眞栄田郷敦の規格外の成長曲線。『カラダ探し』で魅せる“生きざま”と“死にざま”から紐解く

映画ライターSYOさんによる連載「 #やさしい映画論 」。SYOさんならではの「優しい」目線で誰が読んでも心地よい「易しい」コラム。今回はウェルザードの小説を原作にした『カラダ探し』('22)で “死のループ”に巻き込まれる高校生を演じた眞栄田郷敦の魅力を紐解きます。

文=SYO @SyoCinema

 役者の成功にも多様なパターンがあるだろうが、その一つに「打率の高さ」が挙げられるように思う。例えば「この人の出ている作品は癖が強くて面白いな」や「ヒット作に連続して出演しているな」と思えるような存在――。その領域まで行ければ盤石だが、当然ながら一朝一夕で到達できるものでもない。特に国内の若手俳優の場合はさまざまな作品を通して経験を積み、30歳前後でより個人の志向を反映した作品選びへとシフトし、第2フェーズに進むといった流れが王道だろう。ところが、今回紹介する俳優は完全なるイレギュラー。俳優デビューから約4年で、ビッグタイトルの常連に上り詰めた男、それが眞栄田郷敦である。

 彼が出演した映画は、現時点で7本。「東京リベンジャーズ」シリーズ('21~'23)を含め、メジャー作品がひしめいている。しかもそこに各方面から絶賛を浴びたドラマ「エルピス-希望、あるいは災い-」やNHK大河ドラマ「どうする家康」もあり、その“打率の高さ”には恐れ入るばかり。ここに至るまでにも「私の家政夫ナギサさん」「レンアイ漫画家」「プロミス・シンデレラ」「キン肉マン THE LOST LEGEND」…と各クールで話題を集めた作品にコンスタントに出演。

 父は千葉真一、兄は新田真剣佑という俳優一家で育つも、本人は音楽の道に進むつもりだったという。そんな中、『小さな恋のうた』(’19)のオファーをきっかけに俳優として歩み始めた眞栄田。その逸話を含め、この先どんな成長曲線を描くのかまったく読めない規格外の存在になりつつある。

 そんな眞栄田の俳優としての魅力に、“変化”があるように思う。年齢に似合わぬ落ち着いた声のトーンや端正なルックスを時にストレートに、時に逆利用する方法論で「正統派」と「崩す」を行き来してきた。例えば「エルピス~」は序盤、中盤、終盤で彼が演じたキャラクターの見え方がどんどん変化していく。日本代表から落選し、“裏方”であるテストジャンパーとして活動する選手に扮した『ヒノマルソウル〜舞台裏の英雄たち〜』('21)では、周囲に壁を作っていた彼が自身の現状を受け入れ、己の内面と向き合い変わっていくさまが、ドラマの重要なカギとなっていた。

 そして、『カラダ探し』で眞栄田の強みは大いに発揮された。橋本環奈、山本舞香、神尾楓珠、醍醐虎汰朗、横田真悠と共演した本作は、恋愛映画とホラー映画がミックスされた特殊な構造になっており、そこに一定期間を繰り返すタイムリープもののエッセンスも入ってくる。

人気小説を実写化した本作。全身血まみれの少女『赤い人』に惨殺される前に、学校内にバラバラに隠されたカラダを探し出せなければ、また同じ夜を繰り返す、というストーリー。

 このあらすじだけだと完全にホラー一色なのだが、実写映画版では「どうせリセットされるんだから今を楽しもう!」というポジティブなエッセンスが加わり、「昼は青春、夜はホラーを繰り返す」という展開になっていくのが興味深い。最初こそ呉越同舟だった高校生の男女6人は、“カラダ探し”を通じて友情を育み、仲間意識が芽生えていく。クラスの人気者も目立たない者も関係なく、「ワンチーム」になっていくのだ。

 ただこの映画、容赦なく人が死ぬ。カラダ探し中には怪物化した「赤い人」を相手にしたサバイバルも同時進行されるのだが、タイムリープ作品ということもあって序盤から主要キャラがバタバタと死に、また復活して少しずつデスゲームを攻略していくという手順を踏むのだ。復活を繰り返すたび、前述した「青春感」が生まれてくるのだが、演じる側からすると毎回「死にざま」を全力で演じ切らねばいけないわけで、相当体力と精神力を絞り取られたことだろう。

 眞栄田においてはスポーツ万能の爽やかキャラに扮し、メンバー内で率先して周囲を守るリーダー的ポジションでもあったため、アクションシーンをはじめ運動量も多かったと推測されるが、「生きざま」も「死にざま」も両方しっかりと魅せ切っている。

 本作は構造上、日常とカラダ探しとの落差があればあるほど面白くなる。となれば、「普段は何事も涼しい顔でやってのけるクラスの人気者が、カラダ探し中は必死の形相で化け物とバトルする」局面、つまり強者が追い詰められる展開こそが、その命題を果たす柱となるのではないか。いわば、眞栄田には“切迫感の説得力”をもたらすミッションが託されたわけだが、彼の“変化”におけるポテンシャルがそれを可能にした。

 しかも、先ほど述べたようにここに青春映画要素も入ってくるわけで、夕日をバックにした胸キュンなシーンでもきっちりとヒロイックに立ち回っている。青春恋愛映画の王道展開といっても、ホラーをなかったことのように演じるわけにはいかないため、夜は泥くさく走り回っていてもカッコよく、昼は爽やかでこれまたカッコいいというダブルの魅力を発揮しなければならないのだが――これらをモノにできたのは、眞栄田の目減りしない根本的なオーラがあってこそだろう。

 『カラダ探し』はキャラクター同士の関係性から個々人の成長、作品のテイストやカラー含めて“変化”だらけ。眞栄田郷敦は逆説的に、本作で揺るがぬ“芯”を見せつけたのかもしれない。

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クレジット:©2022 「カラダ探し」製作委員会

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