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気になる本はありますか?イチオシの「WOWOWオリジナルドラマ」とセットで読みたい本5選!

WOWOWブッククラブでは、毎月のテーマに沿ったおすすめ番組と関連する本を記事としてまとめ、noteをご覧になるみなさんにお届けしてゆきます。

1月の番組テーマは「WOWOWオリジナルドラマ」


吉田羊をはじめとする豪華キャストがさまざまな時代で起きた 未解決事件の隠された真実を掘り起こす人気シリーズ「連続ドラマW コールドケース3 ~真実の扉~」。

国民の税金を守るため、6兆7800億円の不良債権回収に精鋭たちが立ち上がる「連続ドラマW トッカイ ~不良債権特別回収部~」。

今回、開局30周年記念でもある、それぞれの番組をより楽しんでいただくために5冊の本をセレクトしました。

サムネ用

今月の選書のポイント

「コールドケース3」では通底するテーマである未解決事件にちなんだ1冊、あるいは主人公が抱えるパーソナルな部分に光を当てたり。

「トッカイ」ではそもそも負債の本質から考える1冊など、幅広くラインナップしています。

それでは番組とセットで読んでほしい5冊をご紹介します。

選書・コメント=幅允孝(WOWOWブッククラブ部長)

1冊目:傷を愛せるか

宮地尚子(著)
大月書店

「コールドケース3」は未解決事件をチームで解決していく人気のドラマシリーズ。そんな物語の主人公である石川百合さんは、いつも冷静でチームのリーダー的存在ですが、一方で心に傷を抱えており、事件に接するなかで急に自身のトラウマを思い起こします。

そんな石川さんにぜひ読んでいただきたいのが精神科医の宮地尚子さんが書いた『傷を愛せるか』。著者の宮地さんはトラウマ研究の専門家ですが、本書は旅や映画や本など、彼女が過ごす日常の中から心の傷と向き合うことの意味や意義を問うエッセイ集

「学術論文からこぼれ落ちてしまったものを集めた」と本人も言うように、傷に対する抵抗力や回復力を持つ人を研究するのではなく、真摯に傷を認め、受け入れ、その痕を包み込み、手当てしてゆく過程を読み手と一緒に考える姿勢に共感を覚えます。

傷と一緒に生きること。そこには必ず周りの他者の支えが必要なことも知ります。


2冊目:罪の声

塩田武士(著)
講談社文庫

未解決事件を扱った小説といえばこちら。映画化もされ話題沸騰中ですが、極上のミステリーの原作は映画と少し違うのです。

過去に日本を震撼させた未解決事件をモチーフにしたこの物語。自分の仕事に矜持と職人意識を持ちながら日々の小さな幸福を噛み締め生きていた主人公が、ある日、父の遺品からカセットテープ、黒革の手帳、ノートをみつけるところから物語は進んでいきます。

ノートに残る「ギンガ」、「萬堂」の走り書き。そして、カセットテープを聞くと、31年前に起こったという大手製菓会社を脅迫する事件で使われた子供の声。

自分が、そして肉親が、あの未解決事件に関わっているのではないか? という疑問から物語は転がり出し、血族のサーガを辿りながら、少しずつ真実に近づいていきます。

事件を追うもう一人として新聞記者も登場し、一方向が詰まるともう一方が動き出すという読者をどんどん波に乗せるスリリングな物語の構造も見事。とある小料理店に辿り着いたあたりからページをめくる手が止まりませんでした。

警察機構が解決できなかったとしても、事実を追い、探究し続ける人がいる限り、事件に終わりはないのです。


3冊目:中坊公平・私の事件簿

中坊公平 (著)
集英社新書

ドラマ「トッカイ」にちなんで選んだ1冊がこちら。バブル経済がはじけた後の1996年、経営破綻した住宅金融専門会社(=住専)の不良債権の取り立てを目的とした国策会社「住宅金融債権管理機構」(後の「整理回収機構」)ができ、悪徳債権者への取り立てが行われました。

それを実行したのが、不良債権特別回収部、通称「トッカイ」の仕事なのですが、そんな「整理回収機構」を実際に率いた「戦う弁護士」が、本書の著者 中坊公平さんだったのです。

彼は森永ヒ素ミルク中毒事件やグリコ・森永脅迫犯模倣事件など、世の中で大きなニュースになった事件の解決に向けて動いた弁護士。そんな中坊さんがキャリアの最後に担当したのがこの住専処理事件でした。

事件の概要、事件がなぜ起こったのかだけでなく、教訓や思い出を整理し、的確に記していく冷静さ

と、一方で「世の中は理屈や筋書きだけでは動きません。情熱、エネルギーというものが必要です。」と言い切ってしまう熱さが同居しているところが何よりもの魅力。

ドラマ「トッカイ」の背景にあった濃密な人間模様を知りたい方はぜひ。



4冊目:負債論 貨幣と暴力の5000年

デヴィッド・グレーバー(著)
酒井隆史 監訳
高祖岩三郎、佐々木夏子 訳
以文社

「トッカイ」は不良債権を回収するお話ですが、『負債論』が恐ろしくて面白いのは、そもそも借金とは何か? に立ち返り、もっと言えば、借りたお金は本当に返さないといけないの?と読者に本気で問いかけてくるユニークな1冊だからです。

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで教授をするニューヨーク生まれの文化人類学者デヴィッド・グレーバー。アクティヴィストとしても活動する彼は、5000年前の古代メソポタミア時代の負債にまで遡り、連綿と続く人類と借金の関係を驚くほど細やかに描き出します。

また、彼はそれ以前の物々交換自体にも疑問を呈します。物々交換こそ双方の要求が一致しないと成立せず、分かち合いや贈与というイコールじゃなくても良かった関係性を、無理やり等価交換にしたところに負債という概念が生まれてくると言うのです!

負債というものに対して、ここまでラディカルな想像を掻き立てる読み物は見たことがありません。「貨幣と暴力の5000年」という副題が、じつに内容の的を射ています。負債という漢字は負い目の「負」。つまり、誰かの人間性や生き方を削いでいくものです。

それに疑問を持つ人、生きたい様に生きられないと悩む人、システムの中にがんじがらめになって自由になれないという不満がある人。彼らとっては福音となる1冊かも知れません。新しい世界を構築する一歩としてぜひ。



5冊目:センセイの鞄

川上弘美(著)
新潮文庫

WOWOWオリジナルドラマの先駆けとして「ドラマW」第一作の原作本もお持ちしました。

主人公の月子に小泉今日子さん、センセイ役に柄本明さん、そして日本が誇る名演出家の久世光彦さんが関わるという素晴らしいキャスティングで作られたドラマ。ここから歴史が始まったのですね。

ストーリーは独りであることが生活のベースとなっていた37歳の月子さんと、彼女の学生時代の恩師である先生が、居酒屋で出くわすところから始まります。

ぽつりぽつりと会話を交わし、30以上年齢の離れた二人が徐々に近づいていく。当時はその様子を「けしからん」とか「羨ましい」とか、様々な見方で語る人がいましたが、いま読み返してみると、「何をみなそんなに熱くなっていたのか」と思うくらい澄んだ静かさ際立つ美しい小説作品でした。

孤独な者同士の邂逅。様々なエンターテインメントが現在は共有ベースになっているからこそ、一人でしかできない読書行為と、この物語の相性は良いのでしょう。

ゆっくり読み込んでいくと、体にじんわり染み込む浸透圧に近い物語だとも思えました。そして、本は二度と同じように読めないと気付くのです。



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