「ファンタスティック・ビースト」シリーズの“沼”にハマるなら今! 何度も行きたくなる“魔法ワールド”の魅力を紐解く

映画ライターSYOさんによる連載「 #やさしい映画論 」。SYOさんならではの「優しい」目線で誰が読んでも心地よい「易しい」コラム。最新作『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』('22)の初放送に合わせて、同シリーズの“魔法ワールド”の魅力について、思い入れたっぷりに語ります。

文=SYO @SyoCinema

 WOWOWでは、2023年1月7日(土)に「ファンタスティック・ビースト」(以下「ファンタビ」)シリーズ3作品('16~'22)を一挙放送。今回は、WOWOW初放送となる第3作『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』を中心に、「ファンタビ」シリーズの魅力を改めて考えていきたい。

 そもそも「ファンタビ」とは、「ハリー・ポッター」(以下、「ハリポタ」)シリーズから派生した“魔法ワールド”シリーズの一つ。「ハリポタ」シリーズの第1作『ハリー・ポッターと賢者の石』('01)の約70年前(1920~30年代)を主な舞台にしている。製作順的にいえば「ハリポタの前日たん」なのだが、どちらかがメインというわけではなく「ファンタビ」「ハリポタ」は魔法史における近代と現代のような関係値。それぞれ独立した物語が展開し、両シリーズを押さえておくとさまざまなリンクが見えてきてより楽しめる、という作りになっている。
 「ハリポタ」原作者のJ・K・ローリング自らが「ファンタビ」の脚本を書き下ろしているため可能な方法論だが、掘れば掘るほど作品理解度・味わい・解像度が増すので “沼”にハマりやすい構造ともいえる。

 一例を挙げると、「ファンタビ」の主人公、魔法動物学者のニュート・スキャマンダー(エディ・レッドメイン)は、後にハリーが使う教科書「幻の動物とその生息地」の著者。さらに、ハリーが通う魔法魔術学校ホグワーツのOBでもあり、ダンブルドア校長の教え子だ。こういった形で、「ハリポタ」ファンならニヤリとする仕掛けが無数に張り巡らされている。

 しかも…「ファンタビ」には原作がない。正確に言うと上に述べた通り、原作者のローリングが映画用に脚本を書き下ろしているのだが、小説版がないためわれわれ観客は事前に物語の詳細を知ることができない。知りたければ、映画を観るしかないという状況設定――。それが成立するのは、世界観や物語がわれわれの飢餓感と観賞欲を存分にあおってやまない証左でもあろう。
 前述した「ハリポタ」とのリンクはもちろんのこと、ニュートをはじめとする強力なキャラクターたちが織り成す物語の“続き”を観たい、と思わせる魔力が確かに流れている。

 そして――『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』で、その熱は最高潮に達した。タイトルにある通り、今回描かれるのはアルバス・ダンブルドア(ジュード・ロウ)を含む「ダンブルドア家」の秘密。「ハリポタ」シリーズでにおわされていた内容から、衝撃の新事実まで多数の情報が解禁される。正直、本作を観てから「ハリポタ」に戻ると、また見え方が変わるレベルの驚きといってもいいくらいだ。

 物語は、アルバス・ダンブルドアとゲラート・グリンデルバルド(マッツ・ミケルセン)の再会から始まる。グリンデルバルドは、「ファンタビ」シリーズのヴィラン(悪役)であり、マグル(魔力を持たない人間)を魔法使いが支配する世界をつくろうとする闇の魔法使い。2人の過去とは? かつて愛し合った2人が、なぜ道を分かつことになったのか? ロウとミケルセンという二大スターの熱演も相まって、序盤から見応えたっぷり。両者の相克が、魔法界いや人間界全体を覆う大事件に発展していく――。

 そこにニュートはどう絡んでくるのか? ジェイコブ・コワルスキー(ダン・フォグラー)とクイニー・ゴールドスタイン(アリソン・スドル)の恋の行方は? ダンブルドアとつながりがあると噂されているクリーデンス・ベアボーン(エズラ・ミラー)の真相は? ・・・など、ファンが気になる情報が盛り盛りなのもうれしいところで、人気キャラクターの魔法動物ニフラーのテディとボウトラックルのピケットも大活躍する。その分、「ファンタビ」過去作をきっちりとおさらいしておく必要が生じるため、今回の一挙放送は非常に親切な機会といえるだろう。ぜひこの機会を逃さずに、どっぷり浸っていただきたい。

 ここまでは主にストーリー面について語ってきたが、「ファンタビ」シリーズの面白さはそこだけにとどまらない。「ハリポタ」シリーズから続くこの“魔法ワールド”自体が、「行ってみたい」「何度も体感したい」と思ってしまうほど、たまらなく魅力的なのだ。クラシックな建造物や衣装に、魔法が映えるこのテイストは、本シリーズでしか味わえないもの。

 しかも「ファンタビ」シリーズでは「世界各所が舞台になる」がコンセプトの一つになっており、魔法ワールドが拡張。英国ロンドンに加えて第1作ではニューヨーク、第2作ではパリ、第3作ではベルリンが登場。ご当地ごとに変わる魔法ワールドの様相を堪能できる。
 ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの人気エリアや、タリーズコーヒーとのコラボレーション、2023年夏には東京のとしまえん跡地に「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京 - メイキング・オブ・ハリー・ポッター」がオープン予定など、日本でもいまだに熱が冷めないのも大いにうなずける。

 「ファンタビ」シリーズのスタッフは、「ハリポタ」シリーズから引き継がれ、アカデミー賞受賞俳優エディ・レッドメインが主演。そしてジュード・ロウが若き日のダンブルドア先生を演じるという豪華度、さらに第1作ではコリン・ファレル、第2作ではジョニー・デップ、第3作ではマッツ・ミケルセンが参加するオールスター仕様になっており、魔法使いに扮した俳優たちの躍動も映画好きをくすぐる。
 少年少女の成長を描く「ハリポタ」と異なり、最初から大人たちの物語であるため、魔法が駆使されまくる、というのも「ファンタビ」の特長だ。

 余談だが、1987年生まれの僕は「ハリポタ」ドンズバ世代。小学校高学年~中学生のタイミングで、原作と映画にどハマりした。『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』('11)は2011年公開のため、小学生~社会人になるまで追いかけていた作品といえる。そんな自分だから、2016年に『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』が公開された時の興奮たるや! 映画を観る喜び以上のワクワクが、そこにはあった。
 第2作『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』(’18)公開時にエディ&ジュードにインタビューが叶い、着込んでいったファンタビTシャツを喜んでもらえたのも良い思い出だ。

 20年以上にわたり、多くの人々の人生に彩りを与え続ける魔法ワールドシリーズ。この先どんな展開を見せていくにしろ、全力で乗っかっていきたい。

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