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韓国、中国、さらにはタイドラマ?注目を集める『陳情令』『2gether』など、アジアドラマの担当者がSNSの声に耳をすませる理由

いま、韓国のみならず中国やタイのドラマが大きな注目を浴びています。

そこで、話題のタイドラマ「2gether」や中国で社会現象となった「陳情令」といった作品のラインナップから放送までを担うWOWOW社員2人に話を聞きました。

見えてきたのは、どんな作品を放送すればお客さまに喜んでいただけるか悩みながらSNSで情報収集を行い、いざ放送が始まればSNSで反響をチェックする姿。

皆さんのコメントを見て、どんなことを感じているのか?
話題作の放送を開始する裏側には、どんなストーリーがあったのか?

アジアドラマの最前線で奔走する2人が赤裸々に語ります。

愛されるコンテンツの見極め方とは

ーーまずはお2人の簡単なご経歴を教えてください。

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森:私は2002年に入社して、最初はWOWOWのプログラムガイド誌を作る部署にいました。その後、異動してアジアドラマに携わるようになったのですが、当時はアジアドラマと言えば韓国ドラマ、という状況で、細々と中国ドラマを担当していました。それが2〜3年前からアジアに力を入れるようになり、今ではタイドラマも担当しています。 

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陸:私は中国出身で中国の大学に通っていましたが、学生時代から日本のカルチャー、特にドラマに興味があって今まで300本以上見てきました。日本のエンタテインメントに近づきたく、日本の大学院に進学し、2016年にWOWOWへ入社しました。最初はカスタマーリレーション部に配属されまして、その後映画部に異動し、現在はアジアドラマの中の中国ドラマを担当しています。

ーーお客様にドラマを届ける際に、どのようなことを大切にしていますか。

森:まず一番に大切にしているのは、お客様が喜ぶかどうかの視点です。次にこれまでの実績や様々な角度から作品を決めるようにしてます。ですが最後の決め手となるのは、自分がちゃんと面白いと思えるか、ワクワクできるかですね。

論理的に考えられる部分と、それを超えた気持ちの部分が全て合わさった作品というのは、やはり皆さんに愛していただける実感があります。とはいえ、どうしても放送できる作品数には限りがあるので、いつも陸と悩みながらラインナップを決めています。

陸:そうですね。どれも良い作品ではあるので、本当は全部やりたいくらいです(笑)

ーー現在はさまざまな配信サービスがありますが、WOWOWはそれらとどのように違うのでしょうか?

森:放送だからこその魅力はあるのかなと思っています。配信だと皆さん好きな時間に好きなタイミングで作品を鑑賞するというかたちだと思うのですが、タイドラマの『2gether(トゥギャザー)』は同時鑑賞会という企画をやりまして。第一話を無料放送したのですが、放送の特性を活かして、同じ時間にみんなで見ながらTwitterでハッシュタグを付けてつぶやきましょうという企画で非常に盛り上がりました。

放送に合わせてイベントのように楽しんでいただく形でできるのが、私たちの強みでもあるかなと思います。

テレビで放送されて画質の綺麗さに喜んでいただける、といった声などもSNSでは拝見しているので、放送局ならではの価値を提供していきたいですね。

陸:配信でも放送でも、皆さんにお届けできていない面白い作品がまだまだたくさんあると思うので、どんどん提案していきたいですね。

自ら本編を観て、熱が持てるまで決めない

ーーWOWOWがアジアドラマに力を入れるようになったのは、どのような経緯があったのでしょうか。

森:以前は歴史に基づいた本格的な中国時代劇を年に1作品やるくらいでした。当時もお客様から良い反響をいただいていて、さらに陸も異動してくるタイミングでしたので、一緒に研究をしていきましょう、ということになりました。

そこから陸とリサーチのために香港のマーケットに出張を行いました。現地のいろいろな権利元さんとも打ち合わせをし、新作の情報などもいただけるような環境を作って、中国宮廷ドラマ「如懿伝(にょいでん)」といった作品をやらせていただきました。そこからどんどん反響が大きくなっていって、現在では色々なジャンルに広がっています。

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2人がコンテンツの商談に訪れた、アジア最大のコンテンツマーケット「香港フィルマート」。「香港フィルマート」には、香港/中国本土はもちろん、日本、東南アジア、欧米企業なども参加。

ーー反響というのはまず何で知ることになるのでしょうか。

森:WOWOW視聴者の反応などを弊社でも独自に調査をしているので、まずそこで知るのですが、「如懿伝(にょいでん)」の場合は非常に手応えを感じました。そこから中国ドラマのことを調べていったら面白い作品がたくさんあることが分かったので、さらに深掘りをするようになりました。

ーーWOWOW独自の調査以外に、反響を図る方法はありますか?

