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“生”の井上芳雄を堪能できる50分—「芳雄のミュー」生放送の現場はおもてなしのパーティー⁉︎ 番組の裏側を徹底取材!【プロデューサーインタビュー<後編>】

ミュージカル界のトップスター・井上芳雄がホストを務める生放送番組「井上芳雄ミュージカルアワー『芳雄のミュー』」。今回は、番組担当の金山麻衣子プロデューサー、後藤花鈴プロデューサーへのインタビュー<後編>をお届けします!
▶番組潜入レポ&番組プロデューサーインタビュー<前編>はこちら!


「芳雄のミュー」の番組プロデューサーにインタビュー!<後編>


歌唱曲を何にするかが、WOWOWの腕の見せどころ

―前半に続いての質問ですが、「芳雄のミュー」の毎回のゲストや、歌唱する楽曲はどのように決めているのでしょうか?

後藤「キャスティングは、ミュージカル界の動向や、芳雄さんが注目している、会ってみたい気になる俳優さんなどを相談しながら決めていきます。歌唱していただく楽曲も、芳雄さん、そしてゲストの方に相談していますね。
今、歌唱コーナーは、“PREMIUMEW STAGE(プレミアミュー・ステージ)”と題して、ゲストが今、歌いたいミュージカルソングを歌うという趣向になっています。ゲストの方のご希望やイメージをヒアリングしながらご相談して決めていきますが、この番組で視聴者の方が聴きたい曲は何か、という視点を持って具体的な楽曲をご提案することもあります」

金山「こちらからご提案するときは、どんな曲をWOWOWがご提案するかが、視聴者の皆さまに喜んでいただくための腕の見せどころだと思っているので、日々、ミュージカルの研究や勉強に努めています。とにかく劇場に足を運びますし、ミュージカルを愛するお客さまと同じ目線にちゃんと自分たちのセンサーをアップデートさせていくことが大切だと思っています。
また、スタッフ総出で、ファンの皆さまがどんなことを感じ、どんなことを望んでいるのかをSNSでリサーチしています。見過ぎなんじゃないかと自分たちでも思うほど、SNSは常にチェックしていますね(笑)。
あと、地上波の番組など、ほかの番組でどんな楽曲が歌唱されているかどうかも調べて、『芳雄のミュー』ならではの独自性が出るように意識しています」

「PREMIUMEW STAGE」ではミュージカルナンバーを歌唱!

―例えば、7月10日放送の京本大我さんの時は、京本さんのソロで「サンタフェ」(ミュージカル「ニュージーズ」より)、井上さんとお2人で「明日への階段(THE STEPS OF TOMORROW)~ルドルフ・The Last Kiss~」を歌われました。この時はどのように決めたのでしょうか?

金山「『サンタフェ』は京本さんからのご提案でした。京本さんが主演された『ニュージーズ』は2020年5月に日本初演を迎える予定でしたが、コロナ禍で延期になり翌年上演した作品で、ご覧になれなかったファンの方も多くいたとお聞きしています。
京本さんはファンの皆さまのそうした想いを把握されていて、いつかどこかでこの作品から『サンタフェ』を披露したいと思っていらしたことから、『芳雄のミュー』で歌うことをご提案してくださったんです。この番組がファンの方に喜んでもらえる機会になったことがうれしかったですね!」

後藤「2人での歌唱曲については、WOWOWからご提案しました。お2人の共通ということで、お2人ともにデビュー時に演じた役の、ミュージカル『エリザベート』の皇太子ルドルフが、われわれスタッフの念頭にありました。もちろん、『エリザベート』からの選曲も素敵ですが、同じく史実をベースにしたルドルフの半生を描いた『ルドルフ 〜ザ・ラスト・キス〜』が浮上しました。
日本ではこれまで芳雄さんしか演じていない『ルドルフ 〜ザ・ラスト・キス〜』のルドルフが歌うすばらしいナンバー『明日への階段』。この名曲を、芳雄さんとご縁の深い京本さんに、今、歌っていただけたら素敵なのではと思ったんです」

金山「ファンの皆さまの予想とは違っていたかもしれませんが、結果、皆さま喜んでくれましたし、放送後の反響もすごかったんです」

―放送の翌日、WOWOWのカスタマーセンターにもたくさんのお礼や感想メッセージが届いたと聞いています。

金山「本当にありがたいことです。当日のパフォーマンス、本当にすばらしくて…まさにミラクルでした!」

後藤「生放送は撮り直しが利かないですし、リハーサルは当日本番前のスタジオで行ない、すぐ本番です。しかも楽しくトークをしていた次の瞬間に、マイクを持って歌わないといけないという…」

