【7月の激レア映画!】カトリーヌ・ドヌーヴ主演で4Kレストア版でよみがえった『インドシナ』や、アラン・ドロン主演の代表作2本をはじめ、廃盤・未ソフト化・HDレストア版など貴重な映画を“レア度”とともにご紹介!
文=飯塚克味
①[廃盤]『シャロウ・グレイブ』
レア度…★★★★☆
まずはソフトが[廃盤]になっている作品からご紹介します。
『スラムドッグ$ミリオネア』('08)でオスカーを受賞したダニー・ボイル監督が、出世作『トレインスポッティング』('96)の直前に作ったデビュー作で、現在[廃盤]となっている『シャロウ・グレイブ』です。シェアハウスに暮らす3人が、4人目の入居者を迎えるが、彼は突然死亡。残された大量の麻薬と大金により、さまざまな思惑が駆け巡るサスペンスです。丁寧な人物描写と先が読めない内容で最後まで目が離せません。若き日のユアン・マクレガーも魅力全開となっています。
②[廃盤]『青春シンドローム』
レア度…★★★★☆
続いての[廃盤]作品はフランスのセドリック・クラピッシュ監督が1994年に発表した『青春シンドローム』です。公開時より、ちょっとさかのぼった70年代を舞台にした群像劇となっています。1961年生まれの監督にとって、70年代はまさに青春真っ盛り。少し前の時代を振り返る青春映画といえばジョージ・ルーカス監督の『アメリカン・グラフィティ』('73)やケヴィン・レイノルズ監督の『ファンダンゴ』('85)などが有名ですが、本作も監督の思いが詰まった一作になっています。ぜひ、チェックしてください。
③[未ソフト化]『女子大小路の名探偵』
レア度…★★★☆☆
次は[未ソフト化]の『女子大小路の名探偵』です。映画にもなった「アンフェア」シリーズの原作者・秦建日子が長期連載した後に、書籍化されたミステリーを映画化したものです。この作品の特徴としては何といっても地域密着型の作品で、地元に知識のある人が見たら、思わずニヤついてしまうようなロケーションの魅力にあります。スーパーカオスな歓楽街、女子大小路で起きた連続殺人事件にナンバーワンホステスの姉と、雇われバーテンダーの弟が挑みます。主演は剛力彩芽と醍醐虎汰朗。2人の掛け合いにも注目です。
④[未ソフト化]『すべてうまくいきますように』
レア度…★★★★☆
続いての[未ソフト化]作品はフランソワ・オゾン監督がソフィー・マルソーとタッグを組んだ『すべてうまくいきますように』。登場時には恐るべき新人とされたオゾン監督と、アイドルからスタートしたマルソーが、介護問題に直面する話なので、嫌でも時の流れを感じますが、これが意外といい内容なんです。年老いた父親が希望する安楽死を受け入れるかどうかで家族が悩む。マルソーと同時代を生きてきた世代はもちろん、若い方にもきっと受け入れてもらえるはずです。
⑤[未ソフト化]『私たちの声』
レア度…★★★☆☆
次の[未ソフト化]作品は、女性が主人公の7つのショートストーリー『私たちの声』になります。「映画、芸術、メディアを通して女性を勇気づける」をスローガンとして掲げる非営利映画製作会社<We Do It Together>が企画し、実話をベースにしたフィクション、アニメーションなどさまざまな手法を使って、女性監督と女優たちが心を動かしてくれます。女優陣はジェニファー・ハドソン、カーラ・デルヴィーニュ、エヴァ・ロンゴリアら、監督は『トワイライト~初恋~』('08)のキャサリン・ハードウィック、女優のタラジ・P・ヘンソンらが参加。日本からは杏を主演に、『そこのみにて光輝く』('14)『きみはいい子』('15)の呉美保監督が、2人の子どもを育てる母親の物語を描きます。きっとあなたの心をつかむドラマがあるはずなので、観てもらいたいですね。
⑥[4Kレストア版]『インドシナ』
レア度…★★★☆☆
続いての作品は[4Kレストア版*]で美しくよみがえった作品です。まずはフランスの大女優カトリーヌ・ドヌーヴが1992年に主演した大作『インドシナ』を紹介します。旧フランス領インドシナで、大地主の女性が現地人の娘を養女として育てながら、恋にも情熱を燃やす壮大な作品です。アカデミー賞外国語映画賞を受賞していますが、当初からアカデミー賞を目指していたそうで、その気合の入れ方たるや、見ればおのずと伝わってきます。レストアもそうした当時の想いを受け、丁寧に行なわれ、大作としての風格を十分に感じさせてくれます。
⑦[4Kレストア版]『エドワード・ヤンの恋愛時代 4Kレストア版』
レア度…★★★★★
次も高画質の[4Kレストア版]の『エドワード・ヤンの恋愛時代 4Kレストア版』。タイトルにわざわざ「エドワード・ヤンの」と付いているのは、イタリア映画で『恋愛時代』('54)という作品があった影響でしょうか。本作が作られたのは『牯嶺街少年殺人事件』('91)の後、1994年です。製作時である90年代前半を舞台に、急速に発展する台湾で生きる10人の若者にスポットを当てています。台湾映画界はレストアにも積極的で、武侠映画の名匠キン・フー監督の作品群や、ホウ・シャオシェン監督の作品なども次々にレストアされています。本作もとても美しく復活しているので、その映像美にも目を向けてください。
⑧[4Kレストア版]『太陽がいっぱい』/⑨[4Kリマスター版]『冒険者たち(1967)』
レア度…★★★☆☆
続いてはアラン・ドロンが主演した代表作2本のです。まずは彼がブレイクするきっかけになった[4Kレストア版]の『太陽がいっぱい』。幾度もリメイクされているミステリーサスペンスでもありますが、ロケーションが美しく、海の青さ、太陽の日差しなどがレストアでよみがえっています。ドロンの人気が絶頂だった頃の[4Kリマスター版*]である『冒険者たち』もきれいに復活しました。共演のリノ・ヴァンチュラ、ジョアンナ・シムカスの魅力もまぶしい、アドベンチャードラマですが、凱旋門を飛行機でくぐろうとする場面や、クライマックスの舞台である要塞島など、みずみずしい映像はファン必見です。未見の人は、この2本を観れば、アラン・ドロンはもちろん、同時代のフランス映画も観たくなってしまうと思いますよ。
⑩[HDレストア版][廃盤]『うず潮(1975)』
レア度…★★★★☆
最後に紹介するのは、ソフトは既に[廃盤]で、[HDレストア版]の美麗画質でお楽しみいただける『うず潮(1975)』です。『インドシナ』('92)のカトリーヌ・ドヌーヴと、フランス映画界を代表する名優イヴ・モンタンの共演作です。孤島で香水の調合をしている中年男性のもとに、突然、結婚式を放り出してきた若い女性がやって来るというお話になっています。この映画の製作年である1975年、ドヌーヴは大忙しで、何と1年で4本もの作品に主演。スターって存在は、不思議なことに忙しければ忙しいほど輝いていることを実感できる作品でもあります。
次回、8月号激レア映画もレアな映画が盛りだくさんです。
どうぞお楽しみに!
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トップ画像(クレジット)/『インドシナ』:ⓒby Paradis Films-La Générale d'images-Bac Films-Ciné 5-Orly Films(Paris) 1991