【2月の激レア映画!】廃盤・未ソフト化・4K修復版…なかなか出会えない貴重な映画を“レア度”とともにご紹介!

 こんにちは。WOWOW加入者向けに配布しているプログラムガイドで「見逃し厳禁!録画のチャンス!今月の激レア映画」の作品選定を行なっている映画ライター/ディレクターの飯塚と申します。初めましての方もいらっしゃるかと思いますので、簡単に自己紹介をさせてください。

 映画関連のライター業のほか、WOWOWプライムで毎週土曜日に放送している『最新映画情報 週刊Hollywood Express』の演出も担当しています。

 先月に引き続きプログラムガイドで掲載している通称「激レア映画」企画をコラムにしてnoteでも掲載していくことになりました。プログラムガイドで選定された作品がどれほど貴重な映画なのか、その選定理由とともに作品の魅力について語っていきたいと思います。

 文=飯塚克味


【2月の激レア映画10作品】

『四月怪談』

レア度…★★★★☆

<あらすじ>
高校生の少女・初子はある日、下校中に偶然立ち寄った廃工場で、落下してきた鉄骨が頭に当たって命を落としてしまう。当初は自分が命を落とした事実に気付かなかった初子の幽霊だが、現われた幽霊・弦之丞から自分が亡くなったことを教わる。そんな初子は生前に親しくした面々、交流した人々の姿を見るうち、自分はやはり亡くならざるを得ない運命だったと考え出す。だが弦之丞は初子が生き返るべきだと考え、そこで奇跡が起きる。

WOWOW公式サイトより

 最初は大島弓子原作の『四月怪談』
 本作を監督した小中和哉監督は、新作『Single8』(’23)に描かれるような自主映画で脚光を浴びた監督です。ですが、何をおいても本作の魅力は主演の中嶋朋子に尽きるでしょう。ドラマ「北の国から」の螢役で有名な彼女ですが、思いがけず死んでしまい幽霊になった女子高生をキュートに演じています。ちょうどこの頃、子役から脱皮を図っていた時期で、『あさってDANCE』(’91)など、少々際どい映画にも出演していた彼女の魅力が存分に発揮された作品になっています。DVDにはなっているものの、かなり高額な値が付いていて[廃盤]となっている作品。この機会にぜひWOWOWのオンエアでお楽しみください。

『アダマン号に乗って』

レア度…★★★★★

<あらすじ>
パリのセーヌ川に浮かぶ木造建築の船<アダマン号>。ここは、精神疾患のある人々を無料で迎え入れ、さまざまな文化活動やワークショップを通じて多くの人々と交流し、社会と再びつながりを持てるようにサポートする、ユニーク極まりないデイケアセンターの船。船には心に傷を抱えたさまざまな個性の持ち主が自然に寄り集い、各自思い思いに歌やダンス、絵画などに興じるさまを、カメラは生き生きと捉え、映し出していく。

WOWOW公式サイトより

 続いて紹介するのは、第73回ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞した心温まるドキュメンタリーです。監督は『パリ・ルーヴル美術館の秘密』(’90)や『ぼくの好きな先生』(‘02)などで知られるニコラ・フィリベール。今回はセーヌ川に浮かぶ船・アダマン号で精神疾患のある人々を受け入れるという、少し変わったデイケアセンターの様子を描きます。日仏共同製作という点も大切なポイントですが、何とDVDにもなっていない[未ソフト化]の作品です。今回の放送をぜひチェックしてほしいです。

『ジョージア、白い橋のカフェで逢いましょう』

レア度…★★★★☆

<あらすじ>
ジョージアの古都クタイシ。街中で運命的な出会いを重ね、翌日、白い橋の近くのカフェで再会することを約束して別れた、薬剤師のリザとサッカー選手のギオルギ。ところが呪いをかけられたせいで、翌朝目覚めると、2人とも外見がまるで別人のように変わってしまう。2人は各自、約束したカフェへ出向くが、同じ場所に居合わせているのに相手にはずっと気付かずじまい。その後も2人は、運命の相手をひたすら待ち続けるのだが……。

WOWOW公式サイトより

 続いても、[未ソフト化]の一本。
 ドイツで映画制作を学んだジョージア出身のアレクサンドレ・コベリゼ監督による長編第2作です。ジョージアの古都クタイシで、魔法をかけられ、偶然のように出会いが続く1組の男女。再会する約束をしたものの、謎の呪いで外見が変わってしまい、お互いが誰だか分からなくなってしまいます。本作は私自身も毎年通っている映画祭、東京フィルメックスで、第22回最優秀作品賞と学生審査員賞をダブル受賞しています。

 それでは後半に行きましょう。
 後半は独自の路線で映像作品を発表し続けるヤン ヨンヒ監督3作品をご紹介します。在日朝鮮人というヤン ヨンヒ監督の視点で描かれる人々の姿は、ぜひとも目にしてほしいところです。安藤サクラ、井浦新が出演しキネマ旬報ベストテンで日本映画1位に選ばれた『かぞくのくに』(’12)の放送もありますが、なかなか見ることが難しいドキュメンタリー作品をまとめて見ることができるのはかなり貴重だと思います。