金山「ミュージカル俳優さんのそのスイッチの切り替えが、本当にすごいなと毎回思います。そして、ゲストの方が伸び伸びと楽しそうに歌ってくださっているのを見ると、本当に良かったなと思うんです。企画の段階から思っていましたが、『生放送』と『ミュージカル』との相性の良さを改めて実感しています。
最近では、この番組に出たいとおっしゃってくれるミュージカル俳優さんのお話もお聞きするようになって、うれしい限りです」

“生放送”ならではのハプニングも…!

―これまで放送した15回の中で、印象に残っているシーンはありますか?

後藤「パッと思い浮かぶのは、第13回の新納慎也さんゲストの時の、“ミックスジュース詰め込み過ぎ事件”じゃないでしょうか…? 新納さんが持参のミキサーでミックスジュースを作るというところで、材料が引っかかってしまったのか、ミキサーが動かなくなりました。台本では、“新納さんが作ったミックスジュースを芳雄さんと試飲する”ところまでが一つのコーナーだったので、ミキサーが止まった時は、そこにいたスタッフ全員が凍り付きました…」

金山「緊急代替え用のミキサーを準備しておかなかったことを反省しましたね! 生放送ではあらゆるトラブルを想定しておかないと危険だということを学びました。この時は、ミキサーが再び動き出し、お2人が臨機応変に対応くださって、スタッフ一同胸をなで下ろしました。
あとは、第5回の“甚平”ですかね。この回のコンセプトを“夏祭り”としていて、最初は衣装に浴衣を着ていただこうと考えていたんですが、『夜のミュージカル体操』というコーナーがあり、生放送中に体操をする必要があったんです。浴衣で体操は動きにくいだろうと、動きやすい甚平を衣装にさせていただいたのですが、この番組の目玉でもある、ミュージカル曲の歌唱コーナーでも、(着替える時間がないため)甚平になるということでもあって…なんと芳雄さんはじめゲストの中川晃教さん、加藤和樹さん、伊礼彼方さんにも甚平を着て歌っていただくことになり…」

後藤「中川さんは、『SHINE SHOW!シャイン・ショウ!』よりスピッツの名曲『楓』、加藤さんはミュージカル『ファントム』の『崩れゆく心』、伊礼さんと芳雄さんで歌ったのはミュージカル『エリザベート』からの『闇が広がる』…と、いずれも人気ミュージカルの名曲ぞろい、壮大な楽曲で。それらをなんと和装の、しかもちょっとカジュアルな印象の甚平を着て歌うということになりました」

金山「お客さまからクレームが届くのではないか…という心配もありましたが、SNSなどで、甚平で歌う貴重な姿を楽しんでくださっている投稿もたくさんあって、『神回』とまでおっしゃっていただいてホッとしました(笑)
あと、ハプニングではないんですが、4月放送(第13回)の『芳雄のMEWS』(ミュージカル界のニュースを独自の切り口で紹介するコーナー)で、新年度のプチリニューアルで芳雄さんが今までかけていた黒縁のメガネをかけない演出になったんですね」

後藤「そうしたら、SNSで『今日メガネないんですか?』『メガネないのさみしい!』などの投稿がすぐに上がってきて。また翌月の観覧の方からも『なんでメガネがなくなったんですか?』とリクエストをいただき、すぐに5月放送からメガネが復活しました(笑)」

「芳雄のMEWS」での黒縁メガネの井上芳雄さん

金山「それが生放送のいいところですよね。『すぐに対応いたします!』というチャンスをいただける(笑)。当日、その時にならないと何が起きるか誰にも分からない…先の未来が分からないのが生放送の醍醐味だいごみ。なのであまり決め込まずにそこで起きる“妙”を楽しんでいただけるよう、余白を残しておきたいとも思っています」

生放送本番はおもてなしのパーティー!

