【10月の激レア映画!】陣内孝則主演のニューウェーブ・ヤクザ映画『ちょうちん』や、映画の巨匠に密着した『ヒッチコックの映画術』をはじめ、廃盤・未ソフト化など貴重な映画を“レア度”とともにご紹介!
文=飯塚克味
韓国で2005年度興収ナンバーワンヒットを記録した感動作
①[廃盤]『トンマッコルへようこそ』
レア度…★★★★☆
最初にご紹介するのは、ソフトがすでに[廃盤]となっていて、2005年に韓国で大ヒットした戦争ファンタジー『トンマッコルへようこそ』です。
朝鮮戦争の真っただ中、本隊からはぐれた北朝鮮軍の兵士3名、韓国軍の兵士2名、そして戦闘機が不時着した米軍のパイロット1名が、山奥で暮らす小さな村にたどり着きます。そこに暮らす村人たちは今が戦争中だと知ることもなく、武器の類も分からない純朴な人々でした。最初はピリピリしていた兵士たちも、彼らと暮らすうちに次第に癒やされ、本来の人間性を取り戻していきます。本来は1つの国であったはずなのに、分断されてしまった朝鮮半島ならではのドラマとなっています。『オールド・ボーイ』(’03)に出演していたカン・ヘジョンが、村の変わり者の娘を演じていたり、久石譲が音楽を担当していることもファンには見逃せないポイントです。
1980年代に人気を博したお色気学園コメディ漫画を、中村倫也主演で映画化
②[廃盤]『やるっきゃ騎士』
レア度…★★★☆☆
続いても[廃盤]になっているタイトルです。今や、映画やドラマ、CMに引っ張りだこの中村倫也。彼がブレイク前に出演したのが、この映画『やるっきゃ騎士』です。
エロが大好きな男子生徒が転校してきたのは女尊男卑の学園で、そこで主人公が奮闘するという何ともくだらない内容。原作は、みやすのんきのコミック。私としては、『冒険してもいい頃』がドンピシャで、バカバカしいお色気が売りの作家さんです。本作もよく実写化を決意したなと思える内容です。それゆえ、中村倫也ファンにとっては見逃せない一本と言えるでしょう。
映画の巨匠アルフレッド・ヒッチコック監督の魅惑の映画術を紹介した映画ドキュメンタリー
③[未ソフト化]『ヒッチコックの映画術』
レア度…★★★★★
ここからはソフトになっていない[未ソフト化]の作品です。サスペンスの神様と言えばアルフレッド・ヒッチコックをおいて、ほかには考えられません。『ヒッチコックの映画術』はそんな彼の演出について、本人が語った録音テープや映画本編の抜粋などで構成されたドキュメンタリー作品となっています。監督は『ストーリー・オブ・フィルム 111の映画旅行』(’21)のマーク・カズンズ。
この作品、実はオリジナルは約60分のものが15本にも及ぶ、大長編作品だったんです。権利をクリアするだけでも気が遠くなるような作業ですが、そんな仕事をしてきた監督だからこそ、本作もギュッと締まった密度の濃い作品になっています。ヒッチコックを知らない世代でも大いに楽しめると思いますよ。
第96回アカデミー賞国際長編映画賞のキルギス代表に選ばれた秀作人間ドラマ
④[未ソフト化]『父は憶えている』
レア度…★★★★☆
こちらも[未ソフト化]作品です。キルギスの名匠アクタン・アリム・クバト監督が主演も担当した感動作『父は憶えている』。
23年前、ロシアに出稼ぎに行ったまま、行方不明になったザールクが記憶喪失状態で発見され、息子が故郷に連れ帰りますが、愛を誓った妻は別の男の妻になっていたという何ともやりきれない話です。なかなかなじみのないキルギスという国ですが、どんな場所でも家族の絆や、抱える問題が変わらないことをこの映画は教えてくれます。監督兼主演のアクタン・アリム・クバトは、日本・カザフスタン・キルギス共同製作の『ちっちゃいサムライ 三浦正雄の子供時代』(’23)にも出演しているので、興味が湧いたら、こちらもチェックしてほしいですね。
衝撃の実話をもとに、アウシュヴィッツの生還者たるひとりのボクサーの壮絶な半生を痛切なタッチで描いた感動作
⑤[未ソフト化]『アウシュヴィッツの生還者』
レア度…★★★★☆
続いても[未ソフト化]の作品になります。『レインマン』(’88)や『グッドモーニング、ベトナム』(’87)のバリー・レヴィンソン監督が、アウシュヴィッツで起こっていた事実を映画化した『アウシュヴィッツの生還者』です。そこでは何と、ナチスが余興のため、ユダヤ人同士にボクシングの試合をさせ、負けた方はその場で殺されていたのです。アウシュヴィッツを舞台にした映画は、最近ヒットした『関心領域』(’23)などさまざまな作品がありますが、この事実は知りませんでした。そんな地獄を生き抜く主人公を演じたのはベン・フォスター。出演作は多いですが、いわゆるハリウッドスターではないところに、監督が彼を選んだ強い意志を感じます。過去をモノクロ、現在をカラーにした画作りもみごとです。
陣内孝則が、胃がんで余命わずかという若きヤクザを演じたニューウェーブ・ヤクザ映画
⑤[未DVD化]『ちょうちん』
レア度…★★★★★
最後もソフトになっていない貴重作です。最近は気のいいお父さん役など、幅広くさまざまな役をこなす陣内孝則ですが、1980年代後半は「ヤクザ映画と言えば、この人!」という時期がありました。そんなきっかけになったのが本作『ちょうちん』です。
愛する人のためにヤクザを抜けようとするものの、がんになってしまう何とも切ない極道の物語。ヤクザの日常を描いた作品としても珍しいですし、相手役、石田えりの美しさもひと際光っています。この映画、実は『竜二』(’83)の金子正次が原作を書いています。知らない人もいるかと思いますが、『竜二』の公開初日、舞台挨拶を置いて帰宅後に倒れ、そのまま亡くなった人物です。それだけに東映も力を入れて、製作に臨んだはず。ぜひ、この機会にご覧いただきたい1本です。
次回、11月号激レア映画もレアな映画が盛りだくさんです。
どうぞお楽しみに!
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トップ画像(クレジット)/『ちょうちん』:ⓒ ヴァンフィル、廣済堂プロダクション、東亜興行