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WOWOWオリジナルドラマ「松尾スズキと30分の女優2」とセットで読みたい4冊!

WOWOWブッククラブでは、毎月のテーマに沿ったオススメ番組と関連する本を皆さんにお届けしていきます。ブックディレクターの幅 允孝さんが選んだ「番組をより楽しむ」ための4冊。番組を見る前に読むも良し。番組を楽しんだ後に読むも良し。楽しみ方はあなた次第です!

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    WOWOWオリジナルドラマ「松尾スズキと30分の女優2」

大人計画主宰、シアターコクーンの芸術監督、コントの名手・松尾スズキが毎回ひとりの女優とがっぷり四つに組んで繰り広げる至極のWOWOWオリジナルコントドラマ「松尾スズキと30分の女優2」。今回、登場する女優たちは、生田絵梨花、松本穂香、松雪泰子、天海祐希の4人。それぞれの女優の持ち味を最大限に活かす予測不能な至極のコントをお見逃しなく!

     3月13日(日)午後11時より 4週連続で放送・配信

まずは「松尾スズキと30分の女優」シーズン1をオンデマンドで見よう!


1冊目:矢印

松尾スズキ(著) 文藝春秋

 演出家であり劇作家であり、脚本もコラムも書くという松尾スズキさんの多彩さを理解する手助けとなってくれるのが最新作の『矢印』です。舞台や映像作品では可笑しみの中に悲しみを内包するような、相反する感情が入り混じりながらも、気持ちよく染み込んでくる松尾さんの作風が多くのファンの心を動かしますが、松尾さんはこれまで小説作品も手がけています。

 放送作家の見習いである主人公が、偶然の出会いから妻となった女性と喧嘩に明け暮れ、夫婦ともどもお酒に飲まれていくお話なのですが、従来の作風とは打って変わって、今作はアルコールの匂いがツンと鼻腔に刺さってくるような、壮絶な物語に仕上がっています。酒浸りの日々の中でも、どこかウイットの利いた言葉が二人の口論の最中に交わされたり、共にアルコール漬けとなっている妻、スミレの過去や主人公の「俺」との共通点が明らかになったりと、目を背けたくなるような転落物語でありながら、無視できない登場人物たちの人間性が、読者を作品に繋ぎ止めます。泥酔状態の中で現実と心理世界が交錯する、世界が揺れるような描写は、お酒を飲めない読者にも「酔うとこんな感じになるのか」ということが如実に伝わる一幕でしょう。ふと思いを馳せてしまう、「俺」が師匠と仰ぐ人物の手首に彫られた矢印形の刺青が、彼を導く行方からも目が離せません。人間のドス黒い感情がアルコールの中に渦巻く、恐ろしくも魅力的な作品です。

2冊目:ノベライズ・テレビジョン

天久聖一(著) 河出書房新社

 テレビ番組をノベライズするという、一風変わった短編小説集が『ノベライズ・テレビジョン』です。『バカドリル』などでお馴染みで、今回の「松尾スズキと30分の女優2」では脚本も手掛けている天久聖一さんが書いた一冊ですが、普段テレビで眺めている制作物を、妄想の世界で補いながらオリジナルの物語に作り替え、冒頭から「笑っていいとも!」を小説化してしまうなど、エンジン全開の作品集に仕上がっています。

 パロディとはいえ、番組を視聴する中で覚えた違和感や気づきをキャストの心情描写として表現したりすることで、天久さんの着眼点の鋭さや、テレビ番組の奥深さに迫れるのが面白いところです。本番組の限られた時間の中で発せられる、女優たちがもたらす魂のこもった言動や面白さは、この小説を通じても垣間見ることができるのではないでしょうか。一視聴者からすれば、テレビ番組の裏側というものは知るよしもありませんが、テレビ番組には画面越しにいくらでも物語性を見出せる余地が残されていることに、ハッと気付かされる一冊です。

3冊目:場面設定類語辞典

アンジェラ・アッカーマン、ベッカ・パグリッシ(著)/、小山健(イラスト)、滝本杏奈(翻訳) フィルム・アート社

 こちらは創作者向けに編纂された、全7巻からなる「類語辞典シリーズ」のひとつです。専門書のような印象を受けますが、実はベストセラーを記録した辞典シリーズで、「感情」や「トラウマ」といったテーマに基づいて出版されています。

 今回ご紹介するのは物語には欠かせない「場面設定」に関する類語辞典で、どんな情報をシーン毎に盛り込めばストーリーを豊かにできるか、というノウハウを辞典形式でまとめています。ありきたりな場面設定から抜け出せない、という人にこそ強く勧めたい一冊となっており、冒頭では50ページ近くにわたって場面がもたらす効果やその使い方について、著者の一人であるアンジェラ・アッカーマンさんによって詳しく語られます。「学校」という場面に潜む味や匂いに質感、「洞窟」から見出される物語の可能性など、何もないところからストーリーを構築する、鋭敏なクリエイターが持つ感性に迫る手がかりを得られるのではないでしょうか。

 本番組でも女優たちが様々な場面設定を与えられ多彩な演技を披露していますが、その設定を楽しみながら本書を読むのも面白いかもしれません。類語辞典とは言いつつも、読み手に新しい発見やものの見方を与えてくれる、創作者必読の指南書です。

4冊目:コーネルの箱

チャールズ シミック(著)、 柴田 元幸(翻訳) 文藝春秋

 ピューリツァー賞も受賞しているアメリカの詩人、チャールズ・シミックが手がけた一冊。ジョゼフ・コーネルという前衛アーティストが、アッサンブラージュと呼ばれる方法を用いて、ニューヨークの街から集めた品々を箱の中に詰めた「アート作品」に、シミックが散文を添えて発表しました。

 30点にも及ぶコーネルの箱の美麗なカラー写真とともに、作品一つずつに小さな詩を寄せてみたり、短い物語を書いてみたりといった調子で一冊にまとめられています。シミックが寄せた散文は、コーネルが創り出した小宇宙の寡黙な美しさに触発されている様子が伝わってきます。アートや文学の世界に囚われない、メディアの垣根を超えた二人の対話が端的に現れている一冊と言えるのではないでしょうか。幾つもの小箱の中でコーネルが想像を広げて生み出した世界は、本番組で繰り広げられている松尾スズキの妄想の世界とも通じるものがあるように思えます。

 日本語に訳された文章へ触れるにあたり、もう一人欠かせないファシリテーターとなるのが、本書を翻訳されている柴田元幸さんです。翻訳にあたっての言葉選びや間の置き方など、柴田さんの優れた作家性が光る文章もさることながら、芸術に明るくなかったり、コーネルの当時の生活の様子が想像できなかったりする読者も読み込めるよう丁寧な注釈をつけるなど、行間の想像力がより掻き立てられる配慮も素晴らしい一冊です。

これまで紹介した本

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先に番組を観るも良し。本から入るのもまた一つの楽しみ方です。あなたにとって番組や本との新しい出会いになることを願っています。