Charデビュー45周年企画として開催された、伝説のバンドJohnny, Louis & Charトリビュート公演。ゲストに金子マリを迎えたステージで示されたロックンロールの本質とは
日本の音楽シーンの変遷を語る上で欠かすことが出来ない存在。そして、今なお最高峰にして最前線に君臨するLIVING LEGEND、それがCharだ。
8歳でギターをはじめ、10代に入りバックギタリストとしてキャリアを重ねた彼は、そのスケールの大きなギターワークと卓越したテクニックで若くして知る人ぞ知る存在となる。
プロデビュー翌年の1977年には2ndシングル「気絶するほど悩ましい」が大ヒット。以降、シングルヒットを連発すると共に、俳優活動でも独自の存在感を発揮、一躍時の人へ。
しかし、彼は煌びやかなスターの座に固執することなく、本物のロックンロールを追求する。ジョニー吉長(drums)、ルイズルイス加部(bass)と共にスリーピース・ロックバンド、Johnny, Louis & Char(JLC)を結成。のちにPINK CLOUDとバンド名を変え、活動休止に至るまで長きにわたり活動を行った。
多彩な活躍で知られるCharのキャリアの中でも、JLCそしてPINK CLOUDで描いた軌跡は危険な色気と魅力にあふれ、今なお語り継がれている。
ロックファン垂涎のJLC / PINK CLOUDトリビュート2DAYS公演はCharデビュー45周年企画の第三弾として計画されたが、彼の体調不良で一旦は延期。当初の予定から約半年後に遂に実現した。
6月27日、LINE CUVE SHIBUYA。ロック好きの強者たちが埋め尽くす中、Charが舞台に登場する。
「Kindesalter」をフィンガー・ピッキングし、不敵に笑う。1曲目は
インストナンバー「宇治茶屋第序幕」。彼の活動を支えるZAX(drums)と
澤田浩史(bass)が刻むタイトなリズムの上で、骨太なギターが放たれる。
続く「You Keep Snowin’」では、エモーショナルな歌声からギターソロへ。着火した聴き手の心を「Wasted」のギターリフがさらに過熱させる。
ブルージィーな「Open Your Eyes」では、ゲストの金子マリが登場。Charと声を合わせて歌う。
「籠の鳥」「Song In My Heart」「Cloudy Sky」。ジョニー吉長とのハーモニーが印象的だったスローナンバーを二人で歌い、お互いの魂(ソウル)を高めていく。
圧巻は「風に吹かれてみませんか」だった。高度成長期を経てバブルへと向かう日本社会、硬直化した価値観に対して一石を投じた若き日のChar。その真摯なメッセージが蘇る。
瞳を潤ませながら立ち尽くす観衆の姿もとても印象的で、感慨深いひとときだった。
金子マリのソロ楽曲「Don’t Cry My Baby」をフィーチャーした後、「Finger」「Head Song」と再びスリーピースで激しいパフォーマンスを続ける。
本編ラストはJLCのファーストアルバム『FREE SPIRIT』収録の「You’re Like A Doll Baby」。1979年7月、日比谷野外音楽堂で開催したフリーコンサート。その音源がアルバムとしてリリースされたわけだが、当時の音楽業界が騒然となったスリリングな楽曲を、Charはさまざまな思い出を散りばめた上で見事に決(極)めてみせた。
幾多の困難に直面することを覚悟の上で、ロックンロールの道へ踏み出したChar。その足跡を知るからこそ、この曲に込めた彼の矜持が痛い程伝わって来た。
アンコールの最後には、再び金子マリが加わりファーストアルバムから「Natural Vibration」を披露。熱狂のうちにプレミアムな夜は幕を閉じた。
JLC名義でリリースされた3枚のアルバム収録曲を中心に展開された、この夜のJLCセッション。すでに、ジョニー吉長とルイズルイス加部の二人は鬼籍に入るが、彼らがCharと共に創り上げたサウンドは今なお輝きを放っている。ステージ後方でネオンサインによって光り続けたJLCの3文字が、それを象徴しているようだった。
「時々思い出してやってください」Charがポツリと呟いた一言が、いつまでも胸に沁みた。
ソウルミュージックやリズム&ブルース、ブリティッシュ・ロックなど、様々なルーツ音楽へのオマージュがもたらす格別のマリアージュに
誰もが酔いしれた夜だった。
WOWOWでは、この至高の2DAYS公演を8月9月と2か月連続で放送・配信する。まずは初日の模様を8月13日日曜午後1時からご覧いただきたい。
かつて鋭利な刃物のようなサウンドに胸を震わせた思い出に、円熟味を増した重厚なライブパフォーマンスで深みを与えてくれたこの夜。
ロックンロールは瞬間の衝動で生まれ、(その後も)転がり重ねていくものだ。Charが紡いできた音楽が決して色褪せない理由、ロックンロールの本質が確実に存在していた。
リアルタイム世代は勿論、彼の名声を知っていてもその音楽に触れたことがない新しい世代にも必見のライブだと言って間違いない。
photo by 今井俊彦
【番組情報】
Char 45th Anniversary Tribute Live
Day1 ~JLC session~
8月13日(日)午後1:00 [WOWOWライブ][WOWOWオンデマンド]
Day2 ~PINK CLOUD session~
9月10日(日)午後6:00[WOWOWライブ][WOWOWオンデマンド]
※各番組放送終了後から1週間WOWOWオンデマンドでアーカイブ配信あり