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「UEFAチャンピオンズリーグ」「UEFAヨーロッパリーグ」とセットで読みたい4冊!

WOWOWブッククラブでは、毎月のテーマとなる番組と関連する本を皆さんにお届けしていきます。ブックディレクターの幅 允孝さんが選んだ「番組をより楽しむ」ための4冊。番組を見る前に読むも良し、番組を楽しんだ後に読むも良し。楽しみ方はあなた次第です!

 欧州最強クラブを決める「UEFAチャンピオンズリーグ」と、欧州サッカーのもう一つの頂点「UEFAヨーロッパリーグ」。2月からいよいよ決勝トーナメントが開幕。WOWOWでは決勝トーナメントの模様を放送・配信する。今回のブッククラブは、サッカー観戦とともに読みたい本をご紹介。

1冊目:フットボールクラブ哲学図鑑

西部謙司(著) カンゼン

 フットボールジャーナリストの西部謙司さんが書いた一冊です。海外での生活経験もあり、現地のヨーロッパサッカーへの感覚的な理解に長ける西部さんが、現地の20チームを厳選して、各クラブに流れるDNAを紹介してくれます。

 この本の面白いところは、各チームが個性的かつ大胆なまとめ方をしているところにあるでしょう。「常勝クラブ」のカテゴリーにはレアル・マドリードやユヴェントス、「港町クラブ」としてリヴァプールやナポリ、「成金クラブ」にマンチェスター・シティやパリ・サンジェルマンがくくられているなど、単なる選手情報にとどまらない、各クラブの文化にフォーカスした分類が見どころです。そしてこんなに忖度そんたくのない切り口で書けるのは彼だけでしょう。

 ビッグクラブの強さの秘訣ひけつやファンとのいざこざ、各クラブの風土や戦術的傾向に至るまで細かに書かれており、自分が応援しているチームはもちろんのこと、相手チームへの文化的な理解も深まります。試合観戦のお供として手元に用意しておけば、フットボールというスポーツをより深く楽しめること間違いありません。

 毎年調子の良いチーム、悪いチームというのは往々にして現われるものですが、欧州では何十年、あるいは100年以上の伝統があるチームも珍しくありません。それぞれのクラブを今年の調子という「点」ではなく、脈々と続く歴史という「線」の中の一つの事象という視点が得られれば、さらにヨーロッパのクラブチームのサッカーを楽しく観戦できるのではないでしょうか。

2冊目:ルカ・モドリッチ自伝 マイゲーム

ルカ・モドリッチ、ロベルト・マッテオーニ(著)/ 長束恭行(訳)

 レアル・マドリードの10番であるルカ・モドリッチの自伝です。モドリッチ本人の言葉で、自身のこれまでの人生を振り返りながら語ってくれる、まさに決定版の一冊といえます。

 今ではスーパースターとして知られるモドリッチですが、実は紛争の中で育った過酷な幼少期を過ごしていたことは、彼の人格や心の強さを知る上では非常に重要です。彼自身は紛争の中でサッカーをプレーすることの喜びや、家族との絆を見いだせたと語っていますが、日本やその他の国々の同世代のサッカー少年たちとは、その環境に大きな違いがあったことは明らかです。モドリッチのようにサッカーを続けられた選手もいれば、その環境や政治的な理由からサッカーを諦めざるを得なくなった人たちの存在が、文中で語られます。

 プロデビュー以降、モドリッチが打ち立てた華々しい功績の数々は、誰もが知るところではありますが、この本が興味深いのは、彼のつつましい人間性にもフォーカスしている点でしょう。意中の女性にスマートにアプローチができないところや、質素なプライベートを送っているところなど、スタープレーヤーとしてのモドリッチしか知らないファンにとっては、親近感を覚えるエピソードも満載です。

 本書が執筆されたのは2018年のことで、モドリッチ自身も当時は年齢の問題から代表を背負うのはそろそろ限界、と語っているのですが、2022年のW杯でも「クロアチアの英雄」の名に恥じない活躍を見せてくれました。人間らしい一面を持ち合わせてはいるものの、やはり僕らのような常人とは肉体的にも精神的にもかけ離れている、超人的な存在であることを本書に再確認させられます。チャンピオンズリーグ決勝トーナメントでの活躍にも注目です。

3冊目:ナーゲルスマン流52の原則 (footballista)

木崎伸也(著)

 プロサッカー経験はゼロ、理論だけを武器にブンデスリーガ史上最年少の監督となった、ナーゲルスマンの思考法がまとめられた一冊です。28歳でホッフェンハイムというチームの監督に選ばれ、現在は今年の優勝候補でもあるバイエルン・ミュンヘンを率いるナーゲルスマンは、いろいろな意味で常識にとらわれないスタイルが衆目を集めています。

 奇抜な装いや言動、その年齢もさることながら、彼が高く評価されているのは理論とデータだけを武器に、チームを勝利に導くアプローチです。慣習にとらわれない、新鮮な手法を実践で次々と採用し、勝ち星を積み上げてきた彼の戦い方は、間違いなくすべてのラップトップトレーナーが憧れる姿でしょう。彼がバイエルンに移籍する際、支払われた金額は2,500万ユーロにも上るとされ、この額は監督に支払われるものとしても前例はありません。監督次第でチームの成績に大きく貢献できることを、現代で証明した人物としてもナーゲルスマンは高く評価できるところです。

 大きな成果を理論だけでもたらしたナーゲルスマンですが、本書のタイトルにも「52の原則」とあるように、成果のために自身で研究を重ね、細かくルール作りを行なっているところは見逃せません。彼が確立した原則の汎用はんよう性は高く、サッカーチームのマネジメントはもちろん、スポーツとは縁のない組織に携わっている人にとっても、学びの多い一冊になるのではないでしょうか。

4冊目:ぼくのプレミア・ライフ

ニック・ホーンビィ(著)/ 森田義信(訳)

 1990年代から2000年代にかけてのイギリスを代表する小説家のひとり、ニック・ホーンビィの処女作が本作です。映画作品の原作なども手掛ける彼ですが、意外にもそのデビュー作品は、ひとりのアーセナルファンによるエッセイのような、はたまた自伝のような不思議な一冊となります。ひょんなことからプレミアリーグのアーセナル(ヨーロッパリーグ決勝トーナメント出場予定)から目が離せなくなってしまったある男が、寝ても覚めてもアーセナルのことを考えてしまう、チームへの愛と苦しみを綴ったこの物語は、一躍本国のイギリスで大ベストセラーを記録しました。

 普通、ファンがスポーツチームを好きになる理由は、そのチームの比類なき強さや華やかさに惹かれるのが一般的ですが、本書で描かれる中毒的なアーセナルへの愛は、その逆と言えるかもしれません。圧倒的な強さを見せたかと思いきや、次の試合ではあっさり完敗を喫してしまうような、とても腰を下ろして見ていられないような不確かさに、多くのファンは心を動かされてしまうわけです。

 仕事でも恋愛でも、生きていると自分ひとりではコントロールできないような障壁が立ちはだかることは珍しくありません。これは「アーセナルのファンであること」もまた同様で、なりふり構わず応援に駆け付けては、熱い想いや罵詈ばり雑言をぶつけるファンたち、そしてファンの応援も奮わず敗北を重ねるアーセナルの姿をひっくるめて、作者はまるで人生のようだと例えているのが印象的です。たかが一勝、されど一勝に日々のコンディションや人生の岐路を左右される、熱心なアーセナルファンだけでなく、他チームのファンも共感できるところはあるでしょうし、恋やアイドル推しなど自身では御し切れない何かにはまっている人必読の書として推したい一冊です。

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