気になる本はありますか?「WHO I AM シーズン5」とセットで読みたい本4選!
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気になる本はありますか?「WHO I AM シーズン5」とセットで読みたい本4選!

WOWOWブッククラブでは、毎月のテーマに沿ったおすすめ番組と関連する本を記事としてまとめ、noteをご覧になるみなさんにお届けしてゆきます。

8月の番組テーマは「パラリンピック・ドキュメンタリーシリーズ WHO I AM シーズン5」

WOWOWと国際パラリンピック委員会(IPC)の共同プロジェクトとして2016年にスタートし、世界最高峰のアスリートに迫る大型シリーズの第5弾。

ブッククラブ部長の幅さんが今回、番組をより楽しんでいただくための4冊の本をセレクトしました。

youtube8月番組カット

1冊目:リアル

井上雄彦(著)
集英社

国民的漫画家である井上雄彦さんが描く、車いすバスケットボールのお話です。井上さんの代表作といえば『スラムダンク』ですが、こちらを容姿も性格も端正な男たちによる英雄譚であるとすれば、『リアル』は一人として英雄が登場しない、生々しい群像劇と言えるでしょう。

将来有望な陸上選手だったものの、不慮の病で選手生命を絶たれ、塞ぎ込んだ末に車いすバスケに出会う戸川清春や、強面ながらも可愛らしい名前が印象的な野宮朋美。自尊心が強く、周囲と比較しながら器用に世渡りをこなす高橋久信と、印象的な主人公たちが次々と登場します。

特に野宮については、粗暴ながらも繊細で実直な人間臭さに心惹かれます。主人公たちは車いすバスケ、ひいてはハンディキャップに対して、三者三様の接し方で価値を見出し、人間的な成長を遂げますが、三人は必ずしも運命共同体というわけではありません。

車いすバスケを媒体としながら、互いに離れたり近づいたりを繰り返し、各々の「リアル」と向き合いつつ、魅力的な周囲の登場人物たちとの関係性の中で、物語は紡がれていきます。

2冊目:記憶する体

伊藤亜紗(著)
春秋社

2020年のサントリー学芸賞など、複数の受賞歴を持つこちらの一冊は、東京工業大学で准教授を務めながら、美学や現代アートを専門とした研究を続けている伊藤亜紗さんによるものです。

身体にハンディキャップを持つ12人に焦点を当て、インタビューを通じて体の記憶を探り、ハンディキャップの向こう側、つまりそもそも人間の身体とは何か、という問いにまで発展します。

身体に不自由が発生しても、体は試行錯誤を繰り返して、不自由が障害とならないよう最適化していくわけですが、そんな身体経験のプロセスはどこまで普遍性を持っているのか、という問いがこの本の大きな読みどころです。

普遍性があればあるほど、共通認識は生まれやすい一方、個人の経験が体系化されることで削ぎ落とされる固有性、つまり体のローカル・ルールも存在します。本書ではそんな一人一人の事例における体の記憶に注目し、インタビュイーの固有の経験に迫る過程を記していきます。

わからないけど未知ではない、という状況が、いかにハンディキャップを理解する上で重要な視座であるかを、丁寧に教えてくれる一冊です。

3冊目:わたしと小鳥とすずと―金子みすゞ童謡集

金子みすゞ(著)
フレーベル館

日本の童謡詩人として名高い、金子みすゞの代表作です。26歳という若さでこの世を去ってしまったこともあり、彼女が残している詩の数は決して多くはありません。

しかし童謡を前提とした作品の数々は、いずれも心地の良いリズムが意識されており、老若男女を問わず楽しめるものばかりです。優しく美しく、それでいてどこか悲しげな作風が金子みすゞの持ち味とも言えますが、そんな彼女らしさを堪能できるのがこちらの一冊です。

表題作となっている『わたしと小鳥とすずと』では「みんなちがって、みんないい」という一節が含まれているように、彼女が読み手の多様性を常に心がけている様子が顕著に表れています。

子供向けの詩であるとはいえ、大人になってからでも読めてしまうどころか、当時は知りもしなかった世界の広さや持たざる者の存在も脳裏をよぎるなど、幼少期とは異なる読後感を味わえます。

慈愛や祈りの言葉が100年以上も前につづられ、今日まで届いているというのは、実に素晴らしいことではないでしょうか。

4冊目:でんしゃは うたう

三宮麻由子(文)、みねおみつ(絵)
福音館書店

こちらの絵本を手掛けたのは、『そっと耳を澄ませば』などの著書で有名なエッセイストである三宮麻由子さんです。ある駅に電車がやってきて、次の駅に到着するまでの過程を描いただけのシンプルなお話ですが、実際に読んでみると、非常に朗読が難しい作品であることがわかります。

「たたっ つつっつつ たたっ つつっつつ ねん ねん ねん ねん」といった表現が繰り返されていますが、これは電車に乗っている時に聞こえてくる音を捉えた言葉であることがわかります。

著者の三宮さんは全盲の方で、聞こえてくる音を細やかに言葉に落とし込み、文章にすることでこのような作品を作っています。一般に広く共有されている電車の擬音語といえば「ガタンゴトン」ですが、実際に聞こえてくる音というのはもう少し奥行きがあるものです。

作中の「たたっ つつっつつ」というのは、「ガタンゴトン」の解像度をさらに高め、彼女なりに探し当てた音であり、電車に乗る、という体験の中にどれだけ多彩な音が溢れているかを伝える描写でもあります。

鉄橋に差し掛かった時の音や、踏切を通り過ぎた時の音の書き分けがあり、音の大小が文字の太さで描かれるなど、文字を通じて音の聞こえ方に豊かな広がりを得られる作品です。

本来文字に起こすことができない音の世界を文字で表現しようと、これまで多くの先人たちが果敢にチャレンジしてきたわけですが、そんな人類の挑戦の根っこの部分を、この作品から感じ取れます。

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