―生放送の現場に潜入させていただいた時、観覧のお客さまに“前説”されていましたよね。

金山「はい(笑)。最初は緊張していたんですけど、視聴者の方と直接交流できる機会はこれまでなかったので、とても大切な場になっています。短い時間ですが、番組の感想やご要望を聞いたり質問を受けたり、時間いっぱいまでいろいろとお話させていただいています」

後藤「こういう場で『質問ありますか?』と聞くと、遠慮して誰も手を挙げないことがありますよね。でも『芳雄のミュー』のお客さまからは、質問が途絶えないんです。おひとりでいくつも質問される方もいらっしゃいます」

―私が拝見したときは、知らないお客さま同士で仲良くなっているようでした。

金山「うれしいことですよね! 観覧といってもスタジオが極狭で、スタジオ内でずっと観覧いただくことができないんです。オープニングでの数分のご参加になるので、皆さまにどのくらい喜んでいただけるのか、最初は手探りでした」

―でも、オープニングのスタンバイ中、皆さま井上さんと和気あいあいと話されていましたよね! 井上さんから質問されたり、普通に会話していてすごくいいなぁと思いました。本番では、目の前で歌う井上さんからお花をもらえますし!

後藤「オープニング終了後に、すぐ別室に移動していただくんですけど、その時の皆さまのお顔が最高に素敵なんですよ! 高揚しているというか、喜んでいただけたのが分かってうれしくなります」

金山「芳雄さんが本当にすばらしいんです。ミュージカル界を牽引している多忙を極めるお立場で、誰に対しても壁をつくらないですし、初対面の人を緊張させず、みんなに優しくてフラットで。
MCとしても本当にすばらしく、ご自身のファンの方はもちろん、ゲストのファンの方がどういうことを期待しているのかを分かっていらっしゃるんですよね」

後藤「全部見通していますよね! 芳雄さん、日々SNSのチェックも欠かさないようですよ…!」

金山「本当に、芳雄さんだからこその番組だと思います。生放送は当日までの準備が大変ですけど、本番は、お客さまを迎え入れておもてなしをする“パーティー”を開催している感覚です。視聴者の皆さまにはとにかく楽しんでいただける、そして観覧の皆さまには、オープニングでの演出をワクワクしながら体験していただき、ゲストの方には何か一つでも“新しい出会い”の場になるような番組を目指しています」

―とても素敵ですね!
少し話は戻りますが、オープニングソングは井上さん作詞、作曲は亀田誠治さんなんですよね。

後藤「はい、亀田さんとは2022年のWOWOW制作『ブロードウェイミュージカル「ジャニス」』の総合プロデューサーを務めていただいたご縁があり、また2023年の『日比谷ブロードウェイ with 芳雄のミュー』に亀田さんにご出演いただいたりとつながりがあったので、オファーさせていただいたんです」

金山「ご快諾いただいてからすぐに曲が届いてびっくりしました。すごく素敵な曲で、亀田さんのミュージカル愛が込められているようなメロディーに感動しました」

後藤「芳雄さんが歌詞を書いてくださったんですが、歌詞に『芳雄のミュー』がしっかり入っているのもうれしいです」

―覚えやすくてキャッチ―で、今も頭の中をぐるぐる回っています(笑)。

夢は「芳雄のミュー24時間」!?

―では最後に、今後の「芳雄のミュー」でやりたいことや考えている企画はありますか?

金山「まずは、もっとたくさんの方に知ってもらって見ていただける番組にしていきたいですね。あとは、WOWOWに専用の大きなスタジオを作ってもらって…(笑)、200人とか300人のお客さまをお招きできるといいですね! ミュージカル俳優さんたちの歌唱やトークを生で楽しんでもらって、一緒に歌ったりもできる“リアル体験”が目指しているところです!」

後藤「私は『朝まで生ミュー』とか、『芳雄のミュー24時間』とか、やってみたいですね(笑)。芳雄さんには24時間ご出演いただくことにとなるので大変ハードですが…、ゲストや観客の方は入れ替え制で。あとは、大みそかに『年越しミュー』とか!」

—どれもすごく楽しそうですね(笑)!

後藤「あと、私は『宝塚』関連番組を担当しているので、WOWOWミュージカル全体を盛り上げるということで、『芳雄のミュー』と『宝塚プルミエール』とのコラボレーションができたらいいな、と思っています」

金山「『芳雄のミュー』はこれまで2回、東京の帝国劇場からお届けしましたが、視聴者の皆さまから『また劇場や稽古場から生放送をしてほしい』というご意見もいただいています。実現できるかは分かりませんが、またスタジオを飛び出してどこか別の場所からお届けするという企画も考えたいと思っています」

—実現できそうな企画もありがとうございます! これからの「芳雄のミュー」も楽しみにしています。本日はありがとうございました!

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