森:そうですね。長いものだと1年近く放送するような作品もあるので、毎週、皆さんの本当に素直な感想をTwitterなどで見させていただいています。作品の後半に行くに連れてつぶやきの数が増えていったり、より深い感想というか、最終話まで見て感無量だったといった熱いコメントをいただけると、一緒に感想を言い合っているような気持ちで見守っています。

陸:私も意識してSNSは見るようにしています。特に放送決定の番組告知をする際には、皆さんのつぶやきといいねの数などは追っていますね。そこでもし、多くの方がいいね!してくれていたら、この作品はすでに注目を集めているのだなと分かりますし、お客様が喜ぶ施策も考えることができます。

ーー普段の情報収集はどのように行っていますか。

森:私は中国語ができないので、とにかく日本語で集められる情報を日々取るようにしています。毎日のルーティンというか、休日でも電車で移動しているときでもTwitterを見ていたり、ふと気になったことがあれば検索したり陸に問い合わせたりしています。

中国で配信の発表があったコンテンツなどは、いつ日本に展開されるか分からないので、私は日本語メインでSNSやブログなどで情報を取りながら、陸からも情報をもらってすり合わせるという感じです。

ーーWOWOWで放送するかどうかは、お2人も本編を鑑賞して決められるのですか。

森:そうですね。可能な限り映像は見るようにしています。あとは私と陸でいろいろ質問し合ったりして、その作品のことを詳しく知るようにしています。

確かにSNSは非常に便利ですし皆さんの反応を見ることができて嬉しいのですが、ただ追従するというのも違うと思っています。いろいろな人の話を聞いたり、調べたりして、それらを踏まえた上で、私たちが本編を見て「これは面白いね」「皆さんに喜んでいただけそうだね」という熱が持てるまで決めることはありません。

人気アジアドラマの放送に至る舞台裏

ーータイドラマ『2gether(トゥギャザー)』の放送権獲得の経緯を教えてください。

森:これは日本の配給会社さんがオールライツを買われていて、そこからテレビの放送権を買わせていただいた、というかたちになります。

SNSを中心に日本での放送よりもずっと前から皆さんが注目されていた作品ですので、日本で展開されるのを聞いて是非やりたいと思い、すぐに社内で企画を提案しました。タイのBL作品はまったく前例がなかったのですが、社内でも面白がってもらえて後押しもしていただいて、テレビで初放送できるようになりました。

ーー実際に森さんが作品を観て面白いと思ったから動き出した、という流れですか。

森:そうですね。2getherはすごく明るいというか、本当に底抜けに明るいラブコメで、懐かしさと新しさが共存していて。WOWOWの視聴者にはいろいろなジャンルに興味がある方がいらっしゃるので、もともと好きな方以外の人たちでも楽しんでもらえるのではないかと思い、提案をしました。

ーーもう一作品。中国ドラマ『陳情令』の放送権獲得の経緯についても教えてください。

森:実は最初は少し放送するべきか迷っていたんです。

陸:そうですね。『陳情令』は中国で配信された後、社会現象級にヒットした作品ではあるのですが、これまで史実に基づいた歴史ドラマを中心に放送していたので、『陳情令』のようなファンタジー時代劇は私たちのプラットフォームには合わないのではないか、と最初は思っていました。

ですが日本の権利元の担当の方から作品の説明をいただいている中で、作品の可能性を感じるようになりました。

森:これも原作はBL小説で、日本にはまだ公式は入ってきていなかったにも関わらず、すでにSNS上でファンがたくさんいるという状態になっていました。結構チャレンジングな試みだったのですが、結果的にこの作品をきっかけにWOWOWに加入いただく方もいて、話題にもなりました。

