「コンフィデンスマン」って、ある意味では漫才師かコント師かも――長澤まさみ主演『コンフィデンスマンJP 英雄編』を観てスピードワゴン・小沢さんが心撃ち抜かれたセリフとは?

 映画を愛するスピードワゴンの小沢一敬さんが、映画の名セリフを語る連載「このセリフに心撃ち抜かれちゃいました」
 毎回、“オザワ・ワールド”全開で語ってくれるこの連載。映画のトークでありながら、ときには音楽談義、ときにはプライベートのエピソードと、話があちらこちらに脱線しながら、気が付けば、今まで考えもしなかった映画の新しい一面が見えてくることも。そんな小沢さんが今回ピックアップしたのは、3人のコンフィデンスマン(信用詐欺師)が欲望にまみれた金の亡者たちから金を騙し取る痛快シリーズの映画版第3作『コンフィデンスマンJP 英雄編』('22)。さて、どんな名セリフが飛び出すか?

取材・文=八木賢太郎 @yagi_ken

──今回は、人気ドラマとして始まった『コンフィデンスマンJP』シリーズの映画版第3作となりますが。小沢さんは、このシリーズをご覧になったことは?

小沢一敬(以下、小沢)「うん。ドラマ版は、たぶん全部観たと思う。俺はあんまりドラマを全部観たりしないんだけど、全部観た数少ない作品の一つだね。それだけ好きなドラマだったから」

──このシリーズのどんなところがお好きですか?

小沢「単純に楽しい作品だよね。毎回ちゃんとオチもあって、伏線回収もあって、良くできたエンターテインメントを見せてくれる感じで。この作品のおかげで、長澤まさみさんのことをすごく好きになったよ。いつも表情が豊かというか、いい笑顔をするから、それで好きになっちゃった」

──では、今回の『英雄編』はいかがでしたか?

小沢「いつも通り、シンプルに面白かった。構成とか見せ方もいろいろ考えられていて。同じ場面を、それぞれの登場人物の視点ごとに何度も見せて、だんだんと謎が解けていくじゃない。ダー子(長澤まさみ)の視点からはこう見えるけど、ボクちゃん(東出昌大)の視点ではこういう意図で動いていて、実はその裏ではリチャード(小日向文世)がこんなことをやってた、みたいな感じで。それが最終的にすべての伏線回収につながっていくという。ホントに、観ててまったく退屈しない映画だったよ、今回も」

──そして毎度、最後の最後にどんでん返しが待っているという。

小沢「そうそう。たぶんさ、探せばツッコミどころもあると思うんだけど、それを言うのは野暮だよね。今の時代は、こういう楽しむだけの映画でさえもツッコミどころを探す風潮があるけどさ、俺はそれよりも、この映画の面白いところをたくさん探したい」

──名作と呼ばれる映画にだって、ツッコミどころはありますからね。

小沢「今回の作品で俺が特に感じたのは、長澤まさみさんの魅力には、『物語のつじつまなんてどうでもいいや』とすら思わせてくれる何かがあるってこと(笑)。たとえば俺らが漫才を作るときにもさ、もとになる台本はあるんだけど、単純に台本の文字で伝わる面白さよりも、実際に相方の(井戸田)潤がしゃべったほうが何倍にも面白くなるって信じてるの、いつも。もちろん、この『コンフィデンスマンJP』シリーズ('18~'22)は、脚本そのものもすごく面白いんだけど、それをより面白くしてくれてるのは演者の力というか。あれだけ魅力的なキャストをそろえて、そして、その中心に長澤さんがいるからだと思うよ」

──役者さんたちにとって、そういう作品に出会えるチャンスってなかなかないことですよね。

小沢「そんな気がするね。たとえば田村正和さんにとっての『古畑任三郎』シリーズ('94~'06)とか。まあ、田村さん自身がどう思われてたかは分からないけど、観てる側からすれば、ああいうのは作品との幸運な出会いだったのかなと感じちゃうよね」

──今回の作品には、いつものキャストの他に、1シーンだけのゲストなどで豪華な俳優さんたちも出演されてました。

小沢「俺は日本の俳優さんの中で、長澤まさみさんと並んで好きなのが山田孝之さんだから、彼が1シーンだけ出てきたのはうれしかった。そのときに東出君が言うセリフが、セリフなのか本音なのか分からないひと言で。ああいう遊びもたくさんあるから、このシリーズは楽しいよね。誰がどこに出てるか見つける面白さもあって、すごいぜいたくな映画だよ。ある意味で、映画版の“オールスター感謝祭”というか。日本映画のファンにとっては、たまらない作品でしょ。あちこちにスターが出てくるもん。また、そんなぜいたくな映画を気軽に家で観られるっていうのが、WOWOWのすごさだね(笑)」

──ありがとうございます! (笑)。では、そんな今回の作品の中から、小沢さんが一番シビれた名セリフは?

