連続ドラマW-30「アオハライド」のプロデューサー2人が語る、WOWOW初の “本格青春ラブストーリー”への挑戦【ひろがる。私たちのオリジナルドラマ】
大人が観ても“あの頃の青春”を思い返せるような、懐かしんでいただけるような……そんな深みのある〈本格青春ラブストーリー〉
―今回、小林さんと橋本さんがタッグを組まれることになったきっかけを教えていただけますか?
小林「前職で、橋本さんが所属する共同テレビジョンで仕事をしておりまして、当時から橋本さんにはたくさん企画のご相談をさせていただきました。WOWOWに移ってからも変わらず企画の相談をしていた中で、今回の『アオハライド』も『ぜひ橋本さんと一緒にやりたい』と声を掛けさせてもらいました」
橋本「小林さんは共同テレビジョンにいた頃からものすごい熱量で好きなジャンルの企画書を書き込む姿が印象的でした(笑)。今回、サスペンスや社会派ドラマに定評があるWOWOWで“青春ラブストーリー”の企画を通したのには、執念と思いました(笑)」
―橋本さんは「マルモのおきて」をはじめ、たくさんのヒットドラマを手掛けていらっしゃいますよね?
橋本「さまざまな作品をやらせていただき、どの作品にも思い入れがありますが、『マルモのおきて』や『フリーター、家を買う。』は当時を思い返すといろいろと感慨深いです。最近では、2023年1月期のTBS系『夕暮れに、手をつなぐ』も、今までにない座組で素敵なスタッフ&キャストとご一緒させていただき、忘れられない作品となりました。3月にWOWOWで放送する『連続ドラマW 坂の上の赤い屋根』も参加させていただき、勉強になりました」
―過去にTVアニメ化、映画化もされている「アオハライド」を、今あらためてドラマにしようと思った理由は?
小林「企画立案時はちょうどコロナが全盛の時期でした。緊急事態宣言が出て、学校は軒並みオンライン授業になって、学校の行事もことごとく中止されるニュースが後を絶ちませんでした。いつかコロナが収束して一度しかない学校生活に戻るために、そして多くの青春の機会を奪われた学生たちに『学校生活は楽しい』、『こんな青春もある』ということを伝えたかったのも理由の一つです」
橋本「映画版ではおそらく尺の問題などで描き切れなかった原作の数々の珠玉のエピソードを、“連続ドラマ”として原作ファンに届けたいという想いもありましたよね」
小林「そうですね。『アオハライド』の原作コミックは全13巻。青春ものとしては王道なんですが、登場人物それぞれの心の機微が丁寧に表現されていて、原作がしっかりしている作品だからこそ、“連続ドラマ”としてもっと丁寧に、そして原作に忠実に描きたいという意欲が湧きました」
橋本「コミックは原作の素敵な画に加えて、読み手の頭の中でビジュアル的にも想像が膨らむので、コミックの映像化をするときって、ビジュアル作りにすごく緊張します(笑)。でもそこにあえて挑戦する意味もあると思っていて。映像表現の技術も常に進化していますし、特にWOWOWはシネマティックで映像のクオリティが高いドラマをつくる印象が強かったので、過去に映像化された作品をあらためてドラマ化する価値は大いにあると思いました」
―サスペンスやミステリー、社会派作品を好まれる視聴者が多いWOWOWで、“青春ラブストーリー”をつくるに当たって考えたことは?