『スープとイデオロギー』

レア度…★★★★☆

<あらすじ>
朝鮮総連の元幹部で、3人の息子たちを北朝鮮へ送り出した父親が2009年に他界した後、大阪でひとり暮らしをしながら、なおも息子たちに仕送りを続けてきた母親。なぜそう頑なに北朝鮮を信じ続けるのか、と長年両親のことを理解できずにいた娘のヨンヒだが、結婚した彼女が、夫のカオルを連れて実家へ戻ると、母親は特製のスープを作って2人に振る舞う。さらに母親は、<済州島4・3事件>に立ち会った過去の記憶を語り出す。

WOWOW公式サイトより

 まずは、単館系の映画館で大ヒットを記録したにもかかわらず[未ソフト化]の『スープとイデオロギー』。タイトルには「思想や価値観は違っても一緒にご飯を食べよう、殺し合わずにともに生きよう」という監督からのメッセージが込められています。アルツハイマーを患う母親が語る、過去の出来事は聴き逃せません。

『愛しきソナ』/⑥『Dear Pyongyang ディア・ピョンヤン』

レア度・・・★★★★☆

<『愛しきソナ』あらすじ>
朝鮮総連の幹部だった父親の末娘として、大阪に生まれ育ったヤン ヨンヒ。彼女の3人の兄たちは、まだそれぞれが10代だった1972年、朝鮮総連の推進する帰国事業により、北朝鮮へと移住。地上の楽園と謳われたかの地の、それとはかけ離れた厳しい現実に直面しながら、苦難の人生を歩むことになった。ヨンヒは、北朝鮮を訪れるたびに兄たちの家族の日常生活をビデオカメラで撮影し、姪ソナの愛くるしい姿を追い続ける。

WOWOW公式サイトより

<『Dear Pyongyang ディア・ピョンヤン』あらすじ>
在日コリアンが多く暮らす大阪市生野区に生まれ育った本作のヤン ヨンヒ監督。その父親は朝鮮総連の中心メンバーとして長年働き、母親も夫を支え、ヨンヒはそんな両親に徹底した民族教育を叩き込まれながら、大人に成長。1971年、彼女の兄たち3人は、まだ彼らが十代のころ、両親の勧めに従い、まだ見ぬ“祖国”、北朝鮮へと“帰国”し、両親は仕送りを続けた。2001年秋、両親とヨンヒは兄弟に会うべく北朝鮮に渡航する。

WOWOW公式サイトより

 帰国事業により北朝鮮に移り住んだヤン ヨンヒ監督の3人の兄と、その子どもたちにスポットを当てた『愛しきソナ』、ヤン ヨンヒ監督が自身の家族を10年にもわたって追い続けた『Dear Pyongyang ディア・ピョンヤン』。この2作品は今回[デジタル・リマスター版]での放送となるので、この機会にまとめてドキュメンタリー作品を見るのはいかがでしょうか。

『ペインテッド・デザート タフ劇場版』

レア度…★★★☆☆

<あらすじ>
米国の砂漠にあるカフェ“デザート・ローズ”は日系人女性サリが経営するが、近所にはマフィアのボス、ヴィターリが経営する牧場や彼の家があった。ヴィターリのボディーガード、アルら地元の面々はそこの常連だったが、そこで正体不明の日本人青年ジロー(次郎)が働き始める。そこへアルの旧友スカーフェイスがやって来るが、彼はヴィターリの命を狙う殺し屋だった。やがてヴィターリの家の晩餐会でジローはコックをするが……。

WOWOW公式サイトより

 『燃えよ剣』(’21)などの時代劇大作を手掛けつつ、『ヘルドッグス』(’22)や『BAD LANDS バッド・ランズ』(’23)のような現代劇も制作する原田眞人監督。そんな原田監督が90年代前半をかけて作り続けたのが「タフ」シリーズです。Vシネマとして5作品作られ、6作品目は『ペインテッド・デザート タフ劇場版』として劇場用作品にスケールアップしています。アメリカに舞台を移し、現地のスタッフが多く加わり、映画作りをアメリカで学んだ原田監督の本領が発揮されています。今回、[初HDテレシネ]ということで、画質面にも期待できそうです。

 いよいよ最後の作品となるのは「インファナル・アフェア」シリーズです。

⑧『インファナル・アフェア』/⑨『インファナル・アフェア 無間序曲』/⑩『インファナル・アフェアⅢ 終極無間』

レア度…★★★★★

<あらすじ>
今も語り継がれる香港の名作ハードボイルド「インファナル・アフェア」。警察と犯罪者、それぞれ逆の立場から互いの組織に潜入した2人の男。長い月日で自分の真の姿を見失って混乱していく男たちの葛藤と、彼らを巡る友情、裏切り、愛が交錯する。

WOWOW公式サイトより

 香港映画の枠を超えて、映画ファンを大いに沸かせた「インファナル・アフェア」シリーズ
 犯罪組織に属するアンディ・ラウが、警察学校を出て長らく犯罪組織に身を置くトニー・レオンとW主演した大型潜入サスペンスアクションです。アンドリュー・ラウ監督とアラン・マック監督のダイナミックな演出に酔いしれ、ハリウッドでは『ディパーテッド』('06)としてリメイクされたほど大ヒットを記録。二人の青春時代を描く第2章、事件の意外な結末を描く最終章まで、すべてが傑作です。今回放送される[4Kリマスター版]では、昔の香港映画特有のザラっとした感じがなくなり、非常にクリアで見やすい映像になっています。既に見たことがある方も、まだ見ていない人にとっても必見の三部作です!

 次回、3月号激レア映画もレアな映画が盛りだくさんです。
 どうぞお楽しみに!

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