小沢「今回は、『出会わせてくれたよ、大好きな人たちに』だね」

“英雄”とうたわれた詐欺師、三代目ツチノコ(角野卓造)の下で腕を磨いた過去を持つダー子、ボクちゃん、リチャード。当代随一の腕を持つコンフィデンスマンによってひそかに受け継がれる「ツチノコ」の称号を懸け、3人は真剣勝負をすることに。舞台は世界中のセレブが集まる世界遺産の都市・マルタ島。狙うは、莫大ばくだいな財を成し引退したスペイン人の元マフィアが所有する、幻の古代ギリシャ彫刻「踊るビーナス」。それぞれの方法で獲物に近づく3人だったが、そこに警察、さらにはインターポールの捜査の手が迫っていた。

──三代目ツチノコとの回想シーンの中で、ダー子が言うセリフですね。

小沢「最初から最後までずっと楽しい映画なのに、このセリフで、まさか、ちょっとウルッとしちゃったよね。大好きな人たちに出会えたことで自分は孤独じゃなくなった、だから『私ね、一生離さないんだ』って語るんだけど。これってさ、さっきの俳優と作品との出会いっていう話につなげて考えると、長澤まさみさんがこの作品について語ってる言葉にも聞こえてくるんだよ」

──あ、なるほど。大好きな作品に出会わせてくれた、私はこの作品を一生離したくないよ、と。

小沢「もちろん、それは俺の勝手な解釈なんだけど、そんなことを思いながら観てたら、急にウルッときちゃって。またそのセリフをさ、深刻なトーンじゃなくて、カラッとした感じで言うのよ。それがいいんだよね。絶対に長澤まさみさんのことを好きになっちゃう映画だよ、これ(笑)」

──あらゆる角度から長澤まさみさんに騙されちゃいますね。

小沢「感動的なシーンというのは、実はそれより前にちゃんとあって、そこでは長澤さんも泣きの芝居をしてるんだけど、この映画の場合、そういうシーンもすべて『これも騙しの伏線?』って思いながら観てるから、案外、泣けない(笑)。だけど、明るくカラッと言うこのセリフでは泣けちゃうんだから、人間の感情っていうのは面白いもんだよね」

──確かにこの映画は、最後にネタばらしされるまで色々と伏線になっているので、なかなかそこから名セリフも選びにくいかもしれませんね。

小沢「そうなんだよ。なんていうか、心に届くセリフというよりは、頭で考えさせられるセリフが多いからさ。言葉として良いセリフはあっても、それも観客を騙すためのセリフだったりするから。本当の本音をしゃべってるのは、結局、その回想シーンだけの気がするし。でも、それだって本音かどうか分からないもんね。決して本当のことを言わないのが、ダー子の魅力だから(笑)」

──ちなみに小沢さんは、このダー子たちみたいに大がかりな仕掛けをして人を騙したりすることに興味ありますか?

小沢「まあ、こういうのを仕掛けてみたいって思うことはあるけど、でも、ちょっと面倒くさいなって(笑)。実際にダー子たちみたいな詐欺師が実在するとして、労力を考えたら絶対に割に合わないと思うから、本当に人を騙すことが好きじゃないとできないよね、こんなの」

──そういえば、小沢さんからお金に関する話ってあまり聞かないですけど、お金もうけとかにも興味ないですか?

小沢「そうね。もちろん、あればあったでうれしいけど、なければないで、それなりに生きていけると思ってるから。投資とか株にも興味ないし、ましてや詐欺なんて(笑)。ただ、こういう知能バトルみたいなものは好きだから、そういう映画を観たり、本で読んだりすると、すごい爽快感を感じるよ。結局、『コンフィデンスマンJP』シリーズの面白さも、そこでしょ。江口洋介さんが演じてるヤクザの赤星のシーンじゃないけど、あまりにきれいに騙されると気持ち良くなってくる」

──あの赤星の気持ちに、たぶんこのシリーズのファンは共感したでしょうね。

小沢「そう考えるとさ、騙されることって、そんなに悪いことじゃなくて、気持ちのいいことなのかもしれないよね。究極を言えば、恋愛だって、詐欺に似てるところがあるもんね。別に嘘をつくって意味じゃなくて、相手を振り向かせるために、いろんな仕掛けをするわけだから。お金を奪うのではなく、相手の心を奪うための仕掛けをね。俺はもう、面倒くさいから、そこからはリタイアしちゃったけど(笑)」

──夫婦なんて、お互いに一生“騙し合ってる”部分もあるかもしれませんしね。

小沢「そうそう。たとえ嘘でも、一生騙し続けられたら、それは本当になっちゃうんだから。真実が何かなんてお互いに分からないんだから、騙されてたって気付かないまま一生が終われば、それはそれで幸せなことだと思うよ。だから、騙したことを相手に気付かせない詐欺師こそが、本当の詐欺師かもね」

──そういう意味では、俳優さんとか芸人さんも、ずっと嘘をついて観客を騙し続けてる人たちでもありますね。

小沢「そうだよ。漫才なんて、すべてが嘘だからね。『昨日、動物園に行ったんだけどさ』とかネタとして言うけど、動物園なんて行ってないんだもん(笑)。だから、『コンフィデンスマン』って、ある意味では漫才師かコント師かもしれないね」

──むしろ、小沢さんも「コンフィデンスマン」だったってことですね!

小沢「ひょっとしたら俺もツチノコのひとりで、今までこうやってこの連載でしゃべってきたことも、すべてが嘘だったのかもしれないよ(笑)」

小沢一敬さんプロフ2210~

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クレジット:(C)2022「コンフィデンスマンJP」製作委員会

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