気になる本はありますか?「優しいスピッツ a secret session in Obihiro」とセットで読みたい本5選!
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気になる本はありますか?「優しいスピッツ a secret session in Obihiro」とセットで読みたい本5選!

WOWOW
WOWOWブッククラブでは、毎月のテーマに沿ったおすすめ番組と関連する本を記事としてまとめ、noteをご覧になるみなさんにお届けしてゆきます。

1月の番組テーマは、「優しいスピッツ a secret session in Obihiro」。

2021年、デビュー30周年を迎えたスピッツ。今回、大正11年に建築された国指定の重要文化財、旧双葉幼稚園園舎にてこの番組だけのための演奏が行なわれました。そのオリジナルライブをWOWOWで放送・配信します。

この度、スピッツのファンでもあるブッククラブ部長の幅さんが番組をより楽しんでいただくための5冊の本をセレクトしました。

放送告知画像(youtube用)

1冊目:旅の途中

スピッツ(著)
幻冬舎

みなさんご存知のスピッツについて、より深く知りたいという方にまず読んでいただきたいのが、『旅の途中』です。

今から15年近く前に発刊された一冊ですが、スピッツのメンバー4人が各章ごとにそれぞれ来歴を語るという構成になっており、彼らがそれまでに歩んできた旅路や初期衝動を、素直な言葉で表現してくれています。

草野マサムネさんがスピッツ以前に結成していた「ラディッシュ」というバンド時代の頃から話は始まり、THE BLUE HEARTSの登場が与えたショックがいかに大きかったかなど、まだロックバンドとしての方向性もあやふやだった、結成当初のストーリーを細やかに振り返ります。

そんな初々しさも垣間見せながら、確固たる「スピッツ観」を確立させていく様子はもちろん、メンバー全員が別個の視点から同じ事件について振り返ってくれるので、フラットな目線からスピッツの道程を追いかけることができます。

本書の中で特に印象深かったのは、彼らの音楽性にまつわるお話です。草野さんの持ち味であるシュールとメルヘンを行き来するような世界観を見出すにあたり、大正期のダダイズムに触れてみたり、アイヌのお祭りに着目してみたりなど、他のバンドではみられないような着想の得方をしていることが明らかにされます。

「ロックバンドで売れるなんてカッコ悪い」という尖った姿勢の限界を、メンバー全員が共有していた中で、そこに自分達の甘えを感じ取り、「売れる」ことへ真剣に向き合い始めたことで車輪が前へ進んでいく展開は、本書の大きな読みどころではないでしょうか。

笹路正徳さんという大物プロデューサーを迎え、本格的なメジャーデビューに向けて歩み出したことで、これまで伝えきれなかったものが形になっていく様子からも、彼らが正しい旅を続けられてきたことを証明しているような感覚を覚えます。

2冊目:猫語の教科書

ポール・ギャリコ(著), 灰島かり(訳)
ちくま文庫

便宜上、著者はポール・ギャリコというアメリカの小説家になっていますが、実際の書き手は「猫」というユニークな一冊に仕上がっているのが『猫語の教科書』です。

ひょんなことから猫語が理解できるようになった編集者が、手元に届いた猫語の文章を読んでみると、猫の間で秘密裏に出回っていた教科書だった、というのが本書のあらすじです。

猫が猫自身の目線から、どのように人間をしつければ人間社会で首尾よく生活できるか、ということが(もちろん人間の言葉で)事細かに記されています。

タイプ別に分析された人間との触れ合い方や、獣医との接し方、美味しいものにありつく方法、そしてドアの開け方に至るまで、猫の目線から快適なネコライフを送るための情報が満載です。

猫という動物の視点から、人の暮らしや男女の違いというものが描かれるなど、私たちの日々の生活や性質が面白おかしく、俯瞰的に解説されているのも読みどころです。

スピッツの作品に『猫になりたい』という一曲がありますが、猫の気持ちが猛烈にわかってしまう本書を読んでから聴いてみると、この曲の響き方にも違いが出てくるのではないでしょうか。

3冊目:えーえんとくちから

笹井宏之(著)
ちくま文庫

こちらは短歌集として発刊された一冊ですが、著者である笹井宏之さん本人としては、短歌を「短い詩」と捉えていることもあり、ふだん短歌を読み慣れていない方でも入りやすいかもしれません。