ーー中国ドラマ『バッド・キッズ 隠秘之罪』についても教えてください。

陸:バッド・キッズは、中国の権利元から事前に送られてきた、2020年のサスペンスドラマのラインナップの中の1作でした。

原作は中国でもある程度認知度がある作品なのですが、その映像クオリティの高さから近年の中国サスペンスとは全く異なる質感の作りになっていて、中国で配信された次の日には権利元に声をかけていました。

先方とやりとりをしている間に、「バッド・キッズ」という作品がどんどん注目されているように感じまして、交渉を進めることに確信が持てました。

WOWOWでは中国歴史ドラマを放送してきましたが、現代ドラマの前例がないので、森さんと相談し社内に対する企画提案の戦略を立てていました。最終的に放送できるように調整ができまして、自分の面白い、という感覚が認められたようで、嬉しかったです。一方で、WOWOWのお客様はいかに反応してくるか、とてもドキドキしています。

まだ知られていない良い作品を、皆さんにおすすめしたい

ーー森さんは自身の仕事へのこだわりはどんな所にありますか?

森:特に海外コンテンツの場合、その国では人気が出ても、日本でも同じ評価軸になるとは限りません。そのズレの部分は意識するようにしていますね。さらに言えば、日本で受け入れられるかどうかだけでなく、WOWOWのお客様に喜んでいただけるか、という視点をとにかく大切にしています。

WOWOWのカスタマーセンターにお寄せいただく声にはもちろん毎日目を通していますが、最近ではSNSなどで「このドラマが面白かった」とか、「WOWOWのラインナップがよくなった」とか、そういった投稿を見ると本当に嬉しくなります。そういったお声に応えていきたいなと思います。

ーー陸さんは、どのような想いでWOWOWで働かれていますか。

陸:入社のきっかけは、WOWOWで放送されていた作品のクオリティがずば抜けて高く、共感できる番組も多かったことでした。自分もエンターテインメントに携わりたいなと思うようになって。今そういった仕事に携われていることは、とても幸せなことだと感じています。

ーー森さん、陸さん、お互いにどのような仕事仲間ですか。

森:補い合える関係性ですね。陸さんは中国の情報はもちろん、日本のコンテンツ事情についても詳しいので、私が知らない情報を積極的に取ってきてくれます。そういう部分でお互いの力を補いながら、普段から作品のラインナップを相談できているかなと思います。

陸:森さんの、作品の情報をキャッチする嗅覚をいつも頼りにしています。陳情令もそうでしたが、最初は皆が消極的に見ていた作品に対しても森さんは、SNSでファンが反応しているという情報を素早くキャッチして、社内で提案していました。タイドラマもそうですし、社内でもみんなが驚く案件というか、やったことのないタイトルでも攻めるところが、私は感心しながらいつもヒントをいただいています。

森:確かに、みんなが見ていなかったり知らなかったりするけど、自分がいいなと思ったものを、人より早く見つけておすすめしたい欲はあるかもしれないです。あそこのランチおすすめだよとか(笑)

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ーー最後に、このnoteをご覧の皆さんにメッセージをお願いします。

森:日々、皆さんに何をご提供したら喜んでいただけるかというのを、本当に悩みながら作品のラインナップを決めています。私も日々、タイドラマや中国ドラマを勉強しながら、皆さんのご意見やSNSの発信というのを見させていただいて作品を選んでいるので、一緒にプログラムを作っている気持ちでいます。

やはり皆さんの率直な反応や感想をいただけるのがいつも嬉しく、ご指摘いただいたところはなるべく反映できるように努力しております。

作品をファンの方に観ていただくのはもちろんですが、WOWOWでたまたま2getherを観たらハマってしまったとか、アジアドラマがきっかけでWOWOWをやめられなくなったといったつぶやきを見ると、やり甲斐を感じます。これからも皆さんと一緒にWOWOWをつくっていきたいなと思います。

陸:私も中国ドラマやアジアコンテンツを検討する際は、常に悩みながら判断しています。放送に至る作品は、自信を持ってご紹介できるものなので、少しでも興味がありましたら、実際に観ていただけたら嬉しいです。

皆さんからの感想やコメントは、次の作品を選定する時の参考になりますし、個人的なモチベーションにも直結します。もし作品に対して何か思いや感じるものがありましたら、ぜひ発信していただけたらと思います。


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