映画『東京リベンジャーズ』の魅力を分析。メディアミックスの成功例にみる“原作の構造的面白さ”
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映画『東京リベンジャーズ』の魅力を分析。メディアミックスの成功例にみる“原作の構造的面白さ”

WOWOW
 映画ライターSYOさんによる連載「#やさしい映画論 」。SYOさんならではの「優しい」目線で誰が読んでも心地よい「易しい」コラム。今回は、ヤンキー映画のフォーマットにさまざまなエンタメ要素を絡め、若手俳優陣を輝かせる『東京リベンジャーズ』('21)の魅力を紐解きます。

文=SYO @SyoCinema

 『東京リベンジャーズ』が漫画・アニメ・実写映画・舞台とすべてで大ヒット中。メディアミックスの完璧な成功例といえるだろう(原作の表記は「東京卍リベンジャーズ」だが、本稿では前者で統一する)。原作漫画の累計発行部数は2020年9月には500万部だったが、約1年で約8倍の4,000万部にジャンプアップ。2022年1月時点で累計発行部数は5,000万部を突破し、驚異的としか言いようがない。

 テレビアニメが放送開始されたのは2021年の4月、実写映画が公開されたのは同年7月。実写映画はもともと2020年の10月公開予定だったが、コロナ禍で公開延期に。そんな中でも興行収入45億円という大ヒットを記録し、2021年の日本映画の興行収入ランキングで、劇映画としてトップを飾った。直近でも、政府の「新成人(成人年齢が18歳に引き下げ)」の広報キャンペーンに起用されるなど、“東リベ”ブームはいまだ継続中だ。

 WOWOWでは5月14日(土)に、実写映画の『東京リベンジャーズ』を初放送。さらに、「『東京リベンジャーズ』放送記念!胸アツ必至のヤンキー映画特集」と題し、『ワルボロ』(’07)、『ズタボロ』(’15)、『GO』(’01)、が連続放送される。熱血のけんかシーンや若手俳優の躍動など、日本のヤンキー映画の伝統を継承しつつ、それだけに留まらない新味を入れ込んでいる点が『東京リベンジャーズ』の独自性。今回は、その唯一無二の魅力を紹介する。

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 原作は、漫画「新宿スワン」の和久井健が少年誌で執筆するに当たり、週刊少年マガジンの伝統である不良(=ヤンキー)漫画を題材にしつつ、タイムリープ要素(『オール・ユー・ニード・イズ・キル』('14)や『ハッピー・デス・デイ』('17)のように「ある期間を繰り返す」というよりも、「過去に戻る」という構造のためタイムスリップの感覚が近い)を入れ込んでいった作品だ。

 不良チームが並み居る強敵を打ち倒し、どんどん頂点へ駆け上がっていくさまはヤンキー漫画の華だが、そこに「大人になった主人公が、過去に戻る」というSF設定が加わり、さらには「なぜ気のいいヤンキーたちが、現代では極悪犯罪集団に変わってしまったのか?」というミステリー要素、「かつての恋人を救うために過去に戻る」というサスペンス&ラブ要素などがミックスされ、読者とのタッチポイントが多岐にわたっている。加えて、バトル漫画が陥りがちな「強さのインフレ」からの脱却にも成功している。

 原作でも個性的なキャラクターの過去と現在での「対比」が描かれているのが特徴の一つだが、これが実写になると、マイキー役の吉沢亮がピュア/ダークのコントラストを見事に演じ分けるなど、俳優のポテンシャルと掛け合わさることで、より強力な“武器”に。主人公タケミチ(北村匠海)の親友アッくんを演じた磯村勇斗もまた、過去と現在で大きくキャラクターの味付けを変えており、大人になってかつての純粋さを失ってしまった悲しみ――つまり陽と陰のギャップが、ドラマ内のエモーションを高めている。

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 さらに、各キャラクターがダークサイドに落ちる流れが、主人公タケミチのヒーロー像を構築する展開にもつながっている点が興味深い。逃げ癖が染み付いたフリーターのタケミチは、当初こそ元恋人のヒナ(今田美桜)を救うためにヒナの弟ナオト(杉野遥亮)と協力して過去へと戻るが、その目的はやがてヒナだけでなくマイキーやアッくん、みんなを救うことへと発展していく。つまりは、主人公が過去へ“戻る”ことで、自分の信念を“取り戻す”物語でもあるのだ。こうしたカッコ悪さとカッコ良さのさじ加減が北村匠海は絶妙で、役に制限を設けない彼の特性が、“泣き虫ヒーロー”タケミチとみごとに重なっている。

 キャラクター同士の関係性でいうと、いかにもヤンキー作品の主人公的なマイキーがアイデンティティーを喪失するのと反比例するかのごとく、タケミチがヒーロー然とし始める鏡映し構造の妙、腕っぷしは最強だがメンタルに危うさがのぞくマイキーと、けんかはからきしだがハートの強さはピカイチというタケミチの対比構造も効いている。実写版では映画・舞台ほか共演も多い北村と吉沢のコンビネーションによってその味わいがより強化されており、配役の妙を感じずにはいられない。

 このように、『東京リベンジャーズ』は原作の構造的面白さが役者を輝かせる要素にもつながっているのだが(アクション的見せ場も含め)、裏を返せば役者がはまるかどうかがよりシビアかつダイレクトに反映される作りにもなっている。いわゆるコスプレ感が強い仕様になってしまってはせっかくの構造も空回りしてしまうが、その点、北村や吉沢はもちろん、キサキ役の間宮祥太朗やハンマ役の清水尋也、ミツヤ役の眞栄田郷敦、キヨマサ役の鈴木伸之らの“再現度”が非常に高く、それぞれの熱演と見た目のマッチ度がシンクロしている印象だ。

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 さらに、マイキーの相棒ドラケン役の山田裕貴が体現したように、キャスト陣から作品愛がほとばしっているのも“熱”を作り上げた大きな要因といえるだろう。山田はドラケンの刈り上げ+弁髪スタイルを立体化すべく、自ら髪をそってヘアスタイルを維持したという。こういった作品に対する想いの強さを、作品の内外で十二分に感じられた点も、本作が支持されているゆえんではないだろうか。

 原作は佳境に突入し、TVアニメの新シーズンも制作発表され、実写版のシリーズ化にも期待がかかる『東京リベンジャーズ』。ファンの熱もますます上昇・波及し、まさに「俺たちは行けるとこまで行く」状態だ。確かな“根拠”を備えた快進撃は、まだまだ止みそうにない。

SYOさんプロフ20220116~

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