小林「この点が企画立案時の“もう一つの想い”でもありますかね。WOWOWにはサスペンス・ミステリー好き、そして映像も内容もクオリティが高い作品ばかりなので、目の肥えたお客さまが多いです。だからこそ、そのようなお客さまに向けても、大ヒットメーカー・咲坂伊緒さんの人気作品をWOWOWクオリティで本格的につくり上げると“史上最大級の本格青春ラブストーリーになる”、“どんなジャンルをつくってもWOWOWクオリティになる”という想いを強く持っていました」
橋本「プロデューサーとしてWOWOWのドラマ制作に関わるのは『アオハライド』が初めてだったんですが、実際にやってみて、WOWOWと地上波ではドラマのつくり方が違うと感じました。エンターテインメント作品をつくるという意味で根本は一緒だと思いますが、気にする視点が少し違うといいますか…。ながら見ではなく、ご加入されたお客さまからお金を頂いて見せる有料放送のWOWOWの気概といいますか、目の肥えた加入者の方々を楽しませるには、独特の観点を意識したドラマづくりが求められると感じました」
小林「何よりも、どんなカタチであろうとも誰しもが通ってきた青春なので、大人が観ても“あの頃の淡く切ない青春”を思い返せるような、懐かしんでいただけるような…そんな深みのある世界観を意識しましたね」
原作キャラクターの再現度へのこだわり――。
惹き込まれるような〈映像美〉と、それを極限にまで高揚させる〈音楽〉
―キャスティングのこだわりや狙いを教えてください
小林「原作に忠実に向き合うからこそ、お芝居面はもちろんですが、何よりも“この人だったらこのキャラクターにはまる”というような、ビジュアル面は特に意識しました」
橋本「主人公の吉岡双葉は、透明感がある人がいいなと思っていましたね。その上で、双葉の持つ弱い部分と強い部分、両方をうまく出せる人は誰かと考えた時、出口夏希さんのお芝居からにじみ出る雰囲気が合ってるんじゃないかという話になりました」
小林「『アオハライド』の企画書を書いていた時、ちょうど、あるバラエティ番組に櫻井海音さんが出演しているのを観まして。その時の横顔やたたずまい、声のトーン、笑みを浮かべたときの仕草がすごく洸だなと思った瞬間があって。ただ”カッコいい”だけでなく、洸はつらい過去を経験していて、不器用な面や想いを素直に出せない部分もあって、櫻井さんがまとう雰囲気はもちろん、こういった表情(芝居)の変化もストレートにつくり出せるのでは、と感じましたね」
橋本「洸って『おまえが大いに悩んだり迷ったり決められないから周りが振り回されるんだ!』って言いたくなるキャラクターなのに好感を抱かずにはいられない魅力があるんです。なおかつ心に暗い過去を抱えているので、“王子様感”とナイーブな一面の両方を表現できる役者さんがいいな、と。櫻井さんはどこか影もありつつ、22歳にして年齢不詳の色気と人を惹きつける魅力を持っていたので、『ぜひ櫻井さんで!』と意見がまとまりました」
小林「あと、自分の身近な原作ファンの方々に、かなりリサーチも入れましたね。とにかく、原作のキャラクターの再現度にはこだわっていたので、ビジュアルはかなり重視しました。洸の兄で教師の田中陽一役を演じた兼近大樹(EXIT)さんには、このドラマのためにトレードマークのピンク髪を黒く染めてもらいました。もともと兼近さんが原作をお好きだったというのも大きかったのですが(笑)」
橋本「兼近さん演じる陽一の、静かなる破壊力はすごかった!」
小林「曽田陵介さんが演じる菊池冬馬も、まさに“菊池冬馬”でしたね(笑)」
橋本「かわいかった!」
小林「曽田さんも原作の大ファンで、(これは曽田さんに限らずですが)撮影が始まる直前まで原作の漫画を読み込んでいましたね」
橋本「マッシュヘアも片耳ピアスも、すごく冬馬っぽかったです」
―映像や音楽にもかなりこだわったとか?
