“ステージ派”なら押さえたい! 9月の必見舞台5作品!
はじめまして。7月からWOWOW公式noteの“中の人”デビューした「自称WOWOW社内指折りの“ステージ派”」Fです(恥ずかしいですがプロフィールを後述します)。
さて、WOWOWでは新作・旧作合わせると月20本ほどのステージを放送(・配信)しています。ミュージカルから2.5次元、落語からオペラまで…ジャンルは多様で、チケット入手困難な作品ばかり。
WOWOWをご覧になる“ステージ派”の皆さまに、新たな1作品との出会いを提供できたら…そんな思いから、「ズバリ!いまWOWOWでしか見られない」(※)という5作品の紹介をいたします!
(※執筆時点ではDVD等は確認できない、放送時期に字幕ありで見られるのはWOWOWだけである作品、など)
【Don't miss out! 9月のWOWOW舞台5選】
①9月MET特集:演出違いで楽しむ!トニー賞受賞演出家B・シャー版&M・メイヤー版 9月16日(金)後6:00、17日(土)後2:30放送
メトロポリタン歌劇場(MET)は、2020年3月から1年半、パンデミックにより歌劇場閉鎖を余儀なくされました。9月はWOWOWでの新たなシーズンの幕開けとなります。
シーズン1作目の放送となるのが「ヴェルディ《リゴレット》新演出」。演出のバートレット・シャーは、2015年に渡辺謙、ケリー・オハラ出演で話題となった「The King and I 王様と私」でトニー賞を受賞しています。
原作は16世紀イタリアの設定ですが、今回は1920年代ファシズムの幕開けの時代のドイツに舞台を移し、アール・デコの気品とは裏腹に危険と堕落を描いているそうで、どんな劇空間がつくられるのか…とても気になっています。
演出違いで楽しんでいただきたいのがマイケル・メイヤーの演出版。こちらは1960年代のフランク・シナトラ全盛時代のアメリカ・ラスベガスが舞台。プレイボーイの男爵は人気シンガーに、道化師はコメディアンに、ヒロインが刺され袋詰めにされて入れられるのは車のトランク…。と斬新な設定となっております。ご存じマイケル・メイヤーは「モダン・ミリー」「アメリカン・イディオット」「春のめざめ」などを手掛けた鬼才。トニー賞常連のブロードウェイの巨匠たちの豪華演出を見比べていただきたいです!
②「ジャニス・ジョプリン」 9月17日(土)前6:30放送、WOWOWオンデマンドでアーカイブ配信中
元祖・音楽フェスティバルの女王にして1960年代の音楽シーンを席巻した伝説のロックスター、ジャニス・ジョプリンの姿を描いた極上のミュージカル・ショー「ジャニス・ジョプリン」。
注目は、主演メアリー・ブリジット・デイヴィス。なんと彼女は、本作が制作される前からジャニス役を演じていた人なのだそうです。2002年、24歳で歌手活動をスタートし2005年に「Love, Janis」というやはりジャニス・ジョプリンを描いた作品のオーディションでジャニス役を射止め、ヨーロッパツアーに参加。2012年に「A Night with Janis Joplin(本作原題)」にてジャニス役に抜擢され、Off-Broadway、そしてBroadwayに進出。彼女の高い歌唱力と演技が評価され、2014年のトニー賞ではミュージカル部門最優秀主演女優賞にノミネート。ジャニス・ジョプリンのDNAが認めた魂のこもった歌声をぜひ堪能していただきたいです。
さらに、2022年8月には、主演のジャニス・ジョプリン役にBiSHのアイナ・ジ・エンドを迎え、日本初公演が行われました。3日間だけのスペシャルな公演の模様は10月29日(土)にWOWOWで独占放送。こちらもぜひチェックしていただきたいです!
③「THE BEE」演出:野田秀樹 阿部サダヲ×長澤まさみ×河内大和×川平慈英 9月17日(土)後0:45放送
10秒に一度、何かが起こる……ユーモアと戦慄の75分!!
