人生に折り返し地点なんてないんだよ。――ピスタチオ、スリムクラブ、友近らも出演した『老後の資金がありません!』を観てスピードワゴン・小沢さんが心撃ち抜かれたセリフとは?

 映画を愛するスピードワゴンの小沢一敬さんが、映画の名セリフを語る連載「このセリフに心撃ち抜かれちゃいました」
 毎回、“オザワ・ワールド”全開で語ってくれるこの連載。映画のトークでありながら、ときには音楽談義、ときにはプライベートのエピソードと、話があちらこちらに脱線しながら、気が付けば、今まで考えもしなかった映画の新しい一面が見えてくることも。そんな小沢さんが今回ピックアップしたのは、老後の資金問題というシリアスなテーマをユーモラスに描いたコメディ映画『老後の資金がありません!』('21)。さて、どんな名セリフが飛び出すか?

取材・文=八木賢太郎 @yagi_ken

──前回が毎月連載のラストで“感動の最終回”という感じだったのですが、早くも戻ってきちゃいました。

小沢一敬(以下、小沢)「うん。最終回っぽくきれいにまとめて終わったはずなのに、なぜ早々に復活したかと言えば、この仕事がなくなると俺の老後の資金がありません! ってことだよ。老後の貯蓄のためにまだまだ働かなきゃいけないから、恥ずかしながら帰ってまいりました(笑)」

──まさか、そんなわけはないんですが(笑)。今後も不定期連載にてよろしくお願いします! ともかく今回は、その『老後の資金がありません!』のお話です。いかがでしたか?

小沢「面白かったよ。公開当初、出演してる役者さんたちが映画の宣伝を兼ねてバラエティ番組にたくさん出ていて、そういうときに予告とかを何度も目にしてたから、ちょっと観た気になっちゃってたし、内容もある程度、予想してたんだけど。でも、実際に観てみたら、すごく気分の良くなる映画だったよ」

──小沢さんにとってはお馴染みの芸人さんもたくさん出演されてました。

小沢「うん、ピスタチオが出てきたり、スリムクラブが出てきたり、友近が出てきたり。それもすごい楽しかったよね。まあ、上手い下手は置いといて(笑)。でも、最近さ、あんまり演技が上手くないほうがリアルなのかなって思うこともあって。たとえば、映画を観てて、たまに『この人、喋り方が下手だなぁ』って思うことがあるけど、リアルな生活の中でも喋り方が下手な人ってたくさんいるじゃん。逆に、『町のパン屋のお嬢さんが、そんなにハキハキと喋れる?』って思うことだってあるからね」

──とても正しい日本のコメディ映画という感じでしたよね。

小沢「そうだね。本当に気軽に観られる映画だなって感じ。映画館で観るのもいいけど、家で観るのにもすごく向いてる映画だったと思う。だから、WOWOWで観るのが一番じゃないかな(笑)」

――ありがとうございます(笑)。

小沢「老後のこととか高齢化社会やお金の問題とか、テーマとしては深刻だから、同じタイトルでものすごく深刻な映画にすることもできたと思うの。だけど、それをこうやって前向きに、ハッピーな感じで描いてくれてるから、全体的にカラッとしていて、とても気分がいい映画になったんだと思うよね」

──確かに、もっと暗くなってもおかしくない内容ですもんね。

小沢「俺はさ、言葉を扱う仕事だから、言葉についてよく考えるんだけど、今回は『老後ってなんだろう?』ってことを考えてたのね。『老後の資金は2,000万円必要』とか言うけど、何をもって老後なんだろう? って。たとえばここに出てくる、草笛光子さんが演じてるおばあちゃんの芳乃さんなんて、あんなに元気で生きてたら、まったく老後って感じがしないじゃん」

──ホントですよね。ああいうおばあさんもたくさんいますし。草笛さん自身、80歳の役ですけど、実は88歳らしいです。

小沢「え~、すごいね。それこそまさに老後じゃねえじゃんっていう(笑)。みんなさ、ある程度の年齢に達すると『これで人生の折り返し地点を過ぎたな』とかって言うんだけど、そういうときに俺はいつも、『折り返して戻る必要なんてあるの?』って言うのね。『なんでわざわざ折り返して戻ろうとするんだよ』って。人生に折り返し地点なんてないんだよ。ずっと真っ直ぐ前に進んでいくだけじゃん。なのに、なんで勝手に折り返させられるんだろうね」

