三様の性格を有する女たちは、一体何者なのか、そして男を殺したのは誰なのかという問いとともに、モネの「睡蓮」との関連についても言及されます。

物語は長く平行線を辿るものの、クライマックスでストンと収束していく様子は、見事という他ありません。

卓越したミステリー技法をスマートに展開しつつ、タイトルの通りモネの作品との関連性を印象的に表現し切った今作は、数々の賞を獲得し、多くの読者の心を掴んでいるのにも納得です。

4冊目:古都 

川端康成(著)
新潮文庫

1961年から62年にかけて、朝日新聞の連載小説として寄せられていたのがこちらです。

『片腕』のような艶かしさからは離れ、京の都に残された史跡や年中行事、そして四季の移り変わりなどを存分に描き切った作風が特徴です。

老舗呉服屋の娘として育った千重子が、偶然そっくりな背格好の苗子という娘と出会い、実は双子の妹であったことが判明します。姿こそ瓜二つなものの、生き別れとなり真逆の人生を歩んできた姉妹の数奇な運命が、ドラマティックに描かれる作品です。

男女の恋愛模様も大きく描かれ、人間関係に焦点が当たっている一方で、京都の街並みについてもとにかく美しく描かれているのが特徴です。

歴史ある日本の古都の姿や文化を精美に表現した今作は、日本国内はもちろん海外でも高い評価を集め、京都のイメージをグローバルへ進出させるのに一役買ったともされています。

川端本人が京都を愛し、執筆時は京都に滞在していただけでなく、谷崎潤一郎が書いた『細雪』からもインスパイアを受けるなど、他の文学者達が描いてきた京都の姿を、本歌取りのような形で織り交ぜているところも見逃せません。

京都に積層し続けてきた文人たちの歴史が『古都』によって再確認され、ここから新しい世代の層がつもり重なって行く可能性にも想いを馳せられる、味わい深い一作です。

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