橋本「小林さんや木村監督をはじめ、カメラや照明のスタッフみんなで話をしていた中で、“ハレーション”や“光”は効果的に使おうと決めました。光だけでなく、“風”もうまく表現したいと監督にお願いして、裏で扇風機を回してカーテンをはためかせたり、演者の前髪をフワッと揺らしたり。前髪が風でフワってなる感じなんかは、“まさに青春感があるな”と思ったので」
小林「本作においては“キラキラ”、“胸キュン”というワードを封印していて、あくまでも“本格”青春ラブストーリーを徹底していました。監督、カメラマンにはとにかく表情が捉えられるよう、たくさん“寄り”で撮ってほしい、引きのカットの場合は奥行き(背景)を意識してほしいとオーダーしました。“寄り”とはいっても顔で画面が埋まるくらいの“ドン寄り”で、と(笑)。物語内の抑揚は大切ですが、一切出し惜しみしたくなかったので、原作の名場面・名台詞を惜しむことなく詰め込んで、常にキラーカットを狙ってほしい、もはやキラーカット(ハレーション)だらけになってもいいくらいの想いでした(笑)。あと、原作のカットに合うように木村監督がうまく演出してくださったのも大きかったですね」
橋本「音楽もすごく意識しました。若者だけに刺さるものというより、味のある大人っぽい雰囲気のものにできればとみんなで話し合って、TBS系『Nのために』や『最愛』を手掛けた横山克さんにお願いしました」
小林「この曲が流れたら『アオハライド』だとすぐに連想できるような、とにかく耳に残る音楽にしてほしかったんです。いつの間にか口ずさんでしまうような、印象強さを求めてましたね。疾走感や風や光、蒼さも感じられる中に、落ち着いた“深み”も感じられて。横山さんの音楽によって、われわれが掲げていた『アオハライド』の世界観がより一層強まりました」
橋本「惹き込まれるような映像美と、それを極限にまで高揚させる横山さんの音楽とのマッチングも見どころですね」
小林「そうですね。30分ドラマでCMもないため、より作品の世界観に浸っていただけるよう、音楽は本編内で畳みかけるようにつけていただくようにお願いしました」
WOWOWドラマのブランディング向上へ――。
初の〈TVer全話配信〉
―WOWOWとして初めてTVerで全話配信した作品でもありますよね?
小林「第1話のみWOWOWオンデマンド/公式YouTubeで無料配信というのはこれまでも行なってきましたが、作品の知名度も高く、ジャンルとしては若年層向けなので、1本でも多く無料配信で出していけないかと相談していたところ、TVerの話が浮上して。WOWOWはあくまでも有料放送なので、無料で番組を“全話”配信することへの懸念ももちろんありましたが。とにかく間口を広げて幅広い層の方々に視聴いただき、そこからWOWOWへの興味を持っていただければと、その一心でTVerでの全話配信に踏み切りました」
橋本「とても大きな決断だったと思います。WOWOWさん、すばらしい!と思いました(笑)。『アオハライド』という作品をひとりでも多くの方々に見ていただきたかったので、GOサインが出たと聞いた時はとにかくうれしかったです。絶対に作品にとっても、ひいてはWOWOWさんにとってもプラスになっていると思います」
小林「WOWOW初の本格青春ラブストーリー、WOWOW初のTVer全話配信と、大きな挑戦づくしではありましたが、WOWOWドラマのブランディングに少しでも献上できていれば何よりです」
―では、最後にSeason2の見どころを教えてください
小林「Season1のメインとしては、双葉と洸、そして村尾修子(志田彩良)、槙田悠里(莉子)、小湊亜耶(新原泰佑)という5人の“青春・友情”が育っていくさまを描いていますが、Season2からは、菊池冬馬(曽田陵介)が双葉へ急接近、洸の空白の3年間を知る成海唯(藤吉夏鈴)が登場し、四角関係の“ラブストーリー”に比重が移ります」
橋本「夏祭りや文化祭などイベント満載のSeason1の青春感とはまた少し違って、恋愛的にも一歩進んだSeason2ならではの“青春“を感じ取っていただけるはずです」
小林「成海唯を演じる藤吉夏鈴さんは本作がドラマ初出演ですが、一つ一つの台詞や表情に注目してもらいたいです。ご本人も意識されていた“愛される、愛してほしい成海唯”から、ぬくもりなのか悲しみなのか共感性なのか、ご覧いただく方々には“何か”を感じていただけるはずです」
橋本「唯は重い過去を背負っているので、映像にすることで重さが増してしまうんじゃないかと私たちスタッフも心配しましたが、それを感じさせないくらい愛おしいお芝居で、唯という役を絶妙にチューニングして演じてくれました」
小林「実際に長崎へ行ってロケ撮影してきた修学旅行も見どころですね」
橋本「あらゆる世代の方に没入感を味わっていただける作品に仕上がっていますので、ひとりでも多くの方に観ていただけたらうれしいです」
小林「映像へのこだわりはもちろん、原作の再現度にもとことんこだわっていますので、Season2も最後までお楽しみください」
▼連続ドラマW-30「アオハライド Season2」をWOWOWオンデマンドで見るならこちら(※2024年2月29日まで、〈第1話〉無料配信中!)
▼連続ドラマW-30「アオハライド Season1」をWOWOWオンデマンドで見るならこちら
▼連続ドラマW-30「アオハライド」のTVerページはこちら
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