──言われてみれば、折り返す必要はまったくないですね。

小沢「そうだよ。老後なんていう言葉もさ、若い世代が年を重ねた人に対して勝手に作った概念でしかなくて。元気で生きてるおじいちゃんやおばあちゃんにとっては、老後、つまり老いた“後”なんて気持ちはないと思うんだよ」

──当事者じゃない人たちが作った言葉かもしれませんね、老後って。

小沢「だから、『老後なんて言葉はこの世に必要ないな』って思いながら観てたよ。だってさ、折り返し地点っていう言葉がマラソン用語なら、ゴールを目指してずっと前向きに走り続けてる途中で死んじゃったほうがいいじゃん。急にスピードを緩めて、『そろそろ隠居だから』とか『私はもう、人生でやること全部やったから』とか言ってないで、命もお金も生きてるうちに全部使い果たせよ、って思うから。べつにこの映画のタイトルを否定してるわけじゃないけど、老後なんて言葉を意識して生きる必要ないじゃんって思ったよ、俺は」

──ネガティブな言葉に縛られる必要なんてないと。

小沢「そうそう。勝手に老後なんて言葉を作って、勝手に嫌なイメージを持ってるだけだもん。たとえば、少年時代にすごい勉強を頑張って、すごい優秀な大学に入って、疲れ切っちゃって、もう20歳で老後みたいな生き方してるやつだっているかもしれないんだから。年齢で人を括ったりすることには、なんの意味もないよね」

──では、そんな今回の作品の中から、小沢さんが一番シビれた名セリフをひとつ選んでいただきたいのですが。

小沢「俺が一番好きだったセリフは、『人間、わがままに生きたほうが勝ちよ』だね」

安泰な老後生活を送るべく、日々家計のやりくりに奮闘し地道に資金を貯めてきた主婦の後藤篤子(天海祐希)。ところがそんな折、義父の葬儀に長女の結婚と、予定外の大きな出費が重なってしまう。姑の芳乃(草笛光子)への仕送りさえ捻出できなくなった篤子は、その後もありとあらゆるお金の問題に振り回される。

──物語の終盤で、芳乃が篤子に向かって言うセリフですね。

小沢「あのセリフはさ、人に迷惑をかけてもいいという意味じゃなくて、遠慮なんかしなくていいんだよ、っていう意味だと思うんだよね。もちろん、日本には遠慮の美学というものもあるんだけど、無駄に遠慮ばっかりして自分のやりたいことを我慢し続けるぐらいなら、遠慮しないで好きなように、わがままに生きたほうが勝ちだよ、と。もちろん、それで人に迷惑をかけることもあるだろうけど、人間なんて生きてりゃだいたい人に迷惑かけるんだから。極端な話、呼吸をしてるだけで、森林には迷惑かけてるんだし(笑)」

──確かに、地球にとってはだいぶ迷惑かもしれません。

小沢「迷惑かけるのが当たり前なんだから、自分が誰かから迷惑かけられても許せる気持ちを持つことも大事だよね。たとえば世の中には、迷惑かけても許される人と許されない人がいるでしょ。迷惑かけても許される人は『あの人はキャラ勝ちだから』って言われるけど、たぶんそういう人は、人の迷惑を許してるから自分も許されてると思うんだよね。逆に、人に迷惑かけられると文句ばっかり言ってる人は、自分が迷惑かけた時も許されない。そういう意味で、もっとみんな他人に対して寛容になって、そして、自分もわがままに生きていくことが大事だよ、ということを言いたかったんだと思うよ、あのセリフは」

──物語の中でも、篤子がそういうふうに変わっていきますからね。

小沢「そうだよね。結局、みんながわがままに生きられないのは、いわゆる“世間が考える正解”の通りにやらないといけない、って考えちゃうからだと思うんだ。でもさ、人生の正解なんてないんだよ。正解なんて自分が決めることなんだから、自分が正解だと思う通りにわがままに生きればいいんだよ。この主人公の篤子もそれに気づいて、その結果、彼女が行き着くのがあの生活じゃん。俺は、あのバーベキューをやってるシーンが大好き。みんなが友達で、中には本当の夫婦も一緒にいて。ああいうのやりたいよね。俺の理想の人生だよ」

──なんか、ちょっと「理想の老後」っぽい話になってますけど、小沢さんの人生には老後なんて存在しないはずでは?

小沢「いや、いつかこの連載が終わる時が俺の老後だから(笑)」

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クレジット:(C)2021映画「老後の資金がありません!」製作委員会

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