【8月の激レア映画!】小林聡美出演の『キリコの風景』や、日本初公開となる『ヌードの映画史~黎明期から現代へ~』をはじめ、廃盤・未ソフト化など貴重な映画を“レア度”とともにご紹介!
文=飯塚克味
①[廃盤]『セルロイド・クローゼット』
レア度…★★★☆☆
まずは[廃盤]になっているこちらの『セルロイド・クローゼット』。
今でこそ、LGBTQを声高に訴えることが可能になっていますが、ちょっと前までは、同性愛の描写はハリウッドではご法度でした。それを前面に出すと心の準備のできていない観客たちは物語に集中できなくなってしまうでしょうし、ゲイやレズビアンの人々の存在そのものが世の中に受け入れられていなかったからです。でも映画の作り手たちはさまざまな手法を使って、作品の中に同性愛の痕跡を残してきたんです。本作はそうした知られざるハリウッドの歴史に踏み込んだ貴重なドキュメンタリーになっています。
②[廃盤]『100人の子供たちが列車を待っている』
レア度…★★★★☆
続いての作品もDVDが[廃盤]状態の『100人の子供たちが列車を待っている』という作品です。
映画を知らない子どもたちに、映画とは何かを手作りの教材で教えようとするチリの女性教師のドキュメンタリー。1984年からチリの各地で映画教室を開いているアリシア・ベガが、1986年にサンティアゴで行なった半年間の授業の模様を収めています。映画をほとんど知らない子どもたちに、技術的なことから映画の歴史を教えていく非常に興味深い内容です。あの恐ろしいチリの軍事政権下で作られたことも非常に興味深い点となっています。
③[廃盤]『リディック』/④[廃盤]『リディック:ギャラクシー・バトル』
レア度…★★★☆☆
次も[廃盤]タイトルです。ヴィン・ディーゼルと言えば、誰もが「ワイルド・スピード」シリーズを思い浮かべますが、実は2001年の1作目以降はしばらくお休みしていて、本格復帰したのは2009年の4作目でした。その間、彼が力を入れていたのが『トリプルX』('02)や、この「リディック」シリーズでした。1作目の『ピッチブラック』('00)では主役というより重要キャラといった位置付けでしたが、2作目以降は堂々の主役。特に2作目の『リディック』は超大作となっていて、スペクタクルシーンの連続です。ドラマ「ザ・ボーイズ」で大人気のカール・アーバンとの対決も見ものですよ。
⑤[未DVD化]『キリコの風景』
レア度…★★★★☆
次はビデオ化以来、DVD化されていない1998年の映画『キリコの風景』です。
タイトルは、舞台となる函館がジョルジュ・デ・キリコの絵を思わせることから付いたようです。監督は『免許がない!』('94)の明石知幸。脚本は明石監督の師匠でもあった『家族ゲーム』('83)の森田芳光が担当。お話は物を見ただけで持ち主の素性を当ててしまう不思議な能力の持ち主が、別れた妻を捜し歩くというものになっています。出演は杉本哲太と小林聡美、勝村政信という今も第一線で活躍を続ける方ばかりです。スーパー16による撮影も、今回どのように再現されているのか期待したいところです。
⑥[未ソフト化]『旅するローマ教皇』
レア度…★★★★☆
次は[未ソフト化]の作品です。2013年の就任以来、9年間で53か国を訪問してきたローマ教皇フランシスコに密着したドキュメンタリー作品『旅するローマ教皇』です。約800時間分の膨大なアーカイブ映像をまとめ、カナダとマルタへの訪問に同行し新たな撮影をしたのは、2016年の『海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~』でアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にノミネートされたジャンフランコ・ロージ監督。これだけの素材を84分にまとめて、なおかつ見応えのある内容に仕上げたことは驚嘆に値します。
⑦[未ソフト化]『ナチスに仕掛けたチェスゲーム』
レア度…★★★★★
続いても[未ソフト化]の作品です。オーストリアの作家シュテファン・ツヴァイクの「チェスの話」を原作としたサスペンス『ナチスに仕掛けたチェスゲーム』。
第2次大戦時、ドイツがオーストリアを併合した時に、拉致監禁された公証人バルトークが、唯一手にしたチェスの本を読むことで、あらゆる手を自分のものにしていき、やがてアメリカ行きの豪華客船でチェスの王者との対戦に至るというものです。監督は『アイガー北壁』('08)のフィリップ・シュテルツェル、主演は『帰ってきたヒトラー』('15)でヒトラーを演じたオリヴァー・マスッチなので、間違いのない映画になっています。
⑧[未ソフト化]『ヌードの映画史~黎明期から現代へ~』
レア度…★★★★★
続いても未ソフト化の『ヌードの映画史~黎明期から現代へ~』。
こちらはWOWOWの放送が今回、日本初公開となります。WOWOW公式サイトには「ハリウッドを中心とする世界の映画史を、俳優のヌードに注目して振り返った、異色のドキュメンタリー」とあるので、大いに期待したいところです。映画のみならず、写真や絵画などあらゆる芸術は太古の時代からヌードとは切っても切れぬ関係にあります。ビデオやネットの普及にも大いに影響しているはずです。最近の映画界ではインティマシー・コーディネーターの存在が必要不可欠とされ、非常に注目を集めているところでもあり、必見の1本と言えるでしょう。
⑨[4Kデジタルリマスター版]『フィッシャー・キング』
レア度…★★★★☆
今後、100年たっても間違いなく映画史に残るであろうテリー・ギリアム監督。モンティ・パイソン作品をはじめ、『バンデットQ』('81)や『未来世紀ブラジル』('85)などで、その才能を遺憾なく発揮してきましたが、あまりにも個性が強すぎて、カルトの巨匠になりかけていました。そんな彼が一般の商業作品も作れることを証明したのが本作『フィッシャー・キング』です。落ち目になった人気DJがホームレスの男性と出会い、友情を深めていく内容になっています。主演のジェフ・ブリッジスとロビン・ウィリアムズもキャリア史上ベストというべき演技を披露し、クライマックスからラストにかけて涙なしには見られない名編に仕上がっています。今回は[4Kデジタルリマスター版]での放送となるので、ぜひ、美麗画質でご鑑賞ください。
次回、9月号激レア映画もレアな映画が盛りだくさんです。
どうぞお楽しみに!
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トップ画像:『キリコの風景』:ⓒ日活