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もうシンプルに「見てくれよ!」としか言いようがないんだよね――『カセットテープ・ダイアリーズ』を観てスピードワゴン・小沢さんが心撃ち抜かれたセリフとは?

映画を愛するスピードワゴンの小沢一敬さんが、映画の名セリフを語る連載「このセリフに心撃ち抜かれちゃいました」
毎回、“オザワ・ワールド”全開で語ってくれるこの連載。映画のトークでありながら、ときには音楽談義、ときにはプライベートのエピソードと、話があちらこちらに脱線しながら、気が付けば、今まで考えもしなかった映画の新しい一面が見えてくることも。そんな小沢さんが今回ピックアップしたのは、ブルース・スプリングスティーンのロックに乗せて贈る青春音楽映画『カセットテープ・ダイアリーズ』(’19)。さて、どんな名セリフが飛び出すか?

取材・文=八木賢太郎 @yagi_ken

──今回は1980年代のイギリスの田舎町を舞台に、鬱屈した日々を送るパキスタン系移民の少年がブルース・スプリングスティーンの音楽と出会い、人生が180度変わっていく物語、『カセットテープ・ダイアリーズ』です。

小沢一敬(以下、小沢)「これね、劇場公開当時からずっと観たかったのよ。映画館で予告を観て、『絶対に俺の好きなタイプの作品だろうな』って思ってて」

──たしかに、小沢さんが好きそうな作品ですね。

小沢「でもなかなか観るタイミングがなくてさ。今回、ようやく観ることができた。思った通り、俺の好きなタイプの映画ではあったんだけど、実は俺、ブルース・スプリングスティーンを通ってないのよ、10代の頃とかに。だから、まったく知らないの」

──あ、そうなんですか。

小沢「俺が知ってるブルース・スプリングスティーンの情報は、『尾崎豊が彼のことをすごい好きだと言ってた』という、それだけ。だから、たぶん尾崎みたいに、若者たちを奮い立たせるようなミュージシャンなんだろうなって」

──なるほど。確かに尾崎豊さんに近いかもしれません。

小沢「とにかく、俺はそれぐらいブルース・スプリングスティーンのことを知らないんだけど、この映画の主人公、ジャベド(ヴィヴェイク・カルラ)が初めてブルース・スプリングスティーンの曲をカセットテープで聴いて、ワーッとなって、いてもたってもいられなくなって、嵐の中、外へ飛び出しちゃう感じとかは、俺がザ・ブルーハーツを初めて聴いたときと同じなんだろうなって、共感したよね」

──誰もが10代の頃に一度は体験した感じですよね。

小沢「どの世代にも、必ずそういうミュージシャンがいるんだよね。『俺らの時代はブルーハーツがいたけど、今の時代はそういうバンドがいないよね』とか言う人がいるけど、俺らより10歳下の世代には、例えば銀杏BOYZだったり、今の若い子にもそういう存在はいるんだよね」

──音楽を聴く形こそ変わってますけど、初めて聴いたときにワーッとなる、その気持ち自体は今も変わらないですよね。

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小沢「とにかく、そういう自分の思春期のことを思い出しちゃうような、いい映画だったよ。ただね、この映画の中身についてあんまり語り過ぎると、せっかくの良さが薄れちゃう気がするんだよね。だからもう、シンプルに『観てくれよ!』としか言いようがないんだよ」

──そうですね。この連載では、ネタバレするときには<ネタバレ注意>を表示しますけど、いつも以上にネタバレしたくない作品ではあります。

小沢「だからさ、好きなシーンもたくさんあるんだけど、それについても、『まずは観てくれねえと話せないな』っていう感じよ(笑)」

──とはいえ今回も、一番シビれた名セリフをピックアップしてもらわなきゃいけないんですが…。

小沢「そうだよね。まあ、一番刺さったというかグッときたのは、『彼は本当にアメリカ人なのか?』

──ネタバレしたくないって言ってるのに、大事なシーンのセリフじゃないですか(笑)。

小沢「だから、今回はこれがどんなシーンで、誰が言うセリフなのかは説明しないでおこうよ」

──そうですね。とにかく観てくれよ、と。

小沢「うん。実は俺さ、あるところから歌詞を書く仕事を頼まれたのね。せっかくだから挑戦してみようと思って、もう書いて渡したんだけどさ。この映画を観る前に書いておいてよかったな、と思ったの」

──なぜですか?

小沢「夏の恋の歌みたいな爽やかな歌詞を書いたんだけど、もしこの映画を観てから書いてたら、絶対に影響されて、若者の自立を熱く歌う歌詞にしちゃってたもん。『立ち上がれ、若者たちよ!』みたいな(笑)」

──拳を振り上げる、ブルース・スプリングスティーン風味満載の(笑)。

小沢「そうそう。危ないところだったよ(笑)」

──ちなみにこの映画は、父親と息子の葛藤の物語でもあるんですが、小沢さんが若い頃、お父さんやお母さんとの関係はどんな感じだったんでしょうか?

小沢「俺は、昔は父親とはあんまりしゃべらなかったかな。上京して、漫才とかの仕事で食えるようになった頃から、ちゃんと話せるようになった。たぶん俺がひねくれてただけで、もっと俺から話し掛ければ、昔もちゃんと応えてはくれたと思う。ただ、結果的に食えるようになったからいいけど、お笑いの世界なんて売れないのが当たり前だから。やっぱり親からすれば嫌だったんじゃないかな。そもそも俺は、芸人を目指す前もフラフラしてたし」

──ご両親の立場になれば、心配の種だった?

小沢「そうだねぇ。この映画の中にも、父親が『目立ってはダメなんだ』って言うセリフが出てくるけど、田舎の町で暮らしてると、そういうところもあるわけよ。世間体とか、そういうのが。俺が生まれたのも愛知県の端っこの本当に田舎の町だったから、とにかく『恥ずかしいから、目立つようなことしないでよ』って感じで。まあ、15歳で青い髪のリーゼントにしてたら、『小沢さんちのカズ君、おかしくなっちゃった』って言われるよね(笑)」

──青い髪のリーゼントだったんですか!?

小沢「うん。10代の頃は、一通りの髪型をやったもん。リーゼントもモヒカンもやったし、色も青とか赤とか紫とか…そうだな、虹の色は全部やったかもしれない(笑)。だからこそ、この主人公の気持ちも分かるし、年を取ってきたから、お父さんの気持ちも分かっちゃうしね。…そういえば、主人公が洋服店でバイトしてるときに、近くに好きな女の子がいるのを見つけて、急にブルース・スプリングスティーンを歌い始めて、みんなで踊り出すシーンがあるじゃん」

──『涙のサンダー・ロード』を歌うシーンですね。

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小沢「10代の頃の俺だったら、あれを観て『そうだよな、やっぱりこうじゃなくちゃ!』って言ったと思うんだけど、40代になった俺が思ったのは、『いやいや、バイト中じゃん、大丈夫なの?』って(笑)」

──まともな大人の意見!

小沢「ホント、急に大人な自分が出てきちゃって。本当なら、あそこで一緒に歌ったり踊ったりするような楽しい大人になるつもりだったし、むしろ、そういう大人になったつもりでいたのに、あれを観て真っ先に思ったことが、『いや、仕事中! そういうのはバイト終わってからやろうよ』って」

──そうやって、人は年を取っていくんですね。

小沢「そう。なんだか、つまらない大人になってしまったね、俺も!(笑)」

小沢さんプロフ

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クレジット:©BIF Bruce Limited 2019

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