1982年に生まれた彼は、重い身体障害を抱えながらの生活が続く中、短歌を通じて自分らしさを発信してきました。笹井さんは2009年に26歳という若さでこの世を去ってしまいますが、彼の言葉巧みな世界観が多くの読者に影響を与え、静かで、それでいて根強いファンを獲得するに至りました。

笹井さんの短歌はその透明感の高さが大いに評価されていますが、スピッツの歌詞にもまた、同様の透明感や純粋さが表れているようでなりません。それでいて芯のようなものを感じさせる、確固たる核の存在やユーモア、洒脱さが見え隠れするなど、スピッツの世界観が好きな方にはぜひ笹井さんの歌集も手にとっていただきたいと思ったのです。

療養の身であった笹井さんのフラットな視点は、彼が自ら身を起こすことが難しいからこそ、身体の一部として周囲の事物を捉え、主語を託すことで生まれてきたのでは、などと想像を巡らせてしまいます。

自身の置かれた状況を恨むような思いを表出することなく、透明な眼差しで自分の内にある喜びを平易な言葉でつづり、前衛短歌界の歌人たちを揺り動かした作品群は必見です。

4冊目:日本語 語感の辞典

中村明(著)
岩波書店

こちらのコーナーで紹介する機会は少ないのですが、ぜひ取り上げておきたいのが『日本語 語感の辞典』という辞書です。

日本の国語学者である中村明さんの、愛と探求の集大成とも言えるこちらの一冊は、スピッツの世界観を理解する上で大いに役立ちます。

「感激」と「感銘」、「順調」と「絶好調」など、一見すると同じような意味の言葉でも、普段の生活でどのように私たちがこれらの言葉を使い分けているのか、というところに着目しているのが面白いところで、言葉の「語感」が持つ微妙な雰囲気の違いを明らかにしてくれます。

スピッツの歌詞を掘り下げていくと、「なぜここでこんな言葉が?」と考えてしまうこともあるものです。そんな時にこの『日本語 語感の辞典』を取り出して貰えば、彼らがその言葉を持ち出すに至った理由へ近づくことができるかもしれません。

相手に何かを伝えたい時、そこに情報以上のオーラをまとわせたい気持ちが湧いてくることは、誰しもに起こり得ることです。

SNSを通じて、気軽にコミュニケーションができる今だからこそ語感にこだわり、些細なメッセージでも推敲を重ねて発信してみることで、相手への届き方というのは大いに変わってくるのではないでしょうか。

5冊目:Way Far

ライアン・マッギンレー
Rizzoli

こちらは、ライアン・マッギンレーという写真家がまとめた写真集です。スピッツの音楽を聴いていると、どうにもライアン・マッギンレーの作品へ誘われるような感覚を覚え、彼らは近しい世界観を共有しているのでは、と感じずにはいられません。

弱冠25歳でニューヨークのホイットニー美術館で個展を開催するなど、若い頃からその才能を開花させてきたマッギンレーは、写真界におけるエポックメイキングな存在として高く評価されてきました。

そんな彼の作品の中で特徴的なのが、色彩と構図の美しさです。本書は彼がアメリカ横断の旅に出かけ、その旅路で撮影した作品を集めたものですが、大自然の中で裸の男女が配置される、という写真が目を引きます。

フレッシュで若々しい息吹が感じられる若い男女と、長い月日を経て今の姿となり、それ以来時が止まってしまったような雄大な自然との対比は、人間界と自然界で流れている時間軸のギャップを暴きます。

それぞれの違いを認めつつも、写真の中では一瞬とはいえ人間が自然の時間の中に取り込まれる瞬間が垣間見えるとともに、若者らしい「世界は自分達のもの」と言わんばかりの無垢な初々しさも現れるなど、純度の高い美しさと調和を堪能できます。

奔放な様子が印象的な一冊ですが、マッギンレー本人は綿密に構図やライティングを計算の上、撮影に取り組んでいるというのも興味深いところです。

このような精密な制作プロセスを、スピッツの楽曲制作のプロセスに照らし合わせてみると、彼らの間には決して少なくない共通点が見えてくるように思います。

純朴で爽やかな印象を作品から受ける一方、その作り手が奔放であるかといえばそんなことはなく、ディテールまで考え抜かれた設計図をもとに制作しているというアプローチは、両者に当てはまるのではないでしょうか。

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