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【8月の激レア映画!】小林聡美出演の『キリコの風景』や、日本初公開となる『ヌードの映画史~黎明期から現代へ~』をはじめ、廃盤・未ソフト化など貴重な映画を“レア度”とともにご紹介!

 こんにちは。WOWOW加入者向けに配布しているプログラムガイドで「見逃し厳禁!録画のチャンス!今月の激レア映画」の作品選定を行なっている映画ライターの飯塚です。

 8月もプログラムガイドで掲載している通称「激レア映画」企画をコラムにしてnoteでも掲載いたします。プログラムガイドで選定された作品がどれほど貴重な映画なのか、その選定理由とともに作品の魅力について語っていきたいと思います。

文=飯塚克味


①[廃盤]『セルロイド・クローゼット』

レア度…★★★☆☆

同性愛に対する差別と偏見が世間に根強い中、ハリウッド映画の世界においてもそれは例外ではなかった。無声映画の時代から同性愛者たちは映画の中に登場してきたが、面白おかしく描かれ、物笑いの種となるのが大方のパターン。そして1930年代、映画製作の自主倫理規定なるものが施行されるようになると、同性愛の表現は厳しく禁じられ、映画の中から同性愛者たちは追放・排除されるように。しかし、実はその水面下では……。

WOWOW公式サイトより

 まずは[廃盤]になっているこちらの『セルロイド・クローゼット』
 今でこそ、LGBTQを声高に訴えることが可能になっていますが、ちょっと前までは、同性愛の描写はハリウッドではご法度でした。それを前面に出すと心の準備のできていない観客たちは物語に集中できなくなってしまうでしょうし、ゲイやレズビアンの人々の存在そのものが世の中に受け入れられていなかったからです。でも映画の作り手たちはさまざまな手法を使って、作品の中に同性愛の痕跡を残してきたんです。本作はそうした知られざるハリウッドの歴史に踏み込んだ貴重なドキュメンタリーになっています。

②[廃盤]『100人の子供たちが列車を待っている』

レア度…★★★★☆

『100人の子供たちが列車を待っている』:ⓒIgnacio Agüero Produciones

南米チリの首都サンティアゴ郊外の教会で、女性教師のベガが、貧しい家庭の出身でそれまでほとんど映画を見たことがない子どもたちを相手に映画教室を開く。彼女はまず、鳥と、からの鳥かごという2枚の絵を表裏に貼り、それを素早く回転させることで鳥が鳥かごの中にいるように見えるなど、映画の仕組みそのものを一から分かりやすく解説。次いで、映画のさまざまな名作を次々に見せ、子どもたちに映画の楽しさを教え込んでいく。

WOWOW公式サイトより

 続いての作品もDVDが[廃盤]状態の『100人の子供たちが列車を待っている』という作品です。
 映画を知らない子どもたちに、映画とは何かを手作りの教材で教えようとするチリの女性教師のドキュメンタリー。1984年からチリの各地で映画教室を開いているアリシア・ベガが、1986年にサンティアゴで行なった半年間の授業の模様を収めています。映画をほとんど知らない子どもたちに、技術的なことから映画の歴史を教えていく非常に興味深い内容です。あの恐ろしいチリの軍事政権下で作られたことも非常に興味深い点となっています。

③[廃盤]『リディック』/④[廃盤]『リディック:ギャラクシー・バトル』

レア度…★★★☆☆

『リディック』:ⓒ2004 Universal Studios.All Rights Reserved.

<『リディック』あらすじ>
賞金稼ぎに追われる宇宙のお尋ね者リディックは、自分の首に懸賞金を懸けた人物を追ってヘリオン第1惑星へ。彼はそこでエーテル状の生命体エレメンタル族の使者エアリオンが目当ての人物だと知る。彼女はリディックに対し、懸賞金の真の目的はリディックを呼び寄せることにあったと打ち明ける。この星は強大な侵略者ネクロモンガーの大艦隊による攻撃にさらされていて、エアリオンはリディックに星の救世主になるよう頼むが……。

