新生“CASIOPEA-P4”始動後、初のアルバム『NEW TOPICS』を完全再現!日本が世界に誇るフュージョンバンドがメンバーチェンジを経て開催した初めてのツアー。彼らがステージで描いた音楽の魔法とはー
1977年結成、1979年にレコードデビューしたフュージョンバンド、CASIOPEA。彼らはデビュー以来、音楽シーンの最前線で活躍。日本だけでなく海外でも作品を発表し、コンサートを重ねてきた。
「スリル、スピード、スーパーテクニック」を掲げフュージョンブームを牽引した後、メンバーチェンジを経た第2期の活動と活動休止を経て、2012年にはCASIOPEA 3rdとして復活。その後も積極的な活動を続けて来た。そして、結成45周年を迎えた昨年。彼らは大きな節目を迎えた。
1980年代に第1期をメンバーとしてバンドを支え、1997年以降も第2期および“3rd”をスペシャル・サポートとして共に活動してきたドラムスの神保彰(Dr.)が脱退。新たに今井義頼(Dr.)が正式メンバーとして加入し、バンド名をCASIOPEA-P4へと変更した。
弱冠30代の今井だが、東京音楽大学在学中に同大学で教鞭を取っていたリーダーの野呂一生(G.)、鳴瀬喜博(B.)から薫陶を受けた、CASIOPEAの音楽で育ってきた新世代。加入から10年が経過した大髙清美(Key.)と4人での新編成となった彼らは、10月にニューアルバム『NEW TOPICS』を発表。そして、12月には“P4”となって初めてのツアーを開催。新生CASIOPEAサウンドに大きな注目が集まった。
ツアー初日を迎えた12月11日、寒風吹きすさぶ中で新旧幅広いファンが、東京・EX THEATER ROPPONGIに集結。彼らの新たな門出を見届けようと、会場を熱気で満たした。
定刻が過ぎ、4人がステージに登場。今回のツアーは、最新作『NEW TOPICS』に収められた楽曲を収録順に演奏するいわば「お披露目」からのスタート。1曲目は野呂が書き下ろした「TODAY FOR TOMORROW」。新たな第一歩を踏み出すバンドの決意表明とも取れるポップナンバーだ。抜け感の強いギターソロが、野呂の晴れやかな心情を物語るようだ。
続く「DREAMER’S DREAM」。今井がスティックを刻み、鳴瀬のベースが寄り添うイントロ。野呂のギターが重なり、さらには大髙のソロが印象的なフレーズを奏でる。楽曲の展開につれて4つの音のスパークも激しさを増し、“P4”としての矜持が示される。
ミディアムナンバー「UNTHINKABLE」を経て、鳴瀬がMCで新メンバー・今井を紹介。そして、自身が作曲した「NoOne...EveryOne...」について語る。コロナ禍での分断やロシアのウクライナへの侵攻など、ここ数年世界に立ち込める暗雲の中で、鳴瀬が感じた深い憤りや哀しみ。それらを音楽で表現した作品だ。(曲名は「No one learned, Every one forgot」という言葉から取っている。)
野呂のギターが鳴瀬の熱い想いに呼応し、鳴瀬と今井のリズム隊も一音一音に感情を刻み込む。大髙の奏でる80年代のシンセサイザーを思わせる懐かしい音色は、穏やかだった時代への追憶を蘇らせる。「音楽にメッセージを込める」CASIOPEAの真骨頂とも言える名演だった。
続く大髙作曲の「Vivaciously」はブギースタイルの痛快なナンバー。コロナ禍の停滞した空気を吹き飛ばす演奏で聴き手を鼓舞する。いつも通りつとめて明るく振る舞う大髙のトークも含めて、彼女が音楽に込める慈愛が伝わってくる。
そして、今井の初々しい初MCから彼が書き下ろした「DAILY BREAD」へ。今井はブラシを使った繊細なドラミングでバンドに新風を吹き込む。各メンバーそれぞれの個性あふれる作品でバンドとしての「奥行き」を提示され、場内からは溜息が漏れる。
そこからは一気にラストスパート。「A BEAM OF HOPE」は“これぞCASIOPEA!”と言うべき8ビートのアップテンポ・ナンバー。一転して、「PURE HEART」は16ビートのバラード。
“作曲家・野呂一生”の二つの表情を魅せた後、各メンバーソロがステージ映えする「FLY ME TO THE FUTURE」へ。ライブ感のあるアルバム作りが見事に結実した1曲だ。バンドアンサンブルの難易度の高さと、それを笑顔でこなしてみせる彼らの表情がまた素晴らしい。
最後はハイテンポな「THANKS A LOT」。ニューアルバムはこれで大団円。「ここからは歴史を辿ってみましょう」と野呂が笑顔を見せる。
1980年台初頭に発表された「GYPSY WIND」と「DOMINO LINE」は第1期を代表する人気ナンバー。当時に蘇ったかのような新鮮さが演奏の至る所から溢れ出てくるのが、ファン的には堪らない。
第2期からは、1991年発表アルバム『FULL COLORS』に収められたハイパーナンバー「FIGHT MAN」。独特のハネ感やグルーヴィーな展開を、今井のパワフルなドラミングが推進する。楽曲が若返ったかのような見事なプレイだった。
同アルバム収録の「TOP WIND」では、印象的なギターリフとギターソロで野呂が“極み”へと誘(いざな)う。
このブロックの締めはCASIOPEA 3rd として2013年に発表した「LIVE IT UP」。バンドの足跡を噛み締めながら、ただ振り返るのではなく現在進行形のスパイスを加えてくれた5曲。往年のリスナーも痺れる名演に聴衆はヒートアップする一方だ。
そして、メモリアルな夜はついにクライマックスへ。疾走感あふれるアッパーチューン「CATCH THE WIND」で客席を極限まで煽り、「TOKIMEKI」で更に加速度を増す。最後は彼らの音楽を広く世界に知らしめた名曲「ASAYAKE」。完璧なフィナーレだった。
2010年代から1990年代そして1970年代と、代表曲のタイムマシンに乗って音楽のフライトを満喫した気分だった。最高のゴールにオーディエンスは総立ちとなり、音楽の余韻に浸りながらも熱いエールを4人のメンバーに贈り続けていた。
CASIOPEA-P4がこの夜ステージで魅せてくれた“巧み”。それは言い換えると「進化」と「深化」だ。これまで築き上げてきたサウンドの完成形に瑞々しさを加え、さらに磨きをかける。熟成していながらフレッシュで、それでいて芳醇なフレーバーが放たれる。まさに“最高峰”と言っていいパフォーマンスだった。
彼らの音楽と人生の旅を共にして来たが、その時間はまだまだ続くことを確信した。感慨で胸がいっぱいになると同時に、明日への勇気を与えられた思いがした。それこそが彼らの音楽の魔法だ。
WOWOWでは、CASIOPEA-P4の各メンバーのインタビューも交えて、この夜のステージの模様を独占放送・配信する。新たな伝説の幕開けを、ぜひ番組で体感して欲しい。
撮影:横井明彦
<番組情報>
2カ月連続!CASIOPEA-P4 始動スペシャル
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