9.11同時多発テロ事件に触発された野田秀樹が、英語戯曲として書き下ろした『THE BEE』。
この作品は、筒井康隆の短編小説『毟りあい』を題材に、2003年に野田が英国で現地の俳優たちと行なったワークショップから生まれたそうです。同時に、戯曲を最初から英語で執筆すべく、その後、井戸役を演じたキャサリン・ハンターや共同脚本のコリン・ティーバンらと作業を重ねて創作を進めました。その作業現場を想像するだけでも、1本の演劇を見ているようなゾクゾク感を覚えますね…そして2006年にロンドンで初演を迎えています。
動きと感情が押し寄せた後の静けさが印象的でした。阿部サダヲの狂気、長澤まさみの繊細な演技、河内大和の演劇人魂、瞬時に豹変する川平慈英の演技力、と見どころは尽きません。見るたびに新しい発見があり、繰り返し見てはいろいろと考えている舞台の1本です。
④大人計画「ドライブイン カリフォルニア」作・演出 松尾スズキ 阿部サダヲ 麻生久美子 皆川猿時 猫背椿 小松和重 村杉蝉之介 田村たがめ 谷原章介 9月24日(土)後8:00放送
初演は1996年。松尾スズキによる「日本総合悲劇協会」の第1作として上演されました。そのほかの「日本総合悲劇協会」の作品は「ふくすけ」「業音」等々。大人計画劇団員の役者さんと、そうでない役者さんがキャスティングされるので、いつも”化学反応”が楽しみです。
松尾さんの作品で3度以上上演されてきた作品は筆者が思っていたより少なかったです。「ふくすけ」「マシーン日記」「悪霊」「キレイ」(どれも名作ですね)。そして今回の「ドライブイン カリフォルニア」が仲間入りしたのです。
人生の哀歓が入り混じり、松尾ワールドが詰まった本作。今回、キャストがガラリと変わり、前回や前々回をご覧になった方にも新しい作品の見え方や発見があるかもしれません。
⑤熊川哲也 Kバレエ カンパニー「白鳥の湖」(2021) 9月10日(土)前5:45(WOWOW 4Kで放送)、WOWOWオンデマンドでアーカイブ配信中
熊川哲也による「白鳥の湖」は、2003年に誕生しました。
オデット/オディールを演じるのは2021年1月にプリンシパルとして迎えられた日髙世菜です。ロシア国立ワガノワ・バレエ・アカデミーに留学し、2011年からはルーマニア国立バレエ団に、2016年からはアメリカのタルサバレエに所属。それぞれでプリンシパルとして活躍したそうです。
筆者もこの公演を拝見しましたが、しなやかな腕と背中の動きが本当に白鳥のようでした。Kバレエカンパニーの公演は舞台美術や照明も美しく、本作の湖畔も、舞台上にあるものとは思えないほどの存在感でした。その湖を背景に、白鳥の姿がくっきりと映えていたのが印象的です。
終わりに…
「宝塚プルミエール 宙組『HiGH&LOW -THE PREQUEL-』」(9月24日(土)前7:45放送)では、TVドラマ、映画、漫画などで知られる「HiGH&LOW」シリーズの作品群の前日譚の舞台化作品を特集します。LDH JAPANと宝塚歌劇団によるコラボレーションから、どのような熱い男たちの物語が生まれるのか期待が高まりますね。
宝塚プルミエールでは、宙組トップスター・真風涼帆さんと芹香斗亜さん、桜木みなとさんと瑠風輝さんの撮り下ろしインタビューや舞台映像にて作品の魅力を紹介するのでぜひチェックしてみてください。
もう一度見たい作品がある方も、劇場に見に行けなかった作品がある! という方も。ぜひWOWOWステージをお楽しみいただければ幸いです。
クレジット
「ジャニス・ジョプリン」:© Jason Niedle
「メトロポリタン・オペラ ヴェルディ《リゴレット》新演出」:© Ken Howard/Metropolitan Opera
「メトロポリタン・オペラ 《リゴレット》M・メイヤー演出版」:METライブビューイング©Ken Hoawrd/Metropolitan Opera
「『THE BEE』演出:野田秀樹 阿部サダヲ×長澤まさみ×河内大和×川平慈英」:NODA・MAP番外公演「THE BEE」(撮影:篠山紀信)
「大人計画『ドライブイン カリフォルニア』作・演出 松尾スズキ 阿部サダヲ 麻生久美子 皆川猿時 猫背椿 小松和重 村杉蝉之介 田村たがめ 谷原章介」:撮影/田中亜紀
「熊川哲也 Kバレエ カンパニー『白鳥の湖』(2021)」:© Yumiko Inoue