WOWOW公式サイトより

<『リディック:ギャラクシー・バトル』あらすじ>
全宇宙の支配を狙うネクロモンガーの王となったリディック。だが、重臣ヴァーコの裏切りによって辺境の惑星にひとり置き去りにされてしまった。卓越したサバイバル能力でこの星の過酷な環境を克服するリディックは、やがて廃シェルターから非常用ビーコンを発見、救難信号を発する。やがて、リディックに懸けられた莫大な懸賞金を目当てに賞金稼ぎたちが現われるが、それこそが自らの命をエサにしたリディックの脱出計画だった。

WOWOW公式サイトより

 次も[廃盤]タイトルです。ヴィン・ディーゼルと言えば、誰もが「ワイルド・スピード」シリーズを思い浮かべますが、実は2001年の1作目以降はしばらくお休みしていて、本格復帰したのは2009年の4作目でした。その間、彼が力を入れていたのが『トリプルX』('02)や、この「リディック」シリーズでした。1作目の『ピッチブラック』('00)では主役というより重要キャラといった位置付けでしたが、2作目以降は堂々の主役。特に2作目の『リディック』は超大作となっていて、スペクタクルシーンの連続です。ドラマ「ザ・ボーイズ」で大人気のカール・アーバンとの対決も見ものですよ。

⑤[未DVD化]『キリコの風景』

レア度…★★★★☆

函館。東京からやって来た村石は、タクシーを1日貸し切りにし、運転手の西川と地元の不動産会社社員・木村とともにマンションを見て回る。村石は物件を見るのではなく、不思議な力で心にわだかまりを抱えた住人を見つけ、時に癒やし、時に改心させていく。最初は不審に思っていた西川と木村も、次第に村石の力と人柄に魅了されていく。翌日も人々のゆがんだ心を癒やしていく村石だが、彼がこの町に来たことにはある理由があった。

WOWOW公式サイトより

 次はビデオ化以来、DVD化されていない1998年の映画『キリコの風景』です。
 タイトルは、舞台となる函館がジョルジュ・デ・キリコの絵を思わせることから付いたようです。監督は『免許がない!』('94)の明石知幸。脚本は明石監督の師匠でもあった『家族ゲーム』('83)の森田芳光が担当。お話は物を見ただけで持ち主の素性を当ててしまう不思議な能力の持ち主が、別れた妻を捜し歩くというものになっています。出演は杉本哲太と小林聡美、勝村政信という今も第一線で活躍を続ける方ばかりです。スーパー16による撮影も、今回どのように再現されているのか期待したいところです。

⑥[未ソフト化]『旅するローマ教皇』

レア度…★★★★☆

『旅するローマ教皇』:ⓒ 2022 21Uno Film srl Stemal Entertainment srl

ローマ教皇に選出された2013年、イタリアのランペドゥーザ島を訪ねた旅に始まり、2022年、コロナ禍の中でのマルタ島訪問まで、第266代ローマ教皇フランシスコは9年間で37回、53カ国を訪れた。難民問題や紛争に苦しむ中東やアフリカ、そしてアメリカでは平和について語り、世界唯一の被爆国・日本では黙とうをささげる。イスラム教やロシア正教会の指導者と会見し、融和を訴えるなど、平和を願う教皇の旅は続く。

WOWOW公式サイトより

 次は[未ソフト化]の作品です。2013年の就任以来、9年間で53か国を訪問してきたローマ教皇フランシスコに密着したドキュメンタリー作品『旅するローマ教皇』です。約800時間分の膨大なアーカイブ映像をまとめ、カナダとマルタへの訪問に同行し新たな撮影をしたのは、2016年の『海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~』でアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にノミネートされたジャンフランコ・ロージ監督。これだけの素材を84分にまとめて、なおかつ見応えのある内容に仕上げたことは驚嘆に値します。

⑦[未ソフト化]『ナチスに仕掛けたチェスゲーム』

レア度…★★★★★

『ナチスに仕掛けたチェスゲーム』:ⓒ 2021 WALKER+WORM FILM, DOR FILM, STUDIOCANAL FILM, ARD DEGETO, BAYERISCHER RUNDFUNK

愛する妻のアンナとウィーンで平和で優雅な日常生活を送ってきた公証人のバルトーク。しかし1938年、ヒトラー率いるナチスドイツがオーストリアを併合した直後、バルトークはナチスに連行され、運命が暗転。彼の管理する貴族たちの莫大な資産の預金番号を明かすよう強要され、それを断固拒否したバルトークは、ホテルの一室に監禁されるが、偶然見つけたチェスのルールブックを暗記し、それを命綱にして必死の抵抗を試みる。

WOWOW公式サイトより

 続いても[未ソフト化]の作品です。オーストリアの作家シュテファン・ツヴァイクの「チェスの話」を原作としたサスペンス『ナチスに仕掛けたチェスゲーム』
 第2次大戦時、ドイツがオーストリアを併合した時に、拉致監禁された公証人バルトークが、唯一手にしたチェスの本を読むことで、あらゆる手を自分のものにしていき、やがてアメリカ行きの豪華客船でチェスの王者との対戦に至るというものです。監督は『アイガー北壁』('08)のフィリップ・シュテルツェル、主演は『帰ってきたヒトラー』('15)でヒトラーを演じたオリヴァー・マスッチなので、間違いのない映画になっています。

⑧[未ソフト化]『ヌードの映画史~黎明期から現代へ~』

レア度…★★★★★

『ヌードの映画史~黎明期から現代へ~』:ⓒ 2020 Plausible Films, LLC

映画が発明される前、写真家エドワード・マイブリッジは連続する写真で動く裸婦を撮影していた。映画は米国では発明家トーマス・エジソンの会社が特許を所有し、その影響を避けたい独立系映画会社が増え、時に出演者のヌードも撮影。1934年に始まった米映画界の自主規制“ヘイズ・コード”で性的な描写は禁じられるようになったが、1960年代からその網の目をくぐるように、ヌードやセックス場面を扱う映画は増えていった。

WOWOW公式サイトより

 続いても未ソフト化の『ヌードの映画史~黎明期から現代へ~』
 こちらはWOWOWの放送が今回、日本初公開となります。WOWOW公式サイトには「ハリウッドを中心とする世界の映画史を、俳優のヌードに注目して振り返った、異色のドキュメンタリー」とあるので、大いに期待したいところです。映画のみならず、写真や絵画などあらゆる芸術は太古の時代からヌードとは切っても切れぬ関係にあります。ビデオやネットの普及にも大いに影響しているはずです。最近の映画界ではインティマシー・コーディネーターの存在が必要不可欠とされ、非常に注目を集めているところでもあり、必見の1本と言えるでしょう。

⑨[4Kデジタルリマスター版]『フィッシャー・キング』

レア度…★★★★☆

『フィッシャー・キング』:ⓒ 1991 TriStar Pictures, Inc. All Rights Reserved.

過激なトークを売りにした人気ラジオDJ、ジャック。しかし、ある時彼が放送で話した言葉に影響され、衝動殺人事件が起きてしまう。3年後、ラジオ界から干されて落ちぶれたジャックは、偶然からホームレスの男性パリーと出会う。彼こそは3年前の事件で妻を殺された夫だった。当時大学教授だったパリーは、妻を失って以来、奇妙な行動を取るようになっていた。責任を感じるジャックは、自分が彼に何かできないかと考えるが……。

WOWOW公式サイトより

 今後、100年たっても間違いなく映画史に残るであろうテリー・ギリアム監督。モンティ・パイソン作品をはじめ、『バンデットQ』('81)や『未来世紀ブラジル』('85)などで、その才能を遺憾なく発揮してきましたが、あまりにも個性が強すぎて、カルトの巨匠になりかけていました。そんな彼が一般の商業作品も作れることを証明したのが本作『フィッシャー・キング』です。落ち目になった人気DJがホームレスの男性と出会い、友情を深めていく内容になっています。主演のジェフ・ブリッジスとロビン・ウィリアムズもキャリア史上ベストというべき演技を披露し、クライマックスからラストにかけて涙なしには見られない名編に仕上がっています。今回は[4Kデジタルリマスター版]での放送となるので、ぜひ、美麗画質でご鑑賞ください。

 次回、9月号激レア映画もレアな映画が盛りだくさんです。
 どうぞお楽しみに!

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トップ画像:『キリコの風景